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アクティブ・レンジャー日記 [北海道地区]

北海道地方環境事務所のアクティブ・レンジャーが、活動の様子をお伝えします。

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支笏洞爺国立公園 洞爺湖

169件の記事があります。

2010年01月22日羊蹄山の冬景色

支笏洞爺国立公園 洞爺湖 浅田 唯衣

 あまりにも羊蹄山が美しく、その景色を撮影しました。みなさんご存じ、羊蹄山の近くにある山はスキーで有名なニセコと言われる場所です。多くの方がニセコを指すのはスキー場が集結するニセコアンヌプリですが、火山学的にニセコ火山と言われる箇所は、日本海側の雷電山からニセコアンヌプリまでとなります。(※1)


オロフレ峠からの羊蹄山。

ところで、ニセコ山系にあるニセコアンヌプリは羊蹄山よりは前に出来た山だということはご存じですか?ニセコアンヌプリについては、20万年前が最後の火山活動です。では羊蹄山の活動はどうでしょうか。今の円錐形の形になる前に、今の羊蹄山の中に古い別の火山体が存在し、それを古羊蹄山と呼ぶようですが、その古羊蹄山は10~5万年前の時期に活動を開始していることがわかっています。そしてほぼ現在の形に成長した新羊蹄山の最新の活動は1万年前です。そうなると羊蹄山はニセコアンヌプリと比べてまだ若い山体になります。標高が高く、富士山のようにそびえる山は、なんとなく周辺のどこの山よりも古い火山のように思いがちですが、当然、標高や容姿に関係なく、山の生い立ちは違うことがわかります。ニセコ山系で一番新しい火山活動ではイワオヌプリの2~1万年前の活動です。また、洞爺湖と比べたらどうでしょうか。洞爺湖は約11万年前に出来たとわかっています。よってこれもまた羊蹄山は洞爺湖よりも若いということになります。


羊蹄山と洞爺湖の姿。

ニセコ山系は支笏洞爺国立公園内ではなくニセコ積丹小樽海岸国定公園ですが、羊蹄山と周辺の山との関係を知ることはとても大切なことです。見る場所によって羊蹄山の形は様々、また雪がかぶるとさらに秀峰としての輝きを増します。



2009年度の羊蹄山の初雪の観測は9月15日(倶知安町HPより)、初冠雪は10月4日です。初冠雪とは「夏が終わった後、山麓の気象官署から見て山頂付近が初めて積雪などで白く見えること」だそうで実際に山に雪が着く日とは違うそうです。みなさんご存じでしたか?ちなみに1971年~2000年の羊蹄山の初冠雪平均日は10月2日だそうです。(気象庁HPより)

※1 ニセコ山系は、雷電山、岩内岳、目国内岳、白樺山、シャクナゲ岳、チセヌプリ、ワイスホルン、イワオヌプリ、ニセコアンヌプリとなります。

参考文献:「北海道の活火山」北海道新聞社  
 




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2009年12月21日とうやこタイム ビジターセンター展示中

支笏洞爺国立公園 洞爺湖 浅田 唯衣

 洞爺湖温泉小学校と行った“火山”をテーマにした学習の様子をビジターセンター1Fにて展示中です。有珠山へ行った時、幸運にもお天気は晴れでした。子どもたちもたくさんの写真を記録として撮影しました。その中から一人ずつ「不思議に思ったこと、すごいなと思った所」などの写真を1枚選んでコメントを紙に記入してもらいました。そのレポートも一緒に展示しています。この展示で火山の魅力を少しでも多くの方に知ってほしいと思っています。1月18日(月)まで展示です。ぜひビジターセンターへお越しの際はご覧ください。


洞爺湖ビジターセンター1F展示中。

写真付きの記録です。

子どもたちが記録したレポートです。

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2009年12月16日とうやこタイム~火山~

支笏洞爺国立公園 洞爺湖 浅田 唯衣

 とうやこタイムとは、洞爺湖温泉小学校の先生が名付けた「洞爺湖の自然」を学習する時間のこと。今年、加藤ARが今まで行ってきた地元小学校に向けての外来生物の学習やサクラマス学習なども“とうやこタイム”のひとつです。そのつながりを受けて、洞爺湖の自然の一部である「火山」をテーマにした学習ができないかというお話があり洞爺湖温泉小学校の4年生と一緒に2回シリーズで火山学習を行うことになりました。

