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北海道地方環境事務所

アクティブ・レンジャー日記 [北海道地区]

パークボランティア冬期研修会

2011年02月22日
東川
2月19,20日の2日間にわたり天人峡温泉において大雪山パークボランティアの冬期研修会を行いました。同行事はシーズンオフのこの時期、来年度に向けての登山・自然知識の向上、体力維持等の為に毎年恒例で行われている行事です。と同時に我々にとっても勉強の場でもあるのです。

1日目は室内講義、1コマ目は「ヒグマ対応の最新例」というテーマでヒグマの会副会長の山本牧氏による講義が行われました。

「ヒグマとの共存」を目的にこれまで北海道各地を調査して来られた氏の講義は非常に興味深い内容で、1時間30分では短く感じられました。もっと話を聞きたいと思ったのは私だけではないと思います。

講義の中で特に印象に残っている言葉が「ゴミを食べたクマは死んだも同じ」、これには非常に心が痛む思いでした。実はヒグマは我々の身近にも生息している動物であり、人間が安易に捨てたゴミにつられて人間の味を覚えてしまう。そうなったクマはさらに人間に近づいていく事になり、最終的には駆除されてしまう。イコール我々人間側に責任があるのだという事になります。これを氏は「無意識の餌付け」という言葉で表現しておられました。なるほど、食べ物などのゴミを捨てるという事は知らず知らずのうちにヒグマを餌付けしているのだという事になります。飲み干したペットボトルなどもしかり、山でも町でも決してゴミは捨てないという意識を持つ事が大事なのですね。
その他にも犬連れ登山におけるヒグマとのニアミスの危険性や、万が一に出会ってしまった時は・・・等今後の巡視の際に役立つ知識を得られた講義でありました。

2コマ目の講義は「安全登山の為に」との内容で地元在住の山岳ガイド佐久間弘氏による近年の遭難の現状など、大雪山各地を長年にわたって歩き続けている氏から見た大雪における遭難の多い箇所・季節等、我々が普段フィールドにしている場所での話だけに考えさせられる内容であったと思われます。特に遭難は自己の体力過信や無理な行動計画から発生する事が多く、ご自身でも悪天候が予想される際には山行を控えるという事を強調されていました。同じ場所でも天候によって全く違う顔を見せる大雪山に関してはまさにその通りであると思います。併せて地形図とコンパスは必ず持つ、持つだけではなく使いこなせるように普段から勉強をしておく・・・、個人的にももっと勉強しなければと実感しました。

山行前の気象条件を把握するという事で、昨年8月に東川町で起こった豪雨災害時の気象図を用いて、山行前の天気チェックの重要さを説く佐久間講師。ただ、平地の天気予報は山ではあてにならないことも忘れてはならないとのことでした。

2日目は2名の講師にも参加していただき、通称「くるみの沢」周辺においてコンパスの実践練習も兼ねた野外観察講座を行いました。
前日から30cm程の降雪があり若干ラッセルが大変でしたが、観察中には青空ものぞきアカゲラのドラミングをBGMにヒグマの痕跡を探すなどあっという間の2時間でした。


これはトドマツに着いたヒグマの爪痕の様子を解説している所。近くにあるコクワを目当てに木を登っていたようです。

今回の行事で今年度の活動はほぼ終わりですが、会員の方には体力を維持していただき来年度のパークボランティア活動に臨んでいただきたいと思います。しばらくお会いする事が無くなりますが、皆様どうぞお体にお気を付けてお過ごしください。また5月にお会いしましょう。