釧路自然環境事務所

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釧路自然環境事務所TOPICS>2009年度

【お知らせ】知床岬トレッキング中のヒグマ被害の発生について(詳報)

2009.10.27 北海道地方環境事務所

 9月25日午前、羅臼側海岸の念仏岩において、知床岬へトレッキング中の人が、野外に残置していた食料をヒグマに奪われる事案の発生については、9月28日付けプレスリリースで速報したところですが、その後、詳細な事実確認を行うとともに、類似の事案が7月にも発生していた可能性が高いことが確認されましたので、改めて事実関係を整理の上、お知らせいたします。
 いずれのケースも、フードコンテナ等を用いず、食料を残置していたために、食料を野生動物(ヒグマ等)に奪われたケースです。ヒグマが人間から強引に食料を奪ったり、設置しているテントを荒らしたりしたものではなく、人的被害もありませんでしたが、今後、同地区周辺において、ヒグマが食料に味をしめてトレッキング利用者らの荷物に執着する可能性があります。少なくとも、今年度中の知床岬方面へのトレッキング利用の自粛等を引き続き要請します。

1.事実関係

(1)9月25日の事案

日時:
9月25日午前
場所:
念仏岩洞窟内
概要:
 9月24日から26日にかけて2泊3日で羅臼町相泊〜知床岬の往復トレッキングをしていた利用者(単独行2組2名)が、25日午前、幕営した念仏岩に食料やたたんだテントを残して知床岬を往復していたところ、その間に、幕営地に残した食料等がヒグマに荒らされた。事案発生時刻は6:30から12:30の間と推定される。荷物のまわりにヒグマの足跡が多数残されている他、ヒグマと思われる犬歯の跡が食料の袋等に残されており、ヒグマにより荒らされたことが確実と判断される。
 今回のケースは、設営していた(張っていた)テント内の食料が奪われたものではなく、フードコンテナに入れずに無人のまま野外に残置(デポ)されていた食料がヒグマに荒らされ、その際、たたんで周辺に置いてあったテントも破られる等の被害にあったもの。一方、フードコンテナに入れてあった食料について被害はなく、ヒグマが開けようとした痕跡等もなかった。
被害状況
[1]A氏
 たたんだテントや食料をひとまとめにして洞窟の奥に残置して知床岬に出発。食料は他の荷物と共にビニール袋に入れていた。残置した食料は、レトルトカレー、レトルト米、ネギ、味噌、コーンスープの素(粉)、パン、鮭缶詰、醤油。
 洞窟に戻った際に確認した、クマによるものと思われる痕跡は下記のとおり
味噌のビニール袋(袋の端に犬歯の跡があったが中身は食べられていない)
コーンスープの小袋3つ(1袋はちぎれており中身は食べていないようだが散乱)
テント袋、シュラフ袋(犬歯の跡)
鍋とガスストーブを入れていたビニール袋(ちぎれていた)
食料を入れていたビニール袋(ちぎれていた)
沢登り用足袋を入れていたビニール袋(ちぎれていた)
 一方、クマによる痕跡のなかった荷物は下記のとおり(ただし、いずれも入れていたビニール袋からは出されている)
レトルトカレー
レトルト米
パン
ネギ
鮭缶詰
醤油
鍋とスプーン
沢登り用足袋
ガスストーブとライター
 荷物の周りの砂地には、クマの足跡が多数認められた。
 散乱したコーンスープは、現地で焼却処分している。
[2]B氏
 残置した食料はすべてルサフィールドハウスでレンタルしたフードコンテナに収容していた。フードコンテナ周辺にはクマの足跡は認められず、コンテナを移動されるなど開けようとした形跡も無かった。
 テント内には食料はなかった。シュラフ、マット、コッヘル(お湯を沸かす以外の用途には使っていない)などを入れて、テントを接地面につぶした状態(ポールを抜いた状態)で知床岬へ出発。戻ってきた際には、テントが破られて、中に入れてあったシュラフがすこし引き出されていた。テントの破損は3カ所。2か所は15cm四方が破られ、1か所は爪をかけてあいたような穴。テントの周りにクマの足跡多数あり、テントやシュラフは濡れていた。ゴミやガソリン、石鹸などクマを誘引しそうなものは入れてなった。
備考:
 25日は2名とも幕営地を別の場所に移動し、2名分の食料をフードコンテナに保管。

