ACTIVE RANGER

アクティブ・レンジャー日記 [北海道地区]

北海道地方環境事務所のアクティブ・レンジャーが、活動の様子をお伝えします。

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大雪山国立公園

146件の記事があります。

2018年02月21日アクティブレンジャー写真展2017終わりました

大雪山国立公園 東川 渡邉 あゆみ

去年の6月から12会場を駆け抜けたアクティブレンジャー写真展2017が終了しました。

ご来場頂いた皆さん、どうもありがとうございました。

お気に入りの場所の写真はありましたか?

行ってみたい、見てみたいと思った写真はありましたか?

自然環境保護の関心と国立公園のPR、アクティブレンジャーの仕事を広く知ってもらうために今年からはじまった写真展。

各会場で工夫をしながら見やすく、伝わりやすい展示を心がけました。


【札幌チカホ写真展の様子。アクティブレンジャーが写真の解説をしました。】

ところが・・・先日行ったアクティブレンジャー会議(アクティブレンジャーが毎年に1~2回集結し、業務について情報交換や意見交換を行っています。)では、写真展の反省も多く出されました。会場の大きさや光の加減で写真や解説が見にくかったことや、来場者アンケートの結果を見るとアクティブレンジャー自体どういった仕事をしているのか今回の写真展では伝えきれていないように思われました。

なので、来年度は解説の方法を変えたり、展示写真をよりアクティブレンジャーの仕事を知ってもらうことをメインとしたものにしようと、みんなでアイディアを出し合い、春に向けて「アクティブレンジャー写真展2018」が始動しました。


【アクティブレンジャー集合 上川町ニセイチャロマップにて。】

私たちには守りたいものがあります。

好きなもの、得意分野はそれぞれですが、私たちは自然や野生動植物から多くのことを学びました。

心が揺さぶられる素晴らしい場面や景色に出会い感動し、畏怖の念を抱き、その環境で暮らす動植物を尊敬し愛おしむ気持ちが芽生えました。

自然界と動植物がバランスを取りながら長い間続いてきた営みは、犯しがたい崇高なサイクルとして私たちの目に映り、このまま次の世代に引き継がなければならない、といつしか自然と思い願うようになりました。

大切なものを与え教えてくれたそれらを守るために、取り組んでいる私たちを知ってもらう次の写真展は6月からスタートです。

厳冬から春へ、季節は変わっていきます。

今頃、ヒグマの赤ちゃんは巣穴で生まれているのでしょう。子グマがはじめて巣穴から出たときのことを想像します・・・まぶしくて、色々なにおいを嗅いでワクワクし、雪の冷たさに驚くのでしょう。その後ろには大きく、強くて優しい母グマが見守っているのでしょう。

ヒグマが暮らしていける北海道の豊かな大自然があること、それを実感を持って想像出来ること。私にとってのそれらは何よりも価値が高く、豊かで、かけがえのない宝物です。

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2017年12月18日パークボランティア30周年にむけて

大雪山国立公園 渡邉 あゆみ

大雪山国立公園パークボランティア連絡会は来年度、創立30周年を迎えます。

記念すべき年を迎えるため、何をしよう?とこの数年、役員会で議論を続けてきた結果、

20周年で発行した「パークボランティアのための大雪山自然解説マニュアル」を再編集し、改訂版を発行しよう!」ということになりました。

このマニュアルは、大雪山でパークボランティアが活動するための必要な知識・・・大雪山の地質・気象・動植物・由来・国立公園の仕組みなど全120ページ!新規会員が入会するときはこれを配布し、研修会を行っています。

たくさんのガイドブックや本が出版される中、大雪山に関してここまで多くの分野を網羅した本は他にはないでしょう。しかも驚くのが、このページのほとんどが、パークボランティア自身によって執筆されたものです。愛ですね~。

私も、ときどき開いて勉強させてもらっています。


改訂版の発行も費用はかかりますが、パークボランティア会長が昨年度「一般社団法人セブンイレブン記念財団」の助成基金に応募し、見事当選!出版にかかる費用を得ることが出来ました。(その他、市町村からの助成金の積み立てもあります。)

