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北海道地方環境事務所

アクティブ・レンジャー日記 [北海道地区]

振り返れば山頂がお見送り

2021年06月21日
上村 哲也

 615()、大雪山国立公園の東大雪地域、上士幌町と鹿追町の境に在るウペペサンケ山を糠平コースから巡視しました。

 ウペペサンケ山は最高標高1,848mであるほか、東に糠平富士1,835m、西に西峰1,836mを配し、東西2km近い頂稜を持つ山です。アイヌ語で「雪融け水を押し出す山」を意味するといいます。早春に川の水が増す頃、帯広や音更の街から雪を纏うウペペサンケ山が壁のように立って望めます。

 標高890mほどの登山口から日帰りが一般的な中級の山でしたが、平成28年夏の大雨被害によって往復10km3時間前後の林道歩きが加わりました。途中、流失した林道を慎重に渡るところ、落石や倒木地帯を通過するところがあります。この日、倒木の枝打ちに手を出したこともあり、車止めから最高標高点まで往復13時間の行動となりました。ガイドブックやウェブサイトから下調べをしっかり行い、自身の行動時間を予測することが大切です。場合によっては糠平富士での折り返しや夏至など昼の長い季節を選ぶことも必要でしょう。

 以前、大雪山の登山といえば夏休みが取れる7月、8月が中心でした。大雪山国立公園に関わる仕事に就き、近くに暮らすことによって、さまざまな季節の大雪山に触れるようになりました。例えば、夏の終わりに紅く色付くウラシマツツジもそのひとつ。花の時期がとても早く目にしたことがありませんでした。茶色く枯れて目立たない群落の中、若葉より先にごくごく小さな花が咲くのでなかなか気付けません。緑がかった黄色い下向きのツボ型をした花。がくの近くに少し透明な小窓があり、花芯に陽の光を届けて温めているとも考えられています。

ウラシマツツジの花

 登山は、ぬかびら源泉郷の水源となる里山から始まり、トドマツ、ダケカンバの森を抜けてハイマツや高山植物の育つ森林限界へ。キバナシャクナゲ、コマクサ、ミツバオウレン、コメバツガザクラ、イワウメ、ミネズオウとさまざまな花が夏を告げていました。

 あいにくの曇り。稜線はガスに包まれほとんど展望は得られませんでしたが、帰路に振り返ると頂が姿を見せ見送りをしてくれていました。

振り返れば山頂がお見送り