2012年9月
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2012年09月10日登山道保全技術講習会を開催しました(その2)
大雪山国立公園 東川 宮崎 浩
登山道の補修を行うにはまず現場を知ることが重要です。その箇所がどのような原因で崩壊しているか、これを知るためにはまず「様々な条件で現場を見る」事です。晴れの日だけでなく雨の日、特に大雨の時などは水の流れを見る絶好の機会にもなります。
写真上が普段の道、写真下が雨の日の様子。まさに登山道が川になっているのがよく分かります。さらなる豪雨になると右側の青いラインまで水が走ってしまい、次第に登山道の崩壊が始まっていきます。※写真提供 北海道山岳整備
元々ここは落差工(ステップ&プール)によって水の勢いを弱めるための施工箇所なのですが、大雨の時は想定以上の量の水が流れてしまったため、道の両脇の浸食が始まってくると同時に組んだ石も崩壊しやすくなるという事例です。
これ以上の浸食を止める為にはどうするか・・・・。
その原因は水量の多さにあるのですから、それを抑えればいいのですよね。であれば、施工箇所の上流で水を登山道外に逃がしてやるという方法があります。
この施工はいわゆる「導流水制工」と呼ばれるもので、分かりやすく言うと「水切り」です。
「水切り」というとどのようなものを思い描くでしょうか?
土を削って水を流す道を作るというのも立派な水切りですね。が、簡単に土砂が詰まってしまうことが多く、頻繁にメンテナンスを行う必要があります。
下の写真を見て下さい。これまでに施工された近自然登山道工法での導流水制工の一例です。※こちらも北海道山岳整備からの写真提供
写真上は石を組んで作った導流水制工。写真下は現場に残っている木を利用しながら石を組んだもの。青色の線が水の流れのイメージです。このようなものを何カ所かに作り、少しずつ水を登山道外に排出するのが狙いです。うまく機能すればこれらは基本的にメンテナンスを必要としません。
施工にあたっての資材は全て現地にあるものを使っています。この後、木や石に苔が生えてくればこの箇所を工事したと気付く方もいなくなるでしょう。
現場の景観に馴染ませるというのはこの事です。
そして今回参加者で施工したものは。
写真上の赤○部分に導流水制工を一基作りました。写真下は皆さんで力を合わせて作ったもの。初めて石を使った作業をした方もいたかと思いますが、パズルをやり始めると大人も子供もやめられなくなるのと同じで、石を組み始めると止まらなくなる方がほとんどでした。
試行錯誤を繰り返して作ったこの導流水制工。さてさて、矢印のイメージ通りうまく機能してくれるでしょうか?はたまた現場の景観に馴染んでいくのでしょうか?
現在様々な形で行われている近自然登山道工法ですが、まだ完成された形になっているわけではありません。定期的にこれまで施工された箇所の検証会などを行い、成功例や失敗例などを踏まえ、今後大雪山にふさわしい登山道を作っていく事が我々に課せられた使命と言えるでしょう。
写真上が普段の道、写真下が雨の日の様子。まさに登山道が川になっているのがよく分かります。さらなる豪雨になると右側の青いラインまで水が走ってしまい、次第に登山道の崩壊が始まっていきます。※写真提供 北海道山岳整備
元々ここは落差工(ステップ&プール)によって水の勢いを弱めるための施工箇所なのですが、大雨の時は想定以上の量の水が流れてしまったため、道の両脇の浸食が始まってくると同時に組んだ石も崩壊しやすくなるという事例です。
これ以上の浸食を止める為にはどうするか・・・・。
その原因は水量の多さにあるのですから、それを抑えればいいのですよね。であれば、施工箇所の上流で水を登山道外に逃がしてやるという方法があります。
この施工はいわゆる「導流水制工」と呼ばれるもので、分かりやすく言うと「水切り」です。
「水切り」というとどのようなものを思い描くでしょうか?