改訂版は必要な目次を増やし、動植物の解説をよりわかり易く・使い易くし、ページを約30ページ増量して発行予定です。

次の春の完成を目指すべくパークボランティアが中心となり、これまで5回の編集会議を開き、各担当が原稿を持ち寄り、作業をしています。

基本的にこのマニュアルはパークボランティアのためのものですが、ビジターセンター等パークボランティアが活動する場所にも置かせてもらう予定ですので、会員外の方にも見てもらえる機会があると思います。

大雪山マニアが作った、大雪山マニアのための本。見つけたときは、是非手にとって開いてみてください。

春に改訂版のマニュアルを開く日を楽しみにしています。

編集委員の皆さん、完成まで頑張ってください。

アクティブレンジャー写真展2017をモンベル大雪ひがしかわ店で開催中です♪

行かれた際は是非、アンケートに御記入を頂き、記念ポストカードをお持ち帰りください。

1225()まで行っています。たくさんの御来場、お待ちしています。

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2017年11月09日沼めぐりフォーラム

大雪山国立公園 岩城大洋

 

 みなさま、こんにちは、上川自然保護官事務所の岩城です。今回は10月24日に上川町役場大会議室で行われました大雪高原温泉沼めぐりコースのフォーラムの様子についてお伝えします。

                  ↑上川町長開会の挨拶の様子

当日は、まず、環境省上川自然保護官事務所首席保護官より、沼めぐりコースの歴史が次のように紹介されました。「沼めぐりコースは国策パルプ(後に日本製紙と合併)により、昭和36年に歩道が整備されました。昭和56年に巡視員等がヒグマに追われる事件が発生、そのためコースは2年間閉鎖されました。

昭和58年に上川支庁と上川町の協力のもと巡視員を配置することとなり、再び沼めぐりコースは開放されました。平成6年にはヒグマ情報センターが開館し、その後、登山者は事前にレクチャーを

受講してから入山する今の体制ができました。」

                    ↑沼めぐりコースの概要

また年々利用者が減っていることを踏まえ「沼めぐりコースには、野生のヒグマを遠望できるなど、ここにしかない特色もあり、その他にもいかに魅力を発掘し向上させていくか、そのために必要な安全対策の検討も重要」との話がありました。

                ↑上川自然保護官事務所からの発表の様子

その後、知床財団から、知床五湖の管理運営の事例が紹介されました。現在のように利用調整地区に指定されるまでの経緯が紹介され、「利用調整地区に指定されるまでは紆余曲折があった。利用者数を制限することによって、観光客が減少してしまうとの心配もありましたが、現状では、観光客数は指定以前と変わりなく推移している」、またヒグマの活動期(5/10~7/31)には、「知床五湖を周回できるコースに入場するためには、必ずガイド付きのツアーに申し込む必要がある」ことなどが紹介されました。

                 ↑知床財団からの発表の様子

※知床五湖の利用調整地区の詳細は下記のアドレスよりご覧になれます。

<www.goko.go.jp/rule.html>

最後に参加者が4班に分かれ、沼めぐりの魅力向上や安全対策について参加者間で意見交換が行われました。参加者からは、魅力の向上では、紅葉以外の魅力を、例えば新緑の緑、沼の青さ、また残雪の白さなど、多様な沼めぐりの自然をいかにして発信していくかが大事だとの意見や、大雪では知床と違って人慣れしたヒグマが極めって少なく、それをアピールできることも大雪の強みであるとの意見もありました。

短い時間で十分な意見交換はできなかったので今後引き続き沼めぐりコースの将来について考えるためにもっと議論が必要と感じました。また、皆さんが沼めぐりコースを大事に思い、今後も魅力あふれる大雪山国立公園にとって重要な場所で有り続けてほしいと願っていることも肌で感じ取ることができました。

参加していただきました皆様、本当にありがとうございました。

最後に今年の9月22日に撮影しました緑沼の紅葉の写真をUPします。

今回の日記はここまで。

また次回をお楽しみに。。。

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2017年09月13日黒岳クリーンアップ大作戦

大雪山国立公園 岩城大洋

 みなさま、こんにちは。上川自然保護官事務所の岩城です。

今回の記事は8月18日に親子参加型イベント「黒岳クリーンアップ大作戦」

(主催:上川自然保護官事務所、上川中部森林管理署)の様子を、実施から少し時間が

経過してしまいましたが、お伝えします。

            

