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アクティブ・レンジャー日記 [北海道地区]

北海道地方環境事務所のアクティブ・レンジャーが、活動の様子をお伝えします。

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支笏洞爺国立公園 洞爺湖

169件の記事があります。

2009年06月11日中島の湖畔清掃

支笏洞爺国立公園 洞爺湖 浅田 唯衣

先月末、洞爺湖地区パークボランティアによる中島の歩道清掃が行われました。お天気は曇りのち雨。中島は洞爺湖の真ん中に浮かぶ島で面積は5.2K㎡。湖畔より見ることの出来る洞爺湖は中島あっての景色です。もやのかかった中島や、風が穏やかな時に湖面に映しだされる中島など、一度として同じ景色を見せることはありません。洞爺湖地区パークボランティアでは、その中島の環境について考えながら、歩道沿いの清掃を行っています。
  
 コースは温泉街より出ている観光船で大島桟橋まで向かいます。下船後、島内唯一のトイレを済ませ、森林博物館で入山届けを出し、火ばさみとゴミ袋を持って出発。中島は、かつて全周歩くことができましたが、西側歩道沿いは崩落により今は通行出来ません。まず始めにカラマツ・トドマツ林内のウッドチップが引かれた歩道を、大平原に向かって歩きます。ところどころゴミはあるものの、目立ったものはありません。大平原では羊蹄山の中腹もわずかに顔を出していました。大平原までは約30分ほどです。


大平原に向かう途中にあるカツラの巨木。


 大平原より北側の歩道へ下りると、時計回りに大島桟橋まで歩道が続き、この間ではゴミが多くあります。内容としては、特に、ティッシュの花(汚物)や、瓶・缶、ペットボトルが目立ちます。他、発泡スチロール、食品などの袋、靴、燃料缶、ベニヤ板、ゴムボートなど様々なものがあり、湖岸から流れ着いたものや、中島で焚き火などをしてゴミを捨てていくことで、飲み干したビールの缶などが取り残されています。焚き火の跡は3~4箇所ありました。


湖畔沿いにあった焚き火跡。まだ新しい。

 こうしたゴミを一人一人が40Lのゴミ袋を両手に、約1時間30分から2時間ほどかけながらゴールを目指して歩きます。

 中島は、対岸から見れば湖に浮かぶきれいな島々です。しかし中を歩くと無惨にゴミが湖岸や歩道沿いに落ちている現状があります。支笏洞爺国立公園である前に、みなさんの一人一人のマナーが守られない限り、この自然をいつまでも残すことはできません。中島はシカによる食害など問題は山積していますが、私たちの中島による小さな“こつこつ活動”がみなさんにも広がるように期待します。
 
 おまけですが、歩道沿いではヤマツツジやヤマシャクヤクなどが咲き、大きな巨木も見ることができます。ゴミではなく、すてきな自然にもちろん出会いましたよ。中島を1周歩かれる場合は、歩き慣れた靴で歩いてくださいね。
※中島では、キャンプは禁止されていて、法により罰せられることがあります。マナーを守りましょう。


今回拾ったゴミ。これはまだ少ない方で時期が変わればまた増える・・・。

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2009年06月02日静かな湖畔 ~橘湖~

支笏洞爺国立公園 洞爺湖 浅田 唯衣

登別温泉といえば、地獄谷の間欠泉や、大湯沼の近くにある足湯です。すべてが火山によってみられる自然現象です。他にも、洞爺湖温泉にある洞爺湖と同じようにカルデラ湖の倶多楽湖や火口湖の橘湖といった湖も見ることができます。
 橘湖へはカルルス温泉から(約2km、約40分)と、日和山(登別温泉)から入るコースがそれぞれあります。先日、日和山~橘湖~カルルス温泉の歩道(約6.5km、約2時間30分)を巡視しました。このコースはあまり利用者がなく、最初はシラカバ林ですが、その後はひたすらアップダウンもない道を歩きます。所々、登別火山からか有珠山からか不明ですが、噴火堆積物の軽石が歩道を埋め尽くしているような場所もあり、軽石で根が張れないのか倒れている木々もありました。途中、オオアカゲラや、特定はできませんでしたが猛禽類にも出会うことができました。
 周囲約1.5kmの橘湖は、支笏洞爺国立公園内の羊蹄山麓にある半月湖(火口湖)と同様、本当に静かな湖です。湖畔に下り立ち周りを見渡せば、火口であったことが一目瞭然で火口壁だった場所は緑で覆われ、鳥たちのさえずりが澄んで聞こえます。湖畔沿いは1周(約20分)することができます。紅葉の時期は火口壁の緑は紅葉色に変わり、橘湖の湖面も色づくことと思います。
 ぜひゆっくり散策してみてください。でも・・・山オヤジ(ヒグマ)が生息する場所です。お互い驚かないようご注意を!!