「火山」と一言にいっても、地球単位の話を子どもたちへいったいどのような切り口で話していけば良いのかということで大変悩みました。平成19年度に洞爺湖温泉小学校5・6年生を対象に子どもパークレンジャー事業で「火山」をテーマに3回行ったこともあり、その時の内容を参考にしたり、火山について調べていくうちにわからなくなればその都度、火山に詳しい先生へしつこいほど何度も確認しました。でも、私がこの地に来て、洞爺湖を初めて見て、また有珠山に登ったりして目の前に立ち上る噴気や火口を見て感じたのは、やはり「地球が活動をしている」ということでした。その感動は今でも忘れませんが、その感動は、「どのようにしてこの噴気や火口が出来て、どのように大地が変化するのか?」といったような“興味”へと変わってきました。それを思い出した時に、“火山”を伝えるには、まずは、あまり難しいことは抜きにして、子どもたちには実際に歩いて自分の目で確認し“感”じてもらい、いずれ“興味”から“探求心”へ変わればいいということでした。そんなこんなで、それを補う手作りの資料をたくさん抱え、今までの地域で行われてきた学習会のメモや書籍、火山の先生から聞いた話などを頭にまとめて、火山学習を行うこととなりました。

1回目は「生きてる火山を感じよう!」というテーマで行いました。学校の学習では有珠山については多少触れるものの、火山のメカニズムまでは授業には組み込まれないようで、「いったい火山ってなんなんだ?」ということを伝えるため、コカ・コーラを利用したマグマの噴き出す様子を再現した実験や、地球が出来た時から、洞爺湖が出来た時、そして今といった時間をメジャーを使って地球の時間幅を知ってもらえるように工夫したりして伝えました。そして早速、有珠山へ行きました。まずは地殻変動をしたポイントで、地面を触ってもらいました。「なぜ温かいの?」「マグマ!?」「そう!マグマが近くにあるんだね。」地熱の温度を温度計で子どもたちは「すげー!熱い。こっちの方がもっと熱い。」といいながら地球には体温があることを実感してもらいました。


噴気地帯にて。

その後、有珠山の銀沼火口を見学(※1)しました。銀沼火口では1977年~78年の噴火によって出来た地層を見ることができます。その縞模様に見える地層は、上空から降下した噴石や火山礫・火山灰、地表を流れ拡がった火砕サージ、そして軽石の堆積物です。そして被災した樹木もところどころ埋まっています。またその際に大地が約180mも隆起し(沈降もあり)有珠新山を作りました。地球が生きている証拠を子ども達は目の前で見ることになります。


銀沼火口を見学。背後には、有珠新山と大有珠が見える。

 その目には有珠山がどのように映ったでしょうか。噴気地帯も見学し、最後には洞爺湖や羊蹄山、昭和新山を望むことが出来る場所へ行きました。さらにここでの子どもたちはずっと絶叫していました。「俺の家あの辺」「あそこが学校」とか言いながら、自分の住んでいる場所や学校がどんな所なのかを再確認したようです。洞爺湖も約11万年前大量のマグマを噴き出す火砕流が発生し大きなくぼ地に水が溜まってできました。その洞爺湖は日頃、自分の目線の位置でしか見ていなかったものが、眼下に見え、絶叫どおり、言葉にはならずとも“すごい場所に住んでいる”ということは感じてもらえたのではないでしょうか。


羊蹄山と洞爺湖を見てみんなは絶叫した。

 ここ最近、子どもたちがゲームを一人一台持っているのを見かけます。そういったゲームの中では非現実の世界が広がります。そのような様子を日頃、目にするといつも思うのは、“現実にある現象”を自分の目でそして足で確かめて体で感じてほしいということです。
 ここに住む子どもたちは、身近に貴重な自然があるというのはとても恵まれたことです。しかも歩いて行ける距離にあります。子どもたちには子どもたちなりに自然を感じているのかもしれませんが、さらにその自然への窓口を広げ、感じてもらうことがこれからも大切だと思っています。