 

 黒岳クリーンアップ大作戦は、大雪山周辺の子どもたちに、黒岳旧野営指定地の

清掃活動や高山植物の自然観察を体験することにより、大雪山国立公園と森林生態系の

保護への関心を高めてもらうことを目的に行いました。

当日は3組の親子トータル8名の参加を頂きました。

 

黒岳ロープウェイに乗り込むまでは曇り空だったのですが、黒岳5合目まであがって

きたところからあいにくの雨模様。降り方はどんどん強まり黒岳リフトに乗る前に

雨合羽を着ることになりました。

   

 

リフトに乗り7合目へと向かいましたが、7合目リフト乗降場に到着した時点でも

雨脚は弱まる気配がなく、黒岳山頂へ登ることは難しい状況でした。

  

     

そこで予定を変更して、黒岳7合目登山口から少し登り、歩きやすい登山道を維持

する仕事や、登山道の利用者数を調査するカウンターのことなどを、子どもたちに

解説しました。

 

   

 

子どもたちは登山道が多くの人たちによって守られていることを知り、真剣な眼差しで

話に聞き入っていました。

雨の状況に変化がなかったので、残念ながら早めに下山することに。

山麓駅まで戻る道中では高山植物の花々の香りを楽しむこともできました。

 

  

 

下りのロープウェイに乗車する前に、本当は山頂での記念撮影のために

作成したラミネートを5合目で子どもたちひとりひとりに持ってもらい、

集合写真を撮ることに。

カメラを向けると、みんなのいい表情をしてくれました。

 

 

その後、層雲峡ビジターセンターに行き、職員の方から、大雪山や層雲峡が現在の姿に

なるまでの形成過程などをレクチャーしていただきました。

特に子どもたちが興味を示したのは、野生動物の話について。

実際に展示されている剥製を使っての解説は子どもたちにとっては、興味津々だったようです。

 

    

 

レクチャー後は、昼食をみんなで食べ、最後に参加者全員に記念バッチが贈られ

今回のイベントは終了しました。

 

  

今回、黒岳旧野営指定地での清掃活動を行えなかったことは心名残ではありますが、

環境省自然保護官(レンジャー)や林野庁森林官(フォレスター)の仕事の様子を

子どもたちに伝えることができたのは良かったです。

今回はここまで。

また次回をお楽しみに。。

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2017年06月22日旭岳、山開きです。

大雪山国立公園 渡邉 あゆみ

 いよいよ、大雪山でも山開きとなりました。

 今年は例年よりも雪が多いと言われている表大雪。

 618()、安全に旭岳で登山をするため旭岳~中岳のロープ張りやゴミ拾い、薄くなった標識のペンキの塗り直し、雪のカッティングをパークボランティアと総勢14名で行いました。

 当日は快晴微風の整備日和。

 旭岳の山頂に至るには左手に地獄谷の荒々しい噴火口、右手には原生林の樹海と残雪の十勝岳連峰を見ながら上を目指します。

 パークボランティアの皆さんや私にとっては馴染みある道や風景やお花たち。それは何度登っても飽きることはなく、登るたびに自分自身の心の中にある大雪山と、実際に目の前に広がる大雪山とを山座同定することで、大雪山から安らぎや力をもらっているのだと思います。

 いつもは咲いているイワウメが今年はまだ固いツボミでした。「今年はお花の開花が遅いね」「イワウメ見たかった~」など言いながらも、お楽しみが先になったことも嬉しく、毎年少しずつ違う雪形やお花の開花など山の醍醐味を存分に感じながら、ナイスチームワークで整備が出来ました。

 今回、整備に参加してくださったパークボランティアの皆さん、お疲れさまでした。

 山男、山女の皆さんに元気に引張っていって頂けたこと、とても励みになりました。

 高山蝶パトロール、植生復元モニタリング、外来種駆除など、今シーズンもパークボランティア活動、目白押しです。パークボランティア活動はFacebookでも随時更新しています。是非、「いいね!」お願いします。

https://www.facebook.com/%E5%A4%A7%E9%9B%AA%E5%B1%B1%E5%9B%BD%E7%AB%8B%E5%85%AC%E5%9C%92%E3%83%91%E3%83%BC%E3%82%AF%E3%83%9C%E3%83%A9%E3%83%B3%E3%83%86%E3%82%A3%E3%82%A2%E9%80%A3%E7%B5%A1%E4%BC%9A-210276582645252/

