北海道地方環境事務所のアクティブ・レンジャーが、活動の様子をお伝えします。
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アクティブ・レンジャーとは、自然保護官の補佐役として、国立公園等のパトロール、調査、利用者指導、自然解説などの業務を担う環境省の職員です。管内には、利尻礼文サロベツ、知床、阿寒摩周、釧路湿原、大雪山、支笏洞爺国立公園があります。
そんな暑い中、「熊越の滝」下流付近の河原に出かけました。目的は、河原一面に広がる外来植物の駆除です。ここは知床国立公園の第2種特別地域で、世界遺産区域でもあります。
さて河原に下りると、強力なトゲと生命力をもつアメリカオニアザミ(セイヨウオニアザミ)をはじめ、フランスギク、セイヨウノコギリソウ、メマツヨイグサなど、外来植物の花畑になっていました。かろうじて頑張っていた在来種は、ヨツバヒヨドリとコウゾリナくらい。この日は3人で計1000株近くのオニアザミを、長い剪定バサミを用いた手作業で駆除しましたが、あと1、2回は同じ場所で作業しないといけなそうです。オニアザミの固いトゲは、ふくらはぎや指に容赦なく刺さってくるためとても痛く、なかなかしんどい作業です。ちなみに、同じ場所でのオニアザミ駆除はもう4年目になります。昨年は私も参加し、かなり頑張って刈り取ったつもりだったのですが、どうやら目立たない1年目の株(ロゼット)を中心に、まだまだ多数の見落としがあったようです。
オニアザミに限らず、ひとたび侵入・定着を許してしまった外来種を生態系から除去するためには、大変な労力を必要とします。かといって事前レクチャーが不十分なまま多数のボランティア等を動員すると、在来種を間違って刈り取るようなことが起こるかもしれません。
とはいえ、早くしないと彼らはドンドン種子をつけてしまう。相泊方面のアメリカオニアザミやジギタリスも、早く刈り取りに行かないと・・・シカ道に沿って、どんどん山奥の方へ侵入しているんです。元を断つためには道路沿いも何とかしないと・・・国立公園区域内でも、道路の法面(のりめん)は外来植物の宝庫になってしまっています。
一方、外来動物では、アメリカミンクが羅臼の河川沿いにたくさん生息しています。ミンクとシマフクロウとの間にエサの競合が起きていないのか、とても気になっています。
日本人が目覚めるのが遅すぎた感のある外来種問題、あきらめて放置するわけにも行きません。しかし生態系への影響が大きそうな種に駆除対象を絞ったとしても、知床世界遺産エリアからの外来種除去は、先が見えない、はるかに遠い道のりとなりそうです。
写真1. 外来種主体の花畑。アメリカオニアザミ、フランスギク、シロツメクサ、ムラサキツメクサ・・・唯一写っている在来種の花は、ヨツバヒヨドリのみ。
写真2. アメリカオニアザミ(セイヨウオニアザミ)の花。花はキレイですが、トゲがやる気満々です。2年目に開花・結実すると言われています。
写真3. アメリカオニアザミの1年目株(ロゼット)。一丁前にトゲがあります。若いくせに、そのトゲは在来アザミ類のそれよりも痛いように感じます。根ごと引き抜こうとしても途中で切れたりして、なかなか上手に抜けません。そんな根から、来年また復活する?