ACTIVE RANGER

アクティブ・レンジャー日記 [北海道地区]

北海道地方環境事務所のアクティブ・レンジャーが、活動の様子をお伝えします。

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大雪山国立公園 東川

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2010年10月08日【日本のいのち、つないでいこう! COP10まで10日前】

大雪山国立公園 東川 宮崎 浩

エゾヒグマ
分類:ネコ目(食肉目) クマ科 

「大雪山はBEAR COUNTRY(ベアーカントリー)!」
ヒグマがいるからこそ大雪山は素晴らしい!大雪山に関わる者は皆そう思うであろう。

大雪山を歩く時、ヒグマの危険性は避けて通れない。しかしそれは逆に言えばそれだけ大雪山が自然の宝庫であるという事である。年々自然が失われていく中にあってこれだけの自然が残っている大雪山は貴重な財産である。
確かにヒグマがいなければ我々はもっと安心して山に入る事が出来るようになるかもしれない。しかしそれは同時に自然が破壊されてしまい、つまらない場所になってしまったという事であり、大雪山が大雪山で無くなってしまったという事である。やはりヒグマがいるからこそ大雪山は素晴らしい場所であるのだ。


警戒心が強い彼らの姿を見ることはなかなかあるものではないが、ここ大雪は間違いなくヒグマの楽園なのだ。(旭岳裾合平にて撮影)

昔、アイヌの人たちはヒグマの事を「キムンカムイ」(山の神)として崇めており、ヒグマとも共存していた。しかし現代ではどうであろうか?ヒグマが家畜を襲う、畑の作物を食い荒らす(もちろん昔もそのような事が全くなかったわけではないのだが)。例外もあるが、多くは自然が破壊され山を追われたヒグマたちだ。これ以上被害者のヒグマを作らないためには我々出来ることは何であろう。

例えば北海道ではあちこちで見られる道路に出てくるキタキツネ。彼らも最初から人間に食べ物をもらっていたのではないはず。誰かが餌やりをしたか、もしくは人間が捨てて行った食べ物などから人間に興味を示すようになってしまったのか。果てには子ギツネの時から親に餌のもらい方を教えてもらう個体がいずれ増えて来てしまわないようにしなくてはならない。



登山道入り口の駐車場で餌を待つキツネ。キツネももちろんだが、決して人間の食べ物をねだるようなヒグマを作ってはならない。自分たちの過ちは全て自分たちに帰ってくるのであるという意識を持つことが重要だ。

気を付けているようでもちゃんとやれているだろうか?

・山で食事をする際、食べ物のカスは登山道周辺に落とさない。ゴミを残していく事などもってのほか。
・野営の際、食糧などは外に置いておかない、臭いの強い食べ物は山では控える
等々。ちょっとした不注意から山の神(ヒグマ)が人間を脅かす存在になってしまわないようにしなくてはならない。

将来も「大雪山はBEAR COUNTRY(ベアーカントリー)!」と言えるような環境作りを我々はしていかねばならない。決してヒグマの住めなくなった大雪山にしてはならないのである。ヒグマがいるからこそ大雪山は素晴らしいのだ!


山では足跡を頻繁に目にする。当然のことながらここは彼らの住処であり、我々の住処ではない。山の神に畏敬の念を持って山に入らなくてはならない。場合によっては引き返すことも必要である。

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2010年09月24日遭難多発地帯・・・旭岳

大雪山国立公園 東川 宮崎 浩

今年度の7,8月の夏山遭難の数は全国で530件。遭難者数は611人と記録の残る1968年以降過去最高の数字であったとの事(警視庁9月10日集計による)。
東川事務所が管轄する中でももっとも遭難事故が多い所と言えば、何といっても旭岳に他ならない。北海道の最高峰を一度踏破しようと様々な人がやって来る、と同時にこの山は遭難多発地帯でもあるのです。