 

*裾合平の残雪*

 裾合平は例年7月中旬まで目印もほとんどない平らな雪原が広がり、ガスがかかると道がわからなくなります。地図とコンパス、GPSでのナビゲーションが出来る方でないと、複雑な地形で迷いやすく、とても危険です。ナビゲーションすることに自信がない方は7月中旬の木道が出るまでは待ちましょう。そのときはチングルマの大きなお花畑が広がっています。

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2017年06月02日層雲峡クリーンデー

大雪山国立公園 大久保 智子

こんにちは。

上川自然保護官事務所の大久保です。

5月31日に、今年も層雲峡町内会の方々と大雪山国立公園パークボランティア、上川自然保護官事務所で、お客様を迎えるために層雲峡地区のゴミ拾い活動を行ってきました。

 

 

層雲峡を綺麗にするぞと気合いをいれてくれた20名のパークボランティアさんも参加し、層雲峡の各ホテル、商店街、清掃員など総勢50名ほどで温泉街に散らばってゴミを拾いました。

 

ゴミがなくなるといいのですが、残念ながらまだまだありました。

回収したゴミの量は

燃やせるゴミ(主に吸い殻や食品の容器など):23kg

燃やせないゴミ(傘など):40.3kg

缶・瓶類:3.5kg

でした。

 

 

綺麗になった層雲峡温泉街は、エゾハルゼミが賑やかで、新緑がまぶしい季節なので、明るい峡谷を楽しめると思います。是非お越しください。

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2017年05月25日アクティブ・レンジャー写真展 開催のお知らせ!

大雪山国立公園 渡邉 あゆみ

環境省 北海道地方環境事務所には12名のアクティブ・レンジャー、希少種保護増殖等専門官が在職しています。


山・海・森・川・動植物、自然を愛する私たちは、美しく希少な北海道の自然環境を大切に活用し、そしてその自然を次世代へ繋いでいくため、国立公園や日本有数の渡り鳥の渡来地である鳥獣保護区の維持管理や現地調査、動植物との共存方法を考えながら保護・増殖をしたり、地域の関係者と現地で汗を流しながら、日々様々な業務に励んでいます。

そんな私たちの活動を知ってもらい、北海道の自然の素晴らしさを伝え、自然環境保護への理解を深めてもらうため、今年度「アクティブ・レンジャー写真展」を開催することとなりました!


写真は、私たちが業務中に撮影したもので、各地域の特性・魅力が伝わりやすい作品になっています。

写真の他、アクティブ・レンジャー紹介パネルや撮影地パネル等も展示します。

道内各地で展示をしますので、スケジュールをご覧になって頂き、お近くの方は是非ご来場ください。

また、会場にはアンケートを設置します。写真展の感想など、アンケートに回答してくださった方には記念ポストカードをお渡ししますので、是非アンケート記入のご協力をよろしくお願いします。

アクティブ・レンジャー写真展はいよいよ6月1日(木)サロベツ湿原センターからスタート!

是非、私たちの写真展にご来場頂き、北海道の雄大な自然・動植物の魅力を見に来てください。また、アクティブ・レンジャーの活動を知ってもらえたら嬉しいです。

【北海道アクティブ・レンジャー写真展のお知らせ】

http://hokkaido.env.go.jp/to_2017/29.html

先日、パークボランティアの皆さんと春山研修のため、スキーで三段山に登りました。

ピークから見た十勝岳連峰は、春山から夏山へと季節が大急ぎで移っていくのを感じました。

稜線の向こう側では鈴なりのツボミが待ち受けていること、響き渡るウグイスの鳴き声、雪解け水の音...ただ季節が巡ることがどうしてこんなにも心を温めてくれるのでしょう。まばゆい白銀の山に後ろ髪を引かれつつも、生き物の息づかいがする緑色の山や靴の底から伝わる土の感触も愛おしく、いつの季節も何度でもこの景色に励まされ、自分にとっての楽園はここであると、山からまた生きる糧をもらいました。


