報道発表資料
- 結果報告
(お知らせ)天売島におけるウミガラスの繁殖結果について
天売島における今シーズンのウミガラスの繁殖が終了しましたので、繁殖結果についてお知らせします。繁殖個体を中心とする2020年の天売島へのウミガラスの飛来数は、65羽を確認し、過去20年で最も多くなりました。また、24羽のヒナの巣立ちが確認され、10年連続の繁殖成功となりました。
7月25日巣立ち直前のヒナ(手前の右個体)
1.ウミガラスの飛来・繁殖結果
・最大飛来数 :65羽 (昨年比3羽増加)
・つがい数 :最低24つがい
・ヒナ数 :最低24羽
・巣立ちヒナ数:24羽 (昨年比1羽増加)
・巣立ち日 :7月15日~8月6日の間 (昨年7月16日~8月3日)
※2020年は、COVID-19の感染拡大防止のため調査人員を最低限に絞らざるを得ず、例年通り赤岩対崖繁殖地内にモニタリング機材を設置することが困難であったため、繁殖地入口に広角で撮影できるカメラを設置して飛来数・巣立ちヒナ数をカウントした。このため、つがい数・ヒナ数は、巣立ちヒナ数から推定される数値を記載。
2.過去20年間のウミガラスの繁殖状況
○赤岩対崖繁殖地の繁殖状況 ○天売島全体の繁殖状況
年 |
飛来数 |
つがい数 |
ヒナ数 |
巣立ヒナ数 |
年 |
飛来数 |
つがい数 |
ヒナ数 |
巣立ヒナ数 |
|
2001 |
11 |
0 |
0 |
0 |
2001 |
17 |
3 |
3 |
3 |
|
2002 |
6 |
2 |
2 |
2 |
2002 |
13 |
5 |
5 |
5 |
|
2003 |
14 |
0 |
0 |
0 |
2003 |
20 |
3 |
2 |
2 |
|
2004 |
0 |
0 |
0 |
0 |
2004 |
18 |
1 |
0 |
0 |
|
2005 |
0 |
0 |
0 |
0 |
2005 |
15 |
0 |
0 |
0 |
|
2006 |
0 |
0 |
0 |
0 |
2006 |
52 |
2 |
0 |
0 |
|
2007 |
4 |
0 |
0 |
0 |
2007 |
31 |
1 |
1 |
0 |
|
2008 |
6 |
3 |
3 |
3 |
2008 |
20 |
4 |
3 |
3 |
|
2009 |
9 |
4 |
4 |
1 |
2009 |
15 |
4 |
4 |
1 |
|
2010 |
18 |
5 |
2 |
0 |
2010 |
19 |
5 |
2 |
0 |
|
2011 |
20 |
7 |
7 |
7 |
2011 |
20 |
7 |
7 |
7 |
|
2012 |
32 |
12 |
11 |
9 |
2012 |
32 |
12 |
11 |
9 |
|
2013 |
35 |
13 |
11 |
9 |
2013 |
35 |
13 |
11 |
9 |
|
2014 |
35 |
15 |
12 |
11 |
2014 |
35 |
15 |
12 |
11 |
|
2015 |
27 |
13 |
11 |
10 |
2015 |
27 |
13 |
11 |
10 |
|
2016 |
38 |
16 |
16 |
13 |
2016 |
38 |
16 |
16 |
13 |
|
2017 |
51 |
20 |
18 |
17 |
2017 |
56 |
20 |
18 |
17 |
|
2018 |
58 |
27 |
23 |
19 |
2018 |
58 |
27 |
23 |
19 |
|
2019 |
57 |
26 |
24 |
23 |
2019 |
62 |
26 |
24 |
23 |
|
2020 |
65 |
24 |
24 |
24 |
