報道発表資料
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平成26年度国内希少野生動植物種シマフクロウ、タンチョウ、オジロワシ及びオオワシの傷病個体収容結果について
環境省では、絶滅のおそれのある野生動植物の種の保存に関する法律で国内希少野生動植物種に指定されているシマフクロウ、タンチョウ、オジロワシ及びオオワシの保全に資するため、傷病個体(死体を含む)が発見された際には収容し、現場状況や収容個体を調査し収容要因の究明に努めています。平成26年度までの収容結果について、下記の通りお知らせします。
平成27年4月17日(金)
環境省 北海道地方環境事務所
所長: 德丸 久衞
野生生物課長: 小口 陽介
野生生物課係員: 友野 雄己
環境省 釧路自然環境事務所
所長: 西山 理行
野生生物課課長: 藤井 好太郎
野生生物課自然保護官: 福地 壮太(担当)
電話(0154)32-7500 FAX(0154)32-7575
記
1.シマフクロウ(別紙1)
<全体の傾向>
収容件数はやや増加傾向となっています。シマフクロウの生息個体数自体が回復傾向にあることも影響していると考えられますが、依然として本種は推定個体数約140羽ですので引き続き憂慮すべき状況です。
収容要因別に見ると、要因が解明されたものの中では「交通事故」が最も多く全体の約21%となっています。続いて、人為的な要因として高いのはシカ対策用ネットや漁網などに絡まる「羅網」の約12%です。また、養魚場などでの「溺死」が約7%で、魚を捕りに来た個体が事故に遭っているものと考えられます。「感電事故」は約8%となっており、送電線や配電線の支柱を止まり木として利用した個体が事故に遭っています。
<平成26年度結果>
平成26年度は、4羽の収容があり、最近の件数としては少ない件数となりました。9月に幼鳥1羽が交通事故により死亡しており、現場の状況などから、親離れしたばかりの幼鳥がカエルなどの餌を捕りに道路に降り、事故に遭ったものと考えられます。
2.タンチョウ(別紙2)
<全体の傾向>
収容件数は、年度によって上下の変動はありますが、平均すると25羽程度が毎年継続的に収容されています。タンチョウの生息個体数は、環境省が毎年実施している越冬分布調査によると、平成12年度に798羽、平成26年度に1187羽が確認され、徐々に増加していることが明らかになっています。生息個体数の増加率に対して、収容件数の増加率は低いと推察されます。
収容要因別に見ると、「電線衝突」の割合が最も多く全体の約27%となっています。秋口に飛翔を始め、まだ飛翔能力の低い幼鳥が事故にあう割合が多くなっています。一番多く収容された年は、平成14年度の14個体となっており、その後は上下の変動はありつつも減少傾向となり、ここ数年は毎年一定の個体数が収容されています。
続いて、割合の高い収容要因は約15%の「交通事故」、約10%の「列車事故」となっています。これら事故については、幼鳥・亜成鳥の事故率が高くなっており、「交通事故」については、約半数を幼鳥・亜成鳥が占めています。
その他の収容要因としては、「栄養不良・衰弱」(約6%)、有刺鉄線、電気牧柵、シカ除けネット等に絡まる事故の「フェンス等」(約5%)及びタンチョウ同士の争いによる負傷の「同種闘争」(約4%)があります。これらの要因で収容されたタンチョウは、約半数を幼鳥または亜成鳥が占めています。
<平成26年度結果>
平成26年度は、24羽の収容があり、昨年度よりは少ない件数となりました。収容要因としては、「交通事故」が10件と一番多い結果となり、この内半数は幼鳥でした。続いて多かった収容要因は、「電線衝突」の6件となりました。
3.オジロワシ(別紙3)
<全体の傾向>
収容件数は増加傾向となっています。生息個体数がやや増加傾向にあることや、以前に比べると周知が進み傷病個体の情報が集まりやすくなっていることが影響しているものと考えられます。
収容要因別に見ると、要因が解明されたものの中では「交通事故」が最も多く全体の約17%となっています。「交通事故」や「列車事故」は、エゾシカ等の轢死体を捕食しに来た個体が轢かれたと考えられるケースが多くみられます。続いて多いのが「風車衝突」の約15%で、直近の数年だけで見ると全体に占める割合としては最も多い要因となります。続いて、「鉛中毒」が約11%(暴露も含めると約13%)となります。
<平成26年度結果>
平成26年度は、22羽の収容があり、最近の数字としては例年並みの件数となりました。「風車衝突」の3件はいずれも道北地域となっています。「列車事故」の4件のうち3件については事故現場付近にエゾシカの轢死体が確認されており、捕食に来た個体が被害にあったものと考えられます。「鉛中毒」は1件で、平成27年度に入ってからさらに1件発生しています。(鉛中毒の原因等に関しては「4.オオワシ」を参照。)
4.オオワシ(別紙4)
<全体の傾向>
平成12年度から見るとやや減少傾向となりますが、平均すると15羽程度が毎年継続的に収容されています。
収容要因別に見ると、「鉛中毒」が全体の約31%(暴露も含めると約32%)と他種にみられない特徴的な偏りがみられます。過去に比べると件数は減少したものの、引き続き主要な収容要因となります。鉛中毒は、エゾシカ猟に使用した鉛銃弾を残滓等とともに摂取し急性中毒に陥るもので、鉛中毒と診断されたほぼ全ての個体が死亡しています。要因が解明されたものの中では、続いて「感電事故」が多く全体の約12%で、送電線や配電線の支柱を止まり木として利用した個体が事故に遭っています。続いて、「交通事故」が約10%、「列車事故」が約6%となり、オジロワシと同様に、エゾシカ等の轢死体を捕食しに来た個体が轢かれたと考えられるケースが多くみられます。
<平成26年度結果>
平成26年度は、12羽の収容があり、例年並みの件数となりました。このうち「鉛中毒」は3件でした。なお、平成26年10月には北海道のエゾシカ対策推進条例により、エゾシカ猟を目的とした鉛ライフル弾の所持が禁止されましたが、それ以降にも2件の鉛中毒が発生しています。オジロワシと合わせると、平成26年10月以降は、平成27年度も含め、4件の鉛中毒が発生しています。