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アクティブ・レンジャー日記 [北海道地区]

北海道地方環境事務所のアクティブ・レンジャーが、活動の様子をお伝えします。

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利尻礼文サロベツ国立公園 稚内

268件の記事があります。

2012年08月01日雲海!?

利尻礼文サロベツ国立公園 稚内 中野 雄介

 7月26日、空にはやや雲がかかっていたものの、前日降っていた雨は上がり、風もほとんどない穏やかな朝でした。この日は朝から礼文岳登山道の巡視を行う予定になっており、環境省の事務室がある香深(かふか)地区を出て、登山口のある内路(ないろ)地区へ向かいました。前日は雨が降ってやや肌寒いぐらいだったので、長そでシャツを2枚着て、さらに防寒着まで用意して万全の装備で出発したのですが、北へ向かうにつれて徐々に雲が晴れていき、登山口に着くころには雲一つない快晴になっていました。


快晴の登山道(7/26)

  今年一番ではないかと思われる暑さの中、山頂までたどり着くと不思議な光景が待っていました。礼文岳は礼文島の最高峰であることに加えて、山頂付近は森林限界より標高が高く、天気が良ければ、礼文島全域に加えて、お隣の利尻島や遠く稚内やサハリンまで望むことができるのですが、この日は山頂付近こそ快晴で太陽が照りつけていたものの、眼下を見渡すと島の大部分は濃い霧に覆われていました。礼文岳山頂の標高は490mですが、眼下に雲海のごとく霧が広がるその光景はさながら2000m級の高山のようでした。しかし、その一方で霧がかかっていないわずかな方向に視線を移すとそこには集落や海が近くに見えており、高山と低地が同居しているような不思議な感覚にとらわれました。どうやらこの日は礼文岳など一部の地域を除き、礼文島の近海も含めて濃い霧に覆われていたらしく、利尻山に登っていた職員から聞いたところによると利尻からはやはり礼文岳の山頂だけが見えていたそうです。


山頂より眼下に広がる濃霧。まるで雲海のようです(7/26)

 500mに満たない標高でありながら、高山の様相を見せる礼文岳。しかし、山の上だけ晴れていて眼下には霧が広がり、雲海のように見えるこの日のような光景には今まで遭遇したことがありませんでした。ひょっとすると気温や風などのコンディションがそろった時にまれに起こる現象なのかもしれません。そういった意味では今までにない経験ができてちょっと得した気分になりました。


利尻山が頭だけのぞかせていました(7/26)

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2012年06月20日霧の6月

利尻礼文サロベツ国立公園 稚内 中野 雄介

 6月の礼文島の風物詩と言えば、島を代表する花レブンアツモリソウをはじめとする高山植物とウニなどの魚介類がすぐに思いつきますが、もう一つ忘れてはいけないものがあります。それはこの時期島を訪れる人の多くが遭遇する「霧」です。
 4月と5月の礼文島は比較的晴れる日が多いのですが、6月は霧が発生する日が多く、晴天率が低くなります。この霧の発生にはオホーツク海を中心に発達し、冷たく湿った北東風をもたらすオホーツク海高気圧が影響していて、この高気圧の勢力が強くなると日本海側は冷夏になると言われています。


上段:晴天時(6/2)と霧発生時(6/5)の桃岩展望台 
下段:晴天時(6/2)と霧発生時(6/5)の桃岩歩道

 6月5日の礼文島は朝から濃い霧に覆われていました。午後桃岩展望台に登るといつもなら間近に見える桃岩が、海からたち登ってくる霧によって覆い隠され、全く姿を見ることができませんでした。さらに、こちらも礼文島名物である強い風が吹くことによって尾根沿いの道を歩く歩道は初夏とは思えない寒さでした。


霧につつまれた礼文岳山頂(6/6)

