報道発表資料
2022年05月25日
- 報道発表
(お知らせ)「ウミガラス保護増殖事業ロードマップ」の策定について
ウミガラスは、天売島を国内唯一の繁殖地とする希少な海鳥であり、環境省では1993年に「絶滅のおそれのある野生動植物の種の保存に関する法律」に基づく国内希少野生動植物種に指定し、2001年に策定した「ウミガラス保護増殖事業計画」に基づき、保護増殖の取組みを進めてきました。 近年、これまでの保護増殖の取組みの成果として、天売島に飛来するウミガラスの数も、繁殖するつがいの数も順調に増加していることをふまえ、中長期的な視点から本種の保護増殖の取組みを効果的かつ効率的に展開していくための10か年の行程計画として、「ウミガラス保護増殖事業ロードマップ」を策定しましたので、お知らせします。
1.「ウミガラス保護増殖事業ロードマップ」策定の経緯
「ウミガラス保護増殖事業計画」を策定した2001年当時のわが国のウミガラスは、飛来数17羽、繁殖つがい数3つがいと絶滅が危ぶまれる厳しい状況にありました。このため、本種の生息状況に応じたきめ細やかな取組みが必要であることから、毎年度「ウミガラス保護増殖検討会」において、「年次計画」を検討・策定のうえ、本種の保護増殖の取組みを進めてきました。
このような年度毎の状況に応じた取組みの積み重ねの成果として、2011年頃から飛来数、繁殖つがい数は回復傾向になり、近年では、天売島における本種の飛来数、繁殖つがい数は、毎年過去最高を更新しています。2021年には飛来数91羽を確認し、前年より1.4倍増えました。また、同年の繁殖つがい数は27つがいまで回復しています。
こうした本種の順調な回復傾向をふまえ、これまでの年次計画に基づく取組みの次のステップとして、ウミガラス保護増殖事業は中長期的な視点に立った計画を策定できる段階にあります。このため2020年度より「ウミガラス保護増殖検討会」において計画策定に向けた検討・議論を進め、本年4月に「ウミガラス保護増殖計画」の下部計画に位置づける、10か年の行程計画を「ウミガラス保護増殖事業ロードマップ」としてとりまとめました。
このような年度毎の状況に応じた取組みの積み重ねの成果として、2011年頃から飛来数、繁殖つがい数は回復傾向になり、近年では、天売島における本種の飛来数、繁殖つがい数は、毎年過去最高を更新しています。2021年には飛来数91羽を確認し、前年より1.4倍増えました。また、同年の繁殖つがい数は27つがいまで回復しています。
こうした本種の順調な回復傾向をふまえ、これまでの年次計画に基づく取組みの次のステップとして、ウミガラス保護増殖事業は中長期的な視点に立った計画を策定できる段階にあります。このため2020年度より「ウミガラス保護増殖検討会」において計画策定に向けた検討・議論を進め、本年4月に「ウミガラス保護増殖計画」の下部計画に位置づける、10か年の行程計画を「ウミガラス保護増殖事業ロードマップ」としてとりまとめました。
2. 「ウミガラス保護増殖事業ロードマップ」について
(1)目標
○最終目標
国内のウミガラスが自然状態で安定的に存続できる状態となること。
○中期目標(2022~2031年度:10年間)
飛来の目標:天売島での飛来数(同時にカウントできた最大数)を200羽以上とすること。
繁殖の目標:天売島の繁殖地での繁殖つがい数(卵または抱卵姿勢の確認数)を75~125つがい以上とすること。天売島の赤岩対崖繁殖地における現在の繁殖巣棚での安定した巣立ち成功(巣立ち成功率75%以上)を確保すること。また、現在の繁殖巣棚以外(特に現在の繁殖巣棚の左側の巣棚)でも複数つがいの連続した繁殖成功を目指す。(図1参照。)
国内のウミガラスが自然状態で安定的に存続できる状態となること。
○中期目標(2022~2031年度:10年間)
飛来の目標:天売島での飛来数(同時にカウントできた最大数)を200羽以上とすること。
