ACTIVE RANGER

アクティブ・レンジャー日記 [北海道地区]

北海道地方環境事務所のアクティブ・レンジャーが、活動の様子をお伝えします。

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2010年6月29日

2件の記事があります。

2010年06月29日登山道は川である

大雪山国立公園 東川 宮崎 浩

「登山道は川である」という言葉を初めて聞いたのは6~7年前のこと。環境省が進めていった大雪山各地での近自然工法による登山道整備の作業に同行し、整備の手ほどきを受けた時のことである。植生に配慮した上で水をうまく登山道上で勢いを弱めながら流していくという「ステップアンドプール」の工法が大雪山で取り入れられたのがこの時からであった。

 あれから年月が経ち、さらに近自然工法での工事箇所が多くなったここ大雪、6月も下旬になると場所によっては冬の間にたまった積雪が、気温上昇とともに一気に解け始めて登山道の低い部分へと向かって流れていきます。そしてこの時期、まさに「登山道は川である」という言葉を実感します。これまでは土を削り、植物も流されてどんどん登山道がえぐれていってしまっていた箇所もこの工事によって道が掘れていくこともなくなりました。ただし、雪解けの時期や大雨の後等は非常に歩きにくくなることも確かです。下の写真をまずは見てみてください。


旭岳裾合平方面の登山道の様子です。水の深さはくるぶしくらいまであるのでまず防水性のない靴では歩けません。階段状に組んだ石で水を落とし(ステップ)水を一度溜めることにより(プール)、勢いを弱め、登山道の浸食を防ぐのです。

 確かに歩きにくいです。道をそれて植物の上を歩きたくなる方も多いと思いますが、やはりそうならないように防水性のしっかりした登山靴にスパッツをする。もしくは長靴で歩いて(私は長靴派)本来の道から外れないようにする。それによって植生は守られていきます。一人ひとりが意識することで山は守られていく事を認識することが大事ですね。

 
 6月27日(日)はパークボランティアによる旭岳周辺の保護ロープ張りの作業日でした。雪解けが遅い遅いといわれていたここ大雪もようやく夏山に入ってきた感じです。とはいえ、稜線上では雪が無くなってもお決まりの裾合平の大雪原はまだまだ続きそうです。視界が良くても夏道と積雪が入り混じっているこの時期は遭難多発時期ですので、この場所を熟知した方でなければおススメできない状態はまだしばらく続きそうです。旭岳方面では今シーズンに入って既に3件の遭難事故が発生しておりますのでくれぐれもご注意を。


旭岳山頂直下部分は視界不良時道迷いをしやすい箇所。ロープを張ることで登山道から外れないようにするために毎年ここはパークボランティアの方々が作業を行っています。

作業を終えて裾合平からロープウェイ駅に向かう途中のひとコマ。大雪原の上を白鳥の雪渓に向かって歩くパークボランティアの皆さん。10時間近い工程の中の作業、皆様本当にお疲れ様です。ご覧の通り、まだまだこの辺りは一面の大雪原でした。この辺りが花畑になるのは8月に入ってからでしょうか?

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2010年06月29日感動を共有する時間

支笏洞爺国立公園 洞爺湖 浅田 唯衣

 
先月、地元の洞爺湖温泉小学校4年生のこどもたちと「火山」をテーマに3回の学習を行いました。今年の4年生は8人で少数ですが、いつも元気いっぱいで、特に野外へ出かける時のテンションは最高潮です!
  まずは、洞爺湖ビジターセンターで洞爺湖と有珠山の生い立ちについて勉強しました。子どもたちは目の前にある巨大なカルデラ(噴火などによってできた直径が2kmを超える窪地のこと:洞爺湖はその窪地に水がたまってできたカルデラ湖)がどのようにできたか想像するのは少し難しいことのようです。でも自分たちに生い立ちがあるように、洞爺湖や有珠山にもきちんと生い立ちがあることを知りました。


マグマの仕組みを洞爺湖ビジターセンターパネルで学習しました。
「実は日本には有珠山と同じように活火山が多く、決して有珠山だけが特別なのではないんだよ。」
 噴火の仕組みを知るために、コーラを使って実験も行いました。


2回目、3回目は早速、火山を体感する野外学習です。過去100年の間にも4回噴火が起きている有珠山で、10年前に活動してできた西山山麓火口群と金比羅山麓火口群を見に行きました。8人のこどもたちはどちらもほとんど歩いたことがないようです。地元にこんなすばらしい自然があるのに、今まで歩いたことがないという事実は最初は寂しく感じました。でも水蒸気をあげる火口、地熱のある地面や盛り上がった地面、コバルトブルーの水をたたえる大きな火口やその周りに住む生きものを初めて見るこどもたちは今日、どんな気持ちでそれらを見るのかなあと、ある意味、子どもたちとは違ったわくわく感もありました。


地熱を測ったり、世界でもなかなか見ることができない地溝(グラーベン)を見る。※地溝(グラーベン)とは、互いに向き合った一対の階段状の断層群ができて、見かけ上、中央部が落ち込んだように見える地形のこと。ここではマグマの上昇によってできた。

ある子から火口から出てくる白い煙を見て「あの煙は何なのか?」という質問がありました。大人であれば「水蒸気です。ここには地熱があって・・・」のように簡単に答えは済む時もあるのですが、子どもたちには「煙」が「水蒸気」なのではなく、子どもたちが言う「煙」がなぜ出てくるのか?について簡単そうで難しい質問にわかりやすく説明しなければなりません。いつもそのためにイラストを描いた画用紙を持っていったり、写真を使ったりします。また興味を引き出すために、双眼鏡で発見させたり、温度計で地熱を測ったりといったこともします。当日を大きく左右するこの下準備は大変ではあるけれど、自分にとっても勉強になっていて、子どもたちはどんなことに興味がわくのだろう?と想像しながら作成します。
  自然の中を歩く時、どんな言葉よりも見て触って感じることが一番の心に残る感動となり、またそれが興味へとつながります。これは自分の経験から感じていることなのですが、だからこそ、こどもたち自身が自然の不思議を発見したり、自然の姿に感動する時、自分もこどもたちと共に発見や感動を共有できる時間がとても幸せに感じます。豊かな地域の自然を知ることで自分たちの身の回りにある自然へ興味を持ってくれるよう今後も、少しでもお手伝いできたらいいなと思っています。


2000年噴火でできた金比羅山麓火口群の有くん火口。「火口から飛び出した噴石の層も見ることができるんだよ。」

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