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アクティブ・レンジャー日記 [北海道地区]

北海道地方環境事務所のアクティブ・レンジャーが、活動の様子をお伝えします。

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利尻礼文サロベツ国立公園 稚内

268件の記事があります。

2010年11月05日豊富ビジターセンターへさようなら

利尻礼文サロベツ国立公園 稚内 賀勢 朗子

 サロベツ湿原の公園利用施設として中心的な役割を担ってきたサロベツ原生花園自然教室は昭和61年に建造され、25年間の間、“豊富ビジターセンター”の愛称で親しまれてきました。けれど、この施設は湿原の上に盛土して建てられていることから毎年地盤沈下に悩まされ、さらには湿原にとって重要な地下水への悪影響が懸念され、今年度のシーズン後には取り壊され、跡地をもとの植生に回復する自然再生事業が行われることになっています。

 私を含め豊富ビジターセンターに親しんだ多くの人たちは、最後の年だという哀愁のようなものを感じながらこの一年を過ごしましたが、ビジターセンターや木道から眺める湿原や空や利尻山は今年もたくさんのきれいな表情を見せてくれました。

 最後の秋。9月末には、夏の間に豊富ビジターセンターでサブレンジャーとして活動した大学生たちが
「サロベツの真ん中の音楽会~さよならビジターセンター 今までありがとう~」というタイトルでビジターセンターを会場とした音楽祭を企画しました。ビジターセンターに親しんだ多くの人たちが集まって楽器の演奏や歌を聴き、豊富ビジターセンターでの思い出を語りながら、ひとしきり賑やかな秋の夜を過ごしました。



豊富ビジターセンター最後の記念イベントとして開催された音楽会


 そして10月に入り、豊富ビジターセンターの倉庫からは徐々に荷物が運び出されていきました。
10月31日。開館最後の日はとてもよく晴れた日で湿原は黄金色に染まっていました。まるで「風の谷のナウシカ」が最後の場面で歩く、金色の草原のようでした。人の出入りがなくなった午後から展示物が徐徐に取り外され、梱包されていきました。事務用品や小物類も段ボールにまとめられ、運び出しの準備がされていきます。展示物が取り外されたビジターセンターの壁は長い年月の末に色あせていましたが、優しい黄昏時の光に照らされ、木の温かみを感じさせる壁でした。



ビジターセンター最後の秋 ~黄金色の草原~



 11月1日。ビジターセンター引っ越しの日。関係者が集まり、大小様々な備品類を運び出しました。
これらの備品は新設されたサロベツ湿原センターで利用されたり、持ち主に返却されたりします。そして運ばれなかった古い棚や椅子、剥製類はビジターセンターとともにその役目を終えます。部屋の隅に残された色あせた子熊の剥製の瞳がうるんで別れを惜しんでいるように見えました。

 けれども、豊富ビジターセンターに親しんだ地域の人たち、ここで活動したサブレンジャーを先輩に持つ後輩サブレンジャーたちは、ここでの経験をもとに新設されたサロベツ湿原センターの機能をさらに充実させていくことと思います。これからサロベツ湿原センターの歴史が始まるのです。私はアクティブレンジャーという名の“旅人”ですからいずれサロベツを離れ、新しい場所へと旅立ちますが、またいつかサロベツを訪れた時に、サロベツ湿原センターを拠点にたくさんの人たちが生き生きと活動している様子を見られるのを楽しみにしています。

 心に刻まれた豊富ビジターセンターの思い出とともにこれから多くの人たちが出発することでしょう!ここを拠点に沢山の人たちとつながりを持てたことをとても幸せに思います。
さようなら。そして、ありがとう。ビジターセンター。

※サロベツ原生花園の木道は西側の半分を調査用木道として残し、西側は撤去されます。調査用なので一般の方は入れなくなります。

※豊富町円山に新設されたサロベツ湿原センターは豊富ビジターセンター跡地前の道路を豊富市街地側に1.5キロのところにあります。稚内の歴代自然保護官が心血を注いだセンターです。
来年4月28日(木)にオープン予定になっております。皆さま、是非お越し下さい。


建設中のサロベツ湿原センター ~来年4月28日(木)オープン予定です~

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2010年10月28日利尻山の登山道補修 その2

利尻礼文サロベツ国立公園 稚内 岡田 伸也

早速、登山道補修シリーズの第2弾いきます!!

