報道発表資料
2023年12月15日
- 結果報告
(お知らせ)天売島におけるウミガラスの繁殖結果について(2023年12月15日)
環境省が実施しているウミガラス※1の保護増殖事業において、天売島における令和5年度のウミガラスの繁殖状況を調査した結果、最大飛来数104羽、つがい数7つがい、ヒナの巣立数3羽を確認しました。最大飛来数は昨年度と同数でしたが、繁殖についてはつがい数、巣立ちヒナ数ともに減少しました。
※1 絶滅のおそれのある野生動植物の種の保存に関する法律により国内希少野生動植物種に指定
※1 絶滅のおそれのある野生動植物の種の保存に関する法律により国内希少野生動植物種に指定
繁殖成績悪化など今年度の結果については、営巣環境や採餌環境など減少要因を解明するためのデータ収集や解析などを行い、今後の取組を検討していきます。また、引き続きデコイ(ウミガラスの模型)やウミガラスの鳴き声を流す音声装置の設置による繁殖個体の誘引や、捕食者(ハシブトガラス等)対策を実施していきます。
- ※本結果は今後の映像解析により変更になる場合があります。
- ※2023年は、モニタリング機器のトラブル・不具合が生じたため、録画できていない期間・時間帯がありました。このため、繁殖地内のつがい数・ヒナ数・巣立ちヒナ数の全てを確認することはできませんでした。
調査結果
- 最大飛来数 :104羽 (昨年と同数)
- つがい数 :最低7つがい(昨年比21つがい減少)
- ヒナ数 :最低4羽(昨年比21羽減少)
- 巣立ちヒナ数:推定3羽(昨年比15羽減少)
- 巣立ち日 :7月30日~8月3日の間 (昨年8月4日~8月18日)
- 巣立ち成功率:42.9%(巣立ち成功率=巣立ちヒナ数/つがい数×100、昨年64.3%
図1 天売島全体の繁殖状況 図2 ウミガラスが繁殖している赤岩対崖の位置
図1 天売島全体の繁殖状況 図2 ウミガラスが繁殖している赤岩対崖の位置
写真1 ウミガラスが繁殖している赤岩対崖の繁殖巣棚の写真 写真2 繁殖巣棚の右側の窪みに広がりを見せるウミガラス(6月8日 7:58撮影)
写真3 繁殖巣棚内の様子(6月25日 17:59撮影) 写真4 繁殖巣棚で育雛中のウミガラス(7月28日)
参考
1.ウミガラスについて
チドリ目 ウミスズメ科
絶滅危惧ⅠA類(ごく近い将来における野生での絶滅の危険性が極めて高い種)
○分布の概要
種としては、北太平洋、北大西洋の亜寒帯を中心に分布している。日本国内ではかつては、北海道の離島である松前小島、ユルリ島、モユルリ島にも繁殖地コロニーがあったが、現在では天売島の赤岩対崖の繁殖地のみである。
○形態、生物学的特性
全長40cm~45cm 。潜水して主に魚類を食べる。
離島や海岸の断崖で集団繁殖する。5月下旬~6月に1卵産み、約30日抱卵する。ヒナは、孵化約3週間で巣立ち、その後約2ヶ月親と過ごしてから独立する。繁殖期(4月~8月頃)は、営巣地周辺の海域で、非繁殖期は沿岸海域から沖合海域に生息する。
○飛来数
天売島への飛来数は、1960年代には8000羽と推定されたが、1970年代には500~1000羽、1980年代には130~600羽、1990年代は20羽~80羽、2000年以降は30羽前後で推移していたが、2017年に50羽を超え、2023年は、2022年に引き続き、104羽を確認した。
○つがい数、巣立ちヒナ数
飛来数と同様に、つがい数と巣立ちヒナ数も急激な減少傾向にあったが、ここ数年は徐々に持ち直し回復傾向にある。
つがい数は、2005年に一度、0羽となったが、その後回復傾向を示し、2017年には20つがいを超えたものの、2023年は7つがいであった。巣立ちヒナ数は、2010年に0羽となったが、つがい数に伴って回復傾向を示し、2019年には20羽を超えた。一方、2023年は前年より15羽減少し推定3羽であった。
○減少要因
要因は明らかでは無いが、混獲や餌資源の減少等が考えられている。
一方、最近の主な減少要因は、ハシブトガラス等による卵やヒナの捕食、餌資源の減少と考えられている。
○保護対策
1982年に天売島全域を国指定鳥獣保護区に指定、1993年にはウミガラスを絶滅のおそれのある野生動植物の種の保存に関する法律(種の保存法)に基づく国内希少野生動植物種に指定した。2001年には「ウミガラス保護増殖事業計画」を策定し、誘引対策、捕食者対策、生息状況のモニタリング等を実施してきた。更に2022年には、10か年の行程計画として「ウミガラス保護増殖事業ロードマップ」を策定し、事業を展開してきた。
絶滅危惧ⅠA類(ごく近い将来における野生での絶滅の危険性が極めて高い種)
○分布の概要
