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釧路自然環境事務所

報道発表資料

2024年06月28日
  • 報道発表

令和6年度シマフクロウ標識調査の実施結果について

令和6年度のシマフクロウ標識調査では、44羽のヒナに標識を装着することができました。
  1. 環境省では、シマフクロウの保護増殖事業の一環として、毎年春に生まれたヒナへの標識調査を行っています。今年度の調査では、合計44羽のヒナに標識を装着することができました。過去2番目に多い標識数となります(最多は令和5年度)。
  2. 根釧地域の個体群における標識ヒナ数は過去最多となり、繁殖が順調だったことが伺えます。一方で、大雪・日高山系の地域個体群における標識ヒナ数は昨年度を下回りました。
 <参考>6/29(土)10時よりウトナイ湖野生鳥獣保護センター(苫小牧市)にてシマフクロウのセミナーを開催します。

■ 調査目的

  • シマフクロウは北海道の道東を中心に生息している絶滅危惧種であり、これまでに100つがいの生息が確認されているところですが、国による「シマフクロウ保護増殖事業計画(平成5年11月26日策定)」に基づき、巣箱設置、給餌、傷病対応、事故防止対策、生息環境整備を始めとする保護増殖事業を進めています。
  • 環境省では、シマフクロウの保護増殖事業の一環として、春に生まれたヒナに足環標識を装着し、個体識別、性別・来歴等の個体情報の収集、繁殖履歴の把握等を行っています。
  • この調査により、保護増殖事業の進め方を決定する上で重要な知見となる、繁殖状況、移動分散、寿命など、シマフクロウの生態についての貴重な情報を得ることができます。

■ 調査内容

  • 巣立ち前後のヒナを捕獲し、体重・体長等の計測、羽の伸長、採血、外見異常の有無等の獣医学的な診断を行い、個体の健康状態や成長状況を調べました。
  • 診断後、個体識別のための標識(足環)を装着して、捕獲地点に戻しました。
  • 採取した血液サンプルは、健康状態の把握に加え、DNA解析を行うことで性別及び血縁関係の把握や遺伝的多様性の評価に用います。

■ 調査期間

  • 令和6年5月17日~6月23日

 ■ 結果概要

  • 保護増殖事業で設置している巣箱を中心に調査し、一部天然木も含む34巣において、計44羽のヒナに標識を装着しました。獣医師による診断で異常が発見され保護収容に至った個体はありませんでした。
  • 過去最多であった昨年度と比べ標識巣数は1巣少なく、標識ヒナ数も3羽減少しましたが、どちらも過去2番目に多い結果となりました。
  • 地域個体群ごと及び振興局管内ごとの内訳や営巣タイプ別の巣数内訳は下表のとおりです(生息地保全のため、位置の詳細は公表していません)。 

 表1 地域個体群ごとの標識結果
地域個体群 標識ヒナ数
(巣数)
令和4年度 令和5年度 令和6年度
知床 12 (8) 12(10) 11 (9)
根釧 8 (7) 16(12) 22(17)
大雪山系 13 (8) 14 (9) 7 (5)
日高山系 8 (6) 5 (4) 4 (3)
合計 41(29) 47(35) 44(34)
 
 
 表2 振興局管内ごとの標識結果
(総合)振興局 標識ヒナ数
(巣数)
令和4年度 令和5年度 令和6年度
根室 13 (9) 16(12) 16(14)
オホーツク 3 (2) 7 (5) 4 (3)
釧路 6 (6) 7 (6) 15 (10)
十勝 13 (9) 10 (7) 5 (4)
日高 6 (4) 5 (4) 4 (3)
上川 0 (0) 2 (1) 0 (0)
合計 41(30) 47(35) 44(34)
 
 
 表3 営巣タイプ別巣数
(総合)振興局 営巣タイプ
天然営巣木 人工巣箱
根室 1 13 14
オホーツク -  3  3
釧路 3  7  10
十勝 1  3  4
日高 1  2  3
上川 -  -  -
合計 28 34
 
  • 今年度の特徴として、根釧地域の個体群は繁殖状況が良好で過去最多の標識ヒナ数となる22羽を記録した一方で(表1、これまでの過去最多は、昨年度の16羽)大雪山系と日高山系の個体群では昨年度より標識ヒナ数が減少しました。
  • こうして生まれた多くのヒナが今後成長して他の地域に広がっていくためには、シマフクロウが定着できる生息環境を各地に整えることが重要です。豊かな森づくりや魚のたくさんいる川づくりなど、シマフクロウの生息環境整備について、多くの機関の協力を求めつつ取組を進めていきます。

■ シマフクロウ標識ヒナ数の推移

  • ​1985年に標識調査を開始して以降、これまで40年間で合計790羽に足環標識を装着しました。年度ごとに多少上下しながらも、標識ヒナ数は年々増加してきており、特にこの5~6年の伸びは顕著です。年度ごとの標識ヒナ数の推移は下図のとおりです。図 シマフクロウの標識ヒナ数の推移 ※数値はあくまで標識したヒナの数を示すものです。結果には調査における努力量も影響するため、この数がヒナの全体数を示すものではありません。
   図 シマフクロウの標識ヒナ数の推移
    ※数値はあくまで標識したヒナの数を示すものです。結果には調査における努力量も影響するため、この数がヒナの全体数を示すものではありません。

 
  • シマフクロウは、全道で100つがい(令和4年度時点)が確認されています。
  • 把握されている営巣地で生まれたヒナのほとんどは本調査により足環標識が装着されており、長年の標識調査の成果として、多くの野生個体の生まれた年や場所などが把握できています。なお、過去5年間に傷病等により保護収容した野生個体のうち約5割は標識済みの個体でした。

■ 留意事項

  • ​シマフクロウは非常に警戒心の強い鳥です。特に繁殖中の巣に近づいたりすると、巣やヒナを放棄してしまうおそれがあります。生息数もまだ限られていることから、巣の位置等の詳細は公表しておりません。もしも巣箱や営巣を確認した場合でも不用意に近づかないなど、ご理解とご協力をお願いします。

■ 参考

シマフクロウセミナー「ひろげよう シマフクロウの環 一歩先へ」
主催:環境省北海道地方環境事務所
日時:令和6年6月29日(土)10:00~12:00
会場:ウトナイ湖野生鳥獣保護センター
講師:シマフクロウ環境研究会 代表 竹中健氏(シマフクロウ保護増殖検討委員)
定員:30名(小学生以下保護者同伴)
参加費:無料
申込:0144-58-2231(ウトナイ湖野生鳥獣保護センター)6月28日まで受付
※取材の申込みは北海道地方環境事務所野生生物課までお問い合わせください。

お問い合わせ先

北海道地方環境事務所
直通:011-299-1954
 所長: 牛場 雅己
 野生生物課長: 西野 雄一
 野生生物課課長補佐: 福田 真
 野生生物課専門官: 赤井 賢成
環境省 釧路自然環境事務所(問合せ先)
直通:0154-32-7500
 所長: 岡野 隆宏
 野生生物企画官: 若松 徹
 野生生物課課長補佐: 北橋 隆史
 自然保護官:大嶋 達也(担当)