翌日6月6日午後から礼文岳に登った時も山頂付近は濃い霧に覆われていました。晴れていれば山頂からは360度のパノラマが望めるのですが、この日は自分の登ってきた登山道すらほとんど見えない状況でした。このような状況では360度の眺望など望めるはずもなく、逆に山頂に一人でいるとやや心細い感じさえします。
 しかし、霧が発生することは悪いことばかりではありません。むしろこの霧こそ礼文島の高山植物たちにとって恵みとなっているのです。高山植物が多く生息する礼文島の西海岸はほとんどが急峻な斜面もしくは断崖絶壁となっています。そのような場所にも高山植物たちは自生しており、そこには川など水の供給源はありません。しかし、そんな高山植物たちにとって強い味方となっているのがまさにこの霧なのです。雨が降っているわけでもないのに着ているものがじっとりと湿ってくるほどの水分を含んだこの霧が、植物たちが生きるために不可欠な水分を与えているのです。
 ただ、今年の6月は例年に比べて霧の発生する日が少なく晴天の日が多くなっています。そのため、心なしか花にも元気がないように思えます。地元の方によるとこれから霧が発生する日が多くなるだろうとのことですが、やはり6月の花は霧が出ているときの方が活き活きしているように見えます。(キジムシロやカラフトハナシノブなどのように晴天でないと花を開かない種もありますが…)また、白い花や黄色い花は太陽光が強いと光を反射してしまい、花の色や形が見難いことがあるのに対し、霧の中では色や形がわかりやすく(視界が利く範囲での話ですが)露を帯びてキラキラ光る姿は非常に美しいです。


霧の中の花々(6/6礼文岳)
上段左:ツマトリソウ(サクラソウ科) 上段右:ヒメゴヨウイチゴ(バラ科)
下段左:ツルシキミ(ミカン科)    下段右:ハクサンチドリ(ラン科)

霧が発生すると視界が悪くなり、西海岸の海食崖に代表される雄大な景色を楽しめなくなってしまうのは残念ですが、その一方で目の前のお花畑では高山植物たちが湿気をたっぷり含んだ霧から命の源を得て、活き活きとした姿を見せてくれているのです。


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2012年06月07日レブンアツモリソウ

利尻礼文サロベツ国立公園 稚内 中野 雄介

 今年も待ちに待ったレブンアツモリソウの季節がやってきました!
礼文島北部アツモリソウ群生地では現在ちょうど見ごろを迎えています。今年は過去に例がないほど開花が遅れた昨年に比べると、開花はやや早かったものの全体的に背丈が低く、花のサイズもやや小ぶりなようですが、やはりその存在感は際立っています。



クリーム色が多いレブンアツモリソウですが、中には白色の個体もあります。(6/6 アツモリソウ群生地)

ところで既にご存知かもしれませんがレブンアツモリソウは蜜を持たない花です。にもかかわらず、虫(主にニセハイイロマルハナバチの女王)に受粉を依存する虫媒花でもあります。通常、蜜のない花を訪れてもハチにとっては全く利益がないはずですが、レブンアツモリソウは同時期に周辺に咲いている同じラン科のハクサンチドリや同じ色のネムロシオガマ(ゴマノハグサ科)と間違って訪れるハチを受粉に利用していると言われています。騙されて誘い込まれたハチは足を滑らせて内部に落ち込み、脱出する時に背中に花粉を付けて飛び立ちます。そのハチが別のレブンアツモリソウを訪れることで受粉が成立するのです。さらに、レブンアツモリソウは自分で栄養を作り出すことができないため、ハイネズ等の共生菌から栄養をもらって生きていることも知られています。



ハクサンチドリに囲まれて咲くレブンアツモリソウ。
なかなかおいしい場所を見つけたようです。(6/6 アツモリソウ群生地)

他の植物とうまく共生しながら、長い年月命をつないできたレブンアツモリソウ。しかし、現在は盗掘などの影響で生育数を減らし、環境省などの事業で保護増殖が図られています。この花の命を未来永劫つないでいくためにはレブンアツモリソウだけを守るのではなく、周辺の植生、ひいては礼文島全体の生物相を守っていくことが重要なのだと思います。



レブンアツモリソウの大株(6/6 アツモリソウ群生地)

