2018年11月
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2018年11月08日今年の巡視を振り返って 沼ノ原編
大雪山国立公園 岩城大洋
皆様、こんにちは、上川自然保護官事務所の岩城です。
今年は、11月に入っても暖かい日が続き、北海道での初雪は30年ぶりに遅れています。
このまま11月10日までに道内で初雪が観測されなければ、1886年以来132年ぶりの遅さとなるそうです。
冬の準備がまだの方は、もうしばらく余裕があるかもしれませんね。
さて、今回のAR日記は、9月10~12日の行程で巡視に行ってきました沼ノ原の現状を皆様にお伝えします。
沼ノ原へ行くには、クチャンベツ沼ノ原登山口から入山するのが一般的です。
しかし、平成28年7月の大雨で登山口に通ずる林道が崩壊し通行止めとなったため、現在沼ノ原までは別ルートを使って行くしかありません。
そこで今回の巡視時は、高原温泉から緑岳へ行き、高根ヶ原を直進し、
忠別岳避難小屋で1泊し、翌日、五色岳へ登り、沼ノ原へ下りていく行程としました。
通常クチャンベツ沼ノ原登山口から登れば、2時間~2時間半かかるところ、
高原温泉から入山すると沼ノ原までは約13時間を要します。
巡視初日、天気は曇り空。気温は平年値より高めで巡視にはちょうど良い天候での出発となりました。
緑岳山頂直下のガレ場ではナキウサギに出逢え、高根ヶ原からは沼めぐりコースの沼も見ることができました。しかし、秋の天候は変わりやすく、最初穏やかだった高根ヶ原も中間地点まで進むと、時折強い風が突き抜けるようになり、途中からは弱いながら雨も降り出してきました。
防寒着とカッパを着込み、初日の宿泊地となっている忠別岳避難小屋へ足を急がせます。
通り道の忠別岳山頂からはうっすらとトムラウシ山の上部を見ることができました。
一瞬見えたその姿は神秘的で荒々しく不思議な光景でした。
9時に高原温泉を出て、忠別岳避難小屋へ到着したのは16時30分。
長時間の行程で疲れ切っていたので、初日は夕食を取った後、すぐに就寝。
翌朝は寒さで目が覚めるまでは熟睡できました。
2日目、外に出ると雲一つ無い晴天。
最高の巡視日和です。朝6時に避難小屋を出発し、五色岳へ、そこから徐々に標高を落としながら
沼ノ原へ向かいます。
五色岳へ伸びる登山道の脇では放射冷却によってウラシマツツジなどに霜がおりていました。
また、途中にはヒグマの痕跡が。。。
五色岳山頂まで来ると正面には昨日の姿とはまったく違ったトムラウシ山がありました。
右手トムラウシ山を見ながら沼ノ原へと進みます。ここから先の登山道は木道で整備されている部分が多く歩きやすい歩道です。五色の水場付近では登山道の荒廃や洗掘が進んでいる箇所もありましたが、登山道の状態は比較的良好な印象を受けました。
反面、歩道上を行き交う登山者が大幅に減少した影響で登山道脇の蟻の巣をヒグマが掘り返した形跡や、ササの成長が著しい箇所などがありましたが特に問題になるレベルではありませんでした。
山頂から約3時間で久しぶりの沼ノ原へ到着。
沼ノ原まで来ると前方には石狩岳連峰がどっしりと構え、右手には満水状態の大沼がありました。晴天にもかかわらずここまでの道のりで他の登山者と遭遇することはなく、
沼ノ原は静かな楽園のように静寂の中に。そこはとても贅沢な空間となっていました。
今回の巡視の終点地点はクチャンベツ側の沼ノ原入口までです。終点地点まで登山道などを確認し巡視は無事に終えることができましたが、業務はまだ終わっていません。
ここから来た道をまた1日半掛けて戻らないと終わらないのでした。
沼ノ原を視で巡った記録はここまで。
次回のAR日記もお楽しみに。
2018年11月08日知床海岸清掃
白石海弥
朝や夜は冷え込み、気温が1桁になることが増えてきた知床・ウトロ側です。ギリギリまでストーブを我慢するこの時期がほんとに寒いです。四季の中で一番寒いんじゃないかと個人的に思っています。
さて、今回は知床の海岸清掃に参加してきました。世界中で問題になっている海洋ゴミ、知床でも同じ問題を抱えています。今回の清掃作業は、関係行政機関と地元住民ボランティアで行われているもので、多くの方がボランティアに来てくださいました。総勢50名での作業になります。