前回紹介したように、登山道を流れる水の勢いを「ステップ&プール工」で弱めようとも、水量が多すぎては、さすがに対処しきれません。そこで、登山道の整備・補修をする際は、「登山道外への排水」を一番先に考えなくてはならないのです。

といっても、具体的には、どのように排水するのでしょうか?今回は、利尻山で、最も多く採用している「導流水制工(どうりゅうすいせいこう)」と呼ばれる工法を紹介します!

【施工前】

↑施行前 100524勾配変化点

登山道の中央部に、溝が掘れているのが分かりますか?これが施行前の水の通り道です。

【施工後】

↑施工後 導流水制工

現地周辺の倒木を切って、「導流水制工」を作りました。出来上がりが自然に馴染んでいるので、写真では、分かりにくいかもしれませんが、よく見てください。写真手前から、中央までの間に4本の木材と、1つの「当て石(あていし)」を設置しています。

さて、施工後写真を見て、どちらの方向に水が流れていくのか、分かりますか?

正解は、写真左下方向です。
普通、排水場所を選ぶ際は、水が無理なく自然に登山道外に流れていくような地形を見つけます。写真の施工箇所は、山が写真左下方向に向かって傾斜していて、その傾斜に沿うように登山道がゆるやかにカーブしていますが、こういう所がよいのです。カーブを曲がろうとする遠心力を使って、ポーンと水を投げ出してしまうことができるからです。
とにかく、水の気持ちになって、「自分が水ならどこに流れていきたいのか?」、そんなことを考えながらの作業は楽しいものです。

【流水状況】

↑流水状況 導流水制工

水の流れは、ご覧の通りですが、この写真で注目して欲しいのは、「設置した木材に対して、直角方向に水が流れている」点です。(※手前から2本目の木材に注目)

コップからコップに水を移そうとするときに、コップを伝った水が、テーブルの上に滴り落ちてしまうことがありますよね。このように、水が物体に沿って流れようとする性質を生かしているのが、この工法の最大の特徴と言えます。

ただし施工時には、いくつか注意が必要です。
水は、物体に沿って流れるよりも、まず重力によって下に流れようとします。ですから、木材を、流したい方向に対して直角に配置するだけでなく、水の流れる道が一番低くなるように、5~15度程度の傾きをつけて設置します。こうすることによって、より水流の指向性が高まるのです。

それと、施行前に、排水先の状況もしっかりと確認しましょう。
脆弱な地質や植生がある高山帯などでは、あまり勢い良く排水してしまうと、現地の自然を壊してしまうからです。逆に、写真の施工箇所のような樹林帯では、排水した水が登山道に再流入しないか、笹薮に入って排水先の、先の先まで、地形を十分確認する必要があります。排水とともに流された枯れ葉が、排水先の笹の根に引っ掛かることで、登山道に水が跳ね返ってくることもあるので、こういう場所では、排水先の笹薮を少し刈るとともに、勢い良く水を流すことがポイントです。一般的には、斜面の傾斜がある程度きつい方が、勢い良く排水できるでしょう。

こまめに、できれば30~50mに一つの排水工を作るようにすれば(※勾配や地質などによって必要な間隔は大きく異なります。)、流水による登山道浸食は、かなり防ぐことが出来るはずです。
他にも、施工時に注意すべき点は色々とあるのですが、あまり書くと、難しくなってしまうので、今日はこの辺りでやめておきましょう。

でも面白いでしょう。水の動きに着目した、この工法。
何度も同じようなことを書きますが、登山道補修で対処すべきなのは、流水そのものではなく、浸食を起こす強い流れの勢いを逃がすことなのです。最近は減っているのかもしれませんが、コンクリート3面張りの水路のように、水に対してハードな対策をするばかりでは登山道に似合いません。
この工法は、柔よく剛を制すとでも言いましょうか。登山道にとてもよくマッチした工法だと思います。

・・しかし、登山道を掘るのは、水だけではありませんよね。次回は「人」、つまり登山者の動きを誘導する登山道補修について紹介したいと思いますので、お楽しみに!


