報道発表資料
- 報道発表
長沼町舞鶴遊水地におけるタンチョウのヒナ誕生について
環境省、国土交通省北海道開発局札幌開発建設部および長沼町では、有識者や地域の多様な主体が参画する「タンチョウも住めるまちづくり検討協議会」のメンバーとして、舞鶴遊水地整備事業を軸にした「タンチョウも住めるまちづくり」に向けた取組みを連携・協力のうえ推進しています。5月29日付け北海道開発局札幌開発建設部ならびに長沼町からの報道発表において、舞鶴遊水地のタンチョウのペアにヒナが誕生したことをお知らせしておりましたが、ヒナ誕生を確認した写真とあわせ、その意義についてお知らせします。なお、空知総合振興局管内でのタンチョウのヒナの誕生は100年以上ぶりとなります。今後は育雛活動の段階に移行しますが、引き続き、タンチョウにストレスを与えず、安心して繁殖行動が継続できるよう、優しく見守って頂きますようお願いいたします。
1 舞鶴遊水地のタンチョウの写真について
2羽のヒナの誕生が確認された5月24日のドローン調査時に撮影した以下の写真を公表します。写真の使用に際しては、「環境省・一般社団法人タンチョウ研究所提供」のクレジット表記を必ずお願いいたします。
親鳥2羽の間で巣周辺を歩くヒナ2羽 親鳥1羽と滞巣するヒナ2羽
2 ヒナを確認したペアの繁殖行動の経過概要
〇3月下旬から営巣・交尾行動が観察されるようになる。(目視調査)
〇4月中旬に就巣・産卵していることを確認。(目視調査)
〇4月下旬に2卵抱卵していることを確認。(ドローン調査)
〇5月24日にヒナ2羽がふ化していることを確認。(ドローン調査)
※調査は、「タンチョウも住めるまちづくり検討協議会」において了承を得た者が、専門家の指導を仰ぎつつタンチョウの繁殖に影響を及ぼさないよう最大限の配慮を行いながら、ドローン若しくは堤防からの目視により調査を実施しています。
3 舞鶴遊水地におけるタンチョウのヒナ誕生の意義
タンチョウ保護増殖の取組みは、「タンチョウ保護増殖事業(平成5年 環境省、農林水産省、国土交通省)」に基づき、国、地方自治体、関係団体、有識者、市民といった多様な主体の参画により進められています。
現在、タンチョウ保護増殖事業のアクションプランである「タンチョウ生息地分散行動計画(平成25年 環境省)」に掲げた「道内において生息分散が確実に進むこと」という目標にむけて、釧路地域の三大給餌場(鶴見台、鶴居・伊藤サンクチュアリ、阿寒)における給餌量調整、タンチョウの生息環境の維持創出、タンチョウとの共生社会の実現に向けた社会環境整備等のさまざまな取組みを道内全域で展開しています。
近年では、十勝、宗谷へのタンチョウの分散が着実に進み、日高も含めた道央地域においても下図(図1,図2)のとおり、年々、分散が進んでいることが明らかとなってきています。
図1.非越冬期における目撃情報(2次メッシュ,2009~2019年)
図2.越冬期における目撃情報(2次メッシュ,2010-2011年~2019-2020年)
出展:令和元年度タンチョウ生息地分散に向けた生息状況把握等業務(2019,環境省)
※2次メッシュは、1メッシュあたりおよそ10km×10km
※非越冬期を4~10 月、越冬期を11~3 月としている。
※目撃情報は、有識者、自治体、関係団体等へのヒアリング・アンケート、新聞記事等をもとに収集。
※位置情報を含む詳細なデータが得られなかった情報については、地図に反映していない。
舞鶴遊水地における取組みは、道東からのタンチョウの分散に向けた取組みが進む中で、国土交通省北海道開発局が治水対策の一環として整備した舞鶴遊水地(平成26年度完成)へ平成24年にタンチョウ2羽が飛来したことを契機としています。
地元の農業者が「舞鶴遊水地にタンチョウを呼び戻す会」を設立し、タンチョウを活かした地域振興を長沼町に要望したことを受けて、北海道開発局および長沼町では、平成28年度、生態系ネットワーク構築に向けた取組の一環として、有識者や地域の多様な主体が参画する「タンチョウも住めるまちづくり検討協議会」を設立し、タンチョウも住めるまちづくりに取り組んでいます。
また、環境省も「タンチョウも住めるまちづくり検討協議会」の構成員として、タンチョウ保護増殖事業の主管官庁として、タンチョウ保護増殖事業および地域循環共生圏という2つの側面から「タンチョウも住めるまちづくり」の推進に向けた取組みを北海道開発局、長沼町とともに、地域住民の参画も得ながら進めてきたところです。