視界不良による道迷い。下山時の転倒による骨折。などなど、特に大雪山は原始的な風景を残すために最低限の看板しか設けていないことから、悪天時にルートファインディングが出来なければ霧にまかれて道迷い遭難という事例がここ数年は以前にも増して多発しているのです。


転倒による骨折によりヘリでレスキューされる登山者。
(写真提供 旭岳ビジターセンター)

その対策として、先日関係機関(北海道・上川中部森林管理署・東川町・環境省)が集まり一番の遭難多発地点であり、以前から指摘されていた裏旭野営指定地~間宮岳にかけてのマーキング付け作業を行いました。
この周辺は視界の良い時には登山道も明確なのですが、濃霧時には本来の道を外れ全く違う方向へ行ってしまう登山者が多く見受けられる所。天候によって違う顔を見せる大雪山の恐ろしい所でもあります。



旭岳~間宮岳間の登山道の様子。左が晴天時、右が悪天時と同じ場所とは思えません。


過剰なマーキングを防ぐため、間隔や色なども関係者内で念入りに打ち合わせをした上での作業を行いました。

大雪山では既に季節は冬に向かっており、山からは初冠雪の便りが聞こえてきました。これからの時期は積雪により登山道が分からなくなることもあります。遭難→ビバーク用具がない→凍死にもつながる季節です。くれぐれも装備は万全にして登山を楽しんでもらいたいものです。

なお、今回の目印はあくまでも目安です。登山の基本は地図、コンパスを使った各自のルートファインディングが基本であることは言うまでもありません。自信のない方は視界不良時や悪天候が予想されるときは登山を控える。もちろん積雪が増えればマーキングも隠れてしまいます。

大雪山の標高の高い所では既に秋の山ではなくいよいよ冬山登山の時期です。

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2010年08月24日【日本のいのち、つないでいこう! COP10まで50日前】

大雪山国立公園 東川 宮崎 浩

---セイヨウオオマルハナバチ---

私の名前はセイヨウオオマルハナバチのマル子。ハチ目のミツバチ科で出身はヨーロッパです。1992年くらいから日本にやって来ました。何で外国育ちの私が日本に連れて来られたかというと、トマトの栽培の為に花の受粉をして欲しいという事で、私たちの出番となったみたいです。
それまで、温室トマトを実らせるためには、人の手で受粉を行うか、特殊な薬品を使って受粉なしに結実させる方法が取られていたみたいですが、人の手では大きな手間と時間がかかり、特殊な薬品ではトマトの味が落ちてしまうという欠点があったみたいです。そこで私たちを使うことで、これらの問題が解決され、少ない労力でおいしい温室トマトを作ることが可能になったのです。言ってみれば私たちは日本の農業にすごく貢献してきたと自分たちでも思っています。
でも、何故かここ5年くらい前から「セイヨウバスターズ」なる組織がいつの間にか出来て、私たちがいつの間にか悪者になって来てしまいました。どうやらトマトハウスから逃げ出した一部の仲間が問題になっているみたいです。2006年には「特定外来生物」言われるようになってしまいました。みんな悪気があって外に出てしまったのではなかったと思いますが、やっぱりハウスに隙間があれば外に出てしまうよね。
私たちは日本にいるハチの仲間よりも体が大きいから当たり前だけど到底私たちにはかなわないと思うし、中には日本のハチとも結婚して私たちとのハーフが生まれてきたりと少しづつ日本のハチたちが減ってきているみたいです。
それと盗蜜の問題。私たちは舌が短いから花に直接穴をあけて蜜だけをいただいてしまうこともあるので、花粉が運ばれずに生態系への影響が心配されているようです。

