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アクティブ・レンジャー日記 [北海道地区]

北海道地方環境事務所のアクティブ・レンジャーが、活動の様子をお伝えします。

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支笏洞爺国立公園 洞爺湖

169件の記事があります。

2009年10月08日ホロホロ山

支笏洞爺国立公園 洞爺湖 浅田 唯衣

 先月、ホロホロ山登山道の巡視を行ってきました。ホロホロ山は伊達市と白老町にあり、登山コースは、伊達市大滝から日鉄鉱山跡コースから徳舜別山とホロホロ山へたどる登山道と、もう一つは白老町から登る白老コース(ホロホロ山登山口より)があります。白老コースは国立公園内にあり、ホロホロ山の山頂を境にしています。
 ホロホロ山への白老コースは昭和58年に出来た登山道で、利用者は日鉄鉱山跡コースよりは圧倒的に少ない状況です。道道から林道に入り、約4.5kmで「ホロホロ山登山口」という看板が設置されてある旧登山口があります。(標高650m付近)ここには登山者名簿があるので入山の場合は記入しましょう。ここから4.5合目(標高840m付近)まではかつて登山道が沢沿いに延びていましたが、現在は通行不可です。ここからは4.5合目まで林道が伸びているので徒歩か、車で上がります。車の場合は、4.5合目の登山口は3台程のスペースしかなく、また林道は雨水により段差が激しく、落石の可能性もあるため乗用車(?)はおすすめしません。




ホロホロ山頂手前の名前のないピーク。斜面は紅葉していました。
 
 そこからの登山道は迷う道もなく、途中ダケカンバの合間から、支笏湖や樽前山、恵庭岳、無意根山を望むことができます。樽前山山頂にある溶岩ドームからは噴煙が出ているのを確認できます。




ホロホロ山山頂より支笏湖、樽前山、恵庭岳が見える。

紅葉は約1000m付近まで下りていました。さらに上がるとハイマツ帯に入り、ますます、支笏湖が目前にせまるような景色が見られます。登山道沿いには鮮やかな紫色のエゾリンドウが目を引きます。ハイマツ帯を標高差100mほど上がれば、そこはもう360℃のパノラマ。近くはオロフレ山、羊蹄山、有珠山、洞爺湖、駒ヶ岳など、また遠くには日高方面の山々の展望が開けます。またなんと言ってもホロホロ山頂から歩いて30分もかからない距離に徳舜別山がせまります。山の形は三角帽子のようで、長く稜線に延びる登山道が帽子のてっぺんにつながっています。斜面はオレンジ、緑など色鮮やかになっていました。ホロホロ山は別名、徳心別山で標高1322.4m。徳舜別山は1309mです。なぜホロホロなのかはわかりません。でもステキな山名です。ぜひここまできたら徳舜別山へ登ってみましょう。




三角帽子の徳舜別山。

 この山域はクマも出没します。注意しましょう。また、ホロホロ山山頂からは北に延びる稜線が登山道と間違えやすくガスがかかっているときは要注意です。山頂からはやや東に向かいます。タイムコースは4.5合目からは登り1時間30分、下り50分ほどです。またホロホロ山の巡視は来年です。



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2009年09月15日羊蹄山~秋近づく

支笏洞爺国立公園 洞爺湖 浅田 唯衣

先週、今年3回目の羊蹄山巡視に行ってきました。羊蹄山は4コースあり、複数の登山道状況を確認するため、登りと下りは違うコースを歩いています。今回は喜茂別コースから真狩コースへ下りました。巡視日は、道内9月下旬から10月上旬の気温となり、大雪山系の黒岳も初冠雪した日です。羊蹄山山頂上付近は、温度計は8℃で日本海側からの風もまともに受け、体感温度はじっと立っていられない程の寒さです。
 喜茂別コースは4コースの中でも一番登山者が少ないですが、登山道から外輪に出てすぐ1,898mの山頂に到着できます。その代わり急な登山道が続きます。途中は京極町の町並みや、畑が眼下に広がり、余市岳、無意根山、近くは尻別岳が望めます。特にこの時期の畑は黄金色や緑色が交わり、まるでパッチワークのようです。1,500m付近からハイマツやウラジロナナカマドなど、ところどころ色づきはじめていました。喜茂別コース山頂直下上部の登山道は一部、踏み跡が少なく不明瞭な箇所があり注意が必要です。




