ACTIVE RANGER

アクティブ・レンジャー日記 [北海道地区]

北海道地方環境事務所のアクティブ・レンジャーが、活動の様子をお伝えします。

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2012年6月20日

3件の記事があります。

2012年06月20日花が咲くとこ、笑顔も咲きます。

知床国立公園 羅臼 後藤 菜生子

最近、ようやく暖かくなり知床の森も青々と茂り始めました。
短い春が過ぎ、森の色と鳥のさえずりに初夏の訪れを感じる今日この頃…。

日差しが心地よい土曜日の朝。
羅臼ビジターセンターで、観察会が行われました。

羅臼ビジターセンターの前の川を挟んで向かいにある、羅臼温泉園地遊歩道。
ここで、長年知床の自然や動植物を研究している浅沼孝夫さんを講師にお呼びし、春から初夏に見られる花々の観察を行いました。

羅臼温泉園地歩道は、
羅臼温泉裏手にあり、全長約1km所要時間約90分のお手軽散策路。
石畳や木道などから成り、時にはアップダウンもあって様々な表情を見せてくれる歩道です。

歩き始めてすぐにみんなの注目を集めるものが。
目線の先には…

マムシです。
「近くに温泉蒸気が湧いていて地熱が高いので、こうした爬虫類も生息できるんですね。他にも、ツヅレサセコオロギという本来は温暖な地域に生息する昆虫も見ることができるんですよ。」
写真を撮ったり観察しながら、浅沼さんの解説を聞きます。
しっぽを揺らして威嚇するマムシ。
日向ぼっこを邪魔され怒らせてしまったようです。
ごめんねー。


葉と葉の間から日差しが差し込み、風が頬をなでながら吹き抜けていきます。
そんな歩道では、たくさんの花々を観察することができました。



今が時期のスミレたちも、たくさんの種類があります。浅沼さんに見分け方を聞きながら、小さく可憐な姿をじっくり観察すると少しずつその違いが分かるようになります。

大ぶりな花が目立つ、オオバナノエンレイソウ。
別名アメフリバナって呼ぶんですって。
「運動会の時期に咲くんだけど、運動会で雨が降るから摘むなよ!ってよく言われたわ」
参加者の方からのお話も交えながら、会話にも花が咲きます。



上を見上げてもいろんな花々が。
木々にはイタヤカエデの黄色い花やハウチワカエデの赤い花、エゾヤマザクラもまだ咲いています。
多種多様な花々とその景色、そしてみなさんとの会話に、参加者だけでなくスタッフもみんなが笑顔。

会話も笑顔もあふれた歩道散策は、あっという間に出口に到着です。
参加者のみなさんが羅臼町の方でしたが、
「こんな歩道が近くにあったなんて知らなかった」「また来たい」
というお声もあり、みんなで歩いて観察できたことでまたひとつ、羅臼温泉園地歩道の魅力発掘につながったようです。

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2012年06月20日夏山シーズン幕開け(今年の雪解け状況は?)

大雪山国立公園 東川 宮崎 浩

 長かった積雪期も終わり、6月の中旬になると十勝岳・旭岳ともに山開き行事が行われ、いよいよ大雪でも夏山シーズンを迎えます。また一般の登山者の方からも残雪の状況の問い合わせなども増えてくるのもこの時期です。
 豪雪に悩まされた今冬、さぞ雪解けも遅くなるのでは?と心配していた今シーズンでしたが、4月下旬から急速に雪解けが進み、現在の残雪は例年並みかもしくは若干少なめのようです。


当然のことながら高山植物の開花も早く、旭岳姿見の池周辺でもすでにエゾコザクラが見頃となってきていました。

 下の写真は先週末(6/16、17)のパークボランティアによる登山道整備行事に同行した際のものを2年前の写真と比較してみたものです。10日の差があるためイマイチ良い比較とはならないかもしれませんが。
※記録的に残雪が遅くまで残った昨年(平成23年)とは比較にならないため、あえて2年前の写真と比較してみました。


まずはお馴染み、旭岳姿見の池。2年前に比べて10日も早い今年の様子ですが、池の周りの積雪や水面の現われ方を見る限りは今年の方がすでに雪解けが進んでいる、そのような印象を受けました。


こちらは十勝岳方面、カミホロ避難小屋前の大雪渓。こちらも2年前に比べて10日早い今年の写真ですが、すでにほぼ同じ残雪の状態。という事は、今年の雪解けは2年前より10日ほど早いという事になるでしょうか?

