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北海道地方環境事務所

アクティブ・レンジャー日記 [北海道地区]

晩秋の1839m峰

2021年10月21日
丸岡梨紗

 大雪山では積雪も見られた寒い日ではありましたが、10月6ー8日に1839m峰の登山道調査に行ってきました。

 水も冷たくなった紅葉のコイカクシュサツナイ川を遡行し、北海道3大急登と呼ばれている急な尾根を苦労して登っていくと、稜線が近づくにつれ、1823m峰へと続く縦走路のナイフリッジには幾筋もの険谷が美しく刻まれ、ピラミッド峰を経てアイヌ語でカムイ・エクチカ・ウシ・イ(熊が・ 岩崖を踏み外して下へ落ちる・よくする・所)という意味をもつカムイエクチカウシ山まで急峻で美しい造形が連なる様子を望むことができました。

1823m峰紅葉のグラデーション【1823m峰紅葉のグラデーション】

 稜線から見た、残照に照らされる下部の紅葉から、上部の落葉した真っ白なダケカンバへと移り変わる晩秋の山のグラデーションと秋枯れの草紅葉。そして、その彩られた美しい屏風のような稜線をバックに、うっすらと舞う初雪が太平洋に沈む洛陽に輝く様子は、寒さも忘れる美しさでした。

夕暮れに染まるナイフリッジ【夕暮れに染まるナイフリッジの稜線】

 翌日は晴天で、北日高方面では白く輝く山々が見られました。今回は調査のために万全の準備のもと山行にのぞみましたが、10月以降は気温も低く、また日没も早いため、9月中までの登山をお勧めします。

 コイカクシュサツナイ岳を過ぎるとハイマツのブッシュは濃くなり、枝や幹を払いのけながら、ヤオロマップ岳への藪漕ぎが始まりました。

コイカクシュサツナイ岳山頂から1839峰への稜線【コイカクシュサツナイ岳から1839m峰方面を望む】

 水場は、このヤオロマップ岳の東側の急斜面をヤオロマップ左沢源頭に向かって慎重に10分ほど下ると水が得られるとされていますが、水量が少ないため時期が遅ければなおさら下から担ぎあげることをお勧めします。その際、2日目の行動時間が長いため、もし夏場であれば、特に十分な水の量を計算することが必要です。

 私は、隆起して地球の圧力を受けた変成岩や深成岩の岩壁が、氷河や川に削られてさらに雪に磨かれた険谷に、地球のエネルギーを感じながら沢登りするのが好きなのですが、カムエクから続く中日高一帯は特に難易度の高い沢に囲まれており、1823m峰からすっと流れ落ちる名無沢の滝を筆頭に、縦走路から望むことのできる様々な滝や、サッシビチャリ川源頭のきらきらと光る水に輝く岩盤などに美しさや遡行への憧れを感じました。

 その後1781m付近からのハイマツと低木ブッシュをまるで木登りのように越え、急なアップダウンも越え、1839m峰への最後の登りである部分的にロープが張られている急な壁を越え、苦労して山頂につくと主稜線から離れていることもあり、ペテガリ岳からカムイエクチカウシ山までの雄大な日高山脈の国境稜線を見渡すことができました。

【1839m峰山頂からカムイエクチカウシ山方面を望む】

 1839m峰に登るのは13年前のお盆に1週間かけてポンヤオロマップ岳まで縦走した時に登った以来でしたが、夏の日高山脈にありがちな上昇気流の影響によりガスがかかっていたその時と違って、今回は寒いながらも、最高のお天気で感動もひとしおです。

 帰路のヤオロマップ岳からコイカクシュサツナイ岳への工程はハイマツの生える向きが逆になるために、疲れた体に鞭打って厳しい藪こぎとなり、なんと足には無数の青あざができていました。

 秋の日暮れは早く、夕暮れのエゾシカのラッティングコールに晩秋の寂しさを感じながら1日がかりで往復しました。

 1839峰は、急峻な日高らしさを持つ美しい山でしたが、北海道最難関とも呼ばれており、23日は必要となる体力的に大変ハードなルートとなりますので十分計画されてからの山行をお願いいたします。