ハイオトギリの紅葉。

 山頂に出ると、風が強く視界はゼロ。こんな日でも登山者25人程に出会いました。今回はお鉢の様子は見ることができませんでしたが、風や寒さに負けずイワギキョウ(岩桔梗)が咲いていました。この前の巡視で確認したイワブクロはもうすでに花を閉じ、秋の気配を感じます。




岩場に映えるイワギキョウ。

 また、登山道には何やらいくつもハイマツの実を食べた跡がありました。エゾシマリスかエゾヤチネズミの仕業でしょうか。




お行儀が悪いようです・・・ハイマツの実はとってもおいしいのでしょう。(登山道にて)

 また、ハイマツの実をくわえながら飛行するホシガラスを3羽も見かけました。ホシガラスは一般的に高山に生息し、ハイマツなどの種子の他、昆虫や小動物なども食べています。羊蹄山に棲む生きものは冬に備えて大忙しです。もしかしたらあの食痕はホシガラスなのかもしれません。ハイマツの実は動物に運ばれ、いくつかの種子は残り、新たな地で生存できるような自然の仕組みが出来ています。こうやって過酷な自然環境を動物と植物はもちつもたれつで生き延びます。
 下りは真狩コース。この登山道では、遠くは狩場山や駒ヶ岳、恵山、樽前山、日本海など、近くはオロフレ山や徳舜別山・ホロホロ山、洞爺湖、有珠山、昆布岳、内浦湾を望め、そして真狩村が眼下に広がります。まもなく冬はやってきます。
羊蹄山避難小屋閉め(管理人の下山)は10月12日(月)の予定です。



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2009年09月02日増加

支笏洞爺国立公園 洞爺湖 加藤 康大



「増加」

7月27日(月)~8月2日(日)、1週間のウチダザリガニ特定区域調査(毎年、同じ日の同じ場所にカゴを仕掛け、1週間毎日引き上げ分布密度の変動や生息域の拡がりをみる)を終えた。

これは…!?

洞爺湖温泉街一帯で、一昨年から昨年の増え方とは比較にならないくらい爆発的に捕獲数が増えた。捕獲カゴ35個、6日間の引き上げで5,197尾の捕獲。1日平均866尾。ひとカゴ平均に換算した数字で比較してみると、一昨年2.7尾、昨年4.3尾、今年24.7尾。

同じ時期の同じ場所で…。

昨年との微妙な水温の差や、自分が潜水するようになり、ザリガニ密集地帯にピンポイントでカゴを仕掛けることが出来るようになった、という理由だけでは片付けられない増加ぶりである気がする。

昨年度、11,000尾を捕獲したのは洞爺湖じゃなかったか。ある場所に侵入・定着した外来生物が、一定期間を経てから爆発的に増加するというのがこれか…。




(黒い粒はウチダザリガニの卵。昨年秋の調査では、535個もの卵を抱えたメスもいた。かなりの繁殖力であることは間違いない)
※ひと粒ずつ、卵の数をカウントしてくれた酪農学園大学の学生、お疲れ様。

くわえてスジエビやウキゴリ、ヨシノボリなど、混獲される他生物が減った(混獲された他生物は数をカウントしてリリースしている)。これだけの数のウチダザリガニが湖底をのそのそ歩き回っていたら、他の底棲生物は暮らしにくいのだろう。

この勢いで数を増し、生息域を拡げ、洞爺湖につながる河川に侵入した場合、そこに棲む生き物たちは何を思い、どう対応するのだろう?
洞爺湖の水源、湖から河川への遡上・産卵が見られるソウベツ川のサクラマスは困らないのだろうか、川底に産み落とされた魚卵など、格好のエサになってしまうのではないだろうか…。

