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釧路自然環境事務所

報道発表資料

2013年03月22日
  • その他

報道発表:シマフクロウ生息地拡大に向けた環境整備計画の策定について(お知らせ)

釧路自然環境事務所

 絶滅のおそれのある野生動植物の種の保存に関する法律で国内希少野生動植物種に指定されているシマフクロウについては、1984年(昭和59年)から保護の取組を進めてきました。その成果により、近年生息数は漸増傾向にあります。しかしながら、本種の生息に必要な豊かな自然環境は依然不足していることから、今後生息地を拡大していくためには『生息環境の整備』を進めることが重要です。
 そこで、重点的に生息環境の整備に取り組む対象地の選択方法とそこで行う環境整備について示し、生息環境の整備を進めることを目的に、この度、環境省北海道地方環境事務所と林野庁北海道森林管理局が共同で「シマフクロウ生息地拡大に向けた環境整備計画」を策定したので、お知らせします。

1.検討の経緯

 シマフクロウ人為分散事業促進の柱の1つとして『放鳥適地の選択及び放鳥に向けた整備計画』を策定するため、2011年からワーキンググループ(以下WG)を設置して検討を開始しました(WG開催状況等については3参照)。このWGにおいて、近年のシマフクロウの増加傾向を踏まえ計画の対象を自然分散にも拡大することが適当との結論に至ったことから、計画のタイトルを『生息地拡大に向けた環境整備計画』と改めて、内容を拡充して策定することとなりました。
 本計画はWGでの5回の議論を経て案を作成し、その後、平成24年度のシマフクロウ保護増殖分科会(2013年2月12日開催)において承認されました。

2.生息地拡大に向けた環境整備計画の概要

Ⅰ.背景

 1984年から始まった保護増殖事業の成果により、シマフクロウの個体数は減少から漸増へと転じているが、シマフクロウの生息に不可欠な生物多様性に富んだ豊かな自然環境は戻っていない。このため「シマフクロウ保護増殖事業計画」の柱の一つである『生息環境の整備』を一層進めることを念頭に本計画を策定した。

Ⅱ.計画の目的

○シマフクロウのかつての生息環境を取り戻し、自然状態で安定的に存続できる状態とするため、アクションプランに掲げた「生息地(つがい生息地点)100箇所、個体数200羽」*1の中間目標を達成すること

○目標達成の具体的な実行計画として、重点的に生息環境整備に取り組む対象地の選択方法と、そこで行う環境整備についての考え方と手順を示すこと

Ⅲ.現状と課題

1.シマフクロウの生息環境と生態
近年個体数は漸増しているが、限られた地域への集中と過密化、生息地*2の孤立が起きている。
天然営巣木が不足しており、巣箱に依存するつがいが8割を超えている。
餌資源量が不十分なため、給餌場や養魚場を利用する個体も多い。

2.人為分散(放鳥)
これまでにつがい形成を目的として6例の放鳥が行われ、うち3例で放鳥地での定着が確認され、そのうち2例は繁殖に成功した。

3.飼育・保護収容状況
釧路湿原野生生物保護センターにおいては生体収容の増加や救命率の向上により、動物園においては野生復帰困難個体の増加と飼育・繁殖技術の向上により、飼育個体数が年々増加している。

4.環境整備の取組状況と課題

(1)取組状況
これまでに、生息・繁殖条件の改善(給餌、巣箱設置)、生息環境の整備、調査、事故防止対策、開発・改修行為に伴う生息情報の収集や生息環境の改善、監視・入込防止等の環境整備が行われてきた。

(2)課題
これまでの環境整備は緊急対策的、スポット的な取組が中心であり、面的な生息環境そのものの改善は必ずしも十分でなかった。また今後、未生息地における環境整備を進めるためには、様々な主体の協力が必要である。

Ⅳ.生息地拡大に向けた基本的考え方

○野生下の個体数が増加に転じ、今後さらに増加ペースの加速が予想される一方で、給餌に頼っている個体も多いことから、生息地拡大を図るためには生息環境の整備が急務である。

○既存生息地は自然分散個体の核(供給源)として重要なことから、引き続きその保全が重要である。給餌や巣箱を利用している生息地においては、自然採餌、天然木樹洞の利用への転換を図るための環境改善を行うことも重要である。

○生息地の拡大は自然分散が基本であり、取組に当たっては、主な生息地の間に新たな生息地を整備することで生息地間をつなぐなど、自然分散を促進するため生息地の拡大上重要な地域(*)を中心に、生息環境の整備に重点的に取り組むことが必要である。なお、生息地の拡大上重要な地域での生息環境の整備の必要性は、自然分散のみでは拡大が難しいと考える場合において補完的に人為分散(放鳥)を行う場合についても共通する(具体的な放鳥適地の選定や放鳥条件、手順等については『放鳥手順』にて策定)。