これはエゾオヤマリンドウに開けられた穴。ハチに詳しい人によると、これは日本に元々いるエゾオオマルハナバチのようだけど、私たちセイヨウかもしれないという事です。

最近はどこの町に行っても春先は網を持って私たちを捕まえるイベントが行われているみたい。ホントに仲間たちは戦々恐々です。
7月も終わると町には花も少なくなり、大雪山っていう高山植物がきれいな所に上がっていく仲間も最近はいるみたいです。かなり町からは離れている所なので、風のせいで連れて行かれたのか、引っ越しを繰り返しながら山の方に上がっていったのかは私には分かりませんが、そこでも「レンジャー」とか「パークボランティア」の腕章をした人たちが私たちを捕まえようとしているみたいで、私たちはどこに行っても追われる身になってきています。大雪山ではどうやらレンジャーの人がボランティアの人と一緒にここ数年前から捕獲作業を始めているようで、最近は参加するボランティアの人もかなり増えて来ているみたいです。


遠く離れた場所にいても腕章を付けた人の目が光ます。8月17日のボランティア行事だそうです。

その日の天気や気温、在来バチの数や種類なども調査しているようでした。

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 というようにセイヨウさん達にも色々言い分はあるかと思います。人間にとって、セイヨウオオマルハナバチは今や農作物栽培で受粉作業を軽減させるためにとても有益な仕事をしてくれています。悪いのはセイヨウオオマルハナバチではなく、安易に野外に放出させてしまった私たち人間です。いまセイヨウオオマルハナバチは北海道各地で生息域を広げて、在来のエゾオオマルハナバチなどと競合し、在来種の生息域を圧迫しつつあります。特に高山帯などのデリケートな生態系が維持されているところでは、生態系に与える影響が危惧されています。これを防ぐためにパークボランティア活動や北海道の組織した「セイヨウオオマルハナバチバスターズ」などの方々の協力により、各地で防除活動が進められています。
 なお、大雪山の稜線部などは国立公園特別保護地区に指定されていたり、特別天然記念物に指定されているため、例え特定外来生物といえども許可なくして採取(殺傷)することが禁じられています。もし、皆さんが大雪山の登山道でセイヨウオオマルハナバチなどの外来生物を見かけた際は、最寄りの環境省事務所またはビジターセンターなどの関係機関へお知らせ下さい。

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2010年07月21日裾合平ってハイキングコース?

大雪山国立公園 東川 宮崎 浩

 旭岳ロープウェイ姿見駅から旭岳裾合平往復コースは、初心者向けの登山コースとしてガイドブック等にも載っているためでしょうか、「初心者向け」という言葉からハイキング気分で気軽に来られる方を多く見かけます。確かに標高差もあまりなく、コースタイムも往復4~5時間と比較的初心者でも楽しめる登山コースです。ただこのコースは7月でも残雪も多く、非常にぬかるみなども多い場所ですので、やはり「登山」という意識が必要です。また、雪が無くなっても毎年道迷いにより遭難救助という事があるコースなので、くれぐれもしっかりとした装備でお越し下さい。

このような沢の部分は要注意です。間違えて沢を下りてしまい、遭難するケースが度々起こります。過去の遭難箇所には地元の遭難対策協議会などによりロープが張るなどの対策を施していますが、それでも遭難する方が毎年後を絶ちません。

これは先週になりますがパークボランティアで行ったロープ張りの風景です。雪渓歩行により夏道をショートカットして植物帯に入ってしまう登山者が多いこの時期は、毎年雪の上に仮のロープを張り本来の道への誘導をします。もちろんすべての雪渓箇所にロープがあるわけではありませんのでガスなどによる視界不良時には道迷いに十分注意が必要です。

 今年は昨年よりもさらに雪解けが遅く花の開花も遅れている裾合平ですが、ようやくここにきて花の時期が始まってきたという印象でした。なんといってもここは高山植物の花畑で有名な所。これから1~2週間先位までは登山者の目を楽しませてくれることでしょう。夏山シーズン真っ盛りの中、くれぐれも事故のないように登山を楽しんでください。

本日のベストポイント。旭岳の北斜面をバックに一面のエゾコザクラ群落が見事でした。ただ、ここの名物であるチングルマは若干速いかな?という印象でした。これからに期待ですね。

