報道発表資料
2025年07月18日
- 報道発表
2025年度(令和7年度)のシマフクロウ標識調査では、 61羽のヒナに標識を装着することができました。
1.環境省では、シマフクロウの保護増殖事業の一環として、毎年春に生まれたヒナへの標識調査を行っています。今年度の調査では、合計61羽のヒナに標識を装着することができました。過去最多の標識数となります。
2.日高山系地域を除くシマフクロウの各地域個体群(知床・根釧・大雪山系)においても過去最多の標識数となりました。
3.巣立ったヒナがしっかりと生息・定着できるよう、また、つがい数が増加するように、今後一層、生息環境を整備することが必要です。
2.日高山系地域を除くシマフクロウの各地域個体群(知床・根釧・大雪山系)においても過去最多の標識数となりました。
3.巣立ったヒナがしっかりと生息・定着できるよう、また、つがい数が増加するように、今後一層、生息環境を整備することが必要です。
■ 調査目的
・ シマフクロウは北海道の道東を中心に生息している絶滅危惧種であり、「シマフクロウ保護増殖事業計画(平成5年11月26日策定)」に基づき、巣箱設置、給餌、傷病対応、事故防止対策、生息環境整備を始めとする保護増殖事業を国や関係者で進めています。2022年度(令和4年度)時点で100つがいの生息が確認されているところです(つがい数の推定は5年に一度)。
・ 環境省では、シマフクロウの保護増殖事業の一環として、春に生まれたヒナに標識を装着し、個体識別、性別及び来歴等の個体情報の収集、繁殖履歴の把握等を行っています。
・ この調査により、保護増殖事業の進め方を決定する上で重要な知見となる、繁殖状況、移動分散、寿命など、シマフクロウの生態についての貴重な情報を得ることができます。
・ 把握されている営巣地で生まれたヒナのほとんどは本調査により標識が装着されており、長年の標識調査の成果として、多くの野生個体の生まれた年や場所などが把握できています。なお、過去5年間に傷病等により保護収容した野生個体のうち約6割は標識済みの個体でした。
■ 調査内容
・ 巣立ち前後のヒナを捕獲し、体重、体長及び羽の伸長等の計測を行い、個体識別のための標識を装着しました。
・ あわせて、採血や外見異常の有無等の獣医学的な診断を行い、個体の健康状態や成長状況を調べました。
・ 作業後、速やかに捕獲地点へヒナを戻しました。
・ 採取した血液サンプルは、健康状態の把握に加え、DNA解析を行うことで性別及び血縁関係の把握や遺伝的多様性の評価に用いることができます。
■ 調査期間
・ 2025年(令和7年)5月16日~6月28日
■ 結果
・ 保護増殖事業で設置している巣箱を中心に調査し、天然木も含む45巣(つがい)において、計61羽のヒナに標識を装着しました。獣医師による診断で異常が発見され保護収容に至った個体はありませんでした。
・ 61羽は、過去最多の標識数となります(最多更新は2023年度(令和5年度)以来)。1985年(昭和60年)に標識調査を開始して以降、これまで41年間で合計851羽に標識を装着しました。年度ごとに多少上下しながらも、標識ヒナ数は年々増加してきており、特にこの5~6年の伸びは顕著です。
・ 日高山系地域を除くシマフクロウの各地域個体群(知床・根釧・大雪山系)においても過去最多の標識数となりました。

図 シマフクロウの標識ヒナ数の推移
※数値はあくまで標識したヒナの数を示すものです。結果には調査における努力量も影響するため、この数がヒナの全体数を示すものではありません。
・ 地域個体群ごと及び振興局管内ごとの内訳や営巣タイプ別の巣数内訳は下表のとおりです(生息地保全のため、位置の詳細は公表していません)。
表1 地域個体群ごとの標識結果
表2 振興局管内ごとの標識結果
表1 地域個体群ごとの標識結果
地域個体群 | 標識ヒナ数 (巣数) |
||
2023年度 (令和5年度) |
2024年度 (令和6年度) |
2025年度 (令和7年度) |
|
知床 | 12(10) | 11 (9) | 16(14) |
根釧 | 16(12) | 22(17) | 23(17) |
大雪山系 | 14 (9) | 7 (5) | 15 (9) |
