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釧路自然環境事務所

報道発表資料

2023年12月04日
  • 報道発表

オジロワシ・オオワシの終生飼養個体を活用した 垂直軸型マグナス式風力発電機への反応試験の開始について

 環境省 釧路自然環境事務所と株式会社 猛禽類医学研究所は、平成27年度より釧路湿原野生生物保護センターに保護収容されたオジロワシ・オオワシのうち野生復帰が難しい終生飼養個体の利活用(調査研究・教育)にかかる協定を締結し、オジロワシ・オオワシの保護増殖事業に資する調査研究・普及啓発を進めているところです。
 このたび、近年問題となっている風力発電施設とオジロワシ・オオワシのバードストライクの軽減を図る、バードストライクの発生リスクが低い風力発電施設の開発・実証を目的とした、上述の協定に基づく調査研究の一環として、「垂直軸型マグナス式風力発電機への反応試験」を開始しましたのでお知らせ致します。

■ 経 緯

 絶滅のおそれのある野生動植物の種の保存に関する法律に基づき国内希少野生動植物種に指定されているオジロワシ・オオワシについては、2005 年(平成17年)に策定した「保護増殖事業計画」に基づき、生息状況のモニタリング調査、生息環境の維持・改善、傷病個体の収容・要因究明等の保護増殖事業を実施しています。
 オジロワシ・オオワシの生息を脅かす要因として近年問題になっているのが、再生可能エネルギーの導入に伴い急速に設置が進められている風力発電施設におけるバードストライクです。バードストライクを要因とするオジロワシ・オオワシの保護収容は、直近5年間(H30~R4)で計24個体にのぼりますが、風力発電施設の立地特性上、傷病個体が発生しても発見されづらく、すぐに保護収容されないため中小型哺乳類などの被食・持ち去りも想定され、潜在的には更に多くのオジロワシ・オオワシが犠牲になっている可能性が推察されます。
 一方で脱炭素を進めていくうえで風力発電も含む再生可能エネルギーの導入促進は必要不可欠であり、オジロワシ・オオワシの保護と両立を図る方策や技術開発が急務となっています。こうした状況をふまえ、環境省 釧路自然環境事務所と株式会社 猛禽類医学研究所は、オジロワシ・オオワシの終生飼養個体の利活用(調査研究・教育)に係る協定に基づき、従来のプロペラ型の風力発電施設に代わる、バードストライクが生じにくい構造の風力発電施設の開発・実証を目的とした調査研究として、「垂直軸型マグナス式風力発電機への反応試験」を開始しました。

■ 垂直軸型マグナス式風力発電機への反応試験について

 垂直軸型マグナス式風力発電機は、(株)チャレナジーが開発したプロペラのない、垂直軸型の円筒翼を回転させることで発生するマグナス力(物体を回転させた際に風向きに対して垂直方向に働く力)を活用して発電する風力発電機です。プロペラがなく、回転速度が緩やかであり、オジロワシ・オオワシのバードストライクの軽減・防止効果が期待されるところです。
 本試験は、垂直軸型マグナス式風力発電機に対するオジロワシ・オオワシの反応を観察・解析することで、同発電機のバードストライク軽減効果の検証及び改良に寄与することを目的として行うもので、同発電機のミニチュア試験機を釧路湿原野生生物保護センターの展示ケージ内に設置し、オジロワシ・オオワシの終生飼養個体が、同発電機を視認・忌避する条件・環境の把握を当面の目標として実施して参ります。
 なお本調査研究は、公益財団法人 JAC環境動物保護財団の助成事業を株式会社 猛禽類医学研究所が受け、(株)チャレナジー及びパシフィックコンサルタンツ(株)の協力を得ながら実施するものです。

<垂直軸型マグナス式風力発電機とミニチュア試験機の写真>

 ■ 今後の予定

 反応試験を当面継続実施しながら、随時結果を取りまとめ、当該反応試験の意義・目的も含めた結果公表を市民向け講座の開催なども通じて、年度内に行う予定です。

お問い合わせ先

環境省 釧路自然環境事務所
直 通:0154-32-7500
所長: 岡野 隆宏
野生生物企画官: 若松 徹(担当)

株式会社 猛禽類医学研究所
直 通:0154-56-3465
代 表:齊藤 慶輔
副 代 表:渡辺 有希子(担当)