土を削って水を流す道を作るというのも立派な水切りですね。が、簡単に土砂が詰まってしまうことが多く、頻繁にメンテナンスを行う必要があります。
下の写真を見て下さい。これまでに施工された近自然登山道工法での導流水制工の一例です。※こちらも北海道山岳整備からの写真提供
写真上は石を組んで作った導流水制工。写真下は現場に残っている木を利用しながら石を組んだもの。青色の線が水の流れのイメージです。このようなものを何カ所かに作り、少しずつ水を登山道外に排出するのが狙いです。うまく機能すればこれらは基本的にメンテナンスを必要としません。
施工にあたっての資材は全て現地にあるものを使っています。この後、木や石に苔が生えてくればこの箇所を工事したと気付く方もいなくなるでしょう。
現場の景観に馴染ませるというのはこの事です。
そして今回参加者で施工したものは。
写真上の赤○部分に導流水制工を一基作りました。写真下は皆さんで力を合わせて作ったもの。初めて石を使った作業をした方もいたかと思いますが、パズルをやり始めると大人も子供もやめられなくなるのと同じで、石を組み始めると止まらなくなる方がほとんどでした。
試行錯誤を繰り返して作ったこの導流水制工。さてさて、矢印のイメージ通りうまく機能してくれるでしょうか?はたまた現場の景観に馴染んでいくのでしょうか?
現在様々な形で行われている近自然登山道工法ですが、まだ完成された形になっているわけではありません。定期的にこれまで施工された箇所の検証会などを行い、成功例や失敗例などを踏まえ、今後大雪山にふさわしい登山道を作っていく事が我々に課せられた使命と言えるでしょう。
2012年09月06日登山道保全技術講習会を開催しました(その1)
大雪山国立公園 東川 宮崎 浩
まだまだ暑さが残る8月29日(水)、北海道内において近自然登山道工法で登山道整備を数多く手掛けている合同会社北海道山岳整備の岡崎哲三氏を招いて「登山道保全技術講習会」を開催しました。これは過去に手掛けた登山道の整備事例や手法などを登山道に関わる方たちに実際に見てもらい、維持管理の参考にしてもらおうというものです。
当日は関係行政機関や地元山岳会、山岳ガイドなど幅広い方々に参加していただきました。ご多忙中にもかかわらず参加していただいた皆様、有難うございました。参加者の中には過去にこの場所の工事を手掛けた方などもおられ、久々に自分の施工した場所を見るのは非常に感慨深いものがあったかもしれません。
「近自然登山道工法」という言葉はこのAR日記でもよく挙げていますが、今一つピンとこない方のために一言で言うと。
「出来るだけ現地にある資材を使い、自然景観に溶け込むような登山道整備」
とでも言ったら何となく分かるでしょうか?
この手法は元々河川工事に用いられていた工事で、この技術を「登山道は川である」という考えのもと、それを応用し登山道の整備に用いるようにし、平成17年度より大雪山でも環境省直轄整備事業の手法の一つとして取り入れられるようになりました。
これまでの登山道整備においてはまず「登山者の歩きやすさ」という事を第一に考え、単純にぬかるみに木道を設置したり、土留め階段を作るなどが多く取り入れられて事が多かったのですが、根本的な登山道浸食の原因を解決しない限りは、これらのものは時間と共に崩壊していってしまう→それらの補修をまた行うという事の繰り返しでした。
これらの過去の事例を踏まえて、近自然登山道工法においては
「登山道の浸食原因を理解し、なおかつ生態系復元のための環境を整える」
事をコンセプトにし、施工物は自然の構造から学び、作業機械を使わず伝統技術を用い、併せて登山者の行動にも配慮するという事が重要になってくるのです。
例えばこのように浸食が進んでしまっている登山道。単純にこの部分に木柵階段などを設置して歩きやすくするのは簡単な事ですが、それだけでは根本的な解決にはなりません。どのような原因でこれだけ浸食が進んでいるのかを考えることが重要です。
当日の様子。
現場に出る前にまずは座学から。これまでの整備事例などを用いて近自然登山道工法について参加者に詳しく説明しています。
こちらは石組みによる水流抑制のための施工箇所の説明ですが、大雨の際などは予想以上の大水が流れる(青いライン)ことによって、両脇の部分の浸食が進んで行ってしまっているという事例の紹介。
これらを実際に現地で見てもらい、その原因を考え、対処方法を考えて行こうというのが今回の狙い。現場において皆さんどのように考え、施工することが出来たのでしょうか?