繁殖の目標:天売島の繁殖地での繁殖つがい数(卵または抱卵姿勢の確認数)を75~125つがい以上とすること。天売島の赤岩対崖繁殖地における現在の繁殖巣棚での安定した巣立ち成功(巣立ち成功率75%以上)を確保すること。また、現在の繁殖巣棚以外(特に現在の繁殖巣棚の左側の巣棚)でも複数つがいの連続した繁殖成功を目指す。(図1参照。)
(2)ロードマップに基づく新たな取組み
①繁殖環境の整備・拡大
今後の飛来数、繁殖つがい数を予測しながら、現在の繁殖巣棚の左右の巣棚を繁殖に適した環境へと整備し、ウミガラスの繁殖場所として誘引・拡大を図ります。
②個体群の系統解析、個体識別方法の検討・試行
天売島に飛来するウミガラス個体群の系統を明らかにするための遺伝子解析や、個体の由来などを明らかにするための個体識別方法の検討・試行を計画的に進めます。
今後の飛来数、繁殖つがい数を予測しながら、現在の繁殖巣棚の左右の巣棚を繁殖に適した環境へと整備し、ウミガラスの繁殖場所として誘引・拡大を図ります。
②個体群の系統解析、個体識別方法の検討・試行
天売島に飛来するウミガラス個体群の系統を明らかにするための遺伝子解析や、個体の由来などを明らかにするための個体識別方法の検討・試行を計画的に進めます。
(3)中間評価等
本ロードマップの計画期間は2022~2031年度の10か年としており、5年目の2026年度に中間評価を行うとともに、2027年度以降の取組み方針を決定するなど、取組みの進捗状況およびウミガラスの生息状況に応じて順応的に見直しを行う予定です。
3.添付資料
4.参考
(1)ウミガラスについて
チドリ目 ウミスズメ科
絶滅危惧ⅠA類(ごく近い将来における野生での絶滅の危険性が極めて高い種)
○分布の概要
種としては、北太平洋、北大西洋の亜寒帯を中心に分布している。日本国内ではかつては、北海道の離島である松前小島、ユルリ島、モユルリ島にも繁殖地コロニーがあったが、現在では天売島の赤岩対崖の繁殖地のみである。
○形態、生物学的特性
全長40cm~45cm。潜水して主に魚類を食べる。
離島や海岸の断崖で集団繁殖する。5月下旬~6月に1卵産み、約30日抱 卵する。ヒナは、孵化約3週間で巣立ち、その後約2ヶ月親と過ごしてから独立する。繁殖期(4月~8月頃)は、営巣地周辺の海域で、非繁殖期は沿岸海域から沖合海域に生息する。
○飛来数
天売島への飛来数は、1960年代には8000羽と推定されたが、1970年代には500~1000羽、1980年代には130~600羽、1990年代は20羽~80羽、2000年以降は30羽前後で推移していたが、2017年に50羽を超え、2021年は91羽を確認した。(図2参照。)
○つがい数、巣立ちヒナ数
飛来数と同様に、つがい数と巣立ちヒナ数も急激な減少傾向にあったが、ここ数年は徐々に持ち直し回復傾向にある。
つがい数は、2005年に一度、0つがいとなったが、その後回復傾向を示し、2017年には20つがいを超え、2021年は27つがいと推定された。巣立ちヒナ数は、2010年に0羽となったが、つがい数に伴って回復傾向を示し、2019年には20羽を超え、2021年は25羽を確認した。(図2参照。)
○減少要因
要因は明らかでは無いが、混獲や餌資源の減少等が考えられている。
一方、最近の主な減少要因は、ハシブトガラス等による卵やヒナの捕食と考えられている。
○保護対策
1982年に天売島全域を国指定鳥獣保護区に指定、1993年にはウミガラスを「絶滅のおそれのある野生動植物の種の保存に関する法律(種の保存法)」に基づく国内希少野生動植物種に指定した。更に2001年には保護増殖事業計画を作成し、誘引対策、捕食者対策、生息状況のモニタリング等を実施してきた。
絶滅危惧ⅠA類(ごく近い将来における野生での絶滅の危険性が極めて高い種)
○分布の概要
種としては、北太平洋、北大西洋の亜寒帯を中心に分布している。日本国内ではかつては、北海道の離島である松前小島、ユルリ島、モユルリ島にも繁殖地コロニーがあったが、現在では天売島の赤岩対崖の繁殖地のみである。
○形態、生物学的特性
全長40cm~45cm。潜水して主に魚類を食べる。
