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アクティブ・レンジャー日記 [北海道地区]

北海道地方環境事務所のアクティブ・レンジャーが、活動の様子をお伝えします。

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2021年6月16日

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2021年06月16日南からやってきた!!カラスバト

苫小牧 大久保 智子

こんにちは。大久保です。

5月中旬、苫小牧市内でカラスに襲われていたカラスバトが保護され、ウトナイ湖野生鳥獣保護センターに持ち込まれました。

保護2日目の様子。写真:ウトナイ湖野生鳥獣保護センター

カラスバトには違いないけれど、カラスバトの中には、カラスバト、アカガシラカラスバト、ヨナグニカラスバトの亜種があるので、そのどれかを同定してほしいと依頼がありました。

カラスバトってなに?初めて聞く名前。どんな鳥だろうと図鑑や資料で調べてみました。図鑑の写真をみると、おお!!名前の通り黒いハト!!

『カラスバトは、羽色は全身黒く、頭部・後頸・背には赤紫色、頸と胸には緑色の金属光沢がある。

アカガシラカラスバトは、黒く金属光沢があり、頭上は単色でぶどう褐色。

ヨナグニカラスバトは、光沢のある黒い羽色で体色がやや薄い。』

ちょっと、いやかなり難しい。

羽色では違いがわからないので、生息環境などの情報を見てみます。

『カラスバトは、留鳥として京都府冠島以南の諸島に分布し、

常緑広葉樹林など密生した森林を好んで生息する。離島以外は稀。

アカガシラカラスバトは、小笠原諸島、硫黄諸島に分布。

ヨナグニカラスバトは先島諸島に分布。』

保護されたのは北海道苫小牧市。

なんで?どうしちゃったの?そんなことってある?

同定しようにも、調べれば調べるほど謎は深まるばかり。

小笠原諸島にしかいないアカガシラカラスバト、先島諸島にしかいないヨナグニカラスバトはあり得ないと思っても、カラスバトだって、いるのは京都より南の島が生息域とのことなので、もうお手上げです。

幸いにも事務所には、様々な分野に精通したベテラン保護官たちが在籍していて、しかもいろいろなネットワークをお持ち。心強いです。

早速、詳しい方たちに保護したカラスバトの写真を見てもらい同定してもらいました。

結果、収容された個体は、亜種カラスバトでした!

アカガシラカラスバトやヨナグニカラスバトは国内希少野生動植物種であり絶滅危惧種です。

カラスバトも環境省レッドリスト(※1)では準絶滅危惧種(※2)なので

希少な鳥が北海道にやってきたということになります。

2009年に函館で見かけたという報道があったそうで、北海道初飛来ではありませんでしたが、珍しい鳥には違いありません。

専門家の方が言うには、船で羽を休めてたら、船が出航しそのまま遠くの地へ運ばれるというケースが稀にあるそうです。

保護された日の苫小牧市の最高気温は15℃、最低気温は8.8℃でした。

京都府舞鶴市の5月の平均最高気温が23℃、最低気温は13℃なので、

たどり着いた先が寒くてさぞかし驚いたでしょうに。

ちょうどウトナイ湖に行く機会があったので、観察させていただきました。

ドバトより一回り大きく、全体が黒くて頸の周りが紫や緑色で綺麗です。

明らかな外傷はなく、体や翼などに異常もなく、様々な専門家のご指導を頂き、リハビリを行いつつ、体力も回復したと判断されたので、先日放鳥したそうです。

頑張って日本縦断旅を乗り切って無事に南にたどり着いてほしいです。

リハビリ中のカラスバト。写真:ウトナイ湖野生鳥獣保護センター

※1:環境省では、日本に生息する野生生物について、生物学的な観点から個々の種の絶滅の危険度を評価 し、レッドリストとしてまとめています。

※2:現時点での絶滅危険度は小さいが、生息条件の変化によっては「絶滅危惧」に移行する可能性のある種のこと。

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