 雪解けが早いとはいってもまだまだ広い雪渓は多く残っています。登山の前には積雪状況や登山道の様子などの情報収集を行う事は言うまでもないでしょう。
 今年もこのAR日記で残雪状況も含めて出来るだけ多くの情報を提供していきたいと考えております。


パークボランティア作業風景。雨風の強い箇所ではこまめに道標のペイント作業を行っています。(十勝岳山頂)

 
 最後に今年の裏旭野営指定地ゴミ回収報告です。
雨風ともに強い中パークボランティアの皆様、本当に有難うございました。
急ぎ足での作業でしたが、この日回収出来たものだけでもビニール袋4袋程になりました。

毎年の事ですが、過去に埋められたゴミがまあいろいろと出てきます。缶詰の缶やビニール、古い新聞紙などなど・・・。土の中から出てきたものを地道に少しずつ回収していくほかにありません。


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2012年06月20日霧の6月

利尻礼文サロベツ国立公園 稚内 中野 雄介

 6月の礼文島の風物詩と言えば、島を代表する花レブンアツモリソウをはじめとする高山植物とウニなどの魚介類がすぐに思いつきますが、もう一つ忘れてはいけないものがあります。それはこの時期島を訪れる人の多くが遭遇する「霧」です。
 4月と5月の礼文島は比較的晴れる日が多いのですが、6月は霧が発生する日が多く、晴天率が低くなります。この霧の発生にはオホーツク海を中心に発達し、冷たく湿った北東風をもたらすオホーツク海高気圧が影響していて、この高気圧の勢力が強くなると日本海側は冷夏になると言われています。


上段:晴天時(6/2)と霧発生時(6/5)の桃岩展望台 
下段:晴天時(6/2)と霧発生時(6/5)の桃岩歩道

 6月5日の礼文島は朝から濃い霧に覆われていました。午後桃岩展望台に登るといつもなら間近に見える桃岩が、海からたち登ってくる霧によって覆い隠され、全く姿を見ることができませんでした。さらに、こちらも礼文島名物である強い風が吹くことによって尾根沿いの道を歩く歩道は初夏とは思えない寒さでした。


霧につつまれた礼文岳山頂(6/6)

翌日6月6日午後から礼文岳に登った時も山頂付近は濃い霧に覆われていました。晴れていれば山頂からは360度のパノラマが望めるのですが、この日は自分の登ってきた登山道すらほとんど見えない状況でした。このような状況では360度の眺望など望めるはずもなく、逆に山頂に一人でいるとやや心細い感じさえします。
 しかし、霧が発生することは悪いことばかりではありません。むしろこの霧こそ礼文島の高山植物たちにとって恵みとなっているのです。高山植物が多く生息する礼文島の西海岸はほとんどが急峻な斜面もしくは断崖絶壁となっています。そのような場所にも高山植物たちは自生しており、そこには川など水の供給源はありません。しかし、そんな高山植物たちにとって強い味方となっているのがまさにこの霧なのです。雨が降っているわけでもないのに着ているものがじっとりと湿ってくるほどの水分を含んだこの霧が、植物たちが生きるために不可欠な水分を与えているのです。
 ただ、今年の6月は例年に比べて霧の発生する日が少なく晴天の日が多くなっています。そのため、心なしか花にも元気がないように思えます。地元の方によるとこれから霧が発生する日が多くなるだろうとのことですが、やはり6月の花は霧が出ているときの方が活き活きしているように見えます。(キジムシロやカラフトハナシノブなどのように晴天でないと花を開かない種もありますが…)また、白い花や黄色い花は太陽光が強いと光を反射してしまい、花の色や形が見難いことがあるのに対し、霧の中では色や形がわかりやすく(視界が利く範囲での話ですが)露を帯びてキラキラ光る姿は非常に美しいです。


霧の中の花々(6/6礼文岳)
上段左:ツマトリソウ(サクラソウ科) 上段右:ヒメゴヨウイチゴ(バラ科)
下段左:ツルシキミ(ミカン科)    下段右:ハクサンチドリ(ラン科)

霧が発生すると視界が悪くなり、西海岸の海食崖に代表される雄大な景色を楽しめなくなってしまうのは残念ですが、その一方で目の前のお花畑では高山植物たちが湿気をたっぷり含んだ霧から命の源を得て、活き活きとした姿を見せてくれているのです。


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