※1 有珠山の一部(銀沼火口など)は立入制限区域となっており、一般の立入はできません。



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2009年12月15日オロフレ峠の樹氷

支笏洞爺国立公園 洞爺湖 浅田 唯衣

道内にある峠(車道)の中で標高が高い順でいうと、オロフレ峠は、石北峠、日勝峠につぐ標高930m付近の高さにあり、洞爺湖と登別をつなぐ道道となっています。「オロフレ」の語源はアイヌ語の「ホロ・フウ・レペツ」で「水中が赤い川」という意味があります。現在、オロフレ山から蟠渓へ流れ出る「白水川」を昔、「オロフーレ川」とよんだそうです。なぜ「水中が赤い川」が、「白水川」となったのかはわかりません。
 
オロフレ山は花の名所としても知られていますが、冬には峠へ向かう途中、ダケカンバの樹氷を見ることができます。


青い空と白い樹氷。

 オロフレ峠付近は地理的に濃霧(ガス)になることが多く、また風雪にさらされるせいかダケカンバの樹高は低く感じられます。樹氷とは、霧が樹木などに付着して生ずる氷のことです。室蘭地方気象台によると、海からの湿った暖気がオロフレ山系にはい上がり、雨雲を成長させるそうです。そのため、オロフレ峠に近いカルルスでは年平均降水量が2250mmに達し、道内でも一番の雨量を持つ地域だそうです。その雨雲がオロフレ山にあたった時、多くの霧を発生させ、ダケカンバに付着し、標高が高いことから氷り樹氷ができます。これから厳寒となり、さらにすばらしい樹氷を見ることができるでしょう。



オロフレ山はこれからさらに雪深くなるでしょう。


オロフレ峠からは羊蹄山やニセコ山系、倶多楽湖などの登別方面、太平洋などを望むことができます。冬の間はゲートが閉鎖されていますが、道道沿いからも絶景を望むことができます。運転にはくれぐれもご注意を!
 

道道沿いからの景色。左からニセコ山系、羊蹄山、尻別岳。尻別岳はアイヌ語でピンネシリ(雄岳)、羊蹄山はマチネシリ(雌岳)だそうです。私には親子に見えますが・・・

 

■洞爺湖登別線道道2号線からオロフレ峠展望台までの道路は、11月4日~6月14日まで冬期間閉鎖となっています。また、2号線の壮瞥町弁景から登別市カルルスまでは17時~9時まで夜間通行止めです。ご注意ください。

※参考書籍「壮瞥町史」


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2009年12月02日飼育展示

支笏洞爺国立公園 洞爺湖 加藤 康大

この時期、このところ毎年耳にする台詞。
「雪が降らないねぇ…」

もう師走だというのに、事務所から眺める有珠山の山頂がわずかに白いくらいで、洞爺湖周辺の平地にはまったく雪がない。

僕が大学生の頃は、11月の初めくらいになると札幌近郊のスキー場もフルオープンし、がんがんパウダーを滑っていた。

人間の活動がどれだけ地球に影響を及ぼしているのか、正直僕にはよくわからない。だけど明らかに雪は少なくなっている。それが地球の自然な変化だという意見もあるようだけど、ちょっとスピードが速すぎる気がする。僕が大学生だったのは10年と少し前。そんな大昔の話ではない。地球の歴史の中での10年なんて、時が流れたことにすら気付かないくらい、ほんの一瞬に過ぎない。

そんなわずかな時の流れの中でもはっきりと変化が感じられるのだから、人間の活動がまったく無関係であると言い切るのはどうかと思う。だけど地球が汗をかいている姿が見えないぶん、実感がわきにくい。


比べて外来生物問題は、問題の出所が明らかすぎるくらい明らかであり、これもまた極めて短時間で、しかも直接的に在来種とその地域の生物多様性にダメージを与えている。

食べるため、釣りを楽しむため、研究や実験のため、人間に害のある動物をやっつけるため、人間の食べ物となる動物のエサにするため、毛皮をとるため、ペットにするため…

みんな人間の「ため」じゃないか。そんなワガママのせいで、地球の歴史から見ても長時間と言えるくらいの時間をかけて築いてきた様々な生き物の暮らしが脅かされ、さらには人間の勝手であちこち無理やり移動させた生き物たちを、今は人間の手で捕まえて殺している。それが私たち人間という生き物だ。

