北海道のアイコン

北海道地方環境事務所

アクティブ・レンジャー日記 [北海道地区]

ルピナスとマルハナバチ

2008年06月25日
東川
東川町から旭岳温泉方面に向かう途中にある忠別川の河原に、青、紫、白、ピンクなど色違いのカラフルな花が咲いています。河原を彩るその花の名前はルピナスです。

沢山の花が集合し、花のひとつひとつが種を包んだ房になり、房の中には7、8個ほどの種が入っていました。

私が初めてルピナスの花を見たのは、ニュージーランドの田舎町の湖畔でした。氷河の水が溶け込んだ影響と言われるミルキーブルーの美しい湖の周りに咲いていたルピナスの色彩はとても印象深く、今でもその光景は頭の中に鮮やかに甦ります。
そんなルピナスを北海道で見た時は本当に感動しました。日本に居るのに外国に来たみたいだと。そして、事務所からほんの数十キロしか離れていない場所に今、ルピナスの群落があるなんて、なんて素敵な事でしょうと思っていました。河原に降りてあの大群落を目にするまでは・・。
それは先日、ルピナスが忠別川上流のどの辺りまで繁殖しているのか調べる為に河原に降りた時の事でした。 ルピナスは近くで観察してみると1本の茎に沢山の花が集合して咲いており、時々エゾオオマルハナバチが訪れてはのんびりと花粉を集める姿も確認され、
マルハナバチとの関係も良好のようです。
しかし、河原を上流に歩いて行くと、車道からは確認出来ない広い空き地一面にカラフルな花の大群落が出現しました。近くに民家も無く、人目に触れることも少ないと思われる場所でどんどん増え続けたルピナスの花に可憐という言葉は似合わないと思いました。花言葉の「多くの仲間」や「貪欲」、語源の「オオカミ」という言葉は目の前に広がる風景とぴったり一致しました。


中央奥にはトムラウシ山が写っています。

大雪山国立公園の入り口からほんの5km程しか離れていない場所で、どんどん増え続けるルピナス。この事実はその花を利用するマルハナバチ達、特に特定外来生物であるセイヨウオオマルハナバチがルピナスを追いかけて、大雪山国立公園に侵入してくる可能性を考えさせられます。
ルピナスの群落は今のところ、この空き地から先は河原に点在する程度ですが、この先の旭岳温泉に繋がる道路脇には、セイヨウタンポポやコウリンタンポポ、ハルザキヤマガラシ、レッドクローバー、コンフリーなどが咲き、昆虫達を誘っているようにも見えます。ルピナスを含めたそのほとんどが外来植物であり、強い繁殖力を持っており、これまた強い繁殖力を持つ外来生物のセイヨウオオマルハナバチがこれらの花を利用しながら少しずつ高度を上げていくと、大雪山の高山帯で繁殖する日が来るかも知れません。
ルピナス=美しいという単純な感情を持てなくなったのは、自然は単純では無いと知ってしまったからですが、美しいものを美しいと素直に思える日が来るように努力を続けていかなくてはいけないと思いました。
東川自然保護官事務所では、大雪山国立公園パークボランティアの協力を得て、5月上旬から大雪山国立公園に向かって開花する花を追ってセイヨウオオマルハナバチの防除活動を行っています。


6月25日にパークボランティアさんの協力を得て行ったセイヨウオオマルハナバチ防除活動では、17頭が目撃・捕獲されました。ここでは今のところ在来のマルハナバチが優勢でした。