ACTIVE RANGER

アクティブ・レンジャー日記 [北海道地区]

北海道地方環境事務所のアクティブ・レンジャーが、活動の様子をお伝えします。

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2019年8月

13件の記事があります。

2019年08月05日ゼニガタアザラシ調査内容のご紹介

えりも自然保護官事務所 熊谷 文絵

こんにちは!

えりも自然保護官事務所の熊谷です。

みなさんの知っている"えりも"はどんなところでしょうか?

...風が強いだけではありませんよ。

ここ、えりも町は季節を問わず魚や貝類など多くの海産物が水揚げされます。

中でも、鮭の定置網漁の季節は町や港が賑わいます○

※定置網漁とは...

"進行方向に壁があると感じると、沖へ向かって泳ぐ"という、魚の習性を利用した漁法。

網をあらかじめ定められた場所に仕掛けておき、そこへ泳いできた魚が自身の持つ習性により網の奥へ奥へと誘導される仕組みです。

毎朝、網に溜まった魚を回収します。(この作業を「網興し(あみおこし)」と呼びます)

えりもの鮭定置網漁の季節は「春(5月中旬~7月上旬)」と「秋(8月末~11月中旬)」。

ここ数年、記録的な不漁が続きましたが今年の春は昨年よりも魚が獲れ、活気を取り戻しました♪

▲大漁!サケ・マスの他にカレイやサバ、ニシンが。大漁の日は港が更に活気づき、心躍ります♪

よく見ると、獲れた魚の中にはこんなものも...

 

▲「トッカリ喰い」

これは、アザラシがひっかいたり、食べてしまったことによる被害です。

「トッカリ」とはアイヌ語でアザラシを指し、アザラシが食べる様子や食べられた魚を「トッカリ喰い」と呼びます。

これまでも何度かご紹介しているように、えりも周辺には、「ゼニガタアザラシ」が暮らしています。

このアザラシは定着性のため、周年決まった範囲内で過ごしますが、えりも町の定置網のいくつかはその範囲(生活圏)内に位置しています。そのため、定置網に入ったまたは入ろうとしている鮭を度々食べてしまうのです。

鮭を食べよう・獲ろうとするのは人間だけでなく、アザラシも然り、狙っています。

アザラシがひっかくことにより傷がついたり、一部食べられてしまった鮭は人間の食用として出荷することは出来ません。漁師の皆さんからすると、害獣とも感じかねないゼニガタアザラシ。

えりも自然保護官事務所では、アザラシの個体数を維持しつつ、漁業被害を減らすにはどうしたらよいか。。

そのためにはどんな対策を行うべきか。。地元漁師のみなさんは勿論、専門家や関係各所にご意見をいただきながら取り組みを行っています。

これまで、効果の見られたものがあるものの、より効果を得られるものはないかと試行錯誤が続いています。

今回は、その中の春の定置網漁に同行し行っている「乗船調査」の一部をご紹介。

◎毎朝5:00 漁師さんと共に漁船に乗り込みます!

◎定置網の場所まで移動したら...いざ網興し!私も一緒に網を引き寄せます。

 大漁の日こそ、重たいんです。。

  

◎獲れた魚にどれだけのアザラシ被害があったのか、調べます。

 

◎定置網に近寄る魚やアザラシの様子が見られるよう水中カメラを設置しています。

 交換は網興しの度に行います。1つの船で興す網は2ヵ所、もう一度繰り返します。

 その他、定置網の近くにアザラシが寄ってきているか、目視での確認を行います。

 

◎事務所に戻ったら、回収したカメラ映像を確認します。

 得られた映像から、魚やアザラシが何時頃、網の近くでどのような行動をとっているかが分かります。

 これらは漁師の皆さんと都度共有し、必要があれば網の形状を変更したりしています。

 今年の春は、カメラに興味を持ったウマヅラハギがしばらく覗き込んでいたことがありました...

 ウマヅラハギのドアップで魚やアザラシの様子分からず...かわいいハプニングとなりました♪

そして、何といってもアザラシがとっても賢いこと。。ここに私たちが取り組む業務の難しさがあります。

水族館で行われているショーなどからも分かる通り、トレーナーとコミュニケーションが取れるだけの知能があり、学習能力が高いため、何か新しいことが起きても数日、いや早ければ数時間もしないうちに慣れてしまうのです。

また、日々変化する海中での出来事に適応しているアザラシたちに、陸で暮らす私たち人間が対策を講じることは、一筋縄ではいきません。

そういった日々に私の頭の中はというと...

●ダイバーでもある私。潜って海中の様子を見てみようか... いや、ここはえりも。

日高山脈が海に沈む特殊な地形から、風はもちろん海流も複雑です。静かそうに見えても海中はうねって流れも速い。。やめておこう。

●あれ、アザラシが休息をとっている岩礁が昨日と違う。ゼニガタアザラシは同じ個体が決まった岩礁を好む傾向にあるけれど...昨日と同じような海況・風況なのにどうしてだろう?

