2017年2月 9日
2件の記事があります。
2017年02月09日アザラシ通信 冬の襟裳岬より
えりも自然保護官事務所 近藤武
「えりもの冬」......と聞くだけで寒さを感じる方もいらっしゃるのではないでしょうか。
えりもはまさに極寒の地。。。。。。かと言うと、実はそんなことはありません。
気象庁のHPで公開されているデータを基に作成した、北海道各地の1月の平均気温(2008-2017年の平均値)です。
えりも岬の1月の平均気温は「-1.9℃」。実は、函館よりも暖かいそうです。
えりもは海が近いからなのか、意外と暖かいのですね。
しかし、えりもの冬をなめてはいけません!!
気象庁HPのデータによれば、2017年1月の「えりも岬の最大瞬間風速」は、「35.5 m/s」だったそうです。
(1月の北海道の観測点の中で最大値でした。天気予報等で用いる用語では、秒速30~40mの風は「何かにつかまっていないと立っていられない。飛来物によって負傷するおそれがある。」として紹介されています。侮れない。)
えりもにお越しの際は、安全運転でよろしくお願いします。
さて、えりも岬のゼニガタアザラシは、この時期に何をしているのでしょうか。
気になったので、えりも岬へ見にゆきました。
(左)昨年の秋のえりも岬 (右)今年の冬のえりも岬
えりも岬の様子です。去年の秋と比べてみました。この時期のえりも岬は、岩は白く凍り付き、波も高く荒々しい姿です。岬の先端は特に風が集まるポイントなのですが、冬になるといっそう厳しい環境になります。
さっそく、望遠鏡で岩場の様子を観察しましたが、アザラシはなかなか見つからず。。。
諦めかけたその時!!
一頭だけですが、アザラシを発見できました。
2mはあろうかという、大きなアザラシです。
(若くて小さな個体は、上陸できないのかもしれませんね)
しかし、荒波にもまれて海に転げ落ちてしまい、別のアザラシと一緒に泳いでいきました。
えりも岬の厳しい海の中でも、アザラシたちは必死に生きているのでした。
おわり。
おまけ。
このアザラシの写真を撮るために開発した装置のご紹介。
「フィールドスコープ」に「デジカメ」を縛り付けて、超望遠カメラに改造。
写真が撮れるのはもちろん、デジカメが勝手にピントを合わせてくれるので使い勝手も良くなっている。
電池切れにはご用心。
大雪山国立公園の美しい景観を保全するほか、希少な野生生物を保護することも私たちの大切な仕事です。
中でもシマフクロウは、巣となる大木があった森は切り開かれ、エサの魚が住んでいた川はダムなどで分断され、生息地を奪われて一時は80羽ほどまで数を減らしてきました。
環境省では1980年代から、研究者の協力を得て保護増殖活動を続け、2016年には140羽ほどまでに回復しましたが、まだまだ危機を脱したとはいえません。
保護増殖活動の柱は、シマフクロウの大きな体に見合う巣箱の設置と、池に魚を放つ給餌です。
この日は、十勝のとある森の中にある池に30kg分の魚を運びました。背負子にコンテナを括り付け厚手のビニール袋を広げて魚を入れます。魚を活かす水も背負うのでずしりと肩に重さがかかります。数にすると100匹以上でしょうか。二人で二往復。シマフクロウたちには、お腹を満たし、寒さが厳しくとも繁殖の大切な季節を乗り切ってほしいものです。
保護増殖活動のもうひとつの柱は巣箱掛けですが、こちらの写真は設置していた木が倒れて一部が壊れてしまった巣箱を、ひがし大雪自然館での展示に利用しようと加工中のものです。壊れた部分を切り取って、断熱材が施されていることなどを断面展示します。出入口に残るシマフクロウの爪痕なども感じることができます。完成間近、乞うご期待です。