今年度洞爺湖では、4万3千匹のウチダザリガニを捕まえて殺した。正直なところ、僕もいまだに迷う時がある。

これ以上、こんなことが起きないようにという願いを込め、洞爺湖ビジターセンターにてウチダザリガニの飼育展示を始めた。



※外来生物法に基づき、許可を得て飼育しています。ペットとしての飼育は許可されません。無許可での飼育は違法行為となります。


ウチダザリガニの他、アメリカザリガニ、ニホンザリガニも並べて飼育展示し、外来生物問題や生物多様性について説明するポップも作成した。

※ニホンザリガニは絶滅危惧Ⅱ類(絶滅の危険が増大している種)に指定されています。野外で見つけてもなるべく持ち帰らず、自然の中に戻してあげて下さい。


全ての文章は、できるだけ子供にもわかりやすいような言葉を選んだ。誰よりも、これからの世の中を背負っていく子供たちに見てもらい、考えてもらいたい。人間が同じ過ちを繰り返さないように。



展示を使った環境学習も実施。やはり「現物」を前にすると子供たちの食いつきも違う。

洞爺湖にウチダザリガニがいると、どうして良くないのか。
ウチダザリガニの他にはどんな外来生物がいて、どんな問題が起きているのか。
どうしてこんな問題が起きてしまったのか。
これ以上こんな問題が起きないようにするにはどうしたらいいのか。



飼育展示に併せ、洞爺湖温泉小学校の4年生が作成した「ザリガニ新聞」も掲示している。総合学習の時間をつかい、ウチダザリガニ防除体験学習、同じ洞爺湖に生息するサクラマスの遡上観察学習… 外来生物や生物多様性についてかなり突っ込んで勉強しただけあって、小学校4年生とは思えない高い完成度。子供ならではの視点から外来生物問題を取り上げている。

来年度の目標は洞爺湖町と壮瞥町の全小中学生に、現場もしくはビジターセンターにて、ウチダザリガニをはじめとする外来生物問題、生物多様性について勉強してもらうこと。
計10校なので、やってやれないことはない。

北海道洞爺湖サミット開催、支笏洞爺国立公園指定60周年、世界ジオパーク認定… 自然環境に関わるニュースでにぎわったこの地の自然とそこに暮らす生き物が、いつまでも安心して生活できるような場所であって欲しい。



◆飼育展示の開設にあたり、多大なご協力をいただいたUWクリーンレイク洞爺湖と酪農学園大学環境システム学部生命環境学科 野生動物保護管理学研究室の皆様に感謝いたします。

◆飼育展示は常設の予定です。ぜひ洞爺湖ビジターセンターに足をお運び下さい。



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2009年11月13日洞爺湖~四十三山・金比羅火口自然観察会

支笏洞爺国立公園 洞爺湖 浅田 唯衣

3回目の支笏洞爺国立公園60周年記念自然観察会が10月29日に行われました。お天気はあいにく小雨。13名方が参加してくださいました。今年8月に洞爺湖有珠山地域が世界ジオパークに登録され、住民の方々も少しずつ地域の自然について学びたいという意識が高まってきました。 
99年前に噴火によって出来た四十三山と9年前の2000年噴火によって出来た火口群、金比羅火口を舞台に、NPO環境防災総合政策研究機構の宇井先生を講師にお招きし自然観察会が行われました。その2つの場所を1日で歩いて約100年の経過を体感してみよう!というのが目的です。そしてもう一つが、洞爺湖といえば温泉。その温泉の源泉井戸が四十三山にあり、その井戸を見学しました。


洞爺湖ビジターセンターにある洞爺湖を1200分の1に縮小した空撮写真の上で洞爺湖や有珠山の成り立ちについてお話しました。

午前中は、金比羅火口群へ。2000年噴火の活動によって出来た大きな断層や元々、人々が生活していた場所に出来た大きな火口を見学しました。その火口は、有くん珠ちゃんという名前がついています。まだ火口のそばには噴気するような箇所もあり、有くん火口の中は、エメラルド色の湖水が見えます。なぜエメラルド色に見えるか?実は、地下から湧き出す弱い酸性の水が地下の岩の成分を溶かしているのではないかということのようです。火口縁では噴石や火山灰などが降り積もることによってできた層や、火口の麓に植生が回復してきた様子も目にすることができます。また、かつて人間の生活を忍ばせる電柱やアパート、国道跡のアスファルト、そして昔、洞爺駅から洞爺湖温泉まで走っていた洞爺湖電気鉄道が走っていた鉄橋跡などを見ることができ、火山と人間の生活がとなり合わせであることを感じます。