●気温の上がってくる今時期に発生しやすいのが、霧。10m先も見えない濃霧、待っても待っても真っ白でな何も見えません...霧くらいならアザラシはいつもの場所にいるのかな?

こんな調子で、気づけば毎日アザラシのことばかり考えています。

アザラシも種類や棲む場所によって食べるものや行動も違っています。

ここに棲むアザラシのことをもっと知ろうとするものの、中々上手くいかないことも多いのです。。

とはいえ、ここにいるから分かる情報は豊富です、めげずに調査に取り組みます!

今年の春の乗船調査が終了し、そこでの結果を取りまとめました。

専門家の方や地元の皆さんと会議をし、今後の方針や調査方法などを決めていきます。

ゼニガタアザラシが野生で棲むことが出来る環境が残るえりも。いつまでもここを選んもらえるように、人とアザラシが共生できる環境を目指します!

次回は、ドローンを用いた個体数調査についてご紹介の予定です。お楽しみに!


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2019年08月02日1人の命を救うため

知床国立公園 羅臼 宮奈光一郎

北海道で最も辿り着くのが難しいと思われる岬、知床岬。
到達するには道が一切ない海岸線を天候、潮位、地形、ヒグマ等に細心の注意を払いながら進まなければなりません。

海に面する岩礁地帯を進むトレッカー(2019年8月撮影)

そんな沢山の苦労を重ねつつ、知床岬に足を運ぶ人たち。
決して多くはありませんが、時として自然に飲み込まれてしまうことがあります。

知床岬方面の海岸線にある波止場にて搭載艇に乗り移る救助訓練参加者(2019年7月撮影)

その様な事態が起きた際に迅速な対応を行うため、羅臼海上保安署をはじめとする官公庁、羅臼山岳会等の地元関係団体の方々と共同で捜索救助訓練が実施されました。

波止場周辺からドローンを飛ばし、岩陰に隠れた遭難者役を探す(2019年7月撮影)
搭載艇を使用した人員の移送、ドローンによる救助訓練が行われ、今後関係団体とどのような連携が組めるのか話し合われました。1人の命を救うため、多くの人員、時間、物資等が使われることを身にしみて感じた訓練でした。

知床岬へ近付けば近付くほど、拠点となる人の利用が多い場所から離れ、救助が辿り着くまでの時間は延びます。また岬まで続く石浜、岩礁、複雑な地形等救助を困難にする場所が増えていきます。利用される際はそういった場所であることを認識し、常に引き返すことを1つの選択肢として、状況判断をしていただければと思います。悲しい事故が起こらないために。

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知床岬方面をご利用の際は情報サイト「シレココ」をご確認いただくと共に、ルサフィールドハウスにて情報を収集していただければと思います。

潮が引いた知床岬へ続く広い海岸を青空の下歩んでい行く(2019年6月撮影)

地の果てへ

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2019年08月02日ウトナイ湖夏休み子どもスペシャル 「野生動物を守る!獣医さんと環境省のお仕事体験」

苫小牧 大久保 智子

こんにちは。6月に北海道地方環境事務所 野生生物課に着任した大久保です。

大雪山国立公園の上川地区から札幌に移ってきました。

これからは野生生物課の業務の活動を報告していきますので、よろしくお願いします。

苫小牧市のウトナイ湖は、国指定鳥獣保護区に指定されており、そこにウトナイ湖野生鳥獣保護センターという施設があります。

ここでは、ウトナイ湖の自然を学ぶための展示を行い自然情報を発信したり、ウトナイ湖及び鳥獣保護区周辺で保護された傷病鳥獣の救護活動なども行っています。

そのウトナイ湖野生鳥獣保護センターで、7月27日(土)に夏休み子どもスペシャル

「~野生動物を守る!獣医さんと環境省のお仕事体験~」というイベントを行いました。

前半は、ウトナイ湖野生鳥獣保護センターの獣医さんなどから野生動物を守ることの意義や、傷病鳥獣発生の原因について説明を受けつつ、救護施設や保護収容されている鳥の見学を行い、その後実際に鳥を治療する際に暴れないように保定をしたり、治療の際のポイントを教えてもらったりと獣医さんの体験をしてもらいました。

後半は、環境省レンジャーのお仕事体験として、ウトナイ湖散策路の現地調査を行ってもらいました。現地調査では、動植物の自然情報の収集や、整備した木道などの利用施設の点検を行います。今回のお仕事体験で観察できた動植物のシールをマップに貼ったりメモをとったりしてもらいました。

参加してくれたのは、小学4,5年生を中心に15名。はじめから積極的で、いろいろなことに関心を持ってくれたので、緊張していた私は、子どもたちに救われる思いでした。これから見る力や探す力を養い、ずっと自然環境への興味を持ち続けていてくれたらいいなと思いました。

これからもウトナイ湖の自然の素晴らしさをもっと勉強していき、伝えられる機会をつくっていきたいと思います。

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