追記 7月15日(木)に裾合平でヒグマの目撃情報がありました。今の所目撃情報はその一回だけですが、いよいよヒグマが高山帯にやってくる季節となりましたので、山に入る際は熊対策をしっかりお忘れなく。

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2010年07月09日【日本のいのち、つないでいこう! COP10まで100日前】

大雪山国立公園 東川 宮崎 浩

ナキウサギの独り言

 僕の名前はナキウサギのナッキーナ、大雪山十勝岳のふもと「望岳台」って言う所に住んでいます。ホントは山の上のもっと涼しく人間たちがあまり来ない所に住みたいんだけど、ここは僕たちの隠れる岩場もたくさんあって、大好物のエゾイソツツジもいっぱいあって、すっかりここに根をおろしてしまった仲間もいっぱいいるみたい。

 毎年夏になると僕たちを一目見たいっていう人間たちがいっぱい来るんだけど、どうしたわけか去年くらいから人間を見かけなくなったなぁ。まぁ、人が来ないのは静かでいいやって思っていたら、友達が教えてくれた。どうやら僕たちが住んでいるところへの道が通れなくなっちゃったんだって。それでだれもここまで来なくなっていたみたいだ。それでもたまにやって来るのは、大きな望遠鏡みたいなカメラを担いだ人間たち。相変わらず僕たちの写真が撮りたいみたいだ。どっから入ってくるのだろうと思っていたら、どうやら昔の道だった所を無理矢理歩いてきてここまでやってきているみたいだ。そこは危ないし、花も踏んでしまうから入っちゃ駄目って看板もあるのに。
 そういえば、こういう人たちから食べ物をもらったっていう友達もいたなぁ。珍しい食べ物だから取りあえず食べてみようと思って一生懸命に食べている所を写真に撮られたみたいだ。でもその後友達はおなかを壊したらしく、やっぱり僕たちの食べ物はここにあるものが一番だよねって話をしたもんだ。

 みんなはちょっとした散歩気分でここに来るみたいだけど、僕たちはここで静かに暮らしていることも忘れないで欲しい。僕たちナキウサギだけでなく、ここには他の動物もいっぱいいるんだからね。まず、持ってきたものは必ず持ち帰る。お菓子の食べカスなんかもいい臭いがすればついうっかり食べてしまう奴らもいるかもしれない。おいしければその後に人間たちにおねだりしたりするようになってしまう。そうなったら僕たちは自分で食べ物を採らなくなるかもしれない。そして僕たちの貴重な食べ物にもなる植物の上も歩かないで欲しい。食べ物が無くなったら僕たちはここで生きていけなくなるから。もちろん写真を撮ってもいいけど、決められた道の上から撮ってね。何よりも僕たちを驚かせないようにして欲しい。そうすれば僕たちも安心してここで暮らすことが出来るんだから。



皆さんヨロシクね。

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2010年06月29日登山道は川である

大雪山国立公園 東川 宮崎 浩

「登山道は川である」という言葉を初めて聞いたのは6~7年前のこと。環境省が進めていった大雪山各地での近自然工法による登山道整備の作業に同行し、整備の手ほどきを受けた時のことである。植生に配慮した上で水をうまく登山道上で勢いを弱めながら流していくという「ステップアンドプール」の工法が大雪山で取り入れられたのがこの時からであった。

 あれから年月が経ち、さらに近自然工法での工事箇所が多くなったここ大雪、6月も下旬になると場所によっては冬の間にたまった積雪が、気温上昇とともに一気に解け始めて登山道の低い部分へと向かって流れていきます。そしてこの時期、まさに「登山道は川である」という言葉を実感します。これまでは土を削り、植物も流されてどんどん登山道がえぐれていってしまっていた箇所もこの工事によって道が掘れていくこともなくなりました。ただし、雪解けの時期や大雨の後等は非常に歩きにくくなることも確かです。下の写真をまずは見てみてください。