有くん火口(KA火口)の火口縁から。この景色を見て参加者のみなさんも驚きの様子でした。


午後は四十三山へ。四十三山歩道は2.45kmあり、1910年に噴火した際にできたいくつかの火口を見ながら噴火の歴史や温泉、また噴火後の植生について学びながら歩けるコースとして昨年6月に開通しました。どの時期もそれなりにおすすめですが特に、晩秋や春先は葉がなく、火口をきれいに見ることができます。
まず初めに、洞爺湖温泉を管理している洞爺湖温泉利用協同組合さんに特別に許可をいただき、四十三山麓にある源泉井戸にて、火山と温泉のメカニズムや、洞爺湖温泉の歴史について興味深いお話をしていただきました。井戸から出た源泉に触れ、火山の恵みを体感しました。
 その後、本日の第2の目的である四十三山にできた2番目に大きい火口へ行く予定でしたが、あいにく突然の大雨と雷により予定変更を余儀なくされました。その後は洞爺湖ビジターセンターにて、四十三山ができた経緯や今なお水蒸気を出している噴気孔などのみどころ、その噴火の際に当時活躍した人々などについて宇井先生よりお話していただきました。


四十三山の林内にて。わずかに紅葉が残る。
 

 
 最後に、支笏洞爺国立公園指定60周年を記念したクイズ大会を行いました。さてみなさんにも1つクイズを出したいと思います!

Q1.支笏洞爺国立公園は登別(カルルスを含む)、羊蹄山、洞爺湖、支笏湖、定山渓、北湯沢、蟠渓が国立公園となります。さて、面積は次のうちどれでしょう?(1ヘクタールは100m×100m)
1.90,481ヘクタール
2.99,473ヘクタール
3.226,764 ヘクタール

答えは最後に・・・。

支笏洞爺国立公園の特徴は「火山によって生み出される自然景観」です。それは人に恵みを与え、また時には脅威となります。しかし、この大地の変化によって、地球が生きていることを体感し、人間がどのように地球(自然)とつきあっていけばいいのかを知ることのできる場所です。今後も、この地域では住民の手でその自然とのつきあい方を、後世へ伝えていくことが大切なのだと思います。

昨年も同様の観察会を行い人気があり、今年も当初30名近い応募をいただきました。18日に行う予定でしたが、雨天のため延期となりました。また今後もこのような自然観察会を行っていきたいと思います。

※金比羅火口散策路/金比羅火口災害遺構散策路・四十三山歩道は11月10日より4月19日(予定)まで冬季期間閉鎖となります。
→金比羅火口散策路/金比羅火口災害遺構散策路についての詳細は洞爺湖町観光振興課まで(0142-75-4400)
→四十三山歩道についての詳細は洞爺湖自然保護官事務所まで(0142-73-2600)

クイズの答え
Q1.答えは2番の99,473ヘクタールです。北海道の中で2番目に広い面積を持つ国立公園です。北海道で1番大きい国立公園は大雪山で226,764ヘクタール。3番目に大きいのは阿寒国立公園の90,481ヘクタールです。阿寒と大雪山は、昭和9年に指定されました。
国立公園では国立公園の巡視や調査、施設整備を行っているレンジャー(自然保護官)とアクティブレンジャー(自然保護官補佐)がいます。支笏洞爺国立公園では自然保護官事務所は支笏湖と洞爺湖の2箇所のみです。現在総勢5名で行っています。ちなみにレンジャーという意味は「うろつく」とか「歩き回る人」という意味の英語から。アメリカの国立公園の現地スタッフをパークレンジャーと言ったのが始まりです。黄色い制服を着て、国立公園の中を“うろついて”いますので何かあれば、ぜひ声をかけてくださいね。


