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北海道地方環境事務所

報道発表資料

2012年08月14日
  • その他

報道発表:(お知らせ)天売島におけるウミガラスの繁殖結果について

北海道地方環境事務所

 ウミガラスの繁殖が終了しましたのでお知らせします。
 前回発表時には5羽のヒナと8羽の抱卵個体を確認していましたが、最終的にはヒナを12羽確認し、昨年の巣立ち数(7羽)を上回る10羽が巣立ちました。巣立ち数が2桁になったのは16年ぶりとなります。


8月2日ヒナ

1.ウミガラスの飛来 ・ 繁殖結果(赤岩対岸の繁殖地)

  • 最大飛来数 : 28羽(5月30日発表から変化なし)
  • 抱卵個体数 : 13羽(7月13日発表から変化なし)
  • ヒナ数 : 12羽(1羽は抱卵を途中で止めました)
  • 巣立ち数 : 10羽(2羽は巣立ちに失敗したようです)
  • 巣立ち日 : 7月21日~8月4日の間
    (7月21日2羽、7月23、24、26、8月2、3日各1羽、残り3羽は特定できていません。)

2.最近20年間のウミガラスの繁殖状況

○赤岩対岸繁殖地の繁殖状況
飛来数卵数雛数巣立数
1992 0 0 0 0
1993 4 1 0 0
1994 6 3 3 3
1995 7 3 3 3
1996 18 9 9 9
1997 9 0 0 0
1998 9 4 4 4
1999 12 0 0 0
2000 1 0 0 0
2001 11 0 0 0
2002 6 2 2 2
2003 14 0 0 0
2004 0 0 0 0
2005 0 0 0 0
2006 0 0 0 0
2007 4 0 0 0
2008 6 3 3 3
2009 9 4 4 0
2010 18 5 2 0
2011 20 7 7 7
2012 28 13 12 10
※数字は推定数も含む
○天売島全体の繁殖状況
飛来数卵数雛数巣立数
1992 77 14 5 2
1993 39 7 2 0
1994 19 9 9 7
1995 20 9 9 9
1996 31 14 14 14
1997 24 6 6 6
1998 17 8 8 8
1999 19 3 2 2
2000 24 3 3 1
2001 17 3 3 3
2002 13 5 5 5
2003 20 3 2 2
2004 18 1 0 0
2005 15 0 0 0
2006 52 2 0 0
2007 31 1 1 0
2008 20 4 3 3
2009 15 4 4 0
2010 19 5 2 0
2011 20 7 7 7
2012 28 13 12 10
※数字は推定数も含む

※天売島ではかつて、赤岩対岸の繁殖地以外に、7カ所繁殖地がありましたが、現在繁殖が確認されているのは、赤岩対岸の繁殖地のみとなっています。
 環境省では、2009年から赤岩対岸の繁殖地で、音声装置やデコイの設置等を実施し、ウミガラスの保護増殖事業に取り組んでいます。

3.ヒナの写真 ・ 動画について

 写真 ・ 動画を提供いたしますので、ご要望がありましたら羽幌自然保護官事務所(電話:0164-69-1101)までお問い合わせ願います。
 提供する動画は、北海道海鳥センターHPで公開しています。
 なお、動画は500MBありますので、DVDでの提供となります。

<提供可能写真>


 写真1:ヒナ1(8月2日撮影)


 写真2:ヒナ2(7月23日撮影)

1.ウミガラスについて

チドリ目 ウミスズメ科
絶滅危惧ⅠA類(ごく近い将来における絶滅の危険性が極めて高い種)

分布の概要
 種としては、北太平洋、北大西洋の亜寒帯を中心に分布している。日本国内ではかつては、北海道の離島である松前小島、ユルリ島、モユルリ島にも繁殖地コロニーがあったが、現在では天売島だけである。
形態、生物学的特性
 全長40cm~45cm。潜水して主に魚類を食べる。
 離島の断崖で集団繁殖する。5月下旬~6月に1卵産み、約30日抱卵する。ヒナは、孵化約3週間で巣立ち、その後約2ヶ月親と過ごしてから独立する。繁殖期(4月~8月頃)は、営巣地周辺の海域で、非繁殖期は北海道や本州北部の沿海域から沖合海域に生息する。
生息数
 天売島での生息数は、1960年代には8000羽と推定されたが、1970年代には500~1000羽、1980年代には130~600羽、1990年代は20羽~80羽、現在では20羽前後と減少している。
減少要因
 原因は明らかでは無いが、餌資源の減少等が考えられている。しかし最近では、オオセグロカモメやハシブトガラスによる卵やヒナの捕食が主要な要因と考えられている。
保護対策
 1982年に天売島全域を国指定鳥獣保護区に指定、1993年にはウミガラスを種の保存法に基づく国内希少野生動植物種に指定した。更に2001年には保護増殖事業計画を作成し、デコイ(鳥の模型)の設置や生息状況のモニタリング等を実施してきた。

2.ウミガラス保護増殖事業の経緯

 主に天売島の2箇所の繁殖地(屏風岩、赤岩対岸)でデコイを設置したり、音声装置を設置して鳴き声を流し繁殖個体の誘引等を行ってきた。

2003年~2008年:屏風岩(デコイ設置、音声装置設置(2005年~2008年))
 2006年には50羽飛来し13年ぶりにウミガラスが卵を産んだが捕食された。その後もハシブトガラスやオオセグロカモメに卵や雛を捕食され巣立ちには至らなかった。
2009年~2012年:赤岩対岸(デコイ設置、音声装置設置)
 赤岩対岸にある繁殖地は、標高25mにある断崖の岩棚にあるため、屏風岩の繁殖地より捕食されにくいと考えられたことから、誘引場所を移動した。しかしながら最初の2年はハシブトガラスやオオセグロカモメに卵や雛を捕食され巣立ちには至らなかった。
 2011年からは、捕食者対策として、新たに繁殖地周辺でエアライフルによる捕食者の捕獲を実施している。2012年も2011年より捕獲範囲を狭めたうえで実施し、2年連続の巣立ち成功となった。
 ※2011年以前は、繁殖地周辺以外で箱罠や散弾銃による捕食者の捕獲を実施していた。