離島や海岸の断崖で集団繁殖する。5月下旬~6月に1卵産み、約30日抱 卵する。ヒナは、孵化約3週間で巣立ち、その後約2ヶ月親と過ごしてから独立する。繁殖期(4月~8月頃)は、営巣地周辺の海域で、非繁殖期は沿岸海域から沖合海域に生息する。
○飛来数
天売島への飛来数は、1960年代には8000羽と推定されたが、1970年代には500~1000羽、1980年代には130~600羽、1990年代は20羽~80羽、2000年以降は30羽前後で推移していたが、2017年に50羽を超え、2021年は91羽を確認した。(図2参照。)
○つがい数、巣立ちヒナ数
飛来数と同様に、つがい数と巣立ちヒナ数も急激な減少傾向にあったが、ここ数年は徐々に持ち直し回復傾向にある。
つがい数は、2005年に一度、0つがいとなったが、その後回復傾向を示し、2017年には20つがいを超え、2021年は27つがいと推定された。巣立ちヒナ数は、2010年に0羽となったが、つがい数に伴って回復傾向を示し、2019年には20羽を超え、2021年は25羽を確認した。(図2参照。)
○減少要因
要因は明らかでは無いが、混獲や餌資源の減少等が考えられている。
一方、最近の主な減少要因は、ハシブトガラス等による卵やヒナの捕食と考えられている。
○保護対策
1982年に天売島全域を国指定鳥獣保護区に指定、1993年にはウミガラスを「絶滅のおそれのある野生動植物の種の保存に関する法律(種の保存法)」に基づく国内希少野生動植物種に指定した。更に2001年には保護増殖事業計画を作成し、誘引対策、捕食者対策、生息状況のモニタリング等を実施してきた。
(2)ウミガラス保護増殖事業の経緯
主に天売島の2箇所の繁殖地(屏風岩、赤岩対崖)において、デコイ(ウミガラスの模型)やウミガラスの鳴き声を流す音声装置の設置による繁殖個体の誘引や、捕食者(ハシブトガラス等)の捕獲等を行ってきた。
○2003年~2008年:屏風岩(デコイ設置、音声装置設置)
2006年には50羽飛来し13年ぶりにウミガラスが卵を産んだが捕食された。その後もハシブトガラス等に卵や雛を捕食され巣立ちには至らなかった。
2012年以降、屏風岩では、ウミガラスの飛来は確認されていない。
○2009年~2021年:赤岩対崖(デコイ設置、音声装置設置)
赤岩対崖にある繁殖地は、標高25mにある断崖の岩棚にあるため、屏風岩の繁殖地より捕食されにくいと考えられたことから、誘引場所を移動した。しかしながら最初の2年はハシブトガラス等に卵や雛を捕食され、ほとんどが巣立ちには至らなかった。
2011年からは、繁殖地周辺でエアライフルによる捕食者の捕獲を実施している。その結果、捕食圧を下げることに成功し、11年連続の巣立ちとなった。
※2010年以前は、繁殖地周辺以外で箱罠や散弾銃による捕食者の捕獲を実施。
○2003年~2008年:屏風岩(デコイ設置、音声装置設置)
2006年には50羽飛来し13年ぶりにウミガラスが卵を産んだが捕食された。その後もハシブトガラス等に卵や雛を捕食され巣立ちには至らなかった。
2012年以降、屏風岩では、ウミガラスの飛来は確認されていない。
○2009年~2021年:赤岩対崖(デコイ設置、音声装置設置)
赤岩対崖にある繁殖地は、標高25mにある断崖の岩棚にあるため、屏風岩の繁殖地より捕食されにくいと考えられたことから、誘引場所を移動した。しかしながら最初の2年はハシブトガラス等に卵や雛を捕食され、ほとんどが巣立ちには至らなかった。
2011年からは、繁殖地周辺でエアライフルによる捕食者の捕獲を実施している。その結果、捕食圧を下げることに成功し、11年連続の巣立ちとなった。
※2010年以前は、繁殖地周辺以外で箱罠や散弾銃による捕食者の捕獲を実施。
お問い合わせ先
環境省 北海道地方環境事務所
所 長:櫻井 洋一
野生生物課長:太田 貴智
羽幌自然保護官:原中 つかさ(担当)
電話 0164-69-1101 FAX 0164-69-1102
所 長:櫻井 洋一
野生生物課長:太田 貴智
羽幌自然保護官:原中 つかさ(担当)
電話 0164-69-1101 FAX 0164-69-1102