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北海道地方環境事務所

報道発表資料

2024年11月21日
  • 開催案内

令和6年度のウミガラス保護増殖事業における繁殖結果及び検討会の開催について

 環境省が実施しているウミガラスの保護増殖事業において、国内唯一の繁殖地である天売島での繁殖状況を調査した結果、最大飛来数122羽、つがい数23つがい、ヒナの巣立数14羽を確認しました。最大飛来数は過去最大値を記録し、繁殖成績が悪化した昨年度から、つがい数、巣立ちヒナ数ともに回復傾向となりました。
※絶滅のおそれのある野生動植物の種の保存に関する法律により国内希少野生動植物種に指定

 今年度の結果について、営巣環境や採餌環境などのデータ収集や解析を行い、前年度の繁殖成績悪化などとの関連を調べるとともに、今後の取組を検討していきます。特に、減少要因を取り除くための捕食者(ハシブトガラス等)対策の強化や、巣立ち時期のヒナの調査を実施していきます。

 なお、令和6年度の実施結果及び令和7年度の実施計画について科学的な助言を得るため、ウミガラス保護増殖検討会令和6年12月17日(火)に開催しますのでお知らせします。

1.調査結果 ※1

  • 最大飛来数 :122羽 (昨年比18羽増加)
  • つがい数  :最低23つがい(昨年比16つがい増加)
  • ヒナ数   :最低18羽(昨年比14羽増加)
  • 巣立ちヒナ数:推定14羽(昨年比11羽増加)
  • 巣立ち日  :7月23日~8月2日の間(昨年7月23日~8月3日)
  • 巣立ち成功率:60.9%(巣立ち成功率=巣立ちヒナ数/つがい数×100、昨年42.9%)

図1 天売島の繁殖状況 ※2
  • ※1 本結果は今後の映像解析により変更になる場合があります。
  • ※2 モニタリング機器のトラブル・不具合が生じたため、録画できていない期間・時間帯がある年度があります。このため、記録された範囲で最大数を記載しています。

2.検討会の開催

開催日時:令和6年12月17日(火)13:30~16:30
開催場所:札幌市教育文化会館 402会議室(住所:札幌市中央区北1条西13丁目)
議題(予定):(1)令和6年度ウミガラス保護増殖事業の実施結果
       (2)令和7年度ウミガラス保護増殖事業の実施計画
       (3)その他 ・取材、傍聴について:
        会議は公開で行います。取材のカメラ撮影は会議冒頭のみ可とします。
        取材・傍聴をご希望の方は、会議事務局まで電子メールでお申し込みください。
        お申込みの際には、件名に「令和6年度ウミガラス保護増殖検討会」と明記し、本文に下記内容をご記入ください。
         [1]氏名(ふりがな)
         [2]電話番号
         [3]勤務先及び役職
         [4]連絡先E-mailアドレス
        申込先(会議事務局):環境省羽幌自然保護官事務所 市川 ATSUSHI_ICHIKAWA@env.go.jp
        ※申込受付期限は、令和6年12月12日(木)17時といたします。

3.提供写真及び動画について

  • 写真・動画を希望される際は羽幌自然保護官事務所までお問い合わせください。
  • 使用される際は「北海道地方環境事務所提供」の表示をお願いいたします。
  • 他にも提供できる写真があります。

   図2 ウミガラスが繁殖している赤岩対崖の位置
写真1 ウミガラスが繁殖している赤岩対崖の繁殖巣棚の写真(赤枠が繁殖している巣棚)

写真2 繁殖巣棚を出走する直前のウミガラス(6月14日7:58)

写真3 繁殖巣棚内の様子(5月15日4:47)

写真4 巣立ちヒナの様子(7月26日7:50)

