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北海道地方環境事務所

アクティブ・レンジャー日記 [北海道地区]

大雪山の懐深くにヒサゴ沼はあります。
三方を丘陵に囲まれ穏やかな宿営地ですが…

ヒサゴ沼野営指定地の冠水

2022年12月14日
上村 哲也

ヒサゴ沼野営指定地の調査

ヒサゴ沼は大雪山の懐深く、化雲岳の南に在ります。天人峡、クチャンベツ沼ノ原、トムラウシ温泉などいずれの登山口から入山しても丸一日かかる道のりです。避難小屋とトイレが建ち、野営指定地が仕切られています。雪解け水に恵まれ、三方を丘陵に囲まれて穏やかな宿営地です。
しかし、野営指定地は長い年月を経て、踏圧により植生が失われ、雨により土壌が浸食され、岩や石が当たるところとぬかるみに悩まされるところになりました。この野営指定地を改善できないか、排水路を造ってはどうか、ヤシネットを敷いてはどうかと、様々な意見が出ましたが、もっと水の流れや利用の状況をしっかり把握する必要があろうということになり、2022年の夏、自動カメラを設置して観察することにしました。
8月の28日間、自動カメラを設置してタイマー撮影を行いました。カメラにズームやワイドを選択する機能はありませんが、避難小屋南側のまだ土がある区域の大半を捉えることができました。
ヒサゴ沼利用調査
最多利用日。8月13日の12張り
ヒサゴ沼利用調査
テント設営分布
28日間の調査期間中に、79張りの利用がありました。テント設営位置の分布を野営指定地上空からの画像に重ねてみました。橙色はテントの設営数が最も多かった8月13日(土)の設営位置です。

降雨後の水たまりの推移

調査の中で、野営指定地は雨が降ると広く冠水することが分かりました。
8月15日(月)の夜から16日(火)の午前中にかけて新得町のアメダスで150ミリを超える雨が降りました。ヒサゴ沼野営指定地においても、8月16日に撮影した画像では撮影範囲がほぼ冠水しています。
翌日8月17日(水)の朝から翌々日8月18日(木)にほぼ水が引くまでの画像を抽出しアニメーションにしました。雨が止んだ時刻が正確には不明ですが、冠水から水が引くまで約45時間が経過しています。
真ん中あたりにある岩のひとつがほぼ沈んでいることから、この付近は4~5センチの冠水になったであろうと推定できます。水が引くまでに時間のかかる東寄りではもっと深くなるはずです。この水の深さには、テントは耐えられないでしょう。
テント設営位置の分布を見直してみると、日々の利用数が、ほぼ10張り未満と少ない割には、野営指定地内がまんべんなく利用されているように見受けられます。ある朝、目覚めたら水に囲まれているという光景も見られました。穏やかな日に訪れたなら、なだらかな野営地が冠水することなど見抜けないかもしれません。
雨が降れば、逆順に水が迫ってきますから、これから訪れる方は参考になさってください。
ヒサゴ沼利用調査から
降雨後の水たまりの推移