2020 |
65 |
24 |
24 |
24 |
|
|
※数字は推定数も含む |
※数字は推定数も含む |
○過去20年間の赤岩対崖繁殖地の繁殖状況のグラフと天売島全体の繁殖状況のグラフ
参考
1.ウミガラスについて
チドリ目 ウミスズメ科
絶滅危惧ⅠA類(ごく近い将来における野生での絶滅の危険性が極めて高い種)
○ 分布の概要
種としては、北太平洋、北大西洋の亜寒帯を中心に分布している。日本国内ではかつては、北海道の離島である松前小島、ユルリ島、モユルリ島にも繁殖地コロニーがあったが、現在では天売島だけである。
○ 形態、生物学的特性
全長40cm~45cm。潜水して主に魚類を食べる。
離島や海岸の断崖で集団繁殖する。5月下旬~6月に1卵産み、約30日抱卵する。ヒナは、孵化約3週間で巣立ち、その後約2ヶ月親と過ごしてから独立する。繁殖期(4月~8月頃)は、営巣地周辺の海域で、非繁殖期は沿岸海域から沖合海域に生息する。
○ 飛来数
天売島への飛来数は、1960年代には8000羽と推定されたが、1970年代には500~1000羽、1980年代には130~600羽、1990年代は20羽~80羽、2000年以降は30羽前後で推移していたが、2017年に50羽を超え、2020年は65羽を確認した。
○ つがい数、巣立ちヒナ数
飛来数と同様に、つがい数と巣立ちヒナ数も急激な減少傾向にあったが、ここ数年は徐々に持ち直し回復傾向にある。
つがい数は、2005年に一度、0羽となったが、その後回復傾向を示し、2017年には20つがいを超え、2020年は24つがいと推定された。巣立ちヒナ数は、2010年に0羽となったが、つがい数に伴って回復傾向を示し、2019年には20羽を超え、2020年は24羽を確認した。
○ 減少要因
要因は明らかでは無いが、餌資源の減少等が考えられている。
一方、最近の主な減少要因は、オオセグロカモメやハシブトガラスによる卵やヒナの捕食と考えられている。
○ 保護対策
1982年に天売島全域を国指定鳥獣保護区に指定、1993年にはウミガラスを絶滅のおそれのある野生動植物の種の保存に関する法律(種の保存法)に基づく国内希少野生動植物種に指定した。更に2001年には保護増殖事業計画を作成し、デコイ(鳥の模型)の設置や生息状況のモニタリング等を実施してきた。
2.ウミガラス保護増殖事業の経緯
主に天売島の2箇所の繁殖地(屏風岩、赤岩対崖)でデコイの設置や、音声装置を設置して鳴き声を流し繁殖個体の誘引等を行ってきた。
○ 2003年~2008年:屏風岩(デコイ設置、音声装置設置(2005年~2008年))
2006年には50羽飛来し13年ぶりにウミガラスが卵を産んだが捕食された。その後もハシブトガラスやオオセグロカモメに卵や雛を捕食され巣立ちには至らなかった。2012年以降、屏風岩では、ウミガラスの飛来は確認されていない。
○ 2009年~2020年:赤岩対崖(デコイ設置、音声装置設置)
赤岩対崖にある繁殖地は、標高25mにある断崖の岩棚にあるため、屏風岩の繁殖地より捕食されにくいと考えられたことから、誘引場所を移動した。しかしながら最初の2年はハシブトガラスやオオセグロカモメに卵や雛を捕食され、ほとんどが巣立ちには至らなかった。
2011年からは、繁殖地周辺でエアライフルによる捕食者の捕獲を実施している。その結果、捕食圧を下げることに成功し、10年連続の巣立ちとなった。
※ 2010年以前は、繁殖地周辺以外で箱罠や散弾銃による捕食者の捕獲を実施。
- ■ 問い合わせ先
- 環境省 北海道地方環境事務所
所長:安田 直人
統括自然保護企画官:大林 圭司
羽幌自然保護官:平田 つかさ(担当)
電話 0164-69-1101 FAX 0164-69-1102