※注意
上記の施工箇所は、国立公園特別保護地区で国有林内であることから、現地材の利用にあたっては、許可手続き等を行っています。

参考URL:AR日記「利尻山の登山道補修 その1」
http://c-hokkaido.env.go.jp/blog/2010/10/26/index.html

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2010年10月26日利尻山の登山道補修 その1

利尻礼文サロベツ国立公園 稚内 岡田 伸也

こんにちは。
あっという間に今年の登山シーズンも終わってしまいましたが、今日から少しずつ、利尻山で行っている登山道整備・補修の事例を紹介していきたいと思います。
初回の今日は、「石組ステップ&プール工」の紹介です!
まずは、論より証拠ということで、下の写真を見てください。

【施工前後写真】

施工前後 石組ステップ&プール工

深く掘れた登山道に、現地周辺から集めた石を帯状に組むことでプールを作り、浸食を起こす強い流れの勢いを弱めることを目的にしています。石組は、滑りやすい登山道のステップにもなっています。


「登山道は川である」とは、“近自然工法”と呼ばれる上記の工法を教えてくださった先生の言葉ですが、登山者の踏圧や、雨や雪どけの流水などによって溝のように掘れてしまった登山道は、雨が降ると川のようになります。
しかし、水は重力によって下に流れようとするので、溝状になった登山道に水が流れるのは当然です。そこで、下の写真のように、“水で、水をいなす”のです。

【流水状況(平水時)】

09年9月施工箇所(雨の流れ)

帯状の石組の一段一段にプールが出来ています。石組を乗り越えてプールに落ちる際のウォーター・クッションによって水の勢いが弱められているのが分かりますか?
水は流れども、浸食を起こすほどの勢いはもうありません。

しかし・・・
今年の7月29日、大雨(27.5ミリ/時、57.5ミリ/日)で推定水量を上回る量の水が流れたため、石組2基が決壊してしまいました。

【流水状況(最大水量時)】

2009施工S&P工 100729大雨洪水警報(27.5ミリ時、57.5ミリ日)

渓流ではありません!!! 登山道です。

写真上部の、登山道がボトルネックのように狭く絞られる部分で、水の勢いが強められたため、その直下の石組2基が耐えられず壊れてしまいました。構造的にもっと強く作ればよかったのですが、そもそも水量が多すぎるので、この石組ステップ&プール工の上部で、登山道外へ水を排水しないことには、解決になりません。
そこで、次回は、登山道外に水を逃がす工法について紹介したいと思います。お楽しみに!

今回のシリーズが、他の山岳地の整備・補修にも、参考としてお役に立てばと思います。

※注意
上記の施工箇所は、国立公園特別保護地区で国有林内であることから、現地石材の利用にあたっては、許可手続き等を行っています。 

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2010年10月15日「日本のいのち、つないでいこう」いよいよCOP10 ~ヤチヤナギ、

利尻礼文サロベツ国立公園 稚内 賀勢 朗子

 「生物多様性」が健全に保たれるためには、多くの生き物が存在していることが必要で、存在し続けるためには、生き物たちは子孫を残していかなければなりません。次の世代に命をつないでいくために、生き物たちは様々な作戦をとります。