旭岳裾合平方面の登山道の様子です。水の深さはくるぶしくらいまであるのでまず防水性のない靴では歩けません。階段状に組んだ石で水を落とし(ステップ)水を一度溜めることにより(プール)、勢いを弱め、登山道の浸食を防ぐのです。

 確かに歩きにくいです。道をそれて植物の上を歩きたくなる方も多いと思いますが、やはりそうならないように防水性のしっかりした登山靴にスパッツをする。もしくは長靴で歩いて(私は長靴派)本来の道から外れないようにする。それによって植生は守られていきます。一人ひとりが意識することで山は守られていく事を認識することが大事ですね。

 
 6月27日(日)はパークボランティアによる旭岳周辺の保護ロープ張りの作業日でした。雪解けが遅い遅いといわれていたここ大雪もようやく夏山に入ってきた感じです。とはいえ、稜線上では雪が無くなってもお決まりの裾合平の大雪原はまだまだ続きそうです。視界が良くても夏道と積雪が入り混じっているこの時期は遭難多発時期ですので、この場所を熟知した方でなければおススメできない状態はまだしばらく続きそうです。旭岳方面では今シーズンに入って既に3件の遭難事故が発生しておりますのでくれぐれもご注意を。


旭岳山頂直下部分は視界不良時道迷いをしやすい箇所。ロープを張ることで登山道から外れないようにするために毎年ここはパークボランティアの方々が作業を行っています。

作業を終えて裾合平からロープウェイ駅に向かう途中のひとコマ。大雪原の上を白鳥の雪渓に向かって歩くパークボランティアの皆さん。10時間近い工程の中の作業、皆様本当にお疲れ様です。ご覧の通り、まだまだこの辺りは一面の大雪原でした。この辺りが花畑になるのは8月に入ってからでしょうか?

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2010年06月04日まだまだ山は冬

大雪山国立公園 東川 宮崎 浩

雪解け状況などの確認の為に、今季初めての旭岳に行ってきました。雪解け時期は道標などの倒壊などがないか、また特に急斜面では登山道の崩壊などは見られないか?これから山開きに向けて一般登山者の安全確保の為にも、この時期の現地調査というものは我々の重要な任務と言えます。連年にない積雪に見舞われたここ旭岳、6月だというのにこの残雪状態を見る限りはまだ5月中旬の春スキーの季節ではないかと思わせるほどの状態でした。
ここ旭岳の山開きは6月19日ですが、もちろんそれ以前に登ってはいけないという事ではありません。毎年のことですが、雪解け時期である6月は残雪による道迷いが頻繁に発生する時期ですので、くれぐれも気を付けて山に入るようにしてもらいたいものです。


旭岳山頂までの登山道ではまだ大きな雪渓が3カ所ほど。写真は7合目付近の雪渓。気温の低い早朝などは夏靴では非常に危険な状態と思われました。

この日は、旭岳山頂から夏山ではおなじみの裾合平一周コースを歩きましたが、当然のことながら8月まで雪の残る裾合平は一面の積雪状態で夏道は全く出ていない状態。山開き後もこの状態では積雪が多く、非常に歩きにくい状態が7月まで続であろうと思われました。


裾合平名物のお馴染白鳥の雪渓はまだまだ先。頭の部分だけ出来上がってきていました。赤丸部分、分かりますか?

旭岳の隣に夏の時期は登山道がなく行けない「熊ヶ岳」という山があります。まさにこの時期は斜面に熊が出没します。雪渓ではありませんが、中央の雪解け部分、熊の形に見えませんか?