今年度より、壮瞥町がウチダザリガニ防除に取り組んでいる。2名の担当者が11月まで、ひたすらウチダザリガニを捕獲するというなんとも強力な捕獲圧。先月、洞爺湖町と提携を結んだ酪農学園大学の学生も頻繁に洞爺湖を訪れ、ウチダザリガニをはじめ、アライグマや中島の生物、洞爺湖の水質など、様々な生物調査・環境調査を行い、地域のためにデータを蓄積してくれている。地元ダイバーによるNPO、UWクリーンレイク洞爺湖も、メンバー全員が本業を持つかたわらで、学校や民間企業などからの依頼による環境学習会、ダイビングツアー等を受け入れながら、熱心にウチダザリガニ防除に取り組んでいる。足元の自然をなんとかして守りたいという一心で。そういった地道な活動により、地域の子供を育て、身近な自然環境を守っていくことが、将来的に地域の活性化にもつながると考えているからだ。




(防除活動中に声をかけられることも多い。丁寧に外来生物やウチダザリガニについて説明する。普及啓発効果も大きい。)




(ザリガニ防除がきっかけで、今では洞爺湖でダイビングライセンスを取ることもできるようになり、地元ダイバーも増えはじめている。)

いつまでも「観光振興第一」という考え方では何も変わらない。一気にとはいかないが少しずつ転換を図る必要がある。そのためにはまず、足元の自然や環境問題についてもっと深く理解し、その貴重さや大切さに気付いてほしい。

8月末現在、洞爺湖での総捕獲数、20,000尾。みなさんと連携し「根絶は不可能」とあきらめる前に、出来る限りの捕獲圧をかけ続けてみようと思う。




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2009年08月21日大平山って国立公園ではない?

支笏洞爺国立公園 洞爺湖 浅田 唯衣

 今年も大平山(おおびらやま・おびらやま)の巡視に行ってきました。大平山は北限に近いブナ天然林、石灰岩地植生が貴重な山ですが、国立公園ではありません。でも大平山には、自然環境保全法により環境大臣が指定した自然環境保全地域があります。全国各地にある自然保護官事務所では国立公園以外にも、こういった場所の巡視も行っています。

 ところで、みなさん日本の国土は国立公園だけでなく、さまざまな形で指定され、保全されていることをご存じですか?

 なが~くなりますが、大平山の巡視の写真を入れながら(写真で休憩してください。)ご紹介したいと思います。



 目の保養に、エゾカワラナデシコ(蝦夷河原撫子)です!きれいなピンク色でとても好きな花です。


○自然公園(自然公園法)
 優れた自然の風景地を保護と自然とのふれあいの場として利用を推進している公園のことです。

1. 国立公園・・・日本の風景を代表する優れた自然の風景地で、環境大臣が指定し国が管理を行います。(全国29ヶ所)

2. 国定公園・・・国立公園に準ずる自然の風景地で、都道府県の申し出を受けて環境大臣が指定し、都道府県が管理を行います。(全国56ヶ所)

3. 都道府県立自然公園・・・国立・国定公園に次ぐ、自然の風景地で、都道府県を代表する公園で、都道府県が条例によって指定し、管理を行います。(全国309ヶ所)

 大平山の登山道のある西斜面は、狩場茂津多道立自然公園に指定されています。

○自然環境保全地域(自然環境保全法)
 原生状態が保たれている地域や優れた自然環境を保全するために指定したものです。自然環境保全地域には次の種類があります。

1. 原生自然環境保全地域・・・人の活動の影響を受けることなく原生の状態を維持している地域のこと(全国5ヶ所指定)。北海道は遠音別岳と十勝川源流部の2ヶ所があります。

2. 自然環境保全地域・・・①高山・亜高山性植生、優れた天然林②特異な地形・地質・自然現象③優れた自然環境を維持している海岸・湖沼・湿原・河川・海域④植物の自生地・野生動物の生息地の内、①~③と同程度の自然環境を有している地域 であること。(全国10ヶ所指定)。北海道では大平山の1ヶ所だけです。

3. 都道府県自然環境保全地域・・・「2.自然環境保全地域」に準ずる自然環境を維持している地域(海域を除く)で、都道府県条例で定めたもの。北海道では大千部岳など7ヶ所あります。


 自然公園と自然環境保全地域は、ともに自然環境の保全を図る目的があります。しかし、自然公園は適切な利用の推進も目的とされていますが、自然環境保全地域には利用の視点がないという大きな違いがあります。大平山自然環境保全地域のエリアは、原生的な自然が保たれています。