 分裂して自分と全く同じ遺伝子を持った別個体をつくるものは短期間に沢山増えることができます。
雄と雌が出会って結ばれるものは多様な遺伝子の組み合わせをつくることで様々な環境に適応する可能性を生み出します。そして種によっては独り立ちできるまで大事に子育てしたり、大量に卵を産んで生き残れる可能性を増やしたり、風や虫を利用して子孫の分布を拡大したりと、実に様々な作戦を持っています。命をつないでいく方法の様々な在り方そのものがそれぞれの生き物の個性であり、これも「生物多様性」を形づくるひとかけらだと私は思います。

 最近、サロベツ原野に数多く生育し、なんの変哲もないと思っていたヤチヤナギを通じて植物の命のつなぎ方の奥深さを考えさせられました。ここでご紹介したいと思います。

 ヤチヤナギは北方の湿原に生育するヤマモモ科の落葉低木で、別名はエゾヤマモモ、北海道の泥炭地や本州三重県以北の高地湿原に生育しています。葉の裏をこするとスーっと清々しくよい香りがするこの低木には雄の木と雌の木があり、サロベツでは雪解け間もない5月始めから6月頃にかけて雄の木は黄色い花を、雌の木は赤い花をつけているのが見られます。園内の木道脇に沢山ある木なのですが、小さな風媒花(ふうばいか)なので注意していないと気づかないかもしれません。葉は花が終わった後に展開してきます。


【花と果実】


【葉の展開の様子】

 雄の木と雌の木がある(雌雄異株)ということは、別々の株同士が有性生殖をするということであり、その長所は上にも書いたとおり、遺伝子を合体させて新しい環境に適応できる子孫を生み出すこと、また、種子が遠く運ばれることによって親株から離れたところへ分布を広げられることです。

 しかし、ヤチヤナギには繁殖についてもうひとつ作戦があることを知りました!
それは栄養生殖もするということです。ヤチヤナギには匍匐枝(ほふくし)といって根元から出て地面を横に這う枝があります。匍匐枝の節からは新しい株がつくられ、これは親株のクローンです。
これには一体どのようなよいことがあるのでしょうか。
匍匐枝でつながっている株の間では成長に必要な養分や光合成産物の相互交換が行われており、株同士は各々が生育する場所で多く得られる養分を別の株に供給し、不足している養分は提供してもらうことができます。匍匐枝で結ばれていると親株から遠く離れて分布することは難しくなりますが、結ばれた複数の株全体の生存や成長を高め、根付いた場所にしっかり定着することができるのです。

 植物が利用できる養分が少ない湿原において、新しい環境に分布を広げる作戦と根付いた場所に定着する作戦の両方を持ち合わせるヤチヤナギ。なんてたくましくしなやかなのだろうと感心してしまいました。

 しかしながら、ヤチヤナギの個体群は、北海道や尾瀬では比較的多く生育し安定しているようですが、三重県や愛知県では小さな個体群が隔離された状態で自生していて地域的には絶滅も危ぶまれているようです(愛知県版レッドデータブック2009)。たくましいヤチヤナギといえども、湿原の減少などにより少しずつ追い詰められてきています。

 生物多様性の危機は単に種の数が減少するということではなく、それぞれの種の個性豊かな生き様が失われるということだと思います。それが失われた世界はとてもパサパサとした味気ないものに感じます。

いよいよCOP10が開催されますが、これを機会に私自身も生物多様性を未来に受け継ぐために何をしていったらよいかを見つめ直してみたいと思っています。


【来年への準備 花芽や葉芽ができてきています。】












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2010年10月13日秋色の礼文島

利尻礼文サロベツ国立公園 稚内 中野 雄介

すっかり秋の装いの現在の礼文島。
南部の森林地帯では紅葉が始まりました。
香深(かふか)~元地(もとち)間の車道沿いや礼文林道などで徐々に色づき始めた木々を見ることができます。




(車道沿いの紅葉 10/9 香深~元地線にて撮影)

赤よりも黄色に色づく木が多いのが礼文島の紅葉の特徴となっています。
反対に桃岩歩道や北部ゴロタ岬付近では樹木の代わりにササやススキが目立ち、枯色の光景が広がっています。