*生息地の拡大上重要な地域

  • 既存生息地周辺
  • 既存生息地間(個体群の連結及び分散経路の確保上重要な地域)
  • 孤立生息地周辺
  • 既存生息地内で長期間生息が確認されていない場所*3
  • 既存生息地内で給餌に依存するなど生息環境が不完全な場所

○生息地拡大の取組はその基本となる森林・河川等の環境改善が不可欠であることから、北海道開発局、北海道等関係する行政機関とも連携して取り組むことが重要である。
上記の基本的考え方については、遺伝的側面など最新の科学的知見を踏まえつつ対応するとともに、必要に応じて適宜見直しを行う。

Ⅴ.環境整備対象地の選択と環境整備

1.環境整備対象地の選択
基本的考え方を踏まえ、生息地の拡大上重要な地域を中心に、今後環境改善に取り組むことで比較的早期にシマフクロウの生息に適する可能性の高い場所を下記や現地調査等を踏まえて抽出し、環境整備対象地を選択する
 ① 現在の生息状況を踏まえた抽出
 ② GIS解析による抽出
 ③ 関係者との連携協力

2.環境整備

○基本的取組
環境省と林野庁が中心となり、以下の生息環境整備の基本的取組を行う。

  • 環境整備対象地の選択のための基本的な環境条件等の調査
  • 営巣環境の改善(巣箱の設置(縄張り内の営巣可能場所を複数箇所作っておく。捕食者対策にも留意))
  • 河畔林の保全と整備(営巣木を残す・育てる施業など)
  • 事故対策(事故対策未実施箇所等のチェックによる感電・交通事故ハザードマップの作成)
  • 関係機関との連携協議、関係者との連携体制作り

○関係機関とも連携して行う取組
関係機関とも連携し、中長期的視点から、地域の特性を踏まえ適宜必要な以下の取組を行う。

  • 法令等を活用した生息地の保全(鳥獣保護区、保護林、民間の保護区等)
  • 民有地における生息環境に配慮した河畔林の保全、連続性の確保及び整備
  • 生息環境に配慮した河川環境整備(河畔林の整備、遡上・回遊阻害要因の解消、魚類の生息環境改善、溺死対策等)
  • 放棄農地における河畔林の復元
  • 釣りによる魚類への捕獲圧の低減(協定、部分的自粛など)
  • 作成されたハザードマップに基づく事故予防措置、放置漁網についての注意喚起

Ⅵ.普及啓発

シマフクロウが生息地を広げていく過程では、地域住民や都市住民、企業の理解が重要となる。そのため保護増殖事業の標識調査や巣箱設置等の活動、検討会等について可能な範囲で公開したり、シマフクロウに関する住民や事業者向けのイベントの開催、生息地周辺の学校における環境教育などを通して、シマフクロウを取り巻く現状や課題、取組を広く紹介することで、普及啓発につなげる。
なお、普及啓発の際は、シマフクロウの生息・繁殖に影響を与えうる行為についての注意喚起を併せて行い、シマフクロウを静かに見守るマナーの普及を図る。

*1 アクションプランの目標ではつがいが生息(定着)する地点を『生息地』としており、本計画の『生息地』の定義(*2参照)とは意味が異なる。また、目標として(つがい)生息地(点)を100箇所と設定し、それをもとに個体数200羽(=つがい(2羽)×100箇所)を算出しているため、単独個体や幼鳥は目標数に含まれていない

*2 生息地:シマフクロウが安定的に生息する面的なひとまとまりの区域(単独個体か複数個体かは問わない)

*3 既存生息地内で長期間生息が確認されていない場所:生息地の中で、環境条件が悪い場合や環境は整っていても他の要因(事故の危険性や捕食者の存在等)により定着個体がいないスポット的な場所

3.生息地拡大に向けた環境整備計画策定ワーキンググループについて

○検討委員
金子 正美 酪農学園大学 教授
幸丸 政明 東京環境工科専門学校 校長 【座長】
齊藤 慶輔 株式会社猛禽類医学研究所 代表
竹中 健 シマフクロウ環境研究会 代表
早矢仕有子 札幌大学 教授
藤巻 裕蔵 帯広畜産大学 名誉教授
前川 光司 北海道大学 名誉教授
山本 純郎 日本鳥類標識協会 会員

○開催状況
第1回 平成23年3月3日 
第2回 平成23年7月10日
第3回 平成23年12月1日
第4回 平成24年7月30日
第5回 平成24年12月14日

<添付資料>

『シマフクロウ生息地拡大に向けた環境整備計画』(平成25年3月) [PDF 514KB]

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