○その他
 大平山のほとんどの地域が森林法に基づく保安林に指定されています。また、大平山を所管する北海道森林管理局では、植物群落保護林に設定し保護しています。



 大平山へは登り約4時間、下り約3~4時間かかり、途中、不明瞭な道、落石や滑落の起こりやすい箇所もあります。ブナの実が大好きなクマの落とし物もブナ林では良く見かけます。



大平山から狩場山方向を見た風景です。人間が造り出した人工物は全く見あたりません。

 すべてにおいて言えることは、大平山には貴重な自然があって、誰が指定や管理をしても、みんなで守って行かなくてはならなりません。そして、日本には、大平山だけでなく、守られなければならない、たくさんのすばらしい自然があるということです。
 みなさんが住んでいる近くにはどんなステキな自然がありますか?なが~い日記おわりです。

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2009年08月07日夏の羊蹄山

支笏洞爺国立公園 洞爺湖 浅田 唯衣

 7月は天候不順で、昨年よりも低温が続き洞爺湖からの羊蹄山はなかなか顔を出してくれませんでした。そんな中、7月20日の1日はすっきり晴れて巡視日和となりました。
 羊蹄山は4コースありますが、多くの方が利用されているのは、真狩コースと倶知安(比羅夫)コースです。今回の巡視は、京極口から倶知安口へ下山するコースで、登山者カウンター、登山道、避難小屋などの状況確認をしました。京極コースは喜茂別コースと並んで利用は他と比べ少なく、夏でも外輪まで静かな登山が楽しめます。京極コースは山頂まで、4時間半~5時間かかり、途中1600m付近からはガレ場を抜け、足元に咲く花々や雲の合間からのぞく町並みに元気づけられます。




登山者で賑わう羊蹄山山頂。

 この時期目立つのはイワブクロ(岩袋)。うすい紫色で高山のレキ地や岩場に咲き、葉は厚みがあります。そして特徴的なのが花の外側にある産毛みたいな毛。きっと羊蹄山の厳しい天候下にも耐えられるような仕組みになっているのでしょう。しっかりと根を張り、力強さを感じます。




イワブクロと火口。

 他、メアカンキンバイ、コケモモ、ヨツバシオガマ、イワギキョウ、チシマキンレイカ、クルマユリ、ミヤマオダマキなどが見られます。
 
 羊蹄山は往復約8~9時間かかります。トイレは避難小屋にあるのみ。真狩コース8合目と倶知安コースの9合目を結ぶ間にあります。また、水は山中では補給できません。少なくても夏は1.5~2リットルの水を持ち、水分補給と服装での体温調整を行いながら無理のない登山を行ってください。山中ではテントは張ることができません。避難小屋の利用となります。山中泊の場合、避難小屋へは少なくても15時位までには着くようにしましょう。


外輪より洞爺湖や有珠山、昭和新山が望める。

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2009年07月24日中島

支笏洞爺国立公園 洞爺湖 浅田 唯衣

 今月中旬、洞爺湖地区パークボランティアさんと今年2回目の中島ゴミ清掃に入りました。ここ最近気になることがあります。それは「倒木や落石が多くなった」こと。中島は約4~5万年前に火山活動によって洞爺湖の真ん中に出来た小さな島です。
 中島には50年程前に人間によって持ち込まれた3頭のシカが繁殖し、今では250頭程が約5.2k㎡の小さな島内で生活しています。そのシカによりシカが食べられる高さの植生ラインはほぼ葉や樹皮を食べられてしまい、シカが好まない植物のみを残し、ほとんど下草が無い状況です。



地面を見ると・・・シカが歩いた跡がいくつも。中島の歩道脇では倒木が目立ち、地面は下草がほとんどない。一部、樹皮剥ぎ(写真右)が見られる。

さらに、狭い島の中で多くのシカが歩き、表土は荒れて、そこにあった樹木は、根を張れなくなっています。中島は火山活動でできた溶岩ドームの集まりです。だから土のすぐ下は溶岩が積み重なって出来ていて、もともと地盤が弱く、根も深くまで張ることが出来ない場所です。耐えきれなくなった木は倒れ、今度は倒れた木の葉や樹皮をまたシカが食べています。落ち葉も食べていることが研究では分かっているようです。