(上:枯色の桃岩 10/3撮影)
(下:ゴロタ岬からスコトン岬を望む 奥に見えるのは無人島の海驢=とど島 10/8撮影)

花の季節が過ぎ去ってもまだまだ色彩あふれる秋の礼文島です。


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2010年09月14日礼文島環境フォーラム 2010

利尻礼文サロベツ国立公園 稚内 中野 雄介

9月11日(土)礼文町町民活動総合センター(ピスカ21)において礼文島環境フォーラム2010が開催されました。当フォーラムは環境NPO礼文島自然情報センターが主催し、環境省、林野庁、礼文町、北海道大学などが共催となり島内外から多くの個人や団体が参加して礼文島の自然環境について話し合う毎年恒例のイベントです。今年のテーマは「自然歩道の未来」でした。
午前中はこれからの歩道管理のありかたを各自考えるため実際に香深(かふか)~礼文林道~香深の周回コースを歩きました。午後は歩道管理の現状をテーマにした岩手大学農学部准教授柴崎先生による講演、礼文高生2名による活動発表、北大農学研究院生熊谷さんによる礼文島の歩道調査報告と続き、最後に今後の自然歩道のあり方についてグループディスカッションを行いました。まず、歩道管理についての意見の傾向別にグループ分けし、グループごとに歩道整備の必要性や具体的な方策、歩道が抱える問題点を解決するための対策などを話し合いました。




岩手大学農学部 柴崎准教授の講演
(演題:世界遺産や国立公園に指定されると何かが変わるのか?)

このフォーラムは一つの決まった方針を打ち出すのではなく、多様な意見を歓迎し、その中からよりよいものを作っていくことが目的であり、最後に結論を出すことはしませんでした。自然歩道に求めるものは一人一人違っていて、よく整備された歩きやすい道を好む人がいる一方で、人の手が加わっていない自然度の高い道を好む人もいます。このフォーラムでの講演や議論を通じて歩道を管理していくにはその地域の特徴を考慮に入れた目標を定め、整備や対策はそれに沿ったものが求められるということを学びました。
アクティブレンジャーは歩道に関わる業務が多くあるため今回のフォーラムへの参加はとても有意義な時間でした。しかし、それと同時に今回学んだことを生かし礼文島の歩道をよりよくしていくためには、礼文島の歩道についてより深く知る必要があると感じました。




グループディスカッションの模様

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2010年08月24日【日本のいのち、つないでいこう! COP10まで50日前】

利尻礼文サロベツ国立公園 稚内 中野 雄介

☆☆レブンウスユキソウ(キク科 ウスユキソウ属)☆☆ 

星形のシルエットが美しいレブンウスユキソウ。オーストリアの国花、エーデルワイスの仲間で、礼文町の町花にも指定されている島を代表する花です。花期の長いこの花は咲く場所にもよりますが6月中~下旬から9月までの間、島を彩り訪れる人々の目を楽しませてくれます。




白く花びらのように見えるのは苞葉という部分で、中央の黄色い部分が花(7/9 桃岩歩道にて撮影)

訪れる人を魅了してやまないレブンウスユキソウですが、その美しさが災いして盗掘の標的になってしまうという問題があります。
そこで現在、礼文島の名を冠したこの花を守っていくため様々な活動が行われています。盗掘者の手から守るために監視やパトロールを行うこと、この問題についての啓発活動を行うことなどです。しかし、礼文島にはレブンウスユキソウ意外にも貴重な高山植物が数多く自生しており、それら高山植物を守るためには各関係機関の活動だけでは十分ではなく、なにより多くの人の力が必要です。礼文島に自生する植物たちの命をつないでいくために皆様のご理解とご協力をお願いいたします。




高山植物盗掘防止キャンペーン(7/9 ウスユキ感謝祭にて撮影)