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2009年11月11日羊蹄山~半月湖自然観察会

支笏洞爺国立公園 洞爺湖 浅田 唯衣

お待たせしました!支笏洞爺国立公園指定60周年を記念した観察会、第2回目のご報告です!羊蹄山山麓にある半月湖で10月10日に自然観察会が行われました。半月湖は年代不明の火山活動によってできた火口湖で、直径700m、水深4mです。1周できる歩道がつけられており、日頃、地元の方の散歩コースにもなっています。今回は地元の方を対象に募集し、子供たち8名を含む29名の方が参加されました。まず初めに支笏洞爺国立公園についてクイズ大会をしました。
 さて突然ですが問題です!
Q1.支笏洞爺国立公園ではカルデラ湖である支笏湖と洞爺湖を中心に羊蹄山、樽前山、有珠山、地獄谷などの火山地形や、恵みである様々な種類の温泉やおいしい水があり、天然の火山博物館です。実は、この国立公園の中には活火山と定義される山がいくつも含まれています。道内の他の国立公園と比べると実はとても多いいのです。例えば有珠山、恵庭岳、樽前山、そして羊蹄山です。では羊蹄山の標高は次のうちどれでしょう?
1.1,041m
2.1,898m
3.3,776m

 答えは最後。よーく考えてくださいね。
 ■活火山って?!■
 活火山とは「概ね火口1万年以内に噴火した火山及び、現在活発な噴気活動のある火山」のことを指します。現在は日本に108の活火山があります。世界の活火山の約1割。

 早速、半月湖へ向かいます。その途中に大きなミズナラの大木があります。木はどのように成長し、どんな役目を果たしているのでしょう。今回、ニセコで活躍されているガイドの方を講師としてお招きし、半月湖の自然についてお話していただきました。さて、この木は大木で葉もついていますが、良くみると中は空洞です。なぜ生きられるのか?それは木の中を見ればわかります。生きているのは形成層という部分だけであることがヒントのようです。また、周りを見回すと木にはキノコなどの菌類がついています。木が様々なものと共存しながら森全体が形成されていることを学びました。



ミズナラの巨木の前で。見上げるほど大きな大木でした。

 
 次に目的地である半月湖へ。その半月湖の水際にはついこの間まで色づいていた様々な種類の葉が水面を彩り、まるで1つの絵のようです。羊蹄山は富士山と同じく成層火山(山頂や火口から長期噴火を繰り返して円錐形の火山体を作る)です。5~6万年前に誕生した羊蹄山は噴火を繰り返し約1万年以降には山頂の他、新たに山麓でも火口を作る噴火が起きました。その代表的なのがここ半月湖です。羊蹄山と半月湖の歴史や地形について雪をかぶった羊蹄山を眺めながら理解を深めました。



半月湖と羊蹄山のかかわりについて聞き入る参加者のみなさん。

 台風の影響でドキドキしながらの開催でしたが晴れた青空と紅葉の中、30名近い参加者のみなさんとの半月湖散策はあっと言う間に過ぎてしまいました。ぜひみなさんも自分だけの半月湖散策をしてみてはいかがですか。雪の中の半月湖も幻想的ですよ。


なんと、朝の下見の際に、逆さ羊蹄も朝方見ることができました!!

クイズの答え
Q1.答えは2番。1番は樽前山、3番は富士山です。富士山は羊蹄山の約2倍の高さですね。羊蹄山は富士山にそっくり。蝦夷富士といわれ、活火山です。

 少し補足です!「羊蹄山は国立公園指定後に追加されたのですか?」という質問を耳にしますが、指定当初から羊蹄山が含まれていました。国立公園に指定されるまでにはさまざまな論議が行われました。支笏洞爺国立公園の区域を決める際には羊蹄山が含まれていませんでしたが、当時の後志観光協会から、羊蹄山の他、「スキーで親しまれているニセコ、民謡で有名な積丹半島、海水浴で利用されている蘭島、水産加工で著名な岩内、果物の王国余市一帯を含む全てを国立公園に編入してほしい」という要望がありました。その中で支笏洞爺国立公園の特徴には湖沼(沼や湖)が多いことと、火山の多い点であるから、我が国において富士山に次ぐ完全な火山の原型を保っているので羊蹄山は編入しましょう!となったそうです。