火口壁は緑色に・・・透明度もかなり高いです。

倒木の根をよく見ると、軽石が根にからみついています。

フクロウの羽根を見つけました。大きい羽根(風切)ですね。

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2009年05月21日四十三山だより~1~

支笏洞爺国立公園 洞爺湖 浅田 唯衣

 四十三山は今、目にまぶしい新緑につつまれ、足元には小さな花々が咲き始めました。
この時期、一番多く見ることの出来るのは、クルマバソウです。和名で書くと、車葉草で字のとおり、葉が車の車輪のようだからです。白い小さな花をつけ、車の車輪がいくつも道沿いに並んでいます。

クルマバソウ(アカネ科)Asperula odorata

 淡い紫色の花をつけるのはフデリンドウ。みなさんこの名前で想像つきますか?そうです。和名では筆竜胆と書き、茎と花が筆の様な形をしています。高さ5~10cmほどで良く足元を見ないと通り過ぎてしまう位小さな花です。5~6月が見頃です。

フデリンドウ(リンドウ科)Gentiana zollingeri

 これはマムシグサ(蝮草)です。道内のものはコウライテンナンショウと呼ばれるようです。茎に見える部分は実は葉の柄。その部分がマムシにあるまだら模様に似ている様子からこの名がついたようです。

マムシグサ(サトイモ科)Arisaema serratum

 他には、タチツボスミレ、ミヤマエンレイソウ、マイヅルソウなど、噴気孔近くにはヘビイチゴなどが見られ、四十三山に彩りを添えてくれます。緑の葉を見ながら、時に下の花々を見ながらで上や下にと忙しいですが、ゆっくり散策してみてください。ただし、ウルシやハチにはご注意を。また、歩道からは外れず、植物は採ってはいけません。とっていいのはゴミと写真だけです。マナーを守りましょう。
 四十三山歩道は、歩道沿いの枯れ木や、倒木の除去作業をパークボランティアの方と行い、先月20日に冬期通行止めは解除され、歩けるようになりました。また今後も引き続き、歩道上の調査やパトロールを行い四十三山だよりにて発信します。お楽しみに。

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2009年03月24日冬の火山にのぼろう!

支笏洞爺国立公園 洞爺湖 浅田 唯衣

 先月、“身近な火山活動と、冬に活動する生きものの生活を知る”をテーマに、西山山麓火口散策路にて、今年度最後の自然観察会を行いました!
 西山山麓は、2000年の噴火で約70mも隆起し、約60個近い火口が出来ました。散策路では一部の噴火口や火山灰によって枯れてしまった木、被害を受けた建物や道路を間近に見れるようになっています。夏でも噴気(水蒸気)が地面から出ており、地温は約90℃近い所もあります。この散策路は冬期閉鎖されていますが、今回は許可をもらい、冬ではどのような姿を見せてくれるのか調べに行きました。
 天候はあいにく曇り。散策路入口でわかん(雪面を歩くための道具)を履いて歩きました。参加してくれた子ども達は、わかんを履くのが初めてで大変そうでした。歩いてほどなく、雪面にぽつぽつ動物の足跡が出てきました。配られた足跡カードで、どんな動物の足跡なのかを親子でひとつひとつ立ち止まりながら推測します。同じ足跡でも、雪面についている間隔が違います。のんびりしていたのか、走っていたのかなど、どんなことをしていたのかみんなで想像してみました。

洞爺湖ビジターセンタースタッフが足跡や食痕についてお話してくれました!足跡が何㎝か子どもたちと測りました。どんな生きものかな?

その先、エゾリスが食べたマツの食痕を通して、マツが湿度によって開いたり閉じたりすることや、燃料になることなどの特性について知り、身近な植物が自然を知るバロメーターであることをお話しました。
 しばらく歩いて、地面が階段状になった場所や壊れた建物を観察しました。これは地殻変動によって生じた現象で、地震活動のように一気に壊れたり、段差ができたのではありません。さらに歩くと周りの様子が変わってきました。
「雪がないところがある!」
子ども達は地温が温かいことにすぐ気がつきました。温度計を手渡し、色々な場所を測ってもらうと、外気温は-2.5℃、雪の中は-2.3℃、土の中は61℃でした。

噴気孔はどのくらいの温度なんだろう?