このような取組みの総合的な成果として、今春、人工的な湿地環境である舞鶴遊水地を利用して、初となるタンチョウの繁殖行動が観察されるようになり、このたび、ヒナの誕生を確認するに至ったことは、「道内において生息分散が確実に進むこと」という「タンチョウ生息地分散行動計画」の目標実現にむけた大きな布石になりうる非常に意義深いものです。
なお、古文書等の文献資料から江戸・明治時代のタンチョウを含むツル類の分布や生態の調査研究を行っている北海道大学 大学院文学研究院 博物館学研究室の久井貴世准教授によれば舞鶴遊水地が所在する長沼町、空知総合振興局管内におけるタンチョウの生息・繁殖を示す記録は明治20年代(1880~1890年代)頃を最後に途絶えていること、そして、一度絶滅したと考えられていたタンチョウの国内における再発見が1920年代の釧路湿原であったことをふまえると、今回の舞鶴遊水地におけるタンチョウのヒナ誕生は、同地域においては、100年以上ぶりの快挙となります。
4 取材および一般見学について
令和2年5月29日に北海道開発局札幌開発建設部ならびに長沼町より行われた以下報道発表のとおりですが、タンチョウは警戒心が強く、人が近づくと強いストレスを与えるおそれがあるため、取材・見学は、立入制限を守り、鳥の駅マオイトー周辺から優しく見守って頂きますようお願いいたします(ドローンも飛行させないで下さい)。
〇北海道開発局 報道発表資料
https://www.hkd.mlit.go.jp/sp/release/gburoi000000w9a8.html
タンチョウも住みやすい環境整備のため、当面の間、舞鶴遊水地への立ち入りを制限させていただきます ~タンチョウを静かに優しく見守ってください~
〇長沼町 新着情報
タンチョウも住みやすい環境整備のため、 当面の間、舞鶴遊水地への立ち入りを制限させていただきます
<参考>舞鶴遊水地におけるタンチョウ保護増殖に関する主な取り組み
○環境省
タンチョウ保護増殖事業に関する取組み
https://hokkaido.env.go.jp/post_8.html
千歳川流域の舞鶴遊水地におけるタンチョウも住めるまちづくり
https://hokkaido.env.go.jp/post_55.html
地域循環共生圏に関する取組み
https://www.env.go.jp/seisaku/list/kyoseiken/index.html
環境で地方を元気にする地域循環共生圏づくりプラットフォーム事業
https://www..env.go.jp/seisaku/list/kyoseiken/pdf/torikumi_gaiyo.pdf
○国土交通省北海道開発局
川からはじまる川から広がる魅力ある地域づくり
https://www.mlit.go.jp/river/pamphlet_jirei/kankyo/gaiyou/panf/kawakara.pdf
舞鶴遊水地(平成26年度完成)
https://www.hkd.mlit.go.jp/sp/titose_kasen/gburoi000000dpyr.html
タンチョウも住めるまちづくり検討協議会
https://www.hkd.mlit.go.jp/sp/kasen_keikaku/kluhh40000001qwn.html
○長沼町
タンチョウも住めるまちづくり
https://www.maoi-net.jp/shokai/machizukuri/tancho/
長沼町タンチョウとの共生検討会議
https://www.maoi-net.jp/shokai/machizukuri/tancho/kyoseikentokaigi.html
- ■ 問い合わせ先
- 環境省 北海道地方環境事務所
所長 三村 起一
統括自然保護企画官 大林 圭司
野生生物課課長補佐 若松 徹
(TEL:011-299-1954)
国土交通省 北海道開発局
札幌開発建設部
河川計画課長 岩井 真央
調査官 髙橋 賢司
(TEL:011-611-0329)
長沼町
町長 戸川 雅光
政策推進課長 駒谷 敏
政策推進課企画官 佐藤 麻衣子
政策推進課研修生 平林 毅一郎
(TEL:0123-76-8015)