【関連リンク】
礼文島いきものつながりプロジェクト
http://www.town.rebun.hokkaido.jp/ikimono/index.html

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2012年06月06日利尻山登山情報

利尻礼文サロベツ国立公園 稚内 山本 貴之

利尻島でも少しずつ夏の気配を感じるようになってきました。
とは言っても、麓の気温はまだ20℃に届かないぐらい。太陽が隠れると肌寒い季節です。

少し前の話になりますが、5月28日と29日に利尻山に登ってきたので登山道の状況をご報告します。

まず、利尻山登山の9割以上で利用される鴛泊コースは、8合目の長官山から15分ほど歩いた所にある避難小屋までは完全に雪が解けて夏道が出ています。
その避難小屋ですが、冬の大雪の為か出入口の扉が壊れてしまいました。利用は問題なくできますが、扉は出入口に立てかけてあるだけです。小屋を利用した後はまた扉を立てかけておいてくださいね。

そして、避難小屋から上は一部雪が残っています。
アイゼンやピッケルが無くても登れる程度ですが、雪山歩きに慣れていない方には軽アイゼンやストックを持つようお勧めします。



長官山付近から見た山頂部。赤線が避難小屋から山頂までの登山道。(5月29日撮影)


9合目より上の急傾斜にも少し雪が残っているので、不安を覚えるようであれば引き返すようにしてください。また登山道から外れて、歩きやすいからといって植生の上を歩いたりしないようにしてください。登山道と植生の境を見るとよく分かるのですが、利尻山のような火山礫の堆積した山は植物の育つ腐食土壌がとても薄く、人の踏みこみなどで土壌が失われるとどんどん浸食が進んでいってしまうのです。座ったり荷物を置いたりするのも同じですので、美しい利尻山をいつまでも残すためにも山に優しい登山を心がけたいものです。

また、上記の「植物の上に座らない、踏み込まない」というものの他に、「携帯トイレを使う」、「ストックにキャップをつける」という3つの「利尻ルール」というものがあります。
利尻山に訪れる多くの方に優しい歩き方をしていただけるよう呼びかけている地域ルールです。ストックキャップや携帯トイレは島内各所で購入することが出来ますが、サイズが合わない等といったこともあり得ますので、心配な方は使いなれた物、サイズの合った物を出発前に用意するのがよいかもしれません。
なお、現在鴛泊コース上にある携帯トイレブースは全て利用が可能です。

お次は沓形コースです。
所々雪が残っていますが、三眺山までは夏靴でOKです。ただ、登山道は雪解け水でぬかるんでいたり滑りやすくなっている個所があるので注意してください。ここでもスパッツを着用するなど対策をして、ぬかるみを避けて植生の上を歩くなんてことはしないようにしましょう。
三眺山の先にある沓形コースの難所「親知らず子知らず」のトラバースにはピッケルと12本爪アイゼンが必要です!また崩壊地直下ですので、融雪に伴う落石も多い時期です。十分注意してください。
親知らず子知らずの雪解け状況は追ってご報告します。
なお、沓形コースの携帯トイレブースはまだ冬囲いをした状態ですので利用はできません。



親知らず子知らずの現在の状況。赤線がルート。(5月28日撮影)

さて、花はどうなの?というと、登山道沿いでいろんな花が咲き始めてきましたよ~。
まだ花盛り!とはいきませんが、ツバメオモトやナニワズ、エゾエンゴサク、ザゼンソウなどなど。これからどんどんいろんな花が咲いてくることでしょう。一面のお花畑を楽しめるのはもう少し先です。





シマリスが忙しそうに走り回っていました♪


最後に。
5月28日に登った時の山頂気温は日中で7℃でした。風が吹けば体感気温はそれ以下になります。防寒対策をしっかりして利尻山登山を楽しみましょう!