種としては、北太平洋、北大西洋の亜寒帯を中心に分布している。日本国内ではかつては、北海道の離島である松前小島、ユルリ島、モユルリ島にも繁殖地コロニーがあったが、現在では天売島の赤岩対崖の繁殖地のみである。
○形態、生物学的特性
全長40cm~45cm 。潜水して主に魚類を食べる。
離島や海岸の断崖で集団繁殖する。5月下旬~6月に1卵産み、約30日抱卵する。ヒナは、孵化約3週間で巣立ち、その後約2ヶ月親と過ごしてから独立する。繁殖期(4月~8月頃)は、営巣地周辺の海域で、非繁殖期は沿岸海域から沖合海域に生息する。
○飛来数
天売島への飛来数は、1960年代には8000羽と推定されたが、1970年代には500~1000羽、1980年代には130~600羽、1990年代は20羽~80羽、2000年以降は30羽前後で推移していたが、2017年に50羽を超え、2023年は、2022年に引き続き、104羽を確認した。
○つがい数、巣立ちヒナ数
飛来数と同様に、つがい数と巣立ちヒナ数も急激な減少傾向にあったが、ここ数年は徐々に持ち直し回復傾向にある。
つがい数は、2005年に一度、0羽となったが、その後回復傾向を示し、2017年には20つがいを超えたものの、2023年は7つがいであった。巣立ちヒナ数は、2010年に0羽となったが、つがい数に伴って回復傾向を示し、2019年には20羽を超えた。一方、2023年は前年より15羽減少し推定3羽であった。
○減少要因
要因は明らかでは無いが、混獲や餌資源の減少等が考えられている。
一方、最近の主な減少要因は、ハシブトガラス等による卵やヒナの捕食、餌資源の減少と考えられている。
○保護対策
1982年に天売島全域を国指定鳥獣保護区に指定、1993年にはウミガラスを絶滅のおそれのある野生動植物の種の保存に関する法律(種の保存法)に基づく国内希少野生動植物種に指定した。2001年には「ウミガラス保護増殖事業計画」を策定し、誘引対策、捕食者対策、生息状況のモニタリング等を実施してきた。更に2022年には、10か年の行程計画として「ウミガラス保護増殖事業ロードマップ」を策定し、事業を展開してきた。
2.ウミガラス保護増殖事業の経緯
主に天売島の2箇所の繁殖地(屏風岩、赤岩対崖)において、デコイ(ウミガラスの模型)やウミガラスの鳴き声を流す音声装置の設置による繁殖個体の誘引や、捕食者(ハシブトガラス等)の駆除等を行ってきた。
○2003年~2008年:屏風岩(デコイ設置、音声装置設置(2005 年~2008 年))
2006年には50羽飛来し13年ぶりにウミガラスが卵を産んだが捕食された。その後もハシブトガラス等に卵や雛を捕食され巣立ちには至らなかった。2012年以降、屏風岩では、ウミガラスの飛来は確認されていない。
○2009年~2023年:赤岩対崖(デコイ設置、音声装置設置)
赤岩対崖にある繁殖地は、標高25mにある断崖の岩棚にあるため、屏風岩の繁殖地より捕食されにくいと考えられたことから、誘引場所を移動した。しかしながら最初の2年はハシブトガラス等に卵や雛を捕食され、ほとんどが巣立ちには至らなかった。
2011年からは、繁殖地周辺でエアライフルによる捕食者の捕獲を実施している。その結果、捕食圧を下げることに成功し、13年連続の巣立ちとなった。
※2010年以前は、繁殖地周辺以外で箱罠や散弾銃による捕食者の捕獲を実施。
○2003年~2008年:屏風岩(デコイ設置、音声装置設置(2005 年~2008 年))
2006年には50羽飛来し13年ぶりにウミガラスが卵を産んだが捕食された。その後もハシブトガラス等に卵や雛を捕食され巣立ちには至らなかった。2012年以降、屏風岩では、ウミガラスの飛来は確認されていない。
○2009年~2023年:赤岩対崖(デコイ設置、音声装置設置)
赤岩対崖にある繁殖地は、標高25mにある断崖の岩棚にあるため、屏風岩の繁殖地より捕食されにくいと考えられたことから、誘引場所を移動した。しかしながら最初の2年はハシブトガラス等に卵や雛を捕食され、ほとんどが巣立ちには至らなかった。
2011年からは、繁殖地周辺でエアライフルによる捕食者の捕獲を実施している。その結果、捕食圧を下げることに成功し、13年連続の巣立ちとなった。
※2010年以前は、繁殖地周辺以外で箱罠や散弾銃による捕食者の捕獲を実施。
お問い合わせ先
環境省 北海道地方環境事務所
直通:011-299-1954
所長:牛場 雅己
野生生物課長:西野 雄一
課長補佐:福田 真
環境省 羽幌自然保護官事務所
直通:0164-69-1101
自然保護官:市川 惇史(担当)
直通:011-299-1954
所長:牛場 雅己
野生生物課長:西野 雄一
課長補佐:福田 真
環境省 羽幌自然保護官事務所
直通:0164-69-1101
自然保護官:市川 惇史(担当)