(2)7月21・22日の事案

日時:
7月21日夜、22日夜
場所:
念仏岩洞窟内
概要:
 7月21日から23日にかけて2泊3日で羅臼町相泊から知床岬の往復トレッキングをしていた利用者(1組2名)は、21日夜、念仏岩に幕営した。その際、テントから離れた野外に食料を置いて就寝したところ、翌22日朝、食料が動物に荒らされているのを発見した。
 利用者は、22日は終日全ての食料を持って知床岬を往復し、再び念仏岩で幕営。前日同様、野外に食料を置いて就寝したところ、翌23日朝、再び食料が動物に荒らされているのを発見した。
 周辺に足跡等はないが、状況から1日目の食料を荒らしたのはヒグマだった可能性がある。
被害状況
 フードコンテナは使用せず。
 21日夜は、テントから約100メートル離れた岩の隙間に、食料を入れたビニール袋をつっこみ、さらにそれが動物に取られないよう、大きな石(5〜10kg)を手前に置いていた。翌朝確認すると、大きな石が動かされ食料が荒らされていた(岩の隙間の奥の方に入れた食料は無事だった)。本人たちは、キツネには動かせないような大きな石であったため、ヒグマによるものではないかと推測している。
 22日夜は、前日同様、岩の隙間に食料を入れたビニール袋を入れた。今度は、岩の隙間に中型の石を石組みのように積んで岩の隙間をふさいでいたが、翌朝確認すると、石組みの一部が壊され、そこから引っ張り出されるような感じで食料が荒らされていた。また、周辺には、強い獣臭が漂っていた。これらのことから、2日目の被害については、本人たちは、キツネによるものと推測している。
 野生動物に荒らされた食料は以下のとおり。
アルファ米(袋が破れ散らばっていた。食べたというよりも散らばった感じ)
フリーズドライのスープの素(食べたような感じあり)
パン、ビスケット(食べたような感じあり)
キャラメルなど甘いお菓子(食べたような感じあり)
事前に環境省ホームページを見るなどしていろいろ情報収集は行われていたが、フードコンテナは重そうだったため、匂いの出にくい食料を選択する代わりに、フードコンテナの携行はしなかったとのこと。

2 今後の対応について

 今回の2件の事案については、いずれもフードコンテナを用いず、食料を残置していたために、食料を野生動物(ヒグマ等)に奪われたケースです。ヒグマが、人間から強引に食料を奪ったり、設置しているテントを荒らしたりしたものではなく、人的被害もありませんが、今後、十分な注意が必要です。
 知床岬を含む知床半島先端部地区の利用にあたっては、平成20年1月、「知床半島先端部地区利用の心得」(以下、「心得」という。)を策定し、ヒグマを含むリスクの軽減に関する取組を利用者に求めてきていました。知床半島先端部地域の利用はあくまでも自己責任による利用が原則であり、この心得を遵守すれば安全が保証されるというものでは決してありません。しかし、食料の適切な保管は、トレッキング中の自己の安全性の向上だけでなく、ヒグマの習性を攪乱させないことにより、他の利用者に対するリスクを高めないという観点においても必要な対策となります。今回の事案の要因は、この「心得」の中で強く求めていたフードコンテナによる食料の保管が徹底されていなかったものであり、来シーズン以降は、フードコンテナの携行の徹底を利用者に求めていくことといたします。
 なお、当分の間は、ヒグマが食料に味をしめてトレッキング利用者らのテント等に執着する可能性があります。また特に、サケマス類の遡上する秋期は、海岸部や河口近くでのヒグマとの接触の機会が増大します。これらのことを踏まえ、今シーズン中については、知床岬方面へのトレッキング利用・シーカヤック利用を計画されている皆様に対して、羅臼町側海岸でのテント幕営を避け、利用を自粛されるよう強く要請します。

3 情報の入手先

 知床岬等知床半島先端部地域の利用にあたって必要な情報は、以下の施設で得ることができます。利用に先立って、必ず、お立ち寄りください。

(1)知床世界自然遺産ルサフィールドハウス  http://shiretoko-whc.jp/rfh/
開館時間
(夏期)5〜10月 9:00〜17:00 毎週火曜日休館
(冬季)2〜 4月 10:00〜16:00 毎週火曜日休館
(閉館)11〜1月
 0153−89−2722 北海道目梨郡羅臼町北浜8番地
(2)羅臼ビジターセンター  http://rausu-vc.jp/
開館時間
(夏期)5〜10月 9:00〜17:00 毎週月曜日休館
(冬季)11〜4月 10:00〜16:00 毎週月曜日及び年末年始休館
 0153−87−2828 北海道目梨郡羅臼町湯ノ沢町6-27
(3)知床自然センター  http://www.shiretoko.or.jp/
開館時間
(夏期)4/20〜10/20 8:00〜17:40 休館日なし
(冬季)10/21〜4/19 9:00〜16:00 12/31のみ休館
 0152−24−2114 北海道斜里郡斜里町岩宇別

 また、「知床半島先端部地区利用の心得」については、知床のデータベースサイトである「知床データセンター」のホームページからダウンロードできます。
 http://dc.shiretoko-whc.com/management/rule.html

4 添付資料

(別紙1)被害状況の写真 [PDF 345KB]
(別紙2)ヒグマによるリスクの軽減等の観点から留意すべき事項や禁止事項 [PDF 135KB]
(別紙3)知床半島先端部地区利用の心得について [PDF 1219KB]