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2009年10月19日登別~橘湖自然観察会

支笏洞爺国立公園 洞爺湖 浅田 唯衣

 今年は支笏洞爺国立公園60周年。5月16日で還暦を迎えました。そのお祝いに洞爺湖自然保護官事務所では10月に、登別の橘湖、羊蹄山山麓の半月湖、洞爺湖の四十三山・金比羅火口の3つの地域で自然観察会を行います。3日には橘湖で自然観察会を行い、地域住民15名が参加しました。
 橘湖は年代不明の噴火活動によってできた火口湖です。カルルス温泉から約2.3km、歩いて約40分~50分程です。最初に国立公園クイズを出しました。そのクイズをいくつかご紹介します。

Q1.北海道にはいくつ国立公園があるでしょう?
意外とみなさんわからなかったようです。みなさん調べてみてください。(答えは最後)

Q2.昭和9年に初めて日本でいくつかの国立公園が指定されることになりましたが、実は、この最初の国立公園の指定の時、登別や支笏湖、洞爺湖も国立公園の候補に挙がっていました。でも当時は「同一形式の風景を代表して傑出すること」と選定の方針にあったため道内のある場所に先を越されてしましました。ではその先に越されてしまった同一形式の風景を持つある場所とはどの国立公園だったでしょうか?
 
 さて、話は戻り、自然観察会では、子供達も4名も参加し、登山道沿いのキノコや落ち葉を見ながら元気に歩いていました。橘湖では青空も顔を出し、突然の通り雨もありましたが、静かな湖を堪能することができました。


参加者のみなさん。晴れ間ののぞく橘湖の前で。

 今回この記念行事では、参加者のみなさんへ自然保護官事務所で手作りの記念冊子をお配りしました。内容は、「写真でみる支笏洞爺国立公園の今昔」です。昔の絵はがきや写真から同じ場所を探し出し、巡視の中で同様の場所から撮影し、まとめました。今回は登別の今昔を一枚お見せしたいと思います。


大湯沼の昔。「日和山付近から大湯沼を望む。湯沼では、舟を浮かべて硫黄を採取している。」と記載されています。


大湯沼の現在。もちろん今は硫黄の採取は行われていません。

 最後に、橘湖周辺はクマが棲息している地域です。下見ではクマの糞を歩道沿いに見かけました。鈴の携帯や単独での歩行は避けるよう注意しましょう。
 
クイズの答え
Q1.答えは6箇所。日本には29箇所。道内は、利尻礼文サロベツ、知床、阿寒、釧路湿原、大雪山、支笏洞爺の6箇所。

Q2.答えは阿寒国立公園です。阿寒国立公園は、屈斜路湖、摩周湖、阿寒湖といったカルデラ湖や硫黄山や砂湯、ボッケといった自然景観や、温泉があり、「火山と湖と温泉」という類似の景観を誇り「同一形式の風景の代表」として「阿寒」が選ばれました。今でこそ国立公園の数は多いですが、当初は限定されたようです。

参考文献:「支笏洞爺国立公園指定経過記録」発行支笏洞爺国立公園指定記念式典協賛会(昭和25年5月)
写真抜粋文献:「登別温泉(札幌-第61号)」北海道地質資源調査所(昭和29年3月発行)


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2009年10月14日子供の目

支笏洞爺国立公園 洞爺湖 加藤 康大

ここ数年、「エコツアー」とか「環境学習」などという言葉を耳にする機会が増えた気がする。ただ旅行するのではなく、地球温暖化や生態系の変化などの環境問題について学ぶような学習会・観察会がツアーのメニューに組み込まれていたり、また学校においても、総合学習の時間などを使って地域の自然について学んだりすることが多くなっている。

僕も今年はウチダザリガニ防除体験をはじめ、シカによる生態系の破壊が続く洞爺湖中島の自然学習、サクラマスの遡上観察など、身近な自然とそこに暮らす生き物、環境問題を人に見せ、何かを伝えるということをやってきた。相手は地元小学生から一般の方まで様々だ。

こういった学習会の中身を考える時、参加者が例えば生態系なり外来生物なりについて順序立てて理解出来るような「ストーリーづくり」は不可欠。話をする側の頭の中でこの「ストーリー」がしっかり作られていないと、話を聞く側には何も伝わらない。




ところが、こちらが事前にしっかりとしたストーリーを作り、念入りに下ごしらえしていても、相手が子供となると一筋縄ではいかない。

「捕ったウチダザリガニ、どうしたらいいと思う?」
大人同士の意見交換なら「規制をクリアしたうえで食利用は?」「飼料化などはできませんか?」というのが妥当なところだ。生態系の保全に貢献しながら地域も潤うという、『一石二鳥方向』を見据えた回答。