花の浮島礼文島は季節ごと、場所ごとに色とりどりの花が咲き誇ります。葉の緑を中心に白や黄色や紫にピンクなどそれぞれの花が個性的な色を持つことで全体として調和のとれた美しいお花畑になっているのだと思います。レブンウスユキソウの白は周りの色にとけ込んでこそ美しく見えると私は思うのですが、それはつまりこういうことなのではないでしょうか。
「礼文の花は礼文で見るのが一番である」

※高山植物の盗掘は犯罪です。
 違反者は関係法規で罰せられますので、絶対におやめください。




高山植物の保護を訴える看板(8/15 桃岩歩道にて撮影)

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2010年08月16日雨の日の歩行について

利尻礼文サロベツ国立公園 稚内 中野 雄介

8/10(火):礼文島西海岸の8時間コースに歩道の調査に行ってきました。当日は雨は降らなかったものの登山道全域が深い霧に覆われほとんど晴れ間はありませんでした。
私は礼文島常駐ではなく、稚内から出張しているのですが、ここ最近私が島に渡るといつも霧がかかっていて、気持ちのよい青空を見ることがほとんどありませんでした。




霧のゴロタ岬(8/10撮影)

ふと、いつ以来青空の下を歩いていないんだろうと思ったので、今年7月の礼文島の気象データを調べてみたところ、降水量227mm、日照時間は53時間ほどでした。過去のデータと比べてみると、昨年は降水量141mm、日照時間54時間、一昨年は降水量52mm、日照時間が110時間ですから、今年はどれだけ雨が多く日照時間が少なかったか分かります。
そのため、現在礼文島の歩道全域でぬかるみや水たまりが非常に多くなっています。




現在、島内全域で多くなっているぬかるみ。(8/10,江戸屋山道にて撮影)

ぬかるみや水たまりが多い場合、滑りやすく歩きづらいという問題と、もう一つそれを避けようとして歩道脇の植生に踏み込んでしまうという問題があります。一度植生に踏み込んでしまうとそこに足跡ができ、あとを歩く登山者がその足跡をたどります。そうして何人もの人に踏まれ続けることで道幅が徐々に広がっていきます。しかも、道幅が広がることで失われた植生はすぐには回復しないのです。歩道の荒廃を防ぐために、雨が降っている時や降ったあとは、水たまりに入っても平気な装備で歩き絶対に植生に踏み込むことがないよう皆様のご協力をお願いします。




歩道の複線化:右が古い道で、左が新しい道。ぬかるみを避けて植生の上を歩くことで道幅が広がっていきます。(8/10、8時間コ-ス召国=めしくに~アナマ岩間にて撮影)

歩道が荒廃すると周りの植生にも悪影響が及んでしまいます。礼文島のかけがえのない植生をまもるためにも歩道は大切に利用していきましょう。

(※歩道で傘を差して歩いている方をまれに見かけますが、手がふさがったまま歩いていると大変危険です。また狭い道ではすれ違いづらいのでレインウェアをご持参くださいますようご協力お願いします。)

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2010年08月09日礼文滝の夏

利尻礼文サロベツ国立公園 稚内 中野 雄介

礼文滝遊歩道の利用状況調査に行ってきました。
当日8月5日(木)はやや霧が深かったことに加えて今にも雨が降り出しそうな天候でしたが、気温は高めでした。礼文滝遊歩道は礼文林道沿いの入り口から海岸にある礼文滝まで下る約2km(往復4km)の折り返しコースで森の中を通る道から周囲を見渡せる大パノラマの道までバラエティーに富んだ景観が楽しめます。ただ、所々ぬかるみや滑りやすい場所があることに加えてかなりの急坂や石を伝って川を渡る場所があるなど難所は多いので登山用の装備で歩くことが望まれます。ちなみに私は軽トレッキングシューズで歩いたのですが川を渡る際に足を滑らせて両足が水につかってしまうという大失敗を犯してしまいました。