日高山系 | 5 (4) | 4 (3) | 7 (5) |
合計 | 47(35) | 44(34) | 61(45) |
表2 振興局管内ごとの標識結果
(総合)振興局 | 標識ヒナ数 (巣数) |
||
2023年度 (令和5年度) |
2024年度 (令和6年度) |
2025年度 (令和7年度) |
|
根室 | 16(12) | 16(14) | 18(16) |
オホーツク | 7 (5) | 4 (3) | 7 (5) |
釧路 | 7 (6) | 15(10) | 16(11) |
十勝 | 10 (7) | 5 (4) | 12 (8) |
日高 | 5 (4) | 4 (3) | 4 (3) |
上川 | 2 (1) | 0 (0) | 4 (2) |
合計 | 47(35) | 44(34) | 61(45) |
表3 営巣タイプ別巣数
(総合)振興局 | 営巣タイプ | 計 | |
天然営巣木 | 人工巣箱 | ||
根室 | 1 | 15 | 16 |
オホーツク | 2 | 3 | 5 |
釧路 | 4 | 7 | 11 |
十勝 | 6 | 2 | 8 |
日高 | 1 | 2 | 3 |
上川 | 2 | - | 2 |
合計 | 16 | 29 | 45 |
36% | 64% |
表4 給餌・餌付けの有無
標識ヒナ数 (巣数) |
|||
2023年度 (令和5年度) |
2024年度 (令和6年度) |
2025年度 (令和7年度) |
|
給餌等なし | 40(30) | 34(25) | 47 (35) |
85%(86%) | 77%(74%) | 77%(78%) | |
給餌等あり | 7 (5) | 10 (9) | 14 (10) |
15%(14%) | 23%(26%) | 23%(22%) |
・ 今年はどの地域でも繁殖成績が良かったこと、ヒナを2羽産出したつがいが多かったことが、標識ヒナ数が多かった要因の一つとして挙げられます。
・ また、調査員の努力により、新たな生息つがいの確認とともに、繁殖地が不明であったつがいの巣が判明したことも標識数の増加に寄与しています。
・ ヒナの標識数は過去最多となりましたが、つがい数で見ると知床地域個体群を除いて例年どおりの結果となっており、繁殖つがい数が大きく増加したわけではない点に注意が必要です。
・ 人工巣箱への依存度は64%と依然として高い状態が続いていますが、自然採餌するつがいのヒナ数が増加していることは、良い傾向と考えられます。
■ 今後の取組とご協力のお願い
・ 生まれたヒナが今後成長し他の地域に広がりつがいが定着していくためには、シマフクロウが生息できる環境を各地に整えることが重要です。豊かな森づくりや魚のたくさんいる川づくりなど、シマフクロウの生息環境整備について、多様な主体の協力を求めつつ、地域の課題解決や活性化と連動した取組を進めていきます。
【参考】シマフクロウHP
https://policies.env.go.jp/hokkaido/withfishowl
・ シマフクロウは非常に警戒心の強い鳥です。特に繁殖中の巣に近づいたりすると、巣やヒナを放棄してしまうおそれがあります。生息数もまだ限られていることから、巣の位置等の詳細は公表しておりません。もしも巣箱や営巣を確認した場合でも不用意に近づかないなど、ご理解とご協力をお願いします。
【参考】シマフクロウとの共存ルール
お問い合わせ先
北海道地方環境事務所
直 通:011-299-1954
所長: 中澤 圭一
野生生物課長: 田畑 慎之介
野生生物課課長補佐: 成田 智史
野生生物課専門官: 赤井 賢成
釧路自然環境事務所(問合せ先)
直 通:0154-32-7500
所長: 岡野 隆宏
野生生物企画官: 百瀬 剛
自然保護官:大嶋 達也(担当)
直 通:011-299-1954
所長: 中澤 圭一
野生生物課長: 田畑 慎之介
野生生物課課長補佐: 成田 智史
野生生物課専門官: 赤井 賢成
釧路自然環境事務所(問合せ先)
直 通:0154-32-7500
所長: 岡野 隆宏
野生生物企画官: 百瀬 剛
自然保護官:大嶋 達也(担当)