もう何十回と歩いたであろうこの旭岳裾合平コースも、この残雪期は非常に苦労することが多いルートです。本日は視界も良かったため特に道迷いにつながることはありませんでしたが、雪解けの遅れている今季に夏山計画を立てている方は雪解け情報等を最寄りのビジターセンターなどで収集してから山に入ることをお勧めします。

追記、本日一番気になったこと。
冬の間、もしくは5月の春山シーズンには大雪山の秘湯「中岳温泉」で夜を明かすという方がかなりいるようです。温泉周辺にはかなりの数の排便の跡やティッシュが散乱していました。雪の下に埋めてしまえばその場では見えなくなりますが、雪解け後にはもちろん・・・、どうなるか分かりますよね。
大雪山国立公園内では野営指定地以外での宿泊は禁止されています。雪見の秘湯は楽しいものですが、くれぐれもマナーだけは守って山に入るようにしてもらいたいものです。

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2010年05月20日旭岳にも春の足音

大雪山国立公園 東川 宮崎 浩

異常なほどの低温続きであった4、5月のここ大雪でしたが、ここに来てようやく気温も上がり雪解けが進んできたようです。山関係者に会えば必ず言われる言葉が「今年は雪多いね」、これが定番の挨拶となっているようです。

 本日は昨年度、環境省北海道地方環境事務所にて行った大雪山国立公園勇駒別園地整備事業の木道の雪解け状況の確認に行ってきました。新たに設置した木道箇所は旭岳ロープウェイ山麓(旭岳温泉)駅のすぐ裏手。春を告げるこれからの時期にミズバショウやエゾノリュウキンカ(ヤチブキ)が咲き乱れる旭岳の春の風物詩といわれている箇所。これまでは遠目でしか見られなかった湿原の花々が今年からは足元で見られるようになりました。
あちらこちらで開花情報は伝えられているようですが、ここでも改めて写真を載せます。というのは、ここの花々は本当に見事だからです。ミズバショウの群落は一般的だと思いますが、エゾノリュウキンカがこれだけ群落で見られる箇所というのはなかなかないと思われ、この日も大きなカメラをお持ちになった写真愛好家の方々を目にしました。


こちらが新たに設置された木道。雪解けの進んだ場所ではエゾノリュウキンカが見頃になって来ました。

 ただ今年は残雪が非常に多く、散策には危険な箇所もあったため、本日は雪割り作業を行いました。


作業時の風景。入口付近はまだまだ1m近い積雪がありました。旭岳ビジターセンター職員さんや地元ガイドさんもボランティアで汗だくになりながら雪割り作業に加わっていただき本当に有難うございました。

このような感じで何とか道の確保が出来ました。後は雪解けが進むのを待つばかりです。

 昨年度に着工した部分は全工事箇所の一部ですが、今年度未着工箇所の工事が始まる予定です。
 この旭岳のエゾノリュウキンカ群落、雪解けの遅い箇所では6月中旬まで見ることが出来ます。ここ旭岳にもようやく遅い春がやってきたという今日一日でした。

注)散策される方へ。
木道脇の残雪はこの時期、気温の高い日は一日20cm以上雪解けが進みます。踏みぬき易いなど、危険な箇所もありますので、木道脇の雪の上を歩かないように、必ず木道部分を歩くようにお願いします。

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2010年05月18日今年度もパークボランティア活動が始まりました

大雪山国立公園 東川 宮崎 浩

行楽日和となった5月2週目の週末、恒例の大雪山国立公園パークボランティア連絡会の総会が十勝岳温泉にて開催されました。
今年度の会員数は109名とパークボランティア組織としては実はここ大雪山地区が全国で一番会員数が多い地区なのです。今年度も登山道の清掃、ロープ張り、またここ近年問題となっている外来植生物の防除活動等を行っていきます。

 第一日目は、昨年度の活動実績の報告並びに今年度の活動計画等と併せて、4月より東川自然保護官事務所に着任した佐藤一交パークレンジャーから、前任地である磐梯朝日国立公園の自然や山岳関係者による取り組み事例の講義が行われ、ここ大雪とはまた一味違う自然やその保全活動に皆さん関心を寄せているようでした。

講義風景(飯豊連峰での事例紹介)

