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釧路自然環境事務所

報道発表資料

2023年07月13日
  • その他

令和5年度シマフクロウ標識調査の実施結果について

令和5年度のシマフクロウ標識調査では、過去最多となる47羽のヒナに標識を装着することができました。
 1.環境省では、シマフクロウの保護増殖事業の一環として、毎年春に生まれたヒナへの標識調査を行っています。今年度の調査では、合計47羽のヒナに標識を装着することができました。過去最多であった昨年度の41羽からさらに増えて、2年連続で記録更新となりました。
 2.昨年標識ヒナ数が少なかった道東地域における繁殖が順調で、過去最多となる30羽に達したことが全体の数を押し上げました。
 3.個体群の回復が期待される大雪山系及び日高山系を含む、十勝、日高及び上川の(総合)振興局管内では、今年の繁殖で天然木を利用したつがいがおよそ7割となり、この地域で人工巣箱に依存しないつがいが増加していることが示唆されます。
 
■ 調査目的
 ・シマフクロウは北海道の道東を中心に生息している絶滅危惧種であり、これまでに100つがいの生息が確認されているところですが、国による「シマフクロウ保護増殖事業計画(平成5年11月26日策定)」に基づき、巣箱設置、給餌、傷病対応、事故防止対策、生息環境整備を始めとする保護増殖事業を進めています。
 ・環境省では、シマフクロウの保護増殖事業の一環として、春に生まれたヒナに足環標識を装着し、個体識別、性別・来歴等の個体情報の収集、繁殖履歴の把握等を行っています。
 ・この調査により、保護増殖事業の進め方を決定する上で重要な知見となる、繁殖状況、移動分散、寿命など、シマフクロウの生態についての貴重な情報を得ることができます。  

■ 調査内容
 ・巣立ち前後のヒナを捕獲し、体重・体長等の計測、羽の伸長、採血、外見異常の有無等の獣医学的な診断を行い、個体の健康状態や性別、成長状況を調べました。
 ・診断後、個体識別のための標識(足環)を装着して、捕獲地点に戻しました。
 ・採取した血液サンプルは、健康状態の把握に加え、DNA解析を行うことで血縁関係や遺伝的多様性の評価に用います。  

■ 調査期間
 ・令和5年5月24日~7月1日  

■ 結果概要
 ・保護増殖事業で設置している巣箱を中心に調査し、一部天然木も含む35巣において、計47羽のヒナに標識を装着しました。獣医師による診断で異常が発見されて保護収容される個体はありませんでした。
 ・昨年度も29巣において計41羽に標識を装着し過去最多の結果でしたが、今年はさらにそれを大きく上回る結果となりました。
 ・振興局管内ごと及び地域個体群ごとの内訳や営巣タイプ別の巣数内訳は下表のとおりです(生息地保全のため、位置の詳細は公表していません)。   




 ・昨年度は道東地方の根室、オホーツク、釧路の各(総合)振興局管内における標識ヒナ数が合計で22羽と例年に比べて低調でしたが、今年度は過去最多となる30羽に達したことで、全体の標識数を大きく押し上げました(表1)。
 ・十勝、日高及び上川の各(総合)振興局管内を合わせた標識ヒナ数は昨年度に大きく伸びて19羽を記録しましたが、今年度も17羽と順調でした(表1)。
 ・知床、根釧、大雪山系及び日高山系の各地域個体群にみてみると、標識ヒナ数は知床及び日高山系個体群ではほぼ例年どおり、根釧及び大雪山系ではそれぞれ過去最多記録を更新しました(表2)。
 ・また、特筆すべきは十勝、日高及び上川の各(総合)振興局管内における天然木への営巣数で、12巣のうち8巣と実に約70%の巣が天然木への営巣であり、天然木への営巣割合が15%の道東地方とは対照的な結果となりました(表3)。
 ・これらの結果から、まだ生息数は限られる状況ながら、シマフクロウは今年も順調に繁殖したこと、また、個体群の回復が期待される大雪山系及び日高山系を含む、十勝、日高及び上川の各(総合)振興局管内において、人工巣箱に依存しないつがいが増加しつつあることが示唆されます。
 
■ シマフクロウ標識ヒナ数の推移
 ・1985年に標識調査を開始して以降、これまで39年間で合計746羽に足環標識を装着しました。年度ごとに多少上下しながらも、標識ヒナ数は年々増加してきており、特にこの5~6年の伸びは顕著です。年度ごとの標識ヒナ数の推移は下図のとおりです。
 ・シマフクロウは、全道で100つがい(令和4年度時点)が確認されています。
 ・把握されている営巣地で生まれたヒナのほとんどは本調査により足環標識が装着されており、長年の標識調査の成果として、多くの野生個体の生まれた年や場所などが把握できています。なお、過去5年間に傷病等により保護収容した野生個体のうち約6割は標識済みの個体でした。  
 
■ 留意事項
 ・シマフクロウは非常に警戒心の強い鳥です。特に繁殖中の巣に近づいたりすると、巣やヒナを放棄してしまうおそれがあります。生息数もまだ限られていることから、巣の位置等の詳細は公表しておりません。もしも巣箱や営巣を確認した場合でも不用意に近づかないなど、ご理解とご協力をお願いします。

お問い合わせ先

環境省釧路自然環境事務所
所長 :  岡野 隆宏
野生生物企画官 : 若松 徹
野生生物課課長補佐: 北橋 隆史(担当)
電話:(0154)32-7500