薄い表土の下は分厚い岩が積み重なっていて不安定な状況。


 想像してみましょう。倒木が増え、その倒木の葉などをシカが食べ、厳しいながらも生きていく・・・またシカが増え、木が倒れていく・・・・中島は「木のない島」になるかもしれません。木が無ければ鳥や昆虫もいなくなり、シカもいずれ死に至るかもしれません。人間が持ち込んだたった3頭の生きものが、小さな島に与えた影響は大きく、もともとあった自然に戻すにはいかに大変であるかというのをこの島は訴えていると思います。
 今回の清掃活動では、羽化したばかりのコオニヤンマを見ることが出来ました。この中島の将来を知ってか知らないのかゆっくりと空にはばたいていきました。今、私たちに欠けていることは、「想像すること」。想像して今できることを少しずつやっていきたいと思います。


羽化したばかりのコオニヤンマ。翅(はね)がまだキラキラしています。

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2009年07月02日オロフレ山の登山道状況

支笏洞爺国立公園 洞爺湖 浅田 唯衣

オロフレ山のパトロールを行ってきました。オロフレ峠も道道のゲートが6月頭に解除され、多くの登山者や観光客で賑わってきました。その時期一番目立つのがシラネアオイの花。登山のガイドブックや、写真愛好家の中では広く知られるようになり、今ではこの花を目当てに来る人も少なくなくありません。現在はシラネアオイの見頃は過ぎましたが、頂上付近までその大輪を歩道から眺めることが出来ます。




シラネアオイ(白根葵)が登山道沿いに開花。本州ではここまでの群落はなかなか見られない。


 オロフレ山は1230.8m。標高930mのオロフレ峠から頂上へは、往復約3時間30分ほどです。もちろん標高はそれなりにあり、峠ではガスがかかっていることが多く、いつも冷涼で湿った空気が抜けるので、多くの高山植物を見ることが出来ます。そのような貴重な場所で大きな問題が起きています。
 

 まずは、登山道の浸食化と複線化、そして脇道です。雨水や雪解け水で、もろい土は削れ、道は深く掘れたり、広がったりします。もう1つの要因は人為的なことでおきます。それはオーバーユースとそれに伴うストックです。簡単に車で一気に標高1000m近くまで上がることが出来、頂上までは慣れている人ならば手軽に登れ、多くの人がたくさんの花を見に訪れます。また、多くの登山者が使用するストックにより不用意に登山道外や、崩れやすい箇所をついてしまったりすることで登山道は荒れていきます。さらには、そうした荒れた道を避けるために新たな道が作られていきます。ストックにはぜひキャップを着用して自分への負荷だけでなく、なるべく山へも負荷のかからない心がけが必要です。このような問題はここに限らず、日本各地の山で良く耳にします。


掘れてしまった登山道。右上は、その掘れた道を避けてできた新たな道。階段状になっている。

 また、特にこのオロフレ山で問題になっているのが、シラネアオイの花をカメラに収めたり、近くで眺めたりするために、ロープが張っているにもかかわらず、登山道からわざわざ外れ群落の中に入っていく人がいることです。シラネアオイの群落地には、脇道がいくつも作られてしまいました。そうしたことでいずれ、笹が侵入したり、靴についていた外来種の種が着床したりする問題が必ず出て、いま可憐に見せるシラネアオイの花も数が少なくなるかもしれません。


写真左下をよく見ると・・・斜面がきつい場所にもシラネアオイの群落へ入る脇道ができてしまった。

マナーを守れない人がいることに悲しくなります。将来の自然の事を考えてみましょう。みなさんの子孫がこの大輪を見て楽しめることができるでしょうか。

2番目にゴミの問題です。登山道にはゴミはそう見かけませんが、オロフレ峠にはトイレが常設(夏季)されているにもかかわらず草の茂みにティッシュ(汚物)があったり、たばこの吸い殻が落ちています。
 
 これから7月に入りチシマフウロ、ウコンウツギ、エゾキスゲ、コケモモ、ベニベナイチヤクソウなどなど、たくさんの花が出迎えてくれます。ぜひマナーを守って山歩きを楽しんでください。また、オロフレ山は、標高も高く天候が変わりやすいので、安易に軽装で登らないようにしてくださいね。

 パトロール引き続き頑張っていきます!


