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北海道地方環境事務所

アクティブ・レンジャー日記 [北海道地区]

【注意喚起!!】~冬山に入る皆様へ~

2012年03月26日
東川
 3月も下旬になり気温の上昇と共に、より良い雪を求めて標高の高い旭岳などに足を運ぶスキーヤー、スノーボーダーが増えてきているようです。
 先週末(3/17~18)も悪天候にもかかわらず旭岳ロープウェイの駐車場は満車に近い状態でこのエリアの人気の高さを物語っていました。
 そんな中、大変痛ましい事故が起きてしまいました。旭岳登山に出かけた2名が遭難、その内1名が帰らぬ人となってしまいました。事故に遭われた方やそのご家族には心からご冥福をお祈りいたします。

 ここ数年で一気に冬の利用者が多くなった旭岳。素晴らしい雪質に触れた人ならその魅力に取りつかれてしまうのは当然かもしれません。
 しかしながら、この場所はれっきとした山岳エリア。気象条件も大変厳しく、一歩間違えれば遭難と隣り合わせの場所であることも同時に頭に入れておかなければならないでしょう。利用者の増加と共に段々とスキー場感覚で山岳エリアに踏み込む人達が多くなっているのが大変気になります。

 気温が高くなるこれからの時期は雪崩の発生多発時期でもあります。幸いにもここ数年はこれまで雪崩による事故は起きていないようですが、小規模な雪崩は頻繁に起きているようで地元関係者などからも注意喚起が叫ばれています。

先日、山麓部において毎年恒例の直轄施設の雪下ろしを行いました。
作業中に雪質を調べてみると、写真でもハッキリと分かるように、弱層がいくつか見られ、その上にここ数日で降った雪が30cm程乗っている状態。
もちろん場所の違いはあると思いますが、大雪周辺では3月上旬に一旦気温が上がった後、雪が降り続いているため、どの地域においても要注意ではないかという印象を持ちました。
※ちなみに屋根の雪の高さは180cm程で昨年より30cm以上多く、作業にも非常に時間を要しました。


 旭岳(Aコース外側)において雪崩による死亡事故が起きたのはもう8年も前になり、当時の事故の事も段々忘れ去られようとしているかもしれません。
が、あえてここで警鐘を鳴らしたいと思います。

「雪崩はコースのすぐ脇でも条件次第ではいつでも起こりうる」と。

「みんなが行っているから行ってみよう」という安易な気持ちは即事故につながります。コースを外れての遭難、怪我なども今シーズンは多発しているようで、救急車の出動も非常に多いようです。

旭岳エリアに来られる皆様へお願いしたい事は

①いわゆるこのエリアは一般的な「スキー場」ではありません。植物損傷に問題がないと思われる積雪量の状態(12月~5月上旬)に限って、スキー、スノーボード等の利用が可能な山岳エリアです。
②圧雪車によって作られている4コース(A~Dコース)以外の場所はいわゆる「スキーコース横のオフピステ」ではありません、完全なる「山岳エリア」になります。冬山に入るための装備、知識、経験などが問われる場所です。地図、コンパス、雪崩救助道具(ビーコン、ゾンデ、スコップ)などは必携です。
③他人のトレースを信じ込まないようにしてください。
「先に誰かが行っているから大丈夫」という考えは非常に危険です。トレースの先に待っているものは「集団遭難」かもしれません。
④滑走、歩行の支障になるからといって灌木などを傷つけないようにしてください。その木は雪解けの後に華麗に花を咲かせ、秋には鮮やかに紅葉する木かもしれません。雪の下には貴重な高山植物が春を待ちわびていることを忘れないでください。

 近年、旭岳における冬の利用のあり方が問われています。無謀な登山、無秩序な行動等、一部の利用者によって旭岳全体のイメージが損なわれてしまう事は非常に残念なことです。
 利用者一人一人がルール、マナーを守って頂き、ここを訪れた方々が「また是非旭岳に来たい!」と思ってもらえるような場所になってもらいたいと思います。

 これ以上悲惨な事故が起こらないことを願ってやみません。


冬の時期には滅多にお目にかかれない快晴無風の旭岳。だが一旦猛威を振るい始めた山の神には我々はどう立ち向かった所で勝ち目はないだろう。