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北海道地方環境事務所

報道発表資料

2018年09月11日
  • 結果報告

(お知らせ)天売島におけるウミガラスの繁殖結果について

天売島における今シーズンのウミガラスの繁殖が終了しましたので、お知らせします。 2018年は58羽の飛来を確認しました。50羽を超える飛来を確認したのは、昨年の56羽に続き2年連続となり、過去20年の調査では最多となりました。また、少なくとも18羽のヒナの巣立ちが確認され、8年連続の巣立ち成功となり、こちらも最多の巣立ち数となります。

7月19日巣立ち直前のヒナ(中央)

1.ウミガラスの飛来・繁殖結果(速報値)

・最大飛来数:58羽

※赤岩対岸繁殖地内のビデオ映像では57羽を確認

・つがい数:27つがい

・ヒナの数:22羽*1

・巣立ち数:18羽*1(22羽のヒナのうち3羽は育雛失敗、1羽は未確認)

・巣立ち日:7月16日~7月31日の間(昨年7月10日~7月31日)

・本結果は今後の映像解析により変更になる場合があります。

※1:調査期間途中(7月4日)から自動撮影カメラの一部に不具合が生じたため、一部把握できていないエリアがありました。そのため、繁殖地内の全てのヒナ数、巣立ち雛数は把握することはできませんでした。

2.最近20年間のウミガラスの繁殖状況

○赤岩対崖繁殖地の繁殖状況             ○天売島全体の繁殖状況

過去20年間の赤岩対崖の繁殖状況

過去20年間の天売島全体の繁殖状況

飛来数

つがい数

雛数

巣立数

飛来数

つがい数

雛数

巣立数

1999

12

0

0

0

1999

19

3

2

2

2000

1

0

0

0

2000

24

3

3

1

2001

11

0

0

0

2001

17

3

3

3

2002

6

2

2

2

2002

13

5

5

5

2003

14

0

0

0

2003

20

3

2

2

2004

0

0

0

0

2004

18

1

0

0

2005

0

0

0

0

2005

15

0

0

0

2006

0

0

0

0

2006

52

2

0

0

2007

4

0

0

0

2007

31

1

1

0

2008

6

3

3

3

2008

20

4

3

3

2009

9

4

4

1

2009

15

4

4

1

2010

18

5

2

0

2010

19

5

2

0

2011

20

7

7

7

2011

20

7

7

7

2012

32

12

11

9

2012

32

12

11

9

2013

35

13

11

9

2013

35

13

11

9

2014

35

15

12

11

2014

35

15

12

11

2015

27

13

11

10

2015

27

13

11

10

2016

38

16

16

13

2016

38

16

16

13

2017

51

20

18

17

2017

56

20

18

17

2018

57

27

22

18

2018

58

27

22

18

※数字は推定数も含む

※数字は推定数も含む

※天売島ではかつて、赤岩対岸の繁殖地(赤岩対崖)以外に、7カ所繁殖地がありましたが、現在繁殖が確認されているのは、赤岩対崖の繁殖地のみとなっています。環境省では、2009年から赤岩対崖の繁殖地において、音声装置やデコイの設置等、2011年からは捕食者対策を実施し、ウミガラスの保護増殖事業に取り組んでいます。

参考

1.ウミガラスについて

チドリ目 ウミスズメ科

絶滅危惧ⅠA類(ごく近い将来における野生での絶滅の危険性が極めて高い種)

○ 分布の概要

種としては、北太平洋、北大西洋の亜寒帯を中心に分布している。日本国内ではかつては、北海道の離島である松前小島、ユルリ島、モユルリ島にも繁殖地コロニーがあったが、現在では天売島だけである。

○ 形態、生物学的特性

全長40cm~45cm。潜水して主に魚類を食べる。

離島の断崖で集団繁殖する。5月下旬~6月に1卵産み、約30日抱卵する。ヒナは、孵化約3週間で巣立ち、その後約2ヶ月親と過ごしてから独立する。繁殖期(4月~8月頃)は、営巣地周辺の海域で、非繁殖期は北海道や本州北部の沿海域から沖合海域に生息する。

○ 生息数

天売島での生息数は、1960年代には8000羽と推定されたが、1970年代には500~1000羽、1980年代には130~600羽、1990年代は20羽~80羽、ここ数年は30羽前後で推移していたが、2017年は56羽、2018年は58羽を確認した。

○ 減少要因

要因は明らかでは無いが、餌資源の減少等が考えられている。

しかし、最近の主な減少要因は、オオセグロカモメやハシブトガラスによる卵やヒナの捕食と考えられている。

○ 保護対策

1982年に天売島全域を国指定鳥獣保護区に指定、1993年にはウミガラスを絶滅のおそれのある野生動植物の種の保存に関する法律(種の保存法)に基づく国内希少野生動植物種に指定した。更に2001年には保護増殖事業計画を作成し、デコイ(鳥の模型)の設置や生息状況のモニタリング等を実施してきた。

2.ウミガラス保護増殖事業の経緯

主に天売島の2箇所の繁殖地(屏風岩、赤岩対岸)でデコイの設置や、音声装置を設置して鳴き声を流し繁殖個体の誘引等を行ってきた。

○ 2003年~2008年:屏風岩(デコイ設置、音声装置設置(2005年~2008年))

2006年には50羽飛来し13年ぶりにウミガラスが卵を産んだが捕食された。その後もハシブトガラスやオオセグロカモメに卵や雛を捕食され巣立ちには至らなかった。2012年以降、屏風岩では、ウミガラスの飛来は確認されていない。

○ 2009年~2018年:赤岩対岸(デコイ設置、音声装置設置)

赤岩対岸にある繁殖地は、標高25mにある断崖の岩棚にあるため、屏風岩の繁殖地より捕食されにくいと考えられたことから、誘引場所を移動した。しかしながら最初の2年はハシブトガラスやオオセグロカモメに卵や雛を捕食されほとんどが巣立ちには至らなかった。

2011年からは、繁殖地周辺でエアライフルによる捕食者の捕獲を実施している。その結果、捕食圧を下げることに成功し、8年連続の巣立ちとなった。

※2011年以前は、繁殖地周辺以外で箱罠や散弾銃による捕食者の捕獲を実施。

■ 問い合わせ先
北海道地方環境事務所 野生生物課
電話:011-299-1954 FAX:011-736-1234