ACTIVE RANGER

アクティブ・レンジャー日記 [北海道地区]

北海道地方環境事務所のアクティブ・レンジャーが、活動の様子をお伝えします。

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2010年7月 9日

3件の記事があります。

2010年07月09日【日本のいのち、つないでいこう! COP10まで100日前】

大雪山国立公園 東川 宮崎 浩

ナキウサギの独り言

 僕の名前はナキウサギのナッキーナ、大雪山十勝岳のふもと「望岳台」って言う所に住んでいます。ホントは山の上のもっと涼しく人間たちがあまり来ない所に住みたいんだけど、ここは僕たちの隠れる岩場もたくさんあって、大好物のエゾイソツツジもいっぱいあって、すっかりここに根をおろしてしまった仲間もいっぱいいるみたい。

 毎年夏になると僕たちを一目見たいっていう人間たちがいっぱい来るんだけど、どうしたわけか去年くらいから人間を見かけなくなったなぁ。まぁ、人が来ないのは静かでいいやって思っていたら、友達が教えてくれた。どうやら僕たちが住んでいるところへの道が通れなくなっちゃったんだって。それでだれもここまで来なくなっていたみたいだ。それでもたまにやって来るのは、大きな望遠鏡みたいなカメラを担いだ人間たち。相変わらず僕たちの写真が撮りたいみたいだ。どっから入ってくるのだろうと思っていたら、どうやら昔の道だった所を無理矢理歩いてきてここまでやってきているみたいだ。そこは危ないし、花も踏んでしまうから入っちゃ駄目って看板もあるのに。
 そういえば、こういう人たちから食べ物をもらったっていう友達もいたなぁ。珍しい食べ物だから取りあえず食べてみようと思って一生懸命に食べている所を写真に撮られたみたいだ。でもその後友達はおなかを壊したらしく、やっぱり僕たちの食べ物はここにあるものが一番だよねって話をしたもんだ。

 みんなはちょっとした散歩気分でここに来るみたいだけど、僕たちはここで静かに暮らしていることも忘れないで欲しい。僕たちナキウサギだけでなく、ここには他の動物もいっぱいいるんだからね。まず、持ってきたものは必ず持ち帰る。お菓子の食べカスなんかもいい臭いがすればついうっかり食べてしまう奴らもいるかもしれない。おいしければその後に人間たちにおねだりしたりするようになってしまう。そうなったら僕たちは自分で食べ物を採らなくなるかもしれない。そして僕たちの貴重な食べ物にもなる植物の上も歩かないで欲しい。食べ物が無くなったら僕たちはここで生きていけなくなるから。もちろん写真を撮ってもいいけど、決められた道の上から撮ってね。何よりも僕たちを驚かせないようにして欲しい。そうすれば僕たちも安心してここで暮らすことが出来るんだから。



皆さんヨロシクね。

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2010年07月09日【日本のいのち、つないでいこう! COP10まで100日前】

大雪山国立公園 上川 井上 智雪

高山蝶の密猟

 新聞報道等でご存じの方もいらっしゃるでしょうが、大雪山系で天然記念物の高山蝶を違法に捕獲していた人が警察に捕まりました。ウスバキチョウ、アサヒヒョウモン、ダイセツタカネヒカゲの三種類で約170頭も違法採取されていました。


違法に捕獲された蝶
(写真はいずれも旭川東署提供)


 後日、私も違法捕獲の現場へ行き、2時間程いましましたが、その間にダイセツタカネヒカゲ1頭のみしか目撃することができませんでした。聞いた話によると、そもそもとても数が少ない蝶だそうです。
 蝶は成虫になるまで3回脱皮しなければなりませんが、高山蝶は1年に1回しか脱皮しないそうです。ウスバキチョウ、ダイセツタカネヒカゲは卵から羽化するまで足かけ3年かかります。来年は例年通り観察することができたとして3年後はどうなるでしょう?もし産卵する前に捕獲されていたとしたら個体数は激減するでしょう。高山蝶の幼虫を食べる種もいます。幼虫になるべき卵が産まれていなければ少なからず影響があるはずです。高山帯でも食物連鎖は立派に成立しています。極端に言えば生態系が崩れ生物の多様性も失われてしまいます。




包み紙に入れられ潰れてしまったウスバキチョウとアサヒヒョウモン

 今回違法に捕獲された蝶は氷河期から生息し、温暖化が進むにつれて寒冷な気象条件を求め高山帯へと生息地を移して行きました。現在では厳しい自然環境下の高山帯のごくわずかな限られた場所にしか生息していません。蝶が好きならなおさら数年後、数十年後野生の飛んでいる蝶が見られるように守って行かなければなりません。

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2010年07月09日【日本のいのち、つないでいこう! COP10まで100日前】

釧路湿原国立公園 釧路湿原 本藤 泰朗

森のいのち

釧路の森を歩いていると、ミズナラ(どんぐりの木)の大木が倒れているのを見つけました。
直径はおよそ1.5m。
恐らく100年以上はここにひっそりと立っていたことでしょう。
今年の冬の厳しい風雪に耐えられずに倒れてしまったのかもしれません。


可憐な春の花の時期が終わった北海道の初夏の森は樹木の葉が一斉に茂り、薄暗くなった林床では見かける花も少なくなります。

充分な陽の光を浴びることのできなくなった植物はどことなく元気が無いように見えます。

大木が倒れたこの場所では森の上にぽっかりと大きな穴が開き、強い日差しが森の中まで降り注いでいます。



そんな光の差す森の中では、この時をじっと待っていたかのように若い樹木が青々とした葉をいっぱいに広げ、貪欲に陽の光を受けて成長しようとしていました。

やがて森の中にぽっかりと開いた穴は若い樹木達によってふさがれることでしょう。

そして倒れた大木は様々な虫の住み家となり、それらを食べる鳥たちに恵みを与え、さらには菌類などに分解され、土に還り、やがて森の養分となります。



私たちに憩いや安らぎを与えてくれる森の中では、長い年月をかけて様々ないのちの受け渡しが静かに行われています。

そんなことを考えながら森の中を歩いてみるのはいかがでしょうか?

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