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2009年06月30日開幕戦

支笏洞爺国立公園 洞爺湖 加藤 康大

「開幕戦」


6月20日(土)洞爺湖にて、ウチダザリガニをはじめ、洞爺湖周辺地域の自然や生き物、環境調査などで日頃からお世話になっている酪農学園大学 環境システム学部 生命環境学科のフィールド実習を行った。

中島のシカ調査、洞爺湖の水質調査、透明度調査、ウチダザリガニ防除、カヌーの組み立て・操作など、フィールドでの調査方法や必要なスキルを実際の現場で学ぶ。

こんな授業ばかりなら、僕も毎日大学に行っただろう。

僕はやっぱりザリガニ担当。防除認定団体である地元NPO、UWクリーンレイク洞爺湖のダイバーに協力をいただき、水中カメラと陸上モニターをつないで水中環境やウチダザリガニの捕獲シーンをライブ中継する。それから今シーズン初のカゴ捕獲に個体計測。



水中のライブ映像。足下からの生中継を真剣に見入る。



個体計測。まだ水温が低く、捕獲数はさほど多くなかった。



洞爺湖のウチダザリガニ防除について少し。

サミット効果と言ってよいのかどうなのか、昨夏は洞爺湖の自然環境ネタとしてウチダザリガニが頻繁に取り上げられ、新聞やテレビの取材も多かった。防除認定の申請や、ウチダザリガニを使った環境学習会、修学旅行での防除体験などの依頼が増えたと同時に、捕獲カゴからのザリガニの盗難や、無許可での潜水捕獲を試みるダイバーも増えた。

そんな事態を受け、2009年2月「洞爺湖生物多様性保全協議会」が発足。ローカルルールを作り、防除者の管理や調整を図るほか、環境教育や普及啓発を行い、将来的には洞爺湖一円の生物多様性を保全することを目的として、地元自治体、教育委員会、観光協会、漁業協同組合、大学など、様々な団体が連携を図っている。

ここで大切なのは方向性だ。根本は「生物多様性の保全」「外来生物の防除」でなければならない、というのが同協議会の方針。

こういった軸ずれのない環境保全活動により、身近な自然が正常に保たれ、その魅力により地域も活性化するという流れを生み出すことが大切。効果が現れるまでかなりの時間が必要だが、目先の利益ばかり追っていては何も変わらない。

堅い話になってしまったが、ともかく、水温の上昇とともにウチダザリガニの活性も急激に上がってくる。シーズン最初のカゴ入れの時、餌となる魚のアラのにおいが染み込んだ磯くさい捕獲カゴを広げた瞬間、「今年も開幕か…」という気持ちでいっぱいになる。頑張らねば。




中島と羊蹄山をバックに。この人数で攻められたらザリガニもたまらない。

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2009年06月22日四十三山だより~2~小さな虫たち編

支笏洞爺国立公園 洞爺湖 浅田 唯衣

先週、四十三山の歩道維持管理のためすべてのコースを巡視しました。総距離は2.45km。アップダウンもあるので1日がかりです。この時期になると、イタドリが太陽を浴びこの時ばかりはと伸びます。手に鎌を持ち、自分の身長に近いイタドリを刈りました。歩道上にある必要最低限の草刈りですが、かなりの重労働です。こうした仕事もアクティブレンジャーの大切な仕事です。
林内は、ホオノキ、イタヤカエデ、ドロノキ、ミズナラなど沢山の木が葉を広げ、歩道沿いを見れば、フキも負けてはいませんが、それ以上に直径1.5mほどに葉を広げたシダの株が多く見られます。シダの名前は「オシダ」といい、冷温帯の気候で湿った場所に群生し、大型で株を作ります。日本には約630種類もあり、その歴史は約4億年前にさかのぼるそうです。こうしたシダの葉をめくって見れば、そこに住む小さな虫たちのミクロな世界が見えてきます。



手袋とシダを比較してみてください!