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2012年05月23日春の花満開!桃岩歩道

利尻礼文サロベツ国立公園 稚内 中野 雄介

礼文島南部桃岩展望台一帯では春の花の代表格レブンコザクラ(サクラソウ科)が咲き始めました。この季節、全体的にまだ枯れ色が目立つ中で、鮮烈なピンク色のこの花が咲くと一気にお花畑が華やかになり、本格的な花シーズンの到来を感じさせます。加えて、白い花を咲かせるオオバナノエンレイソウ(ユリ科)、黄色い花のキジムシロ(バラ科)が現在見ごろを迎え、初夏の代表的な花エゾノハクサンイチゲ(キンポウゲ科)も徐々に咲き始めました。そして、現在満開を迎えているのがエゾエンゴサク(ケシ科)。今年は特に数が多いようで青、紫、ピンク、時に白が入り混じって咲きお花畑に彩りを添えています。



左上:レブンコザクラ 右上:エゾノハクサンイチゲ
左下:オオバナノエンレイソウ 右下:キジムシロ
(5/20撮影)

 桃岩歩道沿いには上に挙げた花以外にもアマナの仲間(キバナノアマナ、ホソバノアマナ、エゾヒメアマナ)(ユリ科)、アブラナ科の花(エゾイヌナズナ、タカネグンバイ)、コキンバイ(バラ科)などたくさんの花が咲いています。これらの小さくて目立たない花を探しながら歩くのも楽しいものです。



左上:ホソバノアマナ 右上:エゾヒメアマナ
左下:タカネグンバイ 右下:コキンバイ
(5/20撮影)

 厳しい冬の影響で例年に比べ春の訪れがやや遅れた礼文島ですが、5月も終盤に差し掛かり暖かい日が多くなってきたことで、徐々に例年通りの開花状況に戻りつつあるようです。しかもエゾエンゴサクをはじめ、例年よりも個体数が多いように感じる種もあるくらいです。桃岩歩道に咲く花々も2か月前まで雪の下にいたのが信じられないほど元気に咲いています。今年の冬の寒さと積雪にも負けない高山植物はやはりすごい!可憐な外見からは想像もつかない内に秘められたたくましさにはただただ驚くばかりです。



エゾエンゴサクの群落と利尻山(5/23桃岩展望台から)


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2012年05月01日遅れぎみの春

利尻礼文サロベツ国立公園 稚内 中野 雄介

 記録的な雪と寒さに襲われた長い冬もようやく終わり、礼文にもやっと春がやってきました。ただ、春の日差しが降り注ぎ、日に日に暖かくなってきているとはいえ、島内にはまだ雪が残っている場所も多くあり、厳しかった冬の影響を感じさせます。
 礼文島北部の久種湖は昨年は4月の中旬には全面解氷していましたが、今年は4月末の時点でまだ全面解氷とはならず、湖畔の周遊歩道にも雪が多く残っていました。ミズバショウの開花も昨年に比べて遅いようで、ほかにもザゼンソウやエゾノリュウキンカなども開花が遅れているようです。ただ、湖にはダイサギ・チュウサギ・アオサギなどのサギの仲間、マガモ、オシドリ、カルガモなどのカモ類、ウミウ、ツグミなどの渡り鳥達が飛来しており、春の到来を感じさせてくれます。



(左)まだ雪と氷が残る久種湖(4/23)
(右)湖畔のミズバショウ(4/23)

 礼文島南部の桃岩歩道では歩道上に雪が残っている箇所はなく、雪解けによるぬかるみもないので歩きやすいですが、積雪の影響で一部木柵が傷んでいて通行に際し注意が必要な箇所があります。ただ、開花状況は久種湖に比べると順調のようで、キバナノアマナ、エゾエンゴサク、ザゼンソウ、ヒメイチゲ、ショウジョウスゲといった花を確認できたことから平年とあまり変わらないようです。



上段左:キバナノアマナ(4/24) 上段右:ザゼンソウ(4/24)
下段左:ヒメイチゲ(4/24) 下段右:ショウジョウスゲ(4/24)

 今のところ季節はやや遅れ気味の礼文島ですが、4月の下旬からは暖かい日が続いています。この先も暖かい日が続けば開花状況は徐々に平年並みに戻ってくると思いますが、今年の厳しい冬が礼文島の動植物にどのような影響を与えたのかは非常に気になるところです。



礼文に飛来している野鳥たち
上段左:ハクセキレイ(4/24スコトン岬)上段右:ノビタキ(4/24スコトン岬)
下段左:ウミウ(4/23久種湖)下段右:アオサギ(4/23久種湖)