天気は快晴!とはならず、あいにくの悪天候。悪天候というより荒天に近かったです。風がとにかく強く、途中から雨も降ってきました。目的地に着くころには雨は止んでくれましたが、風がちょうど吹き抜ける地形で猛烈に吹いていました。
注意事項等を聞き作業開始です。
主に拾うのはプラスチックごみなどの燃えるゴミ。海岸には漁具やペットボトル、流木など多くのものが流れ着いていますが、今回は人の手で拾えるゴミだけを拾っていきます。
協力してゴミを拾います。どんより重い雲が、後にどしゃぶりの雨を連れてきました。
海岸に溢れかえるゴミたち。漁具やプラスチックゴミが大半です。
荒天のため早めに切り上げましたが、2tトラックいっぱいになるまでゴミを拾えました。
皆さまお疲れ様でした。
知床は美しい景色が広がる場所ですが、こういった負の面もあります。今回はざっと2tほど拾いましたが、知床の海岸線にはまだまだゴミがたくさんあります。拾っても拾ってもまたどこからかゴミが流れ着いてしまいます。皆さんに知床がこういった問題を抱えていることが伝わり、少しでも関心を持ってくれたら嬉しいです。
海洋に浮かぶ、もしくは漂着したゴミは自然や野生動物に多大な影響を及ぼします。時には動物たちを殺します。今日では、ひたすら拾っていくことしか対応策が無いのが現状ですが、少しでもゴミが減るよう、ポイ捨てをしないことを心がけてください。
環境省ではプラスチックゴミ削減のため、レジ袋を有料化するなどの対策を講じていく方針が定まりました。HPもできましたのでご覧になって頂ければと思います。
2018年11月05日森に還そう。十勝三股植樹イベント
上村 哲也
10月12日(金)、13日(土)に十勝三股で植樹、ぬかびら源泉郷で自然観察のイベントを開催しました。
十勝三股は、かつて林業で栄え2,000人ほどが暮らした土地です。鉄道も引かれ木材を置く広い土場がありました。住宅が並び、神社も土俵もスキー場もあり、そして小中学校もありました。
この小中学校跡地を森に還そうと、植樹のイベントを続けています。植えるのは近くの国道沿いに生育し放っておけば刈り払われてしまう稚樹や、小中学校跡地に自然に着床したものの混み合って生育が心配な稚樹などです。校舎や校庭であった平地に穴を掘り稚樹を納めます。広葉樹は柔らかい芽や葉が春まだ雪が残る頃、エゾシカたちに食べられてしまうので、支柱を立て樹脂の網で囲み守ってあげます。
イベントに応募いただいた参加者を、大雪山国立公園パークボランティアのみなさんが手際よくサポートして、美しく完成しました。
...植樹を終えた後は、ぬかびら源泉郷の小沢に移動して自然観察会。講師はひがし大雪自然ガイドセンターの河田さん。今回はハナカジカを探します。
水質のよい川底に暮らす淡水魚で、周囲の環境を感じ取って体色を変化させる忍者のような能力を持っています。私はさっぱりでしたが、皆さん次々に見つけて網ですくって10匹ほど。沢水を張ったタライに移して、しばし観察しました。沢の砂地に紛れて黒っぽかった色合いが、水色のタライに合わせてみるみる白っぽく変わりました。落ち葉をかぶせて日陰を作るとまた黒く変わります。優しく触れて鱗のないことも知りました。
あまり疲れさせないように沢に戻して観察会を終了しました。
2018年11月02日秋のウトナイ湖で、シマフクロウを学ぼう
苫小牧 平 尚恵
こんにちは。
ウトナイ湖担当の平です。
今朝、我が家から見える手稲山(札幌市)が真っ白になっていていました!!それでも麓の方は綺麗に紅葉した葉がまだ残っていたので、秋と冬の両方の景色を同時に観ることができる北海道はやっぱり良いところだなーと感じた朝でした。
さて、11月11日(日)はポッキーの日ですが、ウトナイ湖野生鳥獣保護センターではシマフクロウのセミナーを開催いたします。毎年テーマを変えて行っているこのセミナーですが、今回はシマフクロウの研究者である竹中氏を講師にお迎えし、シマフクロウを語り尽くしていただく予定です。
一年のうち半分以上をシマフクロウの棲む森で過ごす竹中氏が語るシマフクロウの真の姿とは・・・!?
シマフクロウ一家を育んでいる豊かな森の真実とは?
