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北海道地方環境事務所

アクティブ・レンジャー日記 [北海道地区]

旭岳スキーコースオープン

2011年12月16日
東川
 ここ数年、雪の少ない12月を迎えていた大雪山。
街中では厄介者と敬遠される雪だが、この地に関しては雪を心待ちにしている人たちが多くいる。その雪質は世界でも有数ともいわれ、世界各地から極上の雪を求めて多くの人々がこの地を訪れる。
 ここには雪は無くてはならない存在だ。

 シベリア大陸からやって来る乾いた季節風は日本海の比較的高い水温によってたっぷり水蒸気を含み湿った風となって北海道に吹き付け、大量の雪を降らせる。そして北海道の屋根、ここ大雪山にたどり着くころにはその水分はほとんど飛ばされ、乾いた雪となって天から舞い降りてくる。同じ北海道でも地域によって雪質が違うのはこのためである。
 それは「雪と」いうよりも「結晶」が落ちてくるというイメージである。

厳冬期の旭岳。猛烈な季節風が吹くことの多いこの地でしばしば見られるシュカブラ。

 そしてようやく今年もその「結晶」が落ちてくる季節となった。

 しかし、ここ大雪山で素晴らしいのは雪だけではない。高山植物が広がる花畑。真っ赤に燃える秋の紅葉。この雪の下にはこれらの貴重な財産が眠っていることも忘れてはいないだろうか?そしてこれらは雪の下で次の開花に向けて準備をしているのだ。植物たちはこの多量な雪によって守られているのである。
 積雪時期となれば当然のことながら登山道というものはなくなり、雪の上をどこでも歩けるようになる。が、雪が少ない所に無理やり踏み込めばこれらの植物に負荷がかかる。スキーなどで滑走すれば場合によっては貴重な樹木などを簡単に折ってしまうこともあるだろう。冬を楽しむにも環境への配慮が必要だ。

 今年も旭岳スキーコースオープンに向けて、関係機関による積雪量の調査が行われた。これは貴重な高山植物を損傷しないために一定の基準値を上回る積雪量にならなければコースオープンとしていないのである。
12月上旬までは雪不足によるオープンの遅れが心配されたが、ここ数日の降雪でようやく基準値を満たすレベルとなったようであった。

積雪量調査風景。
積雪の多い箇所では2m以上。
本日の気温-17度、風速10m。
視界不良とかなり厳しい中での調査であった。

調査の結果、旭岳のスキーコースは12月17日よりオープンが決定となった。
が、クローズしているコースに関してはまだ積雪量が足りない箇所であるため、くれぐれも無理に入り込み、植物の損傷につながるようなことのないようにお願いしたいものである。これからは「自然環境に配慮してやさしく滑る」という認識も必要ではないだろうか?


天女ヶ原湿原周辺から一瞬だけクリアに見えた盤の沢方面。圧雪したコース以外は技術を持った限られた人のための冬山エリア。装備・天候判断などが問われるエリアである。