ACTIVE RANGER

アクティブ・レンジャー日記 [北海道地区]

北海道地方環境事務所のアクティブ・レンジャーが、活動の様子をお伝えします。

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2021年9月27日

3件の記事があります。

2021年09月27日利尻礼文サロベツ国立公園だより(4月・5月号編)

利尻礼文サロベツ国立公園 福井翔太

少しずつ秋の肌寒さを感じ始めたサロベツのアクティブレンジャーの福井です!

今回は稚内自然保護官事務所で発行している『利尻礼文サロベツ国立公園だより』について紹介します!

『利尻礼文サロベツ国立公園だより』とは利用者や観光客の方へ向けて、稚内自然保護官事務所のスタッフが季節の旬や魅力をお伝えしている情報誌です。便りをきっかけに利尻・礼文・サロベツそれぞれのエリアへ足を運んで頂ければと思います。!

季節は過ぎましたが今回のAR日記ではこれまでに発行した4月号と5月号を紹介しつつ、サロベツのアクティブレンジャーとしてサロベツの魅力や旬、撮影している際の出来事の発信を試みたいと思います。

●4月 春の足音

私自身は着任したての4月のサロベツは国立公園管理官が撮影と記事を書いてくれました。

湿原センター周辺には営巣しているハクセキレイがいますが、もしかすると4月号の写真のハクセキレイかもしれませんね。

より多くの色づいた草花を見るには少し早いですが、サロベツから見るまだ雪が残る利尻山の眺めも素敵です。野鳥はマガンやヒシクイの群れが確認できます。

●5月 花の便り

5月の利尻礼文サロベツ国立公園はつぎつぎと花々が咲き始めました。

このとき、サロベツで撮影したのはショウジョウバカマです。サロベツの木道を巡視していて私が最初に開花を確認した花でした。日が当たるときに花を開くタテヤマリンドウを見るにもいい季節です。4月には聞こえなかった渡り鳥の声も聞こえました。

利尻礼文サロベツ国立公園だよりは毎月1日(6月から8月は15日にも発行)、

稚内市内だけでなく利尻島、礼文島、更には豊富町、幌延町、浜頓別町など役場、駅、空港、ホテル、港など、約150ヶ所に掲示しています。

道北に訪れて便りを見つけた際には、ご確認と共にぜひ『利尻礼文サロベツ国立公園だより』に掲載されている利尻・礼文・サロベツへ足をお運びください!

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2021年09月27日アメリカオニアザミ大群落

釧路湿原国立公園 佐野 綾音

 皆さまこんにちは。

 各地の国立公園では外来生物(動植物)の動向を注視しています。

 外来種は、元々はその場所に生息(生育)していなかった動植物ですが、食用や園芸用など人為的に取り入れられたり、人や動物、自然界の営みにより運ばれたりと、様々な理由を経て、今ではその地に生息(生育)しています。

 外来種の一種であるアメリカオニアザミは、かつて北アメリカから輸入された牧草や穀物に混じって北海道に入り、そののち広く分布するようになった外来植物ですが(ちなみに、アメリカ・・・と名前はついていますがヨーロッパ原産のようです)、釧路湿原国立公園内でも局所的に生育しており、景観や植生保護の観点から特定の場所では積極的な防除活動を行っています。最近釧路湿原でも増えているエゾシカは葉のトゲを嫌って食べないため、この植物は残ってしまうのです・・・。食べてくれればいいのに・・・。

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【アメリカオニアザミの生育状況を確認】 【開花し始めのアメリカオニアザミ】

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写真左【抜き取りの様子(鋭いトゲ対策として革手袋を着用しています)】

写真右【根の抜き取りの様子】

 毎年防除活動を行っている場所では、感覚的(視覚)にも、実数的(防除数)にも減少しており、局所的な地における防除活動は、一定の効果があるのではないかと関係者間で実感していました。

 そんな矢先、国立公園内の巡視をしていた際、これまで気づいていなかった場所でアメリカオニアザミの大群落を発見しました。

 衝撃的な情景にアクティブレンジャー2人で目が点になってしまいました...。

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【アメリカオニアザミ大群落(多くのものはすでに綿毛(黄白色)となり種子分散中でした...)】

 その場所は、エゾシカが休んだ跡など痕跡も多い所で、エゾシカにより運ばれてその地に根ざし、生育数を増やしたのだろうなと想像しました。

 外来種云々はさておき、植物の生命力を感じつつ...今後どうしていくかを考えなければと思いました。

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2021年09月27日漁業とアザラシの関係

えりも自然保護官事務所 熊谷 文絵

みなさんこんにちは。

えりも自然保護官事務所の熊谷です。

前回の日記で、えりも町で秋サケ定置網漁が解禁になったとお知らせしました。

始まったばかりの水揚げ内容は、サケよりもブリが上回っていましたが、漁が始まり約1ヵ月。日を追うごとにサケが増えてきました。これは喜ばしいことですが、サケと同時に増えてくるのが「トッカリ喰い」。

アイヌ言葉でアザラシのことをトッカリと呼び、えりも地域に生息しているゼニガタアザラシによる漁業被害を「トッカリ喰い」と呼んでいます。

多くが漁業関係者であるえりも町民にとって、漁業被害は生活に直結する問題且つ近年の不漁にあっては気にせざるを得ない問題です。

▼数年前までのトッカリ喰い(ほとんどは頭部がない状態です)

▼近年のトッカリ喰い(胴部分が喰われボロボロ...サケもブリも被害を受けています)

 

被害の様子に変化が見られます。

サケの頭部がなくなる被害がほとんどだった数年前に比べ、ここ2年で頭部のみの被害は減り胴部分への被害が増えました。また、ブリへの被害が目立つようになったのもこの2年。

知能の高いアザラシがサケもブリも上手く捕まえられるようになったのか、海況が変化していることでアザラシの餌となる資源が減り定置網に執着しているのか...下記のお話からも、後者の理由が有力ではないかと考えています。

漁師のみなさんが言います。「すっかり海が変わってしまった」

これはサケが獲れなくなったことを総じて言っているものですが、その背景には

◆本来、秋定置網漁の前半(9月)に最盛期を迎える地域だけれど、9月後半になっても気温

水温共に高い状態で、サケが来遊する適温に定まらない

◆水温上昇に伴い、獲れる魚種が変化している。(昔は獲れなかったブリがここ3年でサケより目立つ漁獲量に。今年にいたっては暖かい海域にいるはずのカジキがかかることも...)

◆かつては海をみれば魚が跳ねていたけれど、そもそも魚を見かけない

記録的不漁!と言われた年から5年が経ちますが、今も不漁が続いています。

このような状況で、上記写真のように毎日ゼニガタアザラシが被害をもたらしているとなれば漁師の気持ちも昂りません。

えりも自然保護官事務所の業務としては、えりも地域に棲むゼニガタアザラシがもたらす漁業被害軽減を目指しています。漁業とアザラシがどんな状態であることが望ましいのか、取り巻く環境が変化する中で対応していくことには難しさもありますが、冷静に状況を把握することも必要で毎日の乗船調査で魚・海・アザラシの状況の把握、漁網の改良に取り組んでいます。

休んでいる野生のゼニガタアザラシをすぐ近くに見られるのは珍しく、少し観察していると、動きには個体差がありとても可愛らしいです。日本一の生息地・繁殖地という環境があることも、誇らしいことだと感じます。

引き続き、漁業にもアザラシにもよい状況とはどう在ることなのか、考えながら取り組みたいです。

漁業が盛んで野生動物の生息地でもある地域にはこのような課題があることを、まずはみなさんにも知っていただけたらと思います。

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