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2012年04月13日避難小屋修理

利尻礼文サロベツ国立公園 稚内 山本 貴之

凍てつく長い冬も終わりを迎え、ここ利尻島にも春の兆しが見え始めてきました。
とは言え、まだまだ利尻山は冬山同然!そんな中鴛泊避難小屋が使えなくなっているとの情報もあり、去る4月10日に利尻山登山道等維持管理連絡協議会として、利尻森林事務所の森林官と避難小屋まで登ってきました。

下の写真は8合目の長官山付近から見た山頂です。右下の避難小屋は2階部分だけが出ている状態です。








その避難小屋ですが、積雪期の出入り口である2階扉の羽目板が外され、小屋の中に雪が吹き溜まって扉が開かなくなっていました。おそらく、登山者の方が吹雪の中小屋に辿り着いたものの開け方が分からず、扉を壊して入ったのでしょう。避難小屋は緊急時に使用するものですし今回の利用者もやむを得ない事情があったのでしょうが、そのまま放置しておけば次の利用者に危険が及ぶこともありえます。小屋に何らかの異常があった時は、下山後に必ず管理者(利尻富士町産業建設課:0163-82-1111)までご連絡ください。




この日は小屋内の雪を掻き出し、扉も応急処置をしてとりあえずは使えるようにしてきました。また、扉が歪み内側のカギがかけにくくなっていたので扉上部にチェーンを取り付けたので、小屋を使用する際はこちらを使ってみてください。近いうちに残りの雪出しと、鍵の付け替えに行く予定です。



※注意!!
・本州以南ではあちこちで桜も見ごろを迎え春爛漫といったところですが、利尻山登山にはしっかりとした冬山装備と技術、余裕のある計画で臨んでください。

・登山前には必ず登山計画書を提出してください。各宿泊施設、鴛泊駐在所で受け付けています。現在登山口にポストは設置されていません。

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2012年04月05日サロベツ原野の春はどこ? ~大雪原の春探し~

利尻礼文サロベツ国立公園 稚内 山上佳祐

みなさんこんにちは。
今回は、北国の冬が過ぎ去りつつあるサロベツ原野についてお伝えします。



まずはサロベツ原野の広がる豊富町の落合という地区から見た利尻山(3月末)の写真です。本州以南の多くの地ではフキノトウが芽生えたり、暖かなそよ風が吹くなど、春が訪れているかと思いますが、ここではまだまだ白銀が映える冬景色が目立ちます。とはいえ、肌にビシビシと突き刺さってきた2月までの冬風はだいぶ穏やかになり、天気の良い日には日光の暖かさを感じられるようになりました。



上は幌延ビジターセンター(幌延町)、下は下沼園地(幌延町)の写真です。幌延ビジターセンターは4月末まで休館しており、防雪用の板が張り付けられたままになっています。周辺にはおよそ1m程度の積雪があり、改めて今冬の積雪の多さを感じさせられます。下沼園地の木道もすっぽりと雪のカバーに覆われていますが、わずかにぽこぽこ頭を出した看板が園地内であることを教えてくれます。



サロベツ原野にも春の訪れを感じられるものはないのかと思い、幌延ビジターセンターの裏側を歩いていると、まだら模様に広がるコケの群落を見つけました。しゃがんで顔を近づけてみると、桜餅のようなふんわりとした甘いにおいがしました。本州と比べると足取りは遅いものの、サロベツ原野にも着実に春が訪れつつあるようです。
サロベツ原野といえばエゾカンゾウなどの花々が咲き誇る夏期が有名ですが、白銀の大平原の中で春の訪れを感じる今の時期も趣があると思います。サロベツ湿原センター(豊富町)は冬期も開館しておりますので、よろしければ是非お越し下さい。

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サロベツ湿原センター http://www.sarobetsu.or.jp/center/
 ■4月
 開館時間:10:00~16:00
     休館日:月曜日
 ■5月~10月
     開館時間:9:00~17:00  ※6月、7月は8:30~17:30
     休館日:なし
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2012年01月30日冬真っ盛り

