2009年10月 5日
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2009年10月05日秋の森の探検(その1:秋色づく)
利尻礼文サロベツ国立公園 稚内 賀勢 朗子
9月の中旬に地元NPOのスタッフの方たちと一緒に稚咲内の海岸砂丘林の巡視に行ってきました。
海岸砂丘林はサロベツ原野に隣接する日本海の海岸線と平行に延びた細長い森林です。昔、日本海の潮流や冬の強い北西風と波によって陸に打ち上げられた砂が、風の緩急によって海岸線と平行に帯状の巨大な風紋として堆積して海岸砂丘となり、さらにその上にわずかな土が溜まって森が育ちました。これが砂丘林です。
砂丘林には、エゾモモンガやクマゲラが巣を作るのによい木がたくさんあります。さらに、砂丘の谷間には雨水や雪解け水、河川からの水が流れ込んで湿地や湖沼ができ、エゾシカが水を飲みに訪れたり、水鳥たちが身を潜めたり、エゾアカガエルが産卵する場所になったりと、多くの生き物にとって大切な棲みかになっています。ここは利尻礼文サロベツ国立公園の特別保護地区になっています。
砂丘林の中はひんやりとしていて湿った落ち葉の匂い。
ほのかに黄色や赤に色づき始めた樹冠を通してやわらかな秋の陽差しが降り注いできます。
林床にはゴゼンタチバナの赤い可愛らしい実。
ラピスラズリの吸い込まれるような青に似たツバメオモトの実。
実を糸に通して首飾りにしてみたいと感じてしまいます。
そして、丸い葉にきっちりと細かく刻まれた葉脈が亀の甲のような
オオカメノキは鮮やかな赤い実をつけていました。
この他にもツルシキミ、オオバスノキの実を見ることができました。
砂丘林の草木たちは実を結ぶ季節を迎えていました。
今年精一杯咲いた花たちが結んだ実、来年の森のサイクルに繋がっていくのでしょう。

ゴゼンタチバナの赤い実 株によっては5,6個実をつけているものもあります。

ツバメオモトの実

オオカメノキの実
※これら草木の中からゴゼンタチバナを少し詳しくご紹介。
ゴゼンタチバナはミズキ科の多年草で、花(実)をつける株は6枚の葉を、つけない株は4枚の葉をつけています。6~7月に咲く花は確かにミズキ科の木本であるヤマボウシやハナミズキ(別名アメリカヤマボウシ:街路樹として植えられているものが多い)に似ています。ひと株に4弁花の白い花がひとつつくのだと思いきや、花びらに見える4枚の白いものは総苞といって葉が変化したものなんだそうで実際の花は4枚の総苞に囲まれた真ん中部分に多数つきます。ゴゼンタチバナがひと株ひとつではなく多数の花をつけることは、秋のこの時期、赤い実がひと株に複数個ついているのをみればすぐに納得できます。
サロベツ原野では、砂丘林にはゴゼンタチバナが、湿原にはエゾゴゼンタチバナが生育しています。エゾゴゼンタチバナは葉や総苞、花が茎のほぼ同じ高さから集中して出ているゴゼンタチバナに比べると、少し伸び上がってこれらが出る高さがずれた感じで、総苞に囲まれた花の部分が黒っぽくなっています。(写真を載せられなくてごめんなさい。)
海岸砂丘林はサロベツ原野に隣接する日本海の海岸線と平行に延びた細長い森林です。昔、日本海の潮流や冬の強い北西風と波によって陸に打ち上げられた砂が、風の緩急によって海岸線と平行に帯状の巨大な風紋として堆積して海岸砂丘となり、さらにその上にわずかな土が溜まって森が育ちました。これが砂丘林です。
砂丘林には、エゾモモンガやクマゲラが巣を作るのによい木がたくさんあります。さらに、砂丘の谷間には雨水や雪解け水、河川からの水が流れ込んで湿地や湖沼ができ、エゾシカが水を飲みに訪れたり、水鳥たちが身を潜めたり、エゾアカガエルが産卵する場所になったりと、多くの生き物にとって大切な棲みかになっています。ここは利尻礼文サロベツ国立公園の特別保護地区になっています。
砂丘林の中はひんやりとしていて湿った落ち葉の匂い。
ほのかに黄色や赤に色づき始めた樹冠を通してやわらかな秋の陽差しが降り注いできます。
林床にはゴゼンタチバナの赤い可愛らしい実。
ラピスラズリの吸い込まれるような青に似たツバメオモトの実。
実を糸に通して首飾りにしてみたいと感じてしまいます。
そして、丸い葉にきっちりと細かく刻まれた葉脈が亀の甲のような
オオカメノキは鮮やかな赤い実をつけていました。
この他にもツルシキミ、オオバスノキの実を見ることができました。
砂丘林の草木たちは実を結ぶ季節を迎えていました。
今年精一杯咲いた花たちが結んだ実、来年の森のサイクルに繋がっていくのでしょう。