一番見晴らしの良い展望台に着くと、いくつかの火口跡を見ることができます。火口にたまっている水に氷りが張っていたり、噴気が出ている火口もあります。小さな噴気孔があったのでその地温も測ってみました。よく耳を澄ますと、“クツクツ”と小さな音を立てています。噴気孔の温度は、96.5℃で表面はとても熱く、子ども達はぐんぐん上がる温度にかなり驚いた様子です。
火口から噴き出る水蒸気によって、周りの草木に水分が付着して白く凍りついた風景も見られました。、冬ならではの芸術品にみんなが堪能しました。

水蒸気が火口周辺の草木についてこんな芸術品が見られました!

 最後に、洞爺湖ビジターセンターに戻り、地温が高かったり、地面が盛り上がったりすることがなぜ起きるのかについて、温泉などの火山の恵みにもふれながら、地球の内部のマグマの話をしました。そして見つけた生きものの足跡をふり返り、館内のパネルやジオラマで、動物の体の仕組みについても理解を深めました。地熱を利用して生きもの達もきっと暖まりにきているのではないでしょうか?そんな想像をしながら今回の観察会を終えました。 (洞爺湖ビジターセンター・火山科学館、洞爺湖自然保護官事務所主催)

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2009年01月22日四十三山の姿~冬編~

支笏洞爺国立公園 洞爺湖 浅田 唯衣

!お知らせです!
四十三山(明治新山)は2008年12月27日より4月中旬(予定)まで閉鎖されました。(正確な開通時期については、積雪状況により変わります。開通間近になったら改めてお知らせします。)

 四十三山の冬の様子を記録するために巡視へ。お天気はくもりのち晴れ。洞爺湖温泉側より雪で隠れた傾斜と起伏のある雪面をスノーシューでがつがつ登っていった。驚いて?アカゲラが近くを飛んで逃げていった。積雪量は、おおよそ場所によっては60cm~70cm位。よーく見ると、いたるところにあったあった!人のいる温泉街から数歩歩いただけで、沢山の動物のあしあとが交差している。どれどれ、エゾウサギ、エゾリス、キタキツネ・・・と、なんとまあにぎやかである。雪面に残るあしあとからその生きものたちの暮らしを想像するのは冬ならではの楽しみだ。

エゾリスの足跡!立ち止まって何かを考えているのか?!

 まず気になったのは、以前に紹介した噴気孔。冬も変わらずゆっくりと蒸気が出ている。その周りもやはり地温が高いために雪が溶けている。その茶色の地面からは早くも、うすい黄緑色の芽が・・・フキノトウだった。冬から春に向けてじっと雪の中にいるはずのフキノトウがもうひょっこり出てきてしまっている。

早くも芽が!フキノトウ。

 次に気になったのは、そこ以外に地温の高い場所があるのかどうか?すると四十三山ピーク近くにま~るく穴があいている場所と、枯れ木の中に緑色の苔がついた岩場から時々にゆーらりと白い蒸気が見える場所の2箇所を見つけることができた。以前、「前に頂上付近でも噴気していたところあったんだけど・・・」ということを聞いていたので、冬に来れば地温も高く雪が溶けているからきっとわかるだろうと思っていたので、ここだ!って見つけた時は、あの噴気孔以外にもあったことが嬉しかった。そしてまだ、四十三山が生きていることを実感した。

穴がぽっかりあいている。

 世界ジオパーク(科学的に重要な地形・地質を含む自然公園で、地域振興や教育などでの活用が重視。)への申請に向けて、四十三山も含む「洞爺湖有珠山」が昨年、国内初の候補地となった。そのような動きがある一方、いつもと変わらない地球の呼吸を今回の巡視で感じ、未来の四十三山を思いました。

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2009年01月15日美味しい火山のお話

支笏洞爺国立公園 洞爺湖 浅田 唯衣

 新年の有珠山や羊蹄山は年末の降雪によりすっかり麓まで雪に覆われました。
 先月、洞爺湖ビジターセンター屋内行事として“キッチン火山”を行いました。キッチン火山ってご存じですか?食べることの出来る材料で火山活動を再現し、その仕組みを知ってもらおうという実験です。参加者は親子合わせて7名。まずは、ビジターセンターのパネルや航空写真を使って、地球のマグマや、洞爺湖周辺の火山のお話をして実験に入りました。

さあ実験だ!潜在ドーム・溶岩ドーム出来るかな?!

