東北地域のアイコン

東北地方環境事務所

アクティブ・レンジャー日記 [東北地区]

東北地方環境事務所のアクティブ・レンジャーが、活動の様子をお伝えします。
アクティブ・レンジャーとは、自然保護官の補佐役として、国立公園等のパトロール、調査、利用者指導、自然解説などの業務を担う環境省の職員です。管内には、十和田八幡平、三陸復興、磐梯朝日国立公園があります。

イトヨに会いに行こう(岩手県大槌町)

2022年06月15日
大船渡 坂本麻由子

こんにちは。大船渡自然保護官事務所の坂本です。

梅雨入り宣言はまだの北東北ですが、雲が多く雨のよく降るこの頃。

外回りの業務が多い私たちは毎日天気予報とにらめっこしています。

 

貴重な晴れ間のあった先日、ある生き物に会いに大槌町(おおつちちょう)へ行ってきました。

震災前の大槌町では、あちこちで自噴井(じふんせい)を見ることができ、住民は古くから生活用水として利用してきたそうです。現在は復興まちづくりが進み湧水を楽しめる場所もだんだんに整備されてきています。

みちのく潮風トレイルがすぐ脇を通る源水川も湧き出た地下水が流れるとてもきれいな川です。

年間を通して水温・水質が一定なので『淡水型イトヨ』の生息地となっており、これは岩手県内唯一ということで貴重な生態の保護活動が行われています。

2011年の東日本大震災では大槌町も大きな被害を受け、ここ源水川にもがれきや土砂が押し寄せ誰もが「イトヨのすむ環境が壊れてしまった・・・」と感じました。たくさんのボランティアや研究者、住民の方々の活動によって現在の源水川では元気に泳ぎ回るイトヨを観察することができています。

 

風がなく水面が揺れていない時が絶好の観察日和。

周囲の動きに敏感な彼らを脅かさないよう観察ポイントを決めたらじっと動かず待つこと数分・・・

水草の陰に隠れていたイトヨたちが現れます。

これが源水川に生息するイトヨです。川底を口でツンツンつつく姿が特徴的です。背中の色は地味で目立ちませんが、おなかが輝く銀色なので動きによってキラっと太陽光を反射します。

一般的にイトヨはサケなどと一緒で、川で生まれたのち海へ出て産卵のために川へ戻ってくる遡河回遊(そかかいゆう)魚ですが、ここの淡水型イトヨは海へ出ることなく一生を大槌町の川で過ごします。

群れで生活する姿をここではじっくり観察できますよ。

川底の泥と体の色が似ていてで見にくいですが、イトヨの影でいるのがわかりますよね。

イトヨたちが暮らすきれいな川はもちろん他の魚にも住みよい場所です。

私は魚類に疎いため種の判定はできませんが、地面を這う系の魚や大きな魚群でなめらかに泳ぐ魚を見ることができました。

〈這う系?のお魚〉

〈大きな魚群!なめらかなお肌がアユのように見えますが・・・〉

ここにいる小魚たちを目当てにカワセミをはじめとする野鳥たちも集まります。

きれいな冷水でしか生育できないバイカモももうすぐ見頃になります。

きれいな水に引き寄せられ秋には珍しいトンボやヤンマなども飛び回ります。

たくさんの生き物に会えるここ源水川流域は時間を忘れて観察に没頭してしまうスポットです。近くに来た際やみちのく潮風トレイルで通りがかる際には是非立ち寄ってイトヨを探してみてくださいね。

 

多様な生物に出会えるこの環境がいつまでも続きますように。