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北海道地方環境事務所

アクティブ・レンジャー日記 [北海道地区]

アピールの仕方

2008年09月03日
東川
大雪山は今、色とりどりの高山植物が咲き乱れていた夏から、紅葉の秋へと季節が移行しています。高山植物が花から実や種に変わる時期、夏の賑わいから一転して公園を訪れる人や野鳥の姿が少なくなり、巡視に出かけた十勝岳連峰の三段山は歩き始めから静寂に包まれていました。
時々後ろから感じる人の気配に、時々咳払いなどで自分の存在をアピールしつつも、静かな山を楽しみに来た人の邪魔にならないようにと、一定の距離を保ってそっと静かに歩きながら山頂まで行きました。山頂に着いて初めてその人の姿を確認しようという気になり、自分が今来た道をじっと見ていましたが、すぐそこまで迫っていた足音はいつしかハイマツの海に移動し次第に遠ざかって行き、その人はとうとう山頂に現れる事はありませんでした。色々な事が頭をよぎりましたが、結局その人の正体が明らかになったのは下山を始めてすぐの事でした。
 


 登る時には無かったヒグマの糞が黒々と光り、強烈にその存在をアピールしていました。山の中ではクロウスゴやナナカマドの実が色づいていますが、真新しい糞の中身を拝見すると、植物の葉や茎など繊維質の物がほとんどを占めていました。
 登山者に「大雪山を歩きたいのですがヒグマは居ますか?」とよく聞かれますが、私は実際にその姿を見た事はありません。しかし、はっきりと「はい、大雪山にヒグマは居ます。ヒグマ対策を忘れずにお出かけ下さい」と言えるのは、巡視中に何度も糞や植物の掘り返し跡などを見ているからです。
大雪山ではその姿を見る事は滅多にないヒグマですが、普段私たちが歩き回っている場所はヒグマのテリトリーであり、そこにお邪魔しているという気持ちを忘れないようにしなくてはと、改めて感じた初秋の三段山での出来事でした。


ヒグマの掘り返し跡。先日、美瑛岳付近でも見かけました。



こちらは9月2日に行った十勝岳連峰の三峰山。紅葉が4割くらい色づいていました。