 有珠山周辺の火山活動で特に重要なのが、潜在ドームと溶岩ドーム。昭和新山や四十三山も地表面近くにあるマグマが地面を押し上げて隆起して出来ました。穴をあけた板にココアパウダーをふりかけてゆるやかな大地を作ります。その後、チョコレートと水あめを混ぜてマグマに見立てて、板の下の穴からぐんぐんお菓子用の注入器で押し上げます。子ども達は真剣。すると・・・・ココアパウダーの表面が盛り上がってきます。その姿が潜在ドーム。そしてさらに注入していくと、なんとココアパウダーの表面からマグマ(チョコと水あめ)が姿を現します。マグマが地表に出てきたら、それは溶岩ドーム。参加者のみなさんそれぞれが、むくむく盛り上がるドームに興味津々の様子です。

溶岩ドームできました!!感動!

 次は、カルデラのでき方。洞爺湖もたんなる湖ではなく実は約11万年前の噴火によっって出来たカルデラです。そのカルデラに水が溜まって洞爺湖になりました。そのカルデラが出来る様子を美味しく再現してみました。小さな穴をあけた板の上にアルミホイルでまあるく囲んだ中に水あめを注ぐ。その上に見えなくなるくらいにココアパウダーを振りかける。そして最後に穴をふさいでいたティッシュペーパーを一気に抜くと・・・みるみるうちに水あめがその穴から落ちてきて、水あめを入れていたところが陥没。上から見ると、まさしく洞爺湖にそっくりです。そして「洞爺湖が出来た後に中島が出来たんだよ~」とお話しました。

うーん!洞爺湖にそっくりだ!

 なかなか有珠山周辺の火山活動を説明するには難しいけれど、今回はあまーいものを使って地球の活動を再現しました。グループごとで実験したので、注入の仕方でドームやカルデラの形は様々ですが、子ども達は「きれいに出来た!」「こうやってできるんだね~」と喜び、最後に盛り上がったマグマやカルデラを美味しく食べました。

※参考にした本の紹介です!・・・「世界一おいしい火山の本」林 信太郎・著
          小峰書店(税別1,500円)

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2009年01月13日オロフレ山のキタキツネ

支笏洞爺国立公園 洞爺湖 加藤 康大

快晴。こんな日に外に出なければアクティブレンジャーの名が廃る、とオロフレ山へ巡視に出た。オロフレ山は、標高1230mと胆振管内では比較的高さもあり、夏場は様々な高山植物が咲き乱れ、訪れる登山者を楽しませる(悲しいことに盗掘の被害が後を絶たないが)。一転冬期は、唯一のアクセスとなる道道2号線の夜間通行止め及び道道から登山口までの道路が完全閉鎖となるため、入山者はごくわずかとなる。これもまた冬山の魅力だ。

洞爺湖と登別温泉を結ぶ道道2号線(冬期17:00~9:00は通行止め)を走る。途中、写真撮影のため、道路沿いから洞爺湖や羊蹄山、ニセコ連峰を一望できる黄渓展望駐車場に車を入れると先客がいた。キタキツネだ。抜けるような青空の下、退屈そうに駐車場のど真ん中に、ダラーッと寝そべっている…。



かなりやる気なさそうに寝そべっていたのに、僕の車を見かけた瞬間、おもむろに起き上がり一目散に車めがけて走ってきた。異常なほどに人慣れしている。常に人間から何かをもらって食しているのだろう。

しかし今日は相手が悪かった。奇声を発して追いかけ回し、雪玉を投げつけ追い払った。思いっきり不審人物。他に人がいなくて良かった…。そこまでしなくても…と思う方もいるのかも知れないが、「人間は怖い」と思わせる必要がある。

ところが任務完了し車に戻ると、このキツネは消え去った斜面を登り返し、トコトコ駐車場に戻って来た。ここは相当に美味しい餌場らしい。追いかける、姿を消す、また現れる、また追いかける…。これは無理だ、諦めよう。