会場にはシマフクロウの剥製や羽、橈骨標本なども用意します。標本はお手にとって触っていただけますので、その大きさやフワフワの羽毛など、感触を楽しんでいただけると嬉しいです。
当日お会いできることを楽しみにしております。
------詳細-------
日時:11月11日(日)10時~12時
場所:苫小牧市、ウトナイ湖野生鳥獣保護センター レクチャールーム
問合せ:0144-58-2231
申し込み:事前申し込みをお願いしていますが、当日参加も可能です。
-----シマフクロウ-------
日本には北海道にのみ生息している、世界最大級のフクロウで夜行性、魚をメインに食べるが、両生類や小型ほ乳類も捕食する。
生息環境の悪化に伴い個体数が減少したため、1985年に国が保護事業を開始、現在は少しずつ個体数が増えてきている。
2018年11月02日サロベツで、冬期営業始まりました!
利尻礼文サロベツ国立公園 青山留美子
早々に初冠雪した利尻山や雪虫が飛び交う姿に冬の足音を感じつつも、まだストーブをつけずに過ごせているサロベツの青山です。
季節にあわせ、11月より、サロベツにある環境省施設は冬期営業になりました。
まず、豊富町にある「サロベツ湿原センター」は、開館時間の変更と毎週月曜日が休館日となります。
また、夏の間は24時間使用できたトイレも、冬期間は開館時間内だけの利用となりますので、ご注意下さい。
<11月1日~4月30日まで>
○開館時間 10時~16時まで
○休館日 毎週月曜日、12/29~1/3
○トイレの利用時間 上記内容と同じ
続きまして、幌延町にある「幌延ビジターセンター」は、11月1日~4月30日まで、冬期閉館となります。
併せまして、パンケ沼園地にある建物やトイレも閉鎖しましたので、幌延ビジターセンターやパンケ沼方面へお越しの際は、使用できるトイレがありませんので、ご注意下さい。
サロベツ湿原センターも幌延ビジターセンターも、そしてパンケ沼園地も、
施設は冬期営業になりましたが、木道は通年変わらず営業中です。
花が無い湿原も、よくよく見るととてもきれいです。
特に夕暮れ時の湿原はとても素敵だと思います。
夏鳥がいなくても、渡り鳥たちがにぎやかですし、1年中いる鳥たちもいます。
雨の切れ間に、湿原に虹がかかるのを見られるのも、今だからこそです。
今の時期だからこその出会いがある湿原、これからの季節もおすすめです!
例年に比べ暖かい日の続く北海道。えりもでは雪の便りもしばらく先になりそうです。
みなさまお変わりなくお過ごしでしょうか。
8月末から行われている定置網漁。アザラシに関する調査の為、乗船の日々が続いています。
いくら暖かい日が続いているとはいえ、早朝の強風は一層寒さを増し身に沁みます。沁みます。。
私、熊谷は今年5月の着任当初から、周囲の多くの方より「えりもの風はえらい(すごい)から大変だど~」「こっちの波はすんごいんだから!」などと声をかけていただいていたので、少々緊張気味でしたが聞いていたよりも穏やかな日が多く「このくらいなら大丈夫!!」と感じていました。
ですが秋の定置網漁が進むにつれ、強風・高波等の日も増え「みんなが言っているのはこれか...」と、大自然ゆえの厳しさを思い知らされ再び気を引き締めたところです。
(勿論、海況が悪いときは休漁になることもあり、出漁しても安全第一で業務にあたります)
特に今日は海が時化、繰り返す波しぶきの中での漁となりました。
漁も終盤、今後も気を緩めずに逞しく調査に取り組みます!!
そんなある日、漁から戻ると風も落ち着きスカッと晴れ初秋を思わせる天気になっていました。
これは!!と思い準備していたドローンを飛ばしてみると...
思った通り。アザラシたちが気持ちよさそうに岩場で休んでいました。
そんなところで休めるの?という岩礁にいることも...
長い時間こうしていたのでしょうか。陽を浴びている側は体毛が乾き、ぬいぐるみのようにフワフワです。よく見てみると、岩場とアザラシの色柄はよく似ていてどこが境目か分かりづらいところがあるほど。よくできています。
こうしてアザラシの日常を覗いていると、観光でいらした数名が「何をしているんですか?」と話しかけてくださいました。
えりも岬周辺はゼニガタアザラシの貴重な住処となっていること。ゼニガタアザラシは日本で周年見られる唯一のアザラシであること。そしてそのゼニガタアザラシの調査のためドローンでの撮影をしていること...撮影をしているその場所から、アザラシを肉眼でみることはできませんでしたが遠隔操作中のカメラ映像を見ていただくことが出来ました。
「どんなアザラシ?」「わぁ、波が来たら嫌がって顔避けてる!」「これを見なければアザラシがいると知らずに帰るところだった」などなど...色々なことを知って感じていただけたようです。関係者以外とお話しできる機会は少ないので、貴重な機会となりました。
今後も❝ここだからこそ❞の写真や活動の情報を発信していきます!
どんな強風が吹いているのかご興味ある方、ぜひいらしてくださいね(驚きます)