2016年7月29日
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2016年07月29日 青い空と半月の沼
大雪山国立公園 岩城大洋
みなさま、こんにちは。上川自然保護官事務所の岩城です。
今回は、荒廃した湿原の復元のために平成19年に沼ノ平でおこなわれた植生復元プログラム
(その後モニタリング調査を毎年実施)が、現在どのような状態になったのかを見てきましたので、
その様子をみなさまにお伝えします。
現場まで行くにはまずは登山です。
愛山渓温泉を8:00にスタートし、少し遠回りでしたが、イズミノ沢沿いを登り滝ノ上分岐から
沼ノ平分岐へ 。
分岐より、姿見の池方面へ100mほど行ったところにワラムシロが敷きつめられた
ポイントがありました。
この場所は、約20年前から複線化が進み、敷設されているワラムシロの部分は、登山道と
化していました。
いまでは、ワラムシロに土壌が蓄積してミネハリイなどが生育している箇所があります。
またワラムシロの表層には蘚類がチラホラと姿を見せていました。
さらに先へと進みます。
半月の沼の付近までくると、この一帯は株移植試験区です。ミカズキグサや
ミネハリイなどの生育状況は良好でした。
ここでもワラムシロの表層には蘚類が育っています。木道の隅にはワタスゲが
生息し、白い美しい綿をつけていました。
私は過去の資料で復元プログラム前の現場写真を見ましたが、9年前と比べ今の状況は
大きく改善していました。
湿原の植生の復元は大変難しいと聞いていましたので、現場を見て、沼ノ平では結果が
出ていて、このまま順調に元の姿を取り戻してほしいと思いました。
今回のAR日記はここまでです。
次回をお楽しみに・・・・・。
こんにちは。えりも自然保護官事務所の近藤です。みなさん、いかがお過ごしでしょうか。今週は、低気圧の影響で、えりもでは大雨警報が出ていました。雨がひどくなると町境の国道が通行止めになってしまい、身動きがとれなくなることもありますが、今回は短時間で規制が解除されたのでほっとしております。
さて、当事務所は前回の日記のようにゼニガタアザラシを担当しております。しかし、7~8月は定置網の漁業期間外なので乗船調査は行いません。この期間は、日高山脈の調査を行っています。調査内容は、登山道の状況、高山植生、人工物の状態、及びこれらの管理状況などとなっております。今回は南日高の楽古岳(1,472m)で行った調査について簡単にご報告します。
楽古岳は日高山脈主稜線上の最南部に位置する山で、天馬街道の日高側からアクセスできます。札幌からだと、車で3~4時間程度です。登山口に近づくと間近に楽古岳を見ます。山頂部は天を突くような三角錐型で、強い存在感があります。調査日は、幸運にも晴天でした。
登山口には楽古山荘があり、誰でも利用できるようになっており、地元の山岳会によって大切に管理されていました。車を駐めて入山します。他の登山者はいませんでした。
入山後、しばらくは沢沿いの道です。この日は水量が少なく、沢の渡渉はすべて長靴で突破しました。沢のせせらぎと森の木陰に癒やされ快適に歩けました。その後、尾根を直登し稜線上に出ます。
稜線上に上がると、日高山脈が一望できました。北は大雪山、南は襟裳岬近くの豊似岳までグルッと見渡せました。西には様似のエンルム岬も見えます。快晴無風で抜群のコンディションでした。
山頂が近づくと、日高山脈らしいカール地形が現れます。その中に、エゾシカの親子がいました。こちらに気がついたのか、逃げるように山頂に駆け上がっていきました。野生動物はたくましいです。この付近で、ナキウサギの鳴き声もきこえました。
楽古岳山頂に到着いたしました。山頂標識は2年ほど前に新しくなったようで、木材から鉄骨に材質が変わっていました。GPSを確認すると標高差は 1,100m 程度でした。楽古岳は、日高らしい山歩きと緑豊かな自然を楽しめるワイルド感が魅力です。小一時間ほど休憩し下山しました。
《日高山脈の紹介》
日高山脈は、北海道の中央部を南北150キロに連なる山脈で「北海道の背骨」とも称されています。長い年月をかけて形成された地史をもち、氷河地形の「カール」や「ナイフリッジ」などがその魅力です。雪解けとともにヒグマは冬眠から目覚め、暖かくなるとカール地形や岩場の隙間などに高山植物が花をつけます。日高山脈は氷河時代を生き残った野生の王国です。日高山脈には一般的な登山道は少なく、沢を遡行し急峻な尾根を登り、稜線上はハイマツを漕ぐことで山頂にたどり着けます。自然環境は厳しく、人を寄せ付けない印象の日高山脈ですが、今回の楽古岳など、一部の山には比較的簡単に登ることができます。