二日目は春山研修が行われ、4班に分かれてそれぞれ十勝岳周辺の登山コースにて春山登山となりました。春山といっても今年はまだまだ積雪十分、私が参加した三段山コース(白銀荘ルート)も夏道は全く出ておらず、まだまだ今年は春スキーが楽しめそうでした。
本日はほぼ無風状態で日差しもあり山頂付近でも寒さを感じることはあまりありませんでした。また、我々が登頂した11時頃には雪も緩んでいてアイゼンなどの必要はありませんでしたが、まだまだ気温の低い日もあるので冬山装備の必要性があると思われます。

本日三段山コース参加者は計13名、無事全員登頂しました。三段山山頂(標高1748m)にて。


下山時の様子。何といっても春山の魅力はこれですかね、腐れ雪となっている所もありましたが、皆さんさすがです。
 雪質は、ピークから二段目付近(標高約1400m)までは板も走りちょうどよいザラメ状態でしたが、やはりこの時期はその下は「ビタ止まり」状態。気温上昇とともに雪が重くなり、板が走らずブレーキがかかり若干苦労しました。が、まだまだ標高の高い所では十分楽しめそうですね。

 というわけで、二日間延べ75名の参加者の皆さん、春の総会および春山研修お疲れ様でした。いよいよこれから本格的な活動が始まりますが、今年度も改めてよろしくお願いします。


 ※春スキーをされる方へ
積雪がまだ多いとはいえ、かなりハイマツなどの植物が出てきています。くれぐれも歩行や滑走によって植物を傷つけないように春スキーを楽しんでください。もちろん時間に余裕を持って、防寒・雪崩対策もしっかりお願いします。

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2010年03月17日「森の長寿を訪ねよう」自然観察会

大雪山国立公園 東川 宮崎 浩

 3月に入り各地からは春の訪れが聞かれる時期となってきました。ここ東川もサラサラ雪から湿った雪が降る日が多くなり、町内の田んぼには融雪剤をまく農家さんの姿が目立ちます。いよいよ北海道にも春の気配が感じられる時期となってきたようです。とはいえ、山の方は真冬の寒さ。町中の道路脇の雪は少なくなっても車で標高を上げていくと雪壁が高くなっていき辺り一面は銀世界。真冬のようなサラサラ雪に出会えることはなかなか出来なくなりましたが、この景色を見ていると大雪山の春はまだまだ先のような気がします。

町内の雪はかなりとけて田んぼのあぜ道が見えてきましたが、山の方は真っ白。東川町内から十勝岳連峰 (3月11日撮影)。

 全国的に大荒れの天気をもたらした先週末の低気圧通過から一夜明けた3月14日の日曜日、東川在住の自然ガイド塩谷秀和講師を迎えての自然観察会が天人峡くるみの沢方面にて実施されました。毎年恒例で行われている塩谷先生による3月の観察会、今回も参加希望者が殺到したようで塩谷ファンが多いのは相変わらずのようです。参加出来なかった方、すいませんでした。

 前日は気温が上がり雨となり心配していましたが、観察会当日は・・・降ってくれました、サラサラ雪・・・。低気圧の通過後で時折強い風の残る一日でしたが、風がさえぎられる森の中では快適そのもの。たまに木の枝から舞って新雪が何とも芸術的でした。やはりこのような日は森の中に限ります。
 
 「森の長寿を訪ねよう」と題して行われた今回の観察講座。塩谷先生お気に入りの巨木スポットへ案内していただいたり、ネイチャーガイドのパイオニアならではの野外での遊び方を教えていただいたりと参加者の皆さん御満悦の様子でした。


塩谷先生恒例、木のブランコで遊ぶ。

雪の上から・・・ジャーンプ!

 まだまだ寒いここ大雪の山ですが、季節は確実に春に向かっており雪解けのシーズンを迎えて来ています。これからは特に雪崩事故が多発する時期でもあります。スノーシューで歩く方、または山スキーで山に入る方、くれぐれも安全対策を怠りなく。

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