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2017年01月27日厳寒の青空のもとで

大雪山国立公園 岩城大洋

   みなさま、こんにちは。上川自然保護官事務所の岩城です。

  年が明けてから、上川地方では晴れた日が多く、放射冷却の影響で朝晩と凍てつく日が続いていますが、

  みなさまはいかがお過ごしでしょうか。

  今回は1月22日に行いましたスノーモビル乗り入れ規制地区での合同パトロールの様子をお伝えしま 

  す。

  大雪山国立公園には、貴重な自然があり、そこには希少な動植物が生息・生育しています。

  特別保護地域及び十勝川源流部原生自然環境保全地域では動植物に悪影響や深刻なダメージを

  与えないために、スノーモビルの乗り入れを規制しています。

  そのことを周知するために、毎年、合同パトロールを実施しているところです。

   パトロールは北見峠とペーパン21世紀の森の2箇所で実施し、私は北見峠に行ってきました。

   この日は朝から澄みきった青空で、北見峠に到着した時点で気温は-17度でした。

   車から降りるとみるみるうちに手足がかじかんできましたが、それを忘れてしまうくらいに綺麗な

   青色のもと、のぼりを設置して、パトロールを開始しました。

   我々の気合いが遠くまで伝わったのか、この日はスノーモビルをけん引する自動車や、

   けん引トラックの姿はなく、北見峠周辺をパトロールした結果、スノーモビルの走行の痕跡なども

   ありませんでした。

 

   林野庁及び地元警察による日頃からの巡視の効果が現れ、北見峠からの乗り入れは、確実に減少してい 

   る傾向となっています。

     ※レジャーでスノーモビルを楽しむときは、上記の地図に示している規制地区内には絶対に

      進入しないでください。国有林・道有林も進入はできません。

   まだまだ寒い日が続きますが、次回は層雲峡氷瀑まつりの様子をお伝えしたいと思っています。

   ではまた次回をお楽しみに・・・。

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2016年12月26日100年後も守り続けていくために

大雪山国立公園 渡邉 あゆみ

皆さん、原始が原湿原をご存知ですか?

原始が原湿原は大雪山国立公園の最南端に位置している1000ha(東京ドーム210個分)の広大な湿原です。

湿原には木道が敷いてある、もしくは展望台から眺める等が一般的ですが、原始ヶ原には木道や展望台、明瞭な登山道さえなく、湿原の好きな場所を歩ける日本の国立公園では大変珍しい場所です。今までそれが出来ていたのは、原始ヶ原の入山者が少なく踏圧によるインパクトが最小限で済んでいたからですが、最近その湿原も裸地化・複線化が進み、何らかの対策が必要だと地元や環境省で考えはじめ、調査や植生復元を始動しました。

そんな原始ヶ原について考えるため12月4日(日)、シンポジウムを富良野市で開催しました。

シンポジウムのプログラム①の特別講演は、株式会社モンベル代表取締役会長兼CEOの辰野勇氏から「地域活性を考えるアウトドアスポーツ7つのミッション」というタイトルでモンベル社が取り組んでいる事業の紹介をして頂きました。

7つのミッションには、青少年や子供への野外活動プログラムや、自然災害への対応、エコツーリズムによる地域経済の活性などがあるのですが、ご紹介頂いた様々な事業の中で特に印象的だったことは、冒険を応援する「チャレンジアワード」や「チャレンジ支援プログラム」事業でした。オモシロイのが、成功したものに対して賞を出すのではなく、チャレンジしている現在進行形のものに対して賞(軍資金)を贈っているのだそうで、何もないものを1から創り上げていくにはエネルギーやリスクが要るけれど、それを冒した先にある達成感や満足感を味わうことが人間にはとても大切だと辰野会長は考えており、大小様々な冒険の応援をしているのだそうです。

