北海道のアイコン

北海道地方環境事務所

アクティブ・レンジャー日記 [北海道地区]

今年大雪山で出会った動物たち ③マルハナバチ

2022年12月16日
入江瑞生
こんにちは。大雪山国立公園管理事務所の入江です。
やっと上川の町中も根雪になりました。


雪だるまを作ろうとしても上手く固まらず…パウダースノーです!
写真は先週の晴れた日に事務所の近くから撮影した様子です。それ以降上川では雪が降り続いており、
次晴れた時には一面雪景色になっているのではないでしょうか?
本格的な冬の訪れで、私自身やっと夏への恋しさから切り替えができそうです。
そのため今回が「今年大雪山で出会った動物たち」の最後の回にしたいと思います。
 
マルハナバチという愛らしいハチをご存じですか?

麓でも見かける種類のハチですが、高山帯の植物にとって受粉を助けてくれる重要な存在です。


イワブクロの蜜を取りに来たこの上の写真のエゾオオマルハナバチ。
この後どのような体制で蜜を採りに行くと思いますか?





なんと体をひっくり返して、上向き姿勢で花の中に入っていきました!!
同じ種の花でも下の写真の場合は足を下にしたまま花の中に入っていきました。

アオノツガザクラという花であれば、上向き姿勢で蜜を採るのは何度も見ておりイメージできていましたが、
なんとイワブクロでも同じ体制をとることもあるとは驚きでした。
 
マルハナバチの特徴の一つは口吻が長い事です。ピントは少しずれてしまったのですが、
この夏そのマルハナバチが口吻を伸ばしている瞬間を撮ることができました。
 
私が想像していた以上に口吻が長くとても驚きました。
 
今回マルハナバチと一緒に撮影したエゾコザクラという種は徹底した他殖性植物で、さらに
2つの花のタイプがあるそうです。そして同じタイプ同士では種子は作れない仕組みをとって
いる植物という面白い植物です。大雪山で長年調査をされている北海道大学の工藤先生の本に
よると花のタイプ別に、花粉が口吻の先に付く形とハチの顔の近くに付く形をとっており、花
タイプ別にめしべとおしべが対になるように花がデザインされており同じタイプ同士では種子が
作られないとそうです。そしてその花粉を媒介する事ができるのは、長い口吻を持つマルハナバチたちだけなのです。
すごい共生関係ではないでしょうか。
毎年雪解けが終わった直後、雪田に一面エゾコザクラというお花畑が広がるのにはこのエゾコザクラと
マルハナバチの関係のおかげなのですね~


先日、マルハナバチ情報交換会が旭川市で開催されました。
当事務所ではセイヨウオオマルハナバチが大雪山で目撃されてからパークボランティアの方々と
一緒に防除活動を行っています。今まで防除活動中セイヨウオオマルハナバチを目撃することはなく、
在来種の個体数調査をし、情報交換会で調査結果を報告しています。

今年の調査では昨年と比べ8月中旬になるとマルハナバチを目撃数が減り、とても驚いた事を報告しました。
長年調査されている方からは、2020、2021年とアオノツガザクラの開花量が多かったが、今年のアオノツガザクラの
開花量が少なかった事が原因ではないか。また、花の蜜があるところにマルハナバチたちも採蜜場所を移動させいると
考えられるのではないかとご意見をいただきました。大雪山で熱心な一般市民の方々がマルハナバチを長年調査されて
おり、今年の調査報告を聞きとても感銘を受けました。長年の調査で少しずつわかってきたマルハナバチが花の量や時
期に大きく依存をするマルハナバチの話を聞き、改めて自然はすごいな~と感じました。また市民調査が10年以上も
続いている事に驚きました。

マルハナバチが蜜を採るために必死に花にしがみつくと、花がそっと下を向く… そして次の花を探して飛び回り、
見つけると花にしがみつき、花が下を向く…  その愛らしいマルハナバチの行動とエゾコザクラをはじめとした高山
植物の子孫をつないでいく巧みな生態を知り、山を歩ける来シーズンを楽しみにこの冬を過ごしたいと思います!