現地での様子についてはその2において紹介したいと思います。
当日は関係行政機関や地元山岳会、山岳ガイドなど幅広い方々に参加していただきました。ご多忙中にもかかわらず参加していただいた皆様、有難うございました。参加者の中には過去にこの場所の工事を手掛けた方などもおられ、久々に自分の施工した場所を見るのは非常に感慨深いものがあったかもしれません。
「近自然登山道工法」という言葉はこのAR日記でもよく挙げていますが、今一つピンとこない方のために一言で言うと。
「出来るだけ現地にある資材を使い、自然景観に溶け込むような登山道整備」
とでも言ったら何となく分かるでしょうか?
この手法は元々河川工事に用いられていた工事で、この技術を「登山道は川である」という考えのもと、それを応用し登山道の整備に用いるようにし、平成17年度より大雪山でも環境省直轄整備事業の手法の一つとして取り入れられるようになりました。
これまでの登山道整備においてはまず「登山者の歩きやすさ」という事を第一に考え、単純にぬかるみに木道を設置したり、土留め階段を作るなどが多く取り入れられて事が多かったのですが、根本的な登山道浸食の原因を解決しない限りは、これらのものは時間と共に崩壊していってしまう→それらの補修をまた行うという事の繰り返しでした。
これらの過去の事例を踏まえて、近自然登山道工法においては
「登山道の浸食原因を理解し、なおかつ生態系復元のための環境を整える」
事をコンセプトにし、施工物は自然の構造から学び、作業機械を使わず伝統技術を用い、併せて登山者の行動にも配慮するという事が重要になってくるのです。
例えばこのように浸食が進んでしまっている登山道。単純にこの部分に木柵階段などを設置して歩きやすくするのは簡単な事ですが、それだけでは根本的な解決にはなりません。どのような原因でこれだけ浸食が進んでいるのかを考えることが重要です。
当日の様子。
現場に出る前にまずは座学から。これまでの整備事例などを用いて近自然登山道工法について参加者に詳しく説明しています。
こちらは石組みによる水流抑制のための施工箇所の説明ですが、大雨の際などは予想以上の大水が流れる(青いライン)ことによって、両脇の部分の浸食が進んで行ってしまっているという事例の紹介。
これらを実際に現地で見てもらい、その原因を考え、対処方法を考えて行こうというのが今回の狙い。現場において皆さんどのように考え、施工することが出来たのでしょうか?
現地での様子についてはその2において紹介したいと思います。
2012年09月05日きれいな山に似合わないもの
知床国立公園 羅臼 後藤 菜生子
それは、ゴミ。
先日、羅臼町商工会青年部さんと合同で、清掃美化登山を行いました。
商工会青年部のみなさんは、自分たちの住む町にある百名山羅臼岳を自分たちの手できれいにしようと、この清掃美化登山を3年前から行っているそうです。
それまでは、斜里町側の岩尾別登山口から登るコースで行っていたという清掃登山。せっかくならやはり羅臼町側の羅臼温泉登山口から登るコースでやりましょう、また、せっかくなら関係機関と協同でと、日頃から巡視などを行っている私たち羅臼自然保護官事務所にお声かけいただいて、実現する運びとなりました。
日頃、羅臼岳登山道の補修や維持管理、巡視を行っている私たちにとっては、地域の方々の自主的な活動があるのはもちろん、そんな活動にお声かけいただき協同で行うことになったこと、今まで羅臼岳すら登ったことないという会員さんも参加していただいたこと、そうしてイベントが行えるのはとても嬉しいことでした。
羅臼岳は標高こそ1660mですが、羅臼温泉登山口の標高は約100mなので、標高差約1500mを上がらなければならない他、岩尾別コースとくらべて勾配が急、行程が険しいなど、上級者向けのコースです。
そのため比較的登山者が少ないのですが、知床本来の静寂で奥深い雰囲気を堪能できる魅力あるコースでもあります。
日頃、巡視で登っている私たちもゴミがあれば拾いますし、もともと登山者の少ない登山道なのであまり落ちているゴミはないのでは…と想像していました。
