2019年3月 1日
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2019年03月01日一本の電話からはじまる命のリレー
大雪山国立公園 渡邉 あゆみ
25日(月)9:30 プルルル......月曜の朝、事務所の電話が鳴りました。
電話先:北海道地方環境事務所 野生生物課 平アクティブレンジャー
「23日(土)朝にウミスズメが旭岳ロープウェイの物置で保護されたため、旭山動物園に保護収容していただくよう、環境省からお願いしました。ウミスズメに外傷はないが、保護から3日経っておりウミスズメは収容のストレスにも弱いので、早目にリリース(放鳥)したいのですが、これから動けますか?」
「ウミスズメ」絶滅危惧ⅠA類(ごく近い将来における野生での絶滅の危険性が極めて高いもの)
【北太平洋、千島アリューシャン列島、アラスカ南部等に分布し、日本では天売島にのみ繁殖のために飛来してくる体長26cm位の海鳥。頭は黒、背面は灰色、喉は白。外敵から身を守るため、断崖の岩の隙間などに営巣し、ヒナは孵化して2日ほどで海上に出て、親鳥から海上で給餌される。捕食行動で時には水深40mまで潜水する。混獲や外敵による捕食などにより生息数が減少。】
・・・何故・・・ウミスズメが・・・旭岳に・・・???
頭の中に浮かぶたくさんのクエスチョンマーク・・・ただし、既に無事が確認されているため、詳細は後から聞けば良し。ウミスズメは母なる海へ直ちに帰すべし!!
渡邉 「出動します!」
10:30 旭山動物園のバックヤードのゲージにウミスズメはチョコンといました。
動物園の獣医師から、「置き餌としてワカサギ0.5匹捕食を確認、1匹を強制給餌、皮下補液の注射を行い、外傷や骨折は見受けられません。」と診断結果の伝言を承りました。
ウミスズメを段ボールに入れ、いざ搬送!と、その段ボールを持ち上げたとき、あまりの軽さに、この小さな体で雪深い旭岳まで来てしまったのか・・・と迷い子ウミスズメが不憫になりました。
官用車の後部座席にウミスズメが入った段ボールをセット、必ずや海へ帰すよ!!と腕まくりして誓い、いざ日本海方面へ。
運転中も、後部座席が気になって仕方ありませんが、ウミスズメは段ボールの中で大人しくしていました。話しかけたりするとウミスズメにもストレスだろうと思い、心の中で熱いエールを送り続けていました。
12:30 沼田町某所 羽幌自然保護官事務所の岩原希少種保護増殖等専門員と落ち合い、獣医師から聞いた情報を口早に伝え、「よろしくお願いします!!」とウミスズメを託しました。久々の岩原さんとの対面時間も約1分で終了。もうすぐ海だ、ガンバレー!
14:10 岩原希少種保護増殖専門官が羽幌町の北海道海鳥センターにウミスズメを搬入。海鳥センターの方々とイワシ15gを強制給餌し、水に浮かべて撥水性を確認。元気なうちに海に帰すことになりました。
16:30 羽幌町日本海、カラスやカモメなどの捕食者がいない砂浜に・・・元気に放鳥―!!!砂浜を走り、少し飛び、着水のあと泳いで、大海原へ帰っていったそうです。
なぜ、ウミスズメが北海道の内陸、旭岳に辿り着いたのでしょう?
日本近海で越冬していた個体が悪天候と西風で内陸に飛ばされてしまった可能性などが考えられるそうです。風とともに生きる鳥の生態は不思議ですね。
私達は業務で、既に死亡していたり、大怪我をしている野鳥を引き取りに行くことがあります。人為的な事故の場合、野鳥への申し訳なさや、自分に何か出来ることはなかっただろうか、と落ち込んだり後悔の念にかられることがあります。
そんな中、今回のように元気な状態ですぐに野生に返せたことは、ウミスズメだけでなく、職員はもちろん、一丸となりリレーを繋いだ全ての人にとっても大変喜ばしいことで、小さな野生から大きな力を与えられたことと思います。
翼を大きく羽ばたかせ、たくさんの試練が待ち受ける自然界に帰っていく勇敢なウミスズメの姿を思い返す度に、私の中からも沸々と力が沸いてくるような心に残る業務でした。
今回、ウミスズメの保護・収容・処置等にご協力いただいた旭山動物園、旭岳ロープウェイ、旭岳ビジターセンターの皆様、ありがとうございました。
みなさま、こんにちは。
日がだんだんと長くなってきました。
2月上旬には最強寒波がやってきて、川湯もマイナス30度以下を記録しましたが、気づけば厳冬期も過ぎ去っていました。近頃では雪も湿り気を帯び、春が近づいてきていると感じます。
2月27日はパークボランティア有志の方と西別岳に巡視に行ってきました。
冬の山は初めての私ですが、熟練のPVさんが同行してくださったので、安心して登ることができました。
西別岳は冬期林道が除雪されておらず、登山口まで約6キロを歩かなければなりません。
みんなでスキーシューを装着し、もくもくと歩きはじめましたが、林道にはウサギのとめ足や、エゾリスの足跡、ネズミが顔を出した穴、キツネが顔をつっこんだ穴、鳥が飛び立った羽の跡など動物たちの痕跡が私たちを楽しませてくれ、あっという間に2時間で登山口に到着しました。
西別小屋の利用記録を見ると、冬期も使用されているようで、遠くカナダから来られている方もいました。トイレもあるので、休憩地点として丁度良く、きちんと整備されているのが有り難いです。
小休憩のち気をとりなおし、スキーシューで緩い斜面を登っていきます。もうこれ以上斜面は登れない、というところでスノーシューに履き替えたのですが、滑るように移動してきたスキーシューに足が慣れていたせいか、待ち構えていたのが急傾斜のがまん坂だったせいか、一歩一歩が重く感じてしまいました。甘えに甘えて、踏み固められた最後尾を歩かせてもらい、なんとか尾根に出ることができました。
リスケ山から見る摩周カルデラと摩周岳の姿は圧巻です。天候にも恵まれ、遠くウトロとオホーツクの流氷まで見ることができました。左手には西別岳の頂上が見えます。リスケ山から西別岳頂上の尾根は、風の吹き付けが強く、高山植物がむきだしになっているところがありました。そのような積雪が少ないところは、登山道沿いにある植生保護のための杭も頭をのぞかせています。杭の内側からはずれないように歩き、高山植物を踏みつけないように気をつけたいですね。
西別岳頂上に到着すると、オオワシが旋回していました。この後、オジロワシもやってきました。
予定より少し時間が押してしまっていたので、頂上ではあまり長居をせずに下山を始めました。行きは大変でしたが、帰りは気持ちも軽く、さくさく進みます。体力温存のため(?)がまん坂は滑って降りようと小道具を持ってきていたのですが、残念ながら雪もだいぶゆるくなっていて、思うように滑ることができませんでした。その分、スキーシューに履き替えてからは、怖いほど滑り、何度も頭から雪につっこんでしまいました。
帰りの林道もあっという間でしたが、丁度2時間かかりました。朝7時半に出発して、夕方4時半に出発地点に戻ってきました。振り返ると西別岳が雄大に夕日に照らされていました。