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北海道地方環境事務所

アクティブ・レンジャー日記 [北海道地区]

ガンコウランの花

2023年05月31日
忠鉢伸一
こんにちは大雪山国立公園管理事務所の忠鉢です。
 
5月に入り、大雪山国立公園管理事務所では山岳地域への巡視活動が始まりました。
まだこの時期は登山道が雪で見えなかったり、夏山登山よりも装備品が余計に必要だったりしますが、雪も日に日に溶けていき、徐々に夏山シーズンが近づいてきているのを感じます。
 
黒岳石室周辺の状況を見に行った日、普段あまり見ることができないガンコウランの花が咲いているのを見つけました。
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【黒岳山頂から黒岳石室の間で撮影】
なぜあまり見ることができないかというと、花の開花が5月~6月中旬とかなり早い為です。
黒岳の登山道は6月はまだ雪の下です。
そのため黒岳の夏山のシーズンが始まる7月頃に訪れる登山者は、ガンコウランの花に会えないことが多いのです。また、花の色が越冬した赤い葉と似たような色で目立たないことと、葉と間違えるような形の目立たない小さな花なので、注意深く観察していないと見逃してしまうこともあるのかもしれません。
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【開花直前のガンコウラン】
夏山登山をする人なら、花よりもブルーベリーのような黒い実の方が、なじみがあるかもしれません。果実は一年を通して見ることができます。
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【ガンコウランの果実】
ガンコウランは漢字で岩高蘭と書きます。
『高い山の岩場に生育している蘭』という意味かなと読んでしまいます。
確かに森林限界を超えた岩場の風衝地など、育つ場所はその名の通りなのですが、ガンコウランはツツジ科で、蘭の仲間ではありません。今のところ名前の由来などはよくわかっていません。
 
チングルマやツガザクラ等の高山植物のように、一見草のように見えますがガンコウランも樹木です。厳しい冬の環境に耐えるため、上に伸びることをやめて横に広がることを選んだのでしょうか。
群落のように見える花たちも、実は枝分かれした一本の樹木なのかもしれません。
 
 
大雪山にはたくさんの種類の植物がありますが、それぞれが個性を持っています。その違いを知るのも山の楽しみ方の1つではないでしょうか。
 
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【コメバツガザクラ】
同日にコメバツガザクラの開花も見られました。
大雪山の上でも春の訪れが感じられる季節になってきました。
 
【5月31日現在】黒岳5合目駅より上の登山には、アイゼン・ピッケル等の冬山装備が必要です。