ところが、
上の写真は、青年部のみなさんと三宅自然保護官、私たちアクティブレンジャーで拾ったゴミです。
…あるんですね。
ここを訪れる人々はみな、知床の美しい自然景観を堪能し、登山を楽しんだはず。そしてそれは、この自然環境が残っているからこそ、なはずです。
ゴミは自然景観だけでなく、野生動物へも悪影響を与えてしまいます。
あとを濁さない、これは堪能させてもらった自然に対しての最低限の配慮ではないでしょうか。
美味しく食べたお弁当やおやつ、どうしてもしたくなってしまったトイレ。
風に飛ばされないようすぐザックにしまう、携帯トイレを持参するなど、私たち一人ひとりがほんの少しだけ気を付けることが、この美しい知床の自然を保持する一歩となるのです。
きれいな山なら、キツネもうっとりお昼寝♪
先日、羅臼町商工会青年部さんと合同で、清掃美化登山を行いました。
商工会青年部のみなさんは、自分たちの住む町にある百名山羅臼岳を自分たちの手できれいにしようと、この清掃美化登山を3年前から行っているそうです。
それまでは、斜里町側の岩尾別登山口から登るコースで行っていたという清掃登山。せっかくならやはり羅臼町側の羅臼温泉登山口から登るコースでやりましょう、また、せっかくなら関係機関と協同でと、日頃から巡視などを行っている私たち羅臼自然保護官事務所にお声かけいただいて、実現する運びとなりました。
日頃、羅臼岳登山道の補修や維持管理、巡視を行っている私たちにとっては、地域の方々の自主的な活動があるのはもちろん、そんな活動にお声かけいただき協同で行うことになったこと、今まで羅臼岳すら登ったことないという会員さんも参加していただいたこと、そうしてイベントが行えるのはとても嬉しいことでした。
羅臼岳は標高こそ1660mですが、羅臼温泉登山口の標高は約100mなので、標高差約1500mを上がらなければならない他、岩尾別コースとくらべて勾配が急、行程が険しいなど、上級者向けのコースです。
そのため比較的登山者が少ないのですが、知床本来の静寂で奥深い雰囲気を堪能できる魅力あるコースでもあります。
日頃、巡視で登っている私たちもゴミがあれば拾いますし、もともと登山者の少ない登山道なのであまり落ちているゴミはないのでは…と想像していました。
ところが、
上の写真は、青年部のみなさんと三宅自然保護官、私たちアクティブレンジャーで拾ったゴミです。
…あるんですね。
ここを訪れる人々はみな、知床の美しい自然景観を堪能し、登山を楽しんだはず。そしてそれは、この自然環境が残っているからこそ、なはずです。
ゴミは自然景観だけでなく、野生動物へも悪影響を与えてしまいます。
あとを濁さない、これは堪能させてもらった自然に対しての最低限の配慮ではないでしょうか。
美味しく食べたお弁当やおやつ、どうしてもしたくなってしまったトイレ。
風に飛ばされないようすぐザックにしまう、携帯トイレを持参するなど、私たち一人ひとりがほんの少しだけ気を付けることが、この美しい知床の自然を保持する一歩となるのです。
きれいな山なら、キツネもうっとりお昼寝♪
9月15日から24日までの間、カムイワッカ湯の滝に行くのには、シャトルバスのみの通行になります。また、シャトルバスを利用すれば、知床で一番訪れる人が多い「知床五湖」に入るのも渋滞は関係ありません。五湖で途中下車し、散策後、カムイワッカに行くこともできます。
今年のお盆の時期、知床五湖に入るために、一番渋滞した日は、何と1.5km!これからのマイカー規制期間中は、これほど混まないとは思いますが、渋滞の発生は予想されます。この際、シャトルバスに乗車していれば、渋滞のストレスを感じることなく、優先的に通過することができます。
大きく伸びた渋滞。知床五湖まで、約600m
シャトルバスなら、脇をすり抜けて優先的に入れる。
※マイカー規制詳細は下記のアドレスを確認してください
→http://www.town.shari.hokkaido.jp/shiretoko/point/8p_kamuiwakka.htm