バックミラー越しに、勝利を確信したキツネが悠々と、駐車場のど真ん中に再び寝そべるのが見えた。
たしかに、これだけ人慣れしたキツネが目の前に現れたら、普段あまりキツネなど見る機会のない人や、特に本州からの観光客などが「わぁー!さすが北海道!ルールルルル…」と餌をあげたくなる気持ちも分からなくはない。が、キツネに限らず野生生物への餌付けはいけない。人から餌をもらったり、また人間の残飯を食し、本来彼らが自然界では口にするはずのない人間の食物を当てにするようになると、その生物の生態変化を引き起こし、それは=生態系の変化につながる。また、昨年騒がれた鳥インフルエンザなど、野生生物から人間への感染症の恐れもある。キタキツネだってエキノコックスを持っているのだ。観光地では、魚や鳥などに餌付けする行為を観光資源として扱っている場所が未だに少なくないが、そういった行為が間違っているということを、もっと知って頂く必要がある。保護や防除等の目的以外で、人間が自然環境や野生生物に手出しをし、良い結果が生じた試しがない。放っておける野生は放っておくべきだ。

「共生って難しいな」などと考えながら、山スキーにシールを張りつつふと思った。冬山を縦横無尽に駈け回り、滑り倒すことが出来るこの素敵な道具も、野生生物にとっては有り難くない人間の「文明」なのかなぁと。もしかしたら、深い雪の中でひっそりと春を待っているリスやウサギやキツネたちは、「冬くらいそっとしておいてくれよ…」と思っているのかも知れない。

超快晴とあって、冬のオロフレ山は珍しく混雑しており、僕の他に2グループと、自衛隊が十数名でスキー歩行の訓練をしていた。



オロフレの見事な樹氷を見上げ、「やっぱり山は冬に限るな」とニヤニヤしながらウサギの足跡と併走した。人間とは、まったくもって身勝手な生物である。

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2008年12月11日樹幹の標本

支笏洞爺国立公園 洞爺湖 浅田 唯衣

 アクティブレンジャーの仕事はフィールドばかりではありません。
 洞爺湖ビジターセンターがオープンしてまもなく1年9ヶ月となります。展示の中に樹の幹の標本があります。樹皮の様子や材の手触りを感じることができ、カラマツ、トドマツ、エゾマツ、ホオノキ、ヤチダモ、ミズナラ、キハダ、ハルニレ、オヒョウ、オニグルミ、アサダ、カツラ、イタヤカエデがあります。
 ところが、ビジターセンター内の湿度が下がり、樹幹がひどく乾燥してトドマツとエゾマツに樹皮剥がれが起きてしまいました。

はがれた樹皮

そこで、ビジターセンタースタッフと修復作業をしました。

修復作業

乾燥して形が変わってしまった樹皮を何とかつぎはぎし、特殊な糊で貼り付けし、バンドで締めて固定しました。


痛々しい姿ですがしばらくの間お待ちください。

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2008年12月09日富士山にそっくり!

支笏洞爺国立公園 洞爺湖 浅田 唯衣

 洞爺湖に来て2年目の冬、羊蹄山も冬化粧をしました。蝦夷富士と言われますが、本当に小さい頃よく見ていた富士山にそっくりです。まだまだ、その化粧は薄化粧といったところでしょう。羊蹄山は、倶知安町、ニセコ町、真狩村、喜茂別町、京極町の4町1村の中にあります。その麓に住む人々は、アスパラ、じゃがいも、ユリ根、カボチャ・・・とあらゆる農作物と、羊蹄山からわき出す豊富な水など、豊かな自然に囲まれています。その中心にある羊蹄山は、住んでいる人たちにとってなくてはならないわが町、わが村の象徴の山なのではないでしょうか?「ここから見る羊蹄山が一番すき」という方もいるでしょう。
 今回は真狩村の登山口の積雪状況や、冬化粧した羊蹄山の写真記録を撮りにパトロールに行きました。京極町、喜茂別町、ニセコ町、倶知安町から見るとやや丸みのある形で女性的な形ですが、真狩村からは幾筋もの沢がくっきり見え、また山体もどっしりしていて男性的な形に見えます。登山口付近の積雪は60cmほど(11月25日時点)。その登山口の近くには、羊蹄山の湧き水が絶えず出ています。毎日、大きなボトルを持って多くの人が水を汲みにやってきます。
 本格的な冬をこれから迎えますが、冬の化粧をした羊蹄山の周辺道路を1周してみるのはいかがでしょう。自分の好きな羊蹄山を見つけてください。(冬山登山は上級者向けの本格的な登山です。)