利尻礼文サロベツ国立公園 稚内 中野 雄介

冬本番の現在の礼文島。今回は雪も寒さも本番を迎えた真冬の礼文島の様子をお伝えします。

○桃岩歩道
 道道元地香深線から桃岩展望台へ続く町道は雪に閉ざされており、町道入口から展望台までスノーシューで歩いて30分ほどかかります。展望台付近は強い風の影響で雪が飛ばされ積雪はあまり多くありませんが、歩道上の雪の積もり方は一様ではなく場所によっては1m以上の積雪があります。また、歩道上は遮るものがなく、肌を突き刺すような冷たい風によって体感気温は非常に低くなります。さらに風で舞い上げられた雪で視界が悪くなることもあるなど、気象条件は非常に厳しい場所です。しかし、天気が良いと真っ白な雪化粧をした利尻山の雄大な姿を望むことができます。



桃岩歩道から望む利尻山。この季節、これほどはっきり見えるのは珍しいです(1/21)

○ゴロタ岬
 礼文島北部のゴロタ岬へは江戸屋山道からスノーシューで歩いて30分ほどかかります。ゴロタ岬までは夏であれば尾根沿いの歩道を歩いていきますが、積雪のある冬は強風や雪庇を踏み抜くことによる滑落を防ぐため尾根沿いを避けて斜面の陰になる谷筋を登っていく方が安全です。谷筋を登って行くとやがて岬まで続く尾根沿いの道にでますので、通行の際は海側の崖に寄らないよう注意してください。ゴロタ岬付近では運が良ければオオワシやオジロワシなどの猛禽類を観察することができます。また、コガネギクやエゾニュウといった植物の立ち枯れた跡を探すのも楽しいかもしれません。



ゴロタ岬へ続く歩道。左側のルートは比較的風が穏やかで歩きやすいです(1/22)

○久種湖
 久種湖は現在全面凍結しており、湖の上を歩くことができます。湖上の積雪深は10cmほどなのでスキーやスノーシューがなくても長靴で十分歩くことができます。春から秋にかけて渡り鳥や色とりどりの花でにぎわう久種湖ですが、現在は上空を飛ぶカモメやカラス、ときどき見かけるオオワシやオジロワシなどの野鳥を除けば生き物の気配をあまり感じません。ただ、久種湖周辺は礼文島には珍しい森林が広がっていてトドマツなどの常緑樹とダケカンバ、ハンノキ、イタヤカエデ、ナナカマドなどの落葉樹が混ざり合っています。落葉樹はこの時期葉を落としていますが、枝の先には冬芽が出ており、樹木ごとに違う冬芽の観察をすることはこの時期の楽しみの一つです。



上:凍結した久種湖(1/22 礼文森林の丘付近から)
下:ハンノキの冬芽(1/22 久種湖畔)

今年は12月から降雪量が多く、1月になってもその勢いは衰えるどころかますます勢いを増しているかのようです。また、降り続ける雪に加えて気温がマイナス10℃を下回る日もあるなど野外に出るには厳しい天候が続いています。しかし、寒さ厳しいこの時期だからこその楽しみ方があるのも事実。春の到来を望みながらもまだまだ続く冬を楽しんでいきたいものです。

※冬の山を歩くときは暖かい防寒着、手袋、帽子など万全の装備を用意し、単独行は避けるようお願いします。

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2011年12月22日嵐の前の静けさ

利尻礼文サロベツ国立公園 稚内 山本 貴之

日本のほぼ最北に位置しながら、付近を流れる暖流の影響で、同じ北海道の内陸部と比べてそれほど気温が下がらない利尻島です。
さて、低気圧が接近し週末は大荒れとの予報ですが、嵐の前の静けさか、一瞬だけ利尻山の山頂が顔を見せてくれました。約1ヶ月ぶりのことです。冬の利尻山は常に雲に覆われていて、今日のように山頂まですっきり見えることは冬の間に数えるほどしかありません。
夏の緑と花の季節もいいですが、冬の利尻山はやっぱりかっこいいですねぇ。



そしてふと近くに目をやると雀が雪浴びをしているのを見つけました。僕の出身の北陸も雪国ですが、水浴びや砂浴びはともかく雪浴びを見るのは初めてです。おそらくたっぷり水分を含んだ雪は、雪浴びには適さないのでしょう。雪質の良い北国ならではの光景ですね。



ふとした利尻島の一コマでした。

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