ACTIVE RANGER

アクティブ・レンジャー日記 [北海道地区]

北海道地方環境事務所のアクティブ・レンジャーが、活動の様子をお伝えします。

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2010年10月 8日

5件の記事があります。

2010年10月08日【日本のいのち、つないでいこう! COP10まで10日前】

知床国立公園 ウトロ 高橋 知里

知床の海のワレカラたち

春から知床の海に設置されていた海洋観測ブイが冬を迎える前に回収作業が行われ、その作業に同行しました。
海洋観測ブイとは水温、塩分、クロロフィルなどの基礎的環境データを継続的に収集するもの。つまり、知床世界遺産の生態系を支える海の基礎的な環境データを知ることができるのです。



海洋観測ブイの引き揚げ作業
 
 今回は海洋観測ブイの話ではなく、そのときに見つけた奇妙な生きものの話です。
 水深約50mに沈んでいた海洋ブイを引き揚げると、ロープ一面に茶色の海藻のようなものがわさわさと張り付いていました。近づいて見てみると、一つ一つがカマキリのような形をした1cm程の細長い小さな生きものでシャクトリムシのように動いています。
 これは、ワレカラという節足動物の仲間で、海藻の上などで生活しています。定置網のロープにも大量に付着するので、漁師さんからは嫌われているようです。




 ロープに張り付いていたワレカラのかたまり

 
ワレカラは海藻や小さな甲殻類などを食べて育ち、藻場に住む魚の大切な餌となっています。知床では約10種類ほどが確認されていますが、種類を調べるのはするのは難しいようです。水産資源なオホーツク海ですが、沿岸域の生きものについてはまだまだ知られていない物も多く、環境省が行っている調査で研究が進められています。


 
ワレカラ
 
 こんなところにも、知床の生態系を支える生きものがいたのか!
よく見ると愛嬌のあるワレカラの姿を見て、しみじみとした気分になりました。

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2010年10月08日【日本のいのち、つないでいこう! COP10まであと10日】

釧路湿原国立公園 釧路湿原 本藤 泰朗

カイツブリ、只今子育て中!

ここ釧路湿原野生生物保護センターには施設の裏に池があり、鳥の渡りのシーズンである春と秋になると数多くの水鳥が羽を休め、渡り鳥達の中継地点になっています。
今年もマガモ、コガモ、ヒドリガモなどが確認され始め、本格的な渡り鳥のシーズンと秋の訪れを感じています。

そんな中、裏の池ではカイツブリのヒナが10月1日に産まれたのです。


背中の上からヒナが顔を出しています。分かるかな?


カイツブリ科では日本最小のカイツブリは、大きさが26cmほどのとても小さな水鳥で、北海道では春から夏にかけて繁殖のために飛来し、冬になると本州以南に戻ります。
このカイツブリもつがいで6月に飛来し、巣を作り、卵を温めていたのですが、暴風雨で巣を流されてしまったり、カラスに卵を盗られたりして、なかなかうまく卵のふ化まで至りませんでした。
昨年は繁殖に失敗していたので、今年もダメかなぁとあきらめていた時に1羽のヒナが確認できたのでとても驚いています。


親の背中の上にいるヒナ


しかし、とても心配なことがあります。

ここは北海道東部。
釧路の周辺では紅葉が見ごろを迎え、日に日に寒くなっていくのを感じています。
センターの裏の池も例年11月後半には結氷してしまいます。

今はまだ親の背中の上で甘えているヒナも、あと1カ月と少しの間でここを旅立たなければならないのです。
それまでの間に長い旅を続ける為の体力と飛翔力を付ける必要があります。

間に合うのかな?

少し心配になります。

私たちが出来るのは暖かく見守り、応援する事くらいです。

野生生物保護センターの2階には裏の池が見渡せる場所があり、望遠鏡も置いてありますので、ただいま子育て中のカイツブリを見ることが出来ます。
センターを訪れた際にはぜひこのカイツブリを応援してあげてください。

一昨年産まれたカイツブリのヒナ

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2010年10月08日日本のいのち、つないでいこう! COP10まで10日前

釧路湿原国立公園 釧路湿原 日吉 真樹子

秋の花 ウメバチソウ

秋も深まる10月。
夏は一面、緑色だった湿原のヨシもすっかり秋色に変わりました。


木道散策も心地よい秋晴れです。

 春や夏にはたくさんの花を見ることができた温根内木道ですが、この時期になると、もうほとんど花は見つけられません。
しかし、そんな中咲いているのがウメバチソウです。


ウメバチソウ(ユキノシタ科)

真っ白な美しい花です。
花の大きさは約2~2.5cmですが、白い色なのでヨシの中でも目立ちます。
少し寂しげになってきた湿原でも、このウメバチソウが気分を明るくしてくれます。
木道散策の際には是非探してみてください。

また、植物も生き物なので、大切に、そっと観察してあげてくださいね。

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2010年10月08日【日本のいのち、つないでいこう! COP10まで10日前】