4.参考

(1)ウミガラスについて
チドリ目 ウミスズメ科
絶滅危惧ⅠA類(ごく近い将来における野生での絶滅の危険性が極めて高い種)
○分布の概要
種としては、北太平洋、北大西洋の亜寒帯を中心に分布している。日本国内ではかつては、北海道の離島である松前小島、ユルリ島、モユルリ島にも繁殖地コロニーがあったが、現在では天売島の赤岩対崖の繁殖地のみである。
○形態、生物学的特性
全長40cm~45cm。潜水して主に魚類を食べる。
離島や海岸の断崖で集団繁殖する。5月下旬~6月に1卵産み、約30日抱卵する。ヒナは、孵化約3週間で巣立ち、その後約2ヶ月親と過ごしてから独立する。繁殖期(4月~8月頃)は、営巣地周辺の海域で、非繁殖期は沿岸海域から沖合海域に生息する。
○飛来数
天売島への飛来数は、1960年代には8000羽と推定されたが、1970年代には500~1000羽、1980年代には130~600羽、1990年代は20羽~80羽、2000年以降は30羽前後まで減少した。保護対策のおかげで2017年に50羽を超え、2024年は過去最多の122羽を確認した。
○つがい数、巣立ちヒナ数
飛来数と同様に、つがい数と巣立ちヒナ数も急激な減少傾向にあったが、2010年前後から徐々に増加傾向にある。 つがい数は、2005年に一度、0羽となったが、その後回復傾向を示し、2017年には20つがいを超えたものの、2023年は7つがいであった。巣立ちヒナ数は、2010年に0羽となったが、つがい数に伴って回復傾向を示し、2019年には20羽を超えた。一方、2023年は前年より15羽減少し推定3羽であった。2024年はそれぞれ23つがい、14羽と前年度から回復した。
○減少要因
要因は明らかでは無いが、混獲や餌資源の減少等が考えられている。一方、最近の主な減少要因は、ハシブトガラス等による卵やヒナの捕食、餌資源の減少と考えられている。
○保護対策
1982年に天売島全域を国指定鳥獣保護区に指定、1993年にはウミガラスを絶滅のおそれのある野生動植物の種の保存に関する法律(種の保存法)に基づく国内希少野生動植物種に指定した。2001年には「ウミガラス保護増殖事業計画」を策定し、誘引対策、捕食者対策、生息状況のモニタリング等を実施してきた。更に2022年には、10か年の行程計画として「ウミガラス保護増殖事業ロードマップ」を策定し、事業を展開してきた。
(2)ウミガラス保護増殖事業の経緯
に天売島の2箇所の繁殖地(屏風岩、赤岩対崖)において、デコイ(ウミガラスの模型)やウミガラスの鳴き声を流す音声装置の設置による繁殖個体の誘引や、捕食者(ハシブトガラス等)の駆除等を行ってきた。
○2003年~2008年
屏風岩(デコイ設置、音声装置設置(2005年~2008年)) 2006年には50羽飛来し13年ぶりにウミガラスが卵を産んだが捕食された。その後もハシブトガラス等に卵や雛を捕食され巣立ちには至らなかった。2012年以降、屏風岩では、ウミガラスの飛来は確認されていない。
○2009年~
赤岩対崖(デコイ設置、音声装置設置) 赤岩対崖にある繁殖地は、標高25mにある断崖の岩棚にあるため、屏風岩の繁殖地より捕食されにくいと考えられたことから、誘引場所を移動しデコイ設置や音声装置を設置した。しかしながら最初の2年はハシブトガラス等に卵や雛を捕食され、ほとんどが巣立ちには至らなかった。 2011年からは、繁殖地周辺でエアライフルによる捕食者の捕獲を実施している。その結果、捕食圧を下げることに成功し、13年連続の巣立ちとなっている。
※2010年以前は、繁殖地周辺以外で箱罠や散弾銃による捕食者の捕獲を実施。

お問い合わせ先

環境省 北海道地方環境事務所
直通:011-299-1954
所長:山本 麻衣
野生生物課長:西野 雄一
課長補佐:福田 真

【担当】
環境省 羽幌自然保護官事務所
直通:0164-69-1101
自然保護官:市川 惇史
Mail:ATSUSHI_ICHIKAWA@env.go.jp