(礼文滝のある谷。通称「ハイジの丘」付近から見た急坂、8/5撮影)

現在礼文滝遊歩道では小さくてかわいらしい黒い花のレブンサイコ、よい香りのする薄ピンクのイブキジャコウソウ、猫じゃらしのような姿の白いチシマワレモコウなどが咲いています。しかし1番目を惹いたのは薄い紫が美しいツリガネニンジンでした。下向きに花をつけるこの花はまだ8分咲きでしたがそれでも圧倒的な存在感を放っていました。



(ツリガネニンジンの群落、8/5撮影)

お花畑は6~7月のカラフルな色合いから一転してややくすんだ滋味深い色合いに変わってきました。季節ごとのこの劇的な色調の変化は礼文島のお花畑の大きな魅力です。そしてお花畑を楽しんだあとに待ちかまえるのはこのコースの終点礼文滝で、ゴール地点にふさわしい素晴らしい景観が見られます。この日はここ数日続いた雨により水量が多くいつもとは違った姿を見せていました。




(水量が多い礼文滝、8/5撮影)

※礼文滝遊歩道は歩道の近くを川が流れており雨のあとは増水する危険性がありますのでくれぐれもご注意願います。

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2010年07月27日この夏の利尻山

利尻礼文サロベツ国立公園 稚内 岡田 伸也

7月も残すところあと1週間。
残念ながら・・と言いましょうか、長期予報通り7月は曇り空が続いています。
そのため樹林帯の道はいつもぬかるみ気味。特に沓形(くつがた)コースの登山口から避難小屋の間は、粘土質の土壌の上に浮石がゴロゴロしていて滑りやすいので要注意です。沓形コースを歩きたい!という方には、「下り」より「登り」に使うことをオススメします。
それと、これは鴛泊(おしどまり)コースでも同じですが、転んだ時のために手袋を用意しておくとよいでしょう。
鴛泊コースの登山口には、靴洗い場(ブラシもあります)があるので、ぬかるみを避けて植物の上を歩かないようにしてください!


鴛泊コース4合目付近
この時期は、写真のようなぬかるみがたくさん出来ています。



また利尻山は風が強い山としても有名。
特に悪天日、6合目より上では体が吹き飛ばされるような風が吹くこともあるので、無理して登山を強行しないように予備日を設けるくらいの余裕ある計画を立ててお越しください。

さて、それと話は変わって、7月末から環境省の直轄事業による登山道整備が始まります。
工事区間は、鴛泊コースの8合目付近から9合目の下までの間で、期間は7月末から9月中旬頃までを予定しています。工事期間中は、週末を除く毎日作業を行っているので、通行の際は作業員の誘導に従っていただくようお願いします。

今年の工事では、主に深く掘れてしまった登山道の土留め(床止工)と排水工(導流水制工)の設置を行ないます。
みなさんも、どこかの山で雨や雪解け水の流れ、登山者の踏圧などで深く掘れてしまった登山道を見たことがないでしょうか?登山道が溝のようになると、水の流れ道になってしまい、人が歩かなくてもどんどん掘れていってしまいます。そうすると歩きにくいところを避けて通る登山者が現れて、新しく道が広がってしまう・・・そんな悪循環をたち切って、歩きやすく、かつ水の流れを制御する道にするのが登山道整備の目的です。
作業している方を見かけたら、「ごくろうさまです」と声をかけてみてください!


写真左は、鴛泊コース避難小屋付近で、今年度これから整備する場所。右は、鴛泊9合目付近で昨年度整備した場所です。木柵によって溝の低い部分と、登山道脇の斜面の土砂が安定しました。


なお、登山道では、屈強な作業員さんの他、写真のような可憐な花々にも出会えます。
鮮やかな青い色は夏の利尻の海のよう。これらの花が咲き誇るのは8月中旬頃まででしょうか。いずれも夏を締めくくる花です。


(上左)イワギキョウ(上右)リシリリンドウ(下)リシリブシ

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