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釧路自然環境事務所

報道発表資料

2022年04月15日
  • その他

(お知らせ)第4期知床半島エゾシカ管理計画の策定について

 環境省、林野庁及び北海道では、エゾシカの高密度状態によって発生する知床世界自然遺産地域の生態系への過度な影響を低減することを目的として、「知床半島エゾシカ保護管理計画」に基づき、エゾシカによる生態系への影響把握や個体数調整を行ってきました。第3期となる現行計画の計画期間が2022年3月をもって終了となることから、2022年4月から開始する「第4期知床半島エゾシカ管理計画」を新たに策定しましたので、お知らせします。

環境省釧路自然環境事務所

林野庁北海道森林管理局

北海道

1.経緯

 知床半島では、世界自然遺産に登録された生態系への過度な影響を低減することを目的として、「知床半島エゾシカ保護管理計画」を2006年11月に策定しました。

 その後、おおむね5年ごとに計画を改定し(2012年3月に「第2期知床半島エゾシカ保護管理計画」、2017年4月に「第3期知床半島エゾシカ管理計画」(以下「第3期計画」という。)を策定)、継続的にエゾシカによる生態系への影響把握や個体数調整を行ってきました。

 今般、第3期計画の計画期間が2022年3月をもって終了となることから、2022年4月から開始する「第4期知床半島エゾシカ管理計画」(以下「第4期計画」という。)を新たに策定しました。

2.第4期計画の概要

(1)目的

 知床世界自然遺産地域(以下「遺産地域」という。)とこれに隣接する知床半島基部におけるエゾシカ個体群の適切な管理を通じて、エゾシカの高密度状態によって発生する遺産地域の生態系への過度な影響を低減することを目的として、個体数調整を始めとしたエゾシカの管理を進めるとともに、植生及びエゾシカ生息密度を評価項目として設定し、各評価項目にかかるモニタリング調査を計画的、継続的に実施する。

(2)計画の位置づけ

 本計画は、北海道が定める第二種特定鳥獣管理計画「北海道エゾシカ管理計画」の地域計画として位置づけられる。

 また、遺産地域のエゾシカ管理は「知床世界自然遺産地域管理計画」に基づき実施することが定められているほか、自然公園法に基づく「知床国立公園知床生態系維持回復事業計画」及び鳥獣による農林水産業等に係る被害の防止のための特別措置に関する法律に基づく「被害防止計画」などの関連計画と整合を図って実施する。

(3)計画期間

 2022年4月1日~2027年3月31日(5年間)

(4)計画対象地域

 遺産地域及び遺産地域に隣接する知床半島基部の区域

(5)策定主体

 環境省釧路自然環境事務所、林野庁北海道森林管理局、北海道

(6)第4期計画の主なポイント

 ①計画対象地域を4地区に区分し、各地区の状況に応じた管理目標と管理手法を設定

第3期計画に引き続き、計画対象地域を4地区に区分し、各地区の地域特性等に応じた管理目標と管理手法を次のとおり設定し、エゾシカの個体数調整やモニタリングを進める。

図 計画対象地域の地区区分

 ■エゾシカA地区(遠音別岳以北の高標高地とルシャ地区、ルシャ地区・ペキンノ鼻以北の低標高地など)

 ・人為的介入を避けることを原則とし、注意深くモニタリングを継続し、必要に応じて防御的手法により植生を保全。

 ・越冬地であるルシャ地区は、人為的介入を行わない対照地区としているため、高い採食圧あり。一方で非越冬地である高山帯や海岸部などでは、越冬地周辺ほど重大な影響なし。

 ・エゾシカの発見数は、2021年2月の航空カウント調査では13.4頭/km2

 ■特定管理地区(知床岬地区)

 ・第2期計画以降、一部の植物で一定の回復段階を維持しつつも、回復傾向に鈍化も確認されている。

 ・エゾシカの発見数は、2021年2月の航空カウント調査において前年から大幅に増加(16.1→58.2頭/km2)。

 ・エゾシカ生息密度の数値目標として、10頭/km2以下を目指す。

 ・防御的手法にて植生保護を図りつつ、既存のエゾシカ個体数調整手法に加えて新たな手法(ハイシートの利用等)の導入等により、可能な限りの取組を実施。

 ■エゾシカB地区(ルシャ地区・ペキンノ鼻以南の低標高地など)

 ・斜里町側、羅臼町側ともに一部の植物で回復傾向が確認されている。

 ・エゾシカの発見数は、2021年2月の航空カウント調査では幌別-岩尾別地区で5.7頭/km2、ルサ-相泊地区で6.2頭/km2、ウナキベツ地区で10.4頭/km2

 ・エゾシカ生息密度の数値目標として、標高300m以下のエリア等において5頭/km2以下を目指す。

 ・防御的手法による植生保護及びエゾシカの個体数調整を継続して実施。

 ■隣接地域(幌別川から金山川付近、及びルサ川から植別川付近までの範囲)

 ・市街地へのエゾシカ侵入はシカ柵の設置や集中的捕獲により近年は激減。その他の地区も含めて個体数調整を継続中。

 ・エゾシカの発見数は、2021年2月の航空カウント調査では斜里町側で4.8頭/km2、羅臼町側で2.1頭/km2、隣接地域平均で2.8頭/km2であり、10年前と比較して半減。

 ・エゾシカ生息密度の数値目標として、5頭/km2以下程度を目指す。

 ・防御的手法による植生保護及び地域住民との軋轢緩和並びにエゾシカの個体数調整を継続して実施。

 ②モニタリングに基づき、事業の検証・評価を実施

  計画対象地域におけるエゾシカ対策を適正に推進するため、「植生」及び「エゾシカの生息密度」を評価項目として設定し、それぞれに関連するモニタリング調査を計画的、継続的に実施する。

また、植生モニタリングの調査結果に基づいて、エゾシカによる自然植生に対する影響の許容限界点を明らかにするために設定した指標の妥当性検証を引き続き実施する。

3.添付資料

・第4期知床半島エゾシカ管理計画(2022年4月)

添付資料

■ 問い合わせ先
環境省釧路自然環境事務所
国立公園課(伊藤・佐々木)
電話:0154-32-7500 / FAX:0154-32-7575