喜茂別町より見た羊蹄山

真狩登山口近くにある湧き水

真狩温泉近くより見た羊蹄山

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2008年12月05日たまには在来種

支笏洞爺国立公園 洞爺湖 加藤 康大

洞爺湖では今年度、1万1千尾のウチダザリガニを捕獲した。
これだけウチダザリガニを見ていると、彼らに罪はないとわかっていながらも、その姿を見るたびに悲しい気持ちになる。交尾を終えたこの時期、お腹にびっちり卵を抱えた奴なんかを見ると、なおのこと「ゲンナリ」してしまう。

そこで11月のある日、「たまには在来のザリガニを見に行こう」と外に出掛けた。

ニホンザリガニ(女子高生のあいだではニチザリ)は、現在日本に生息する3種類のザリガニのうち、唯一の在来種。本州ではザリガニ=アメリカザリガニらしいが、本来日本では、ニチザリこそが真の「ザリガニ」だ。低水温の綺麗な水でしか生きることができず、環境の変化には極めて弱い。北海道と東北の一部のみに生息しているが、開発による河川や湖沼環境の悪化、水質汚染等の影響によりその数を減らしており、2000年には絶滅危惧Ⅱ類(絶滅の危険が増大している種)に指定された。

この日も長靴をしっかり洗ってから洞爺湖畔あちこちの川に入った(人一倍ウチダザリガニに触れる機会の多い僕は、川に出掛ける前に必ず長靴を念入りに洗う。ザリガニペストの感染防止のために。これは休みの日、釣りに行く時にも怠らないようにしている)。ニチザリが好みそうな、それほど水量の多くない水の綺麗な沢を登り、石をはぐったり落ち葉や泥を掘ったりしてみるが気配がまったくない。地形図を見ながら見当をつけ、車を移動させ、いくつかの川や沢を歩き回ってみたがまったく見つからず敗退。

このまま帰るのも悲しいので、以前から生息が確認されている場所に行ってみた。うっすら雪が積もった今、ニチザリたちは元気なのかなぁ…と。ここは地元の方がかなり頑張って生息を確認し、情報を提供してくれた場所。ここも国立公園内である。

落ち葉や泥をかき分けること20分。いた。泥の中から眠そうに1匹のニチザリがのそのそ顔を出した。起こしてしまって申し訳ないが可愛いから触らせて。ウチダザリガニやアメリカザリガニに比べると、体全体が丸みを帯びており、サイズも小さく、なぜかわからないけど表情までメチャクチャ可愛い。僕が普段ウチダザリガニばかり見ているからそう思うのかなぁ…。



なぜ「ザリガニ」という生き物が、マニアを生むまで男心をグッと捉えるのか、ずっと
不思議だったのでニチザリを手の平に乗せ、眺めながら考えてみた。答えはおそらく、体の一部が明らかに「武器」になっているからだと思う。男には狩猟時代の名残である闘争心、戦闘本能がある。だから明らかに強そうだったり、強そうな武器を持っている奴に惹かれるのだ。そう考えると、男がカブトムシやクワガタ、カマキリやタガメなど、角やハサミを持つ生き物に惹かれてしまう説明がつく。…。僕だけですか?

結局この日、体長1cmにも満たないニチザリベビーを含む10尾ほどの個体を確認。しばらく手を浸けているとキーンと痛くなるような冷たい水の中、落ち葉の下や泥に潜って一生懸命に生き、しっかりと繁殖をしている。



このあと、地元中学生からもらった情報で「数年前にはニチザリがたくさんいた」という、洞爺湖へ注ぎ込む河口に行ってみたが、砂防工事による河川改修により、川は見事な三面張りコンクリートの「排水溝」と化しており、ニチザリはおろか、生き物の気配はまったくなかった。



ザリガニ以外の生物においても、外来種による影響、開発による環境悪化等、常に原因は人間にある。食料難解決策としてどうしてもウチダザリガニを持ち込む必要があったの?セイヨウオオマルハナバチを持ち込んでまでトマトの受粉を促進させなければならなかったの?身の安全を確保するために何がなんでもマングースを持ち込まなければならなかったの?本当にその川にダムや護岸工事が必要だったの?森林を伐採する必要があったの?

僕が子供の頃は、外来種や環境破壊なんていう言葉を耳にすることはそう多くはなかった。今、半強制的に環境問題を背負わされた子供たちへのせめてもの償いとして、子供たちが身近な自然に触れ、そこに暮らす生き物に興味を抱くような機会を出来るだけたくさん設けること。それは私たちに課せられた義務です。

※場所はニホンザリガニ保護のため、事務所位置を掲載しました。ニホンザリガニを見つけても、なるべく持ち帰らずに元の場所に戻して下さい。


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