ゴゼンタチバナの赤い実 株によっては5,6個実をつけているものもあります。

ツバメオモトの実

オオカメノキの実
※これら草木の中からゴゼンタチバナを少し詳しくご紹介。
ゴゼンタチバナはミズキ科の多年草で、花(実)をつける株は6枚の葉を、つけない株は4枚の葉をつけています。6~7月に咲く花は確かにミズキ科の木本であるヤマボウシやハナミズキ(別名アメリカヤマボウシ:街路樹として植えられているものが多い)に似ています。ひと株に4弁花の白い花がひとつつくのだと思いきや、花びらに見える4枚の白いものは総苞といって葉が変化したものなんだそうで実際の花は4枚の総苞に囲まれた真ん中部分に多数つきます。ゴゼンタチバナがひと株ひとつではなく多数の花をつけることは、秋のこの時期、赤い実がひと株に複数個ついているのをみればすぐに納得できます。
サロベツ原野では、砂丘林にはゴゼンタチバナが、湿原にはエゾゴゼンタチバナが生育しています。エゾゴゼンタチバナは葉や総苞、花が茎のほぼ同じ高さから集中して出ているゴゼンタチバナに比べると、少し伸び上がってこれらが出る高さがずれた感じで、総苞に囲まれた花の部分が黒っぽくなっています。(写真を載せられなくてごめんなさい。)
私たちがキノコとして見ているのは、繁殖器官である子実体という部分であり、菌類が胞子を分散させるためのものです。
菌類は森の中で次のような役割を担っています。
・枯れた樹木などに取り付いて、これらを二酸化炭素とより元素に近いかたちにまで分解して森の物質循環を円滑にします。
・生きている樹木に寄生して時に枯死させ、樹木の間引きや森の更新を促しています。
・樹木の根と共生関係を結び、樹木が光合成でつくった養分を分けてもらうかわりに
樹木が必要な養分と水を樹木単独の場合より効率よく取り入れる手助けをしています。
上の役割によってキノコなど菌類は森を豊かで健全に保ちます。
この巡視で沢山の種類のキノコが見られたのは、稚咲内の砂丘林が豊かな証であるように思いました。沢山見られたキノコの中からいつくかご紹介します。
でも、砂丘林内は国立公園の特別保護地区に指定されていますのでキノコ採集はしないようお願いしますね。
鮮やかな朱色が曲がりくねって細長く伸びた写真のこのキノコ、まるで蝋細工のよう。隣の針葉樹実生の艶のある濃い緑とのコントラストがとても美しいです。調べてみるとどうやらベニナギナタタケだと思われました。
ベニナギナタタケと思われるキノコ
※しかし、ベニナギナタタケに似たキノコに猛毒のカエンタケというのがあって誤食をしないよう注意が必要です。カエンタケは北海道では特にまれなキノコで発生する場所も苫小牧市、恵庭市など限られているようですが
(五十嵐恒夫著:北海道のキノコ 北海道新聞社より)、
食べられるキノコ、食べられないキノコを見分ける際には、専門家に見てもらうなど確かな情報をもとに十分気をつけてください。「きっとこれは食べても大丈夫よ。」という思いこみは危険です。くれぐれもご注意を!
また、鮮やかな緑に苔むした倒木の上にはかわいらしい白いキノコがちょんちょんと並んでいました。私にはこのキノコたちが「もののけ姫」に出てくる木霊みたいに見えました。この倒木はこれら白いキノコたちによって森の土に還っていく途中なのです。何キノコなのかは分かりませんでした。かわいらしいけれど毒かもしれませんね。
苔むした倒木に生える白いキノコ 倒木は白い水玉がついた緑の衣を着ているようです。
そしてっ!最後に紹介するのは!なんと「ひげじい茸」!・・・と命名したくなるようなキノコです。
キノコの細長い針(胞子を飛ばす部分)の束が白くふさふさした立派なおひげのように垂れ下がっている様子は、NHKで放送している生き物番組「ダーウィンが来た」に登場するキャラクター、「ひげじい」にそっくりだと思いませんか?この「ひげじい茸」の正式名称はおそらくヤマブシタケであると思われました。このキノコの形が山伏が着る着物(結袈裟)についている丸い飾りに似ているためにつけられた名前だそうです。
「おおっ!こんなところにヒゲジイがっ!」 ヒゲジイにそっくりのこのキノコはヤマブシタケか・・・。
人間とはかけ離れた生き物であるためかキノコにはどこか得体のしれないところがありますが、じっと観察しているうちに、人間やキノコに比べて人間により近い生き物には見られない色や形の斬新さ、ユニークさに魅せられました。
秋はキノコノコノコ・・・の季節。
皆さんも毒キノコには十分注意しながら、キノコを観察してみませんか。