ある小学生は「アメリカに返す」と言った。「食べるために持ってきたけど、もういらなくなったので返します、ごめんなさいって言うしかないじゃん」と。

捕獲したウチダザリガニを生きたまま原産地に返すことは生態系保全の観点からはOKなのか、法的に問題はないのか…? 予想外の答えにこちらも少し考え込んでしまった。即座に「法的に…」などと考えてしまう時点でアウトだ。

中島の遊歩道沿いでシカの死体を見て…
「ここのシカはね、他の地域のシカと比べると体が小さいよ。エサが少ないから大きくなれないし、冬を越えられないでこうやって死んでしまうシカも多い」
「どうして捕まえて島の外に出さないの? エサもなくて、体も小さくて、こんなふうに道ばたでバタバタ死んで…。この島に住んでるってことがかわいそうだよ」

食利用、観光利用、地域振興、研究対象… 様々なしがらみの中で生きる大人が忘れがちな、「いきもの」としての道徳みたいな部分を真っ先に考えているところがとても新鮮に映る。

わずか1日の学習会の中で、こちらが描いた「ストーリー」の全てを子供に理解してもらうのは至難の業だし、そんな必要もない。こちらが伝えたいいくつかの中からたったひとつだけ、それぞれの中で印象に残る部分があればそれで良いと思う。自然の中で子供たちは、大人よりもはるかに敏感で優れた「目」と「感性」を駆使し、自分なりに何かを吸収する。僕には見えないものが彼らには見える。

サクラマス遡上観察会


自然の中で子供たちと遊ぶのは本当に楽しい。業務だけど僕には「遊び」だ。意識して遊び心を忘れないように気をつけるのではなく、こちらも初めから遊ぶ気満々で出掛ける。でないと彼らのパワーとエネルギーには太刀打ちできない。大人と子供が一緒になり、心から遊びを楽しむことが最大の環境教育ではないかと思う。いつまでも彼らと同じ、とまではいかなくても、それに近い「目」と「感性」を持ち続けていられたらいいな。


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2009年10月13日秋終盤~秋色色

支笏洞爺国立公園 洞爺湖 浅田 唯衣

 羊蹄山はもう初冠雪を終え、山頂付近の谷筋はうっすら白く化粧されています。洞爺湖湖畔沿いや有珠山山麓の木々は色づき、気温もぐっと下がり冬へ着々と向かっているようです。日は短くなって仕事帰りのバスからは、満月が洞爺湖を照らし、湖面に光の帯が映る様子を見ることもできます。
 四十三山の巡視に入りました。すっかり落ち葉ロードになり、赤い実をつけたカンボクやガマズミ、ノイバラがすでに終盤です。歩道入り口にあるクリの木も実をぼたぼたっと落ち、歩道を歩けばカツラの葉からはキャラメルのこがした様なにおいも漂います。四十三山には多いオオウバユリも、実から種子がはじける寸前です。その種子は「キツネの小判」といわれているそうで、この時期、小判が何枚も入っているのを見ることができます。もう時期、実がはじけて風に飛ばされるのでしょう。


狐の小判。オオウバユリ。
オオウバユリは「大姥百合」と書き、種子から開花するまでに10年以上かかるそうです。白い花の咲く頃に、葉が枯れてなくなることから、姥の歯が抜けることをたとえたようです。またノブドウを初めて見ました。ほぼ全国で見ることの出来る、つる性の落葉木で水色や紫色と濃淡もあり宝石のような実を付けます。この実の色を見たときなんて自然から生み出される色はすごいのだろうと感動しました。


色鮮やかなノブドウ。

しかし帰って調べてみたところ、ノブドウの本当の色は赤紫で、ブドウタマバエやブドウトガリバチといったハエやハチの幼虫が寄生することで紫や水色になるのだそうです。自然は共存していることも改めて実感です。これからは紫色の小さな実をつけるムラサキシキブも四十三山を彩るでしょう。
 自然界にはたくさんの秋色で色づいています。オレンジもあれば水色もそして赤もあれば紫も。みなさんぜひ自分の秋色を色々探して下さい。


洞爺湖ビジターセンターから望む夕暮れ間近の有珠山。



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