ACTIVE RANGER

アクティブ・レンジャー日記 [北海道地区]

北海道地方環境事務所のアクティブ・レンジャーが、活動の様子をお伝えします。

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2016年1月29日

3件の記事があります。

2016年01月29日海ワシ展開催中!

知床国立公園 笠井 憲子

 冬です。知床への流氷の接岸はもう少しですが、ワシたちは来ましたよ。

 ワシたちが来たことに併せて、知床世界遺産センターでは『海ワシ展』を開催中です。

 入口をくぐると、オオワシのハンズオン(触れる展示)がお出迎えしてくれます。

 オオワシとオジロワシの見分け方が学習できるコーナー。

 尾の形や滑空する翼の見え方で見分けて下さい。

 昨年に引き続き『あなたはどっちが好き?オオワシ対オジロワシ』も行っております。

 皆さんの投票により、人気のワシがわかる参加型の企画。どんなとこが好きなのか。ワシ愛を語っちゃって下さい。投票は始まったばかり、スペースはまだまだあります。1月29日現在、10対11でオジロワシが僅差で優勢となっております。

 生息状況調査の結果も速報が掲示されています。私たち、アクティブレンジャーが調査しているデータの公開です。

 これから2月に向かって、ワシたちの数はどんどん増えてくるはずです。

 今年の新しい企画『ワシをさがせ!』は、アクティブレンジャーが行っている調査を疑似体験できます。

 写真のどこかにワシがいます。探してみて下さい。難しい問題もありますよ。ぜひ、挑戦してみて下さい。

 開催期間:平成28年1月16日(土)~平成28年4月上旬ごろまで

 開館時間:9時00分~16時30分(毎週火曜日休館)

 知床にお越しの際は、知床世界遺産センターにもお立ち寄り下さい。

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2016年01月29日タンチョウ総数調査

大雪山国立公園 上士幌 上村 哲也

 上士幌自然保護官事務所の業務に登山道巡視やスノーモビル乗り入れ監視など大雪山国立公園の管理のほか、十勝管内における希少野生生物の保全があります。

 今回は、幕別町と大樹町でタンチョウの総数調査をお手伝いしました。この調査は、タンチョウの越冬数、幼鳥数、幼鳥を連れた家族数、標識個体の生存状況を調べ、保全活動の重要な基本情報になるものです。

 真っ白と真っ黒の体、真っ赤な頭、端正な姿と優美な舞から鶴といえばタンチョウといわれ、折り紙や「鶴の恩返し」で親しまれ、学名「Grus japonensis」には「日本産の」という単語が入る日本を代表する鳥です。

 環境省ウェブサイト...タンチョウ

 https://www.env.go.jp/nature/kisho/hogozoushoku/tancho.html

 日本では絶滅したと考えられていたタンチョウは、再発見された後、様々な方々の努力で保護が進められ、2014年、タンチョウ保護研究グループの調査では約1,500羽が確認されています。

 趣味で冬の山にも登ったり、クロスカントリースキーで汗をかいたりしますが、行動中や運動中は体から熱が生産されて薄手の衣類を重ねるだけでそう寒くはありません。ところが、タンチョウの観察、調査という業務は、任された観察位置で一日中じっと動かないことも珍しくありません。もこもこのダウンジャケット、耳まで覆う毛糸の帽子、グローブのような手袋、厚手の靴下と防寒長靴、これでもかと重ね着をします。

 午前中は、幕別町内の河川をねぐらと餌場にする個体の調査が行われました。川岸には樹木が並び川面まで段差があって曲がって流れる川は見通しがききません。二人ほどが川岸に入り追い立てます。周辺の道路にも観察者を配置し飛んで出たり歩み出たりするタンチョウを無線で連絡を取り合いながら確認します。二人で組んで任された場所には現れませんでしたが、隣で4羽の家族が観察されました。こちらからも双眼鏡でならそれとわかります。併せて20数羽が周辺で確認されました。

飛翔の気配を見せるタンチョウ 午後からは、大樹町に場所を移し、牧場地帯に散らばっている個体を調査します。乳牛を育てる牧場には飼料作物を発酵させる設備があり、牧草のほかトウモロコシなどの穀類が用いられていて、これらをついばみにタンチョウが集まってきます。設備はコンクリートの壁で仕切られた升状の形をしていて、よく確認しないとタンチョウが隠れてしまう高さです。これまで積み重ねてきた情報も活かし、あちらの牧場、こちらの川縁と車で移動しながら確認していきます。飛来する個体を見つけると何処か近くの確認済みの場所から飛んできたものか、もっと遠くから来たものか、確認に回ります。同じ個体を何度も数えてしまわないように確認を繰り返すのです。

 やがて、夕暮れが迫るとタンチョウたちはねぐらへ帰ります。頭と体を前へと伸ばして飛び立つ気配を見せ、大きく翼を拡げふわりと飛び立っていきます。

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2016年01月29日崇高なる山々

大雪山国立公園 渡邉 あゆみ

北海道の冬は長いと言いますが、一口に冬と言っても初冬・厳冬・晩冬・初春など様々な表情があり、今は厳冬期。
一年の中で最も寒い今が、最も胸が躍るシーズンという人も多いでしょう。私もその一人です。
住民の方から「スノーモビル乗り入れがあるようだ」と情報が寄せられたため、週末に乗り入れがあったか走行跡を確認しに月曜の朝、とある場所に向かいました。
大雪山国立公園の一部の地域でスノーモビルの乗り入れは禁止・規制されており、スノーモビルが発する騒音は野生動物の営巣を妨げることとなります。実際に、大雪山には貴重な動物たちが暮らしていて、その暮らしが脅かされるのは見逃せません。
-20℃まで冷え込んだ朝。子供の頃は通学中にダイアモンドダストはよく見ていましたが、最近は暖冬でそれも見ることもめっきり減りました。寒いを通り越して、シバレル、と北海道弁が飛び出します。(シバレル=北海道の方言で厳しく冷え込むの意)
車から降りると低温で顔もヒリヒリと痛みますが、スキーシューで歩き始めると徐々に体に暖かい血が巡り、手足が順調に前に出ます。
目的の場所へ辿り着き、野ウサギやキタキツネ、スキーを履いた2名のトレースだけがあるのを確認し、別の場所へ向かいました。
この日、そこではスノーモビルの走行跡はありませんでしたが、今後もパトロールを強化し、今シーズンはもう少し深いところまで調査が出来そうです。

夏は高山蝶がヒラヒラと舞い、残雪のすぐ横には広大なお花畑が広がり、楽園を感じさせてくれる大雪山。
そのお花畑には気持ちよさそうにキタキツネが日向ぼっこをしていたり、運が良ければ遠くの斜面で草を食んでいるヒグマを見ることも出来るでしょう。雄大な山並みと野生動物たちが長い間同じサイクルで営みを続け、共存してきた大自然は、人々を癒やし、励まし、それが心の深いところまで届くと自然に対して敬いの心が芽生えてくることでしょう。
一方、冬は装いを変え、山で暮らす動物たちは眠りにつき、そこに入るものに対し過酷な環境を突きつけます。ラッセルに喘ぎ、風雪に叩かれ、吹雪が途切れたとき一瞬見れる山の輪郭や猛烈に舞い上がる雪煙。
無言の山と響く風雪だけがあり、人間の小ささを知り、太刀打ち出来ない偉大なものへの畏怖の念と、聖域とも思える場所に足を踏み入れる歓喜の念が岳人を奮い立たせ、白い山へ向かわせるのでしょう。

どうかこの聖域にエンジン音や騒音が駆けまわることがありませんように。
白銀の富良野岳を眺望

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