これは、何かの幼虫がシダの葉を利用し、毛布のようにくるんと巻いています。



やや黒く光っていて約2~3cm位の大きさでした。いったいなんの幼虫なのでしょうか!?


他にも葉の上、石の上にたくさんの虫たちが生活しています。

こんな幼虫も・・・・チョウか、ガの幼虫かもしれません。



名前がわかる方がいらっしゃったらぜひ教えてください!!


私はこの時期の四十三山もとても好きです。暑い日差しを木々の葉がさえぎってくれて、林内は涼しくも感じられます。火口は緑でさえぎられなかなかわからないのですが、その代わり、小さな虫たちが盛んに、そして一生懸命に生活している様子を見ることができます。また小さな花々に彩られ、木々の間は鳥たちでとってもにぎやかですよ。運が良ければクマゲラやエゾライチョウにも出会えます。そんな彼らにいつもパワーをもらっています。



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2009年06月11日「羊蹄山の春」

支笏洞爺国立公園 洞爺湖 加藤 康大

毎回のことだけど久しぶりの更新です…。

6月3日(水)、山開き前に羊蹄山巡視へ。本格的夏山の一発目でいきなり羊蹄。大丈夫なのか…。5時30分出勤、5時50分洞爺湖ビジターセンター出発。6時30分真狩登山口到着、官用車1台をデポし6時45分、喜茂別登山口着。入念なストレッチのあと7時00分スタート。

羊蹄山には4本の登山道があり、年間1万人弱の登山者の大半は真狩ルートか倶知安ルートを利用する。今回の喜茂別ルートはかなりマニアック。個人的にはあまり人間の気配が感じられない登山のほうが好きだ。

※平成20年度、入山者名簿からのデータ。
真 狩ルート:約4,000人
倶知安ルート:約3,000人
京 極ルート:約800人
喜茂別ルート:約200人

喜茂別登山口の標高は360m。ピークは1,898mだから、約1,500mをほぼ直登することになる。怠けた身体にはなかなか堪えるが、心が折れないよう無心で登る。

標高1,400mを過ぎたあたりから登山道脇に残雪が目立ちはじめ、1,500m手前で登山道は完全に、巨大な雪渓に隠されてしまった。かなり斜度もある。滑落しないよう注意しながら登りつつ、スキーを担いで来なかったことを後悔した。

雪渓と、雪解け水がザーザー流れる沢登りのような登山道が交差を繰り返す。ルートを見失いやすいので注意。自信がなければ引き返したほうがよい。さらにこの日は、いきなりガスが下り始めてきた。一気にアドレナリンが放出され胸が躍る。

雪渓を越えガレ場を抜けるとピークの標識が見えた。11時30分、1,898mピーク到達。

(浅田ARの男前な後ろ姿)



稜線の風は冬そのもので、ダウンとニット帽で防寒。時折10~15mくらいの突風が吹く。飛ばされないように注意。お鉢(山頂火口)にもしっかりと残雪。うーん、まだまだいける。

(稜線からお鉢を望む:浅田AR撮影)



時計回りにガレ場の稜線を歩き、12時00分、9合目避難小屋到着。まだ1階入り口は閉じられており、梯子をよじ登って2階出入り口から中へ。炭水化物を補給し、12時50分下山開始。下りは真狩ルート。4合目と3合目の中間地点は地滑りの跡があり、登山道を見失いやすくなっているので、迷わないよう注意が必要。

(雪渓を下る:浅田AR撮影)



14時50分、真狩登山口着。出口手前で4~5羽のエゾフクロウに遭遇(群れ?)。警戒しながらもなかなか飛び立たない。荷物の軽量化を図り、望遠レンズを持っていなかったのが悔やまれた。

参考まで…
【登り】(喜茂別ルート)4時間30分
【下り】(真狩ルート)2時間00分
【足下】夏用登山靴 ※雪上歩行に自信がなければ要アイゼン
【飲み水】2リットル
【防寒着】ダウン、手袋、ニット帽
【登山者】0人
【2日後】筋肉痛

登山シーズン開幕ですね。羊蹄山でも年々、遭難騒ぎの件数が増加しています。自身の体力を考慮して行程には余裕を持ち、危険を感じたら無理せず引き返すよう心がけて下さい。



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