次に自然災害への対応です。1995年に起こった阪神大震災のとき、まだ大企業ではなかったモンベル社は全国各地のアウトドア協会等の支援を得て「アウトドア義援隊」を立ち上げ、テントや寝袋等の救援物資を寄付したそうです。それは2011年東日本大震災でも再発足し支援活動を行いました。大津波の被害で、遺体の収容に大変な時間がかかったと捜索隊から聞いた辰野会長は被災地から本社に戻ってすぐに、失神しても気道が確保できる枕や救助を求めるための笛が付属しているライフジャケット「浮くっしょん」を製作したそうです。「大きな津波が来たとき、浮くっしょんで命は助けられないかもしれないけど、沈むことはないから遺体の収容は早くできる」という現地の痛切なる声を聞いたからこそ開発できた活きた商品だと思いました。

辰野会長の柔軟なアイディアや若々しいエネルギー、フットワークの軽さは、自然から多くことを学び実体験を重ねた知恵と経験からみなぎってくるものなのでしょう。バイタリティーに溢れた貴重なお話を聞くことが出来、大変光栄でした。また大らかなお人柄もとても素敵でした。

プログラム②は、富良野市役所と原始ヶ原のルート調査や整備を行った北海道山岳整備岡崎哲三氏から原始ヶ原コースの紹介や、市民登山会で行ったヤシネットによる植生復元活動、原始ヶ原の重要性についての報告がありました。

そして最後のプログラム③は原始が原に関わる行政や山岳会等7名+辰野会長による「原始ヶ原の利用と保全の在り方」についてのパネルディスカッション。

貴重な原始ヶ原を色んな人に知ってもらいたいが、来る人が増えれば湿原は痛んでしまう。それを今後どうしていくのか。

「人を入れる前に保全の重要性を認知してもらうことが必要」、「ガイド付きで利用を制限しつつ、保全の重要性や原始性の楽しさ・素晴らしさを知ってもらう」...等、辰野会長からは海外のいくつかの入山制限の事例をご紹介頂き、白熱した議論となりました。

人を受け入れるにしても、ただ単に重要性を唱えても登山者に響くことは少ないでしょう。登山者の質を求めるのにしても、それは受け入れる側の体制作り、伝え方の工夫、発信の仕方等にもかかっているのだと思いました。

私の中に思い浮かぶ原始ヶ原・・・

若草色の湿原が一面に広がり、人工物は何もなく、正面には「独立峰」と化した富良野岳が大きく聳えています。ワタスゲがポンポン綿毛をつけ、足元をよく見るとトキソウやヒメシャクナゲが咲いています。エゾマツ林からはカッコウの声が聞こえ、時に湿原のぬかるみにはまりながら歩きます。派手さや飾り気はないですが、まさに原始的で素朴な印象です。私にとってはこれが原始ヶ原の当たり前の風景でしたが、もしかするとこれからは当たり前じゃなくなるかも知れない・・・。

100年後も、その先も、この湿原を歩く人たちがどうかこの素朴で原始な自然に出会えていますように。

良いお年をお迎えください。

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2016年11月24日今、富良野・原始ヶ原がアツイ

大雪山国立公園 渡邉 あゆみ

こんにちは、東川の渡邉です。

今年はいつになく早い冬の訪れとなりました。

東川町も11月と思えない軽い雪が舞い、自然から冬山へのいざないを受けているかのようです。

これから半年間、モノクロの世界となる大雪山、十勝岳連峰。

アイゼンをきしませ雪稜を一歩ずつ確かに登っていく、吐く息は凍りフェイスマスクも段々固くなっていくー。

困難と知りつつも無限に湧いてくる山への情熱。それは岳人を引きつける冬山の力なのでしょう。

また今年も白い頂きの旅へー。

【富良野岳へ】

さて、今年から8月11日が新たに「山の日」として国民の祝日に加わりました。

これを記念して、富良野市において12月4日(日)にシンポジウムを開催することとなりました。

急なご案内となりますが、モンベル辰野会長のご講演や、今年山の日に原始ヶ原湿原で植生復元のために設置したヤシネットの報告、原始ヶ原の今後についてのパネルディスカッションなど、原始ヶ原にスポットを当てた一日となります。

皆様のご来場、是非お待ちしております!!!

山の日制定記念シンポジウム 富良野で国立公園を考える

~世界に通用するナショナルパーク・大雪山の隠れた魅力「原始ヶ原」の保全と利用について~

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