大雪山国立公園 東川 宮崎 浩

エゾヒグマ
分類:ネコ目(食肉目) クマ科 

「大雪山はBEAR COUNTRY(ベアーカントリー)!」
ヒグマがいるからこそ大雪山は素晴らしい!大雪山に関わる者は皆そう思うであろう。

大雪山を歩く時、ヒグマの危険性は避けて通れない。しかしそれは逆に言えばそれだけ大雪山が自然の宝庫であるという事である。年々自然が失われていく中にあってこれだけの自然が残っている大雪山は貴重な財産である。
確かにヒグマがいなければ我々はもっと安心して山に入る事が出来るようになるかもしれない。しかしそれは同時に自然が破壊されてしまい、つまらない場所になってしまったという事であり、大雪山が大雪山で無くなってしまったという事である。やはりヒグマがいるからこそ大雪山は素晴らしい場所であるのだ。


警戒心が強い彼らの姿を見ることはなかなかあるものではないが、ここ大雪は間違いなくヒグマの楽園なのだ。(旭岳裾合平にて撮影)

昔、アイヌの人たちはヒグマの事を「キムンカムイ」(山の神)として崇めており、ヒグマとも共存していた。しかし現代ではどうであろうか?ヒグマが家畜を襲う、畑の作物を食い荒らす(もちろん昔もそのような事が全くなかったわけではないのだが)。例外もあるが、多くは自然が破壊され山を追われたヒグマたちだ。これ以上被害者のヒグマを作らないためには我々出来ることは何であろう。

例えば北海道ではあちこちで見られる道路に出てくるキタキツネ。彼らも最初から人間に食べ物をもらっていたのではないはず。誰かが餌やりをしたか、もしくは人間が捨てて行った食べ物などから人間に興味を示すようになってしまったのか。果てには子ギツネの時から親に餌のもらい方を教えてもらう個体がいずれ増えて来てしまわないようにしなくてはならない。



登山道入り口の駐車場で餌を待つキツネ。キツネももちろんだが、決して人間の食べ物をねだるようなヒグマを作ってはならない。自分たちの過ちは全て自分たちに帰ってくるのであるという意識を持つことが重要だ。

気を付けているようでもちゃんとやれているだろうか?

・山で食事をする際、食べ物のカスは登山道周辺に落とさない。ゴミを残していく事などもってのほか。
・野営の際、食糧などは外に置いておかない、臭いの強い食べ物は山では控える
等々。ちょっとした不注意から山の神(ヒグマ)が人間を脅かす存在になってしまわないようにしなくてはならない。

将来も「大雪山はBEAR COUNTRY(ベアーカントリー)!」と言えるような環境作りを我々はしていかねばならない。決してヒグマの住めなくなった大雪山にしてはならないのである。ヒグマがいるからこそ大雪山は素晴らしいのだ!


山では足跡を頻繁に目にする。当然のことながらここは彼らの住処であり、我々の住処ではない。山の神に畏敬の念を持って山に入らなくてはならない。場合によっては引き返すことも必要である。

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2010年10月08日【日本のいのち、つないでいこう! COP10まで10日前】

知床国立公園 羅臼 後藤 菜生子


*セイヨウオオマルハナバチを追いかけて(ミツバチ科マルハナバチ属)*

山の紅葉が麓まで降りてきて、木々が鮮やかな秋の装いを見せています。
もうすっかり秋ですね。
山頂に積もる薄雪が、冬がすぐそこまでやってきていることを教えてくれます。

これから訪れる冬にむけて、動物や植物が様々な準備をしています。
葉を落とすもの、サナギで越えるもの、
冬毛で迎えるもの、眠りに入るもの…。

マルハナバチは、夏終わりから秋に生まれる新女王バチが、同じ時期に生まれたオスと交尾をして、卵を産む春まで、土や葉の下などで冬眠をして冬を越します。
秋も終わりに近づく現在、終わりかけの花に冬眠前の新女王バチが、蜜を吸いにやってきています。
冬眠前最後の食事をして、体力を蓄えようというのでしょう。

そんな中に、セイヨウオオマルハナバチという外来種のマルハナバチがいます。
私たちは、これ以上セイヨウが増えないように普段から防除活動をしていますが、特にこの時期のセイヨウ捕獲には力をいれています。

それは、セイヨウオオマルハナバチの特性の一つでもある、「高い繁殖力」があるからです。
一つの巣から約25頭の新女王バチが生まれる日本在来のマルハナバチに対して、セイヨウは約100頭も生まれます。そしてその新女王バチが、次の年の春から夏にかけて生む働きバチは、多いときには数千頭にも及ぶのです。
まさに脅威。

寒くなってきて、葉や花も枯れ、周りでは虫たちの動きがあまり見られなくなっているかもしれません。
けれど、1頭を捕獲すれば、来年の数千頭の働きバチと100頭の女王バチの出現をおさえることができる今はまさに、捕獲の「追い込み」時期。

みなさんの周りにも、冬眠前のセイヨウはいませんか?


白いおしりが特徴の「セイヨウオオマルハナバチ」*外来種

オレンジ色のおしり「エゾオオマルハナバチ」*在来種

花の蜜を吸う「エゾナガマルハナバチ」*在来種

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