上士幌

7月5日(水)~7日(金)、今期初めてのトムラウシ山巡視に赴きました。
トムラウシ山は、上士幌管理官事務所が担当する東大雪地域を代表する山です。トムラウシ温泉登山口から南沼野営指定地までの登山道は環境省が管理し、点検や補修、カムイ天上の泥濘対策など整備を行っています。

トムラウシ山、ヒサゴ沼巡視

2023年07月12日
上士幌 上村 哲也

75()7()トムラウシ山短縮登山口から入りヒサゴ沼までを往復しました。当初は南沼野営指定地にテント泊し中日に日帰り装備でヒサゴ沼を往復する計画でしたが、雨風が強まる予報に触れ、入山を2時間半早めて一気にヒサゴ沼まで入りました。

1日目、登山道の標識やロープなどを点検しつつ進みます。カムイサンケナイ川沿いの登山道では前々日に設置した携帯トイレブーステントを点検しました。トムラウシ山の短縮登山口から山頂往復は約11時間とも紹介されますが、登山口にバイオトイレが設置されているのみで、山中にはトイレがありません。山頂直下の南沼野営指定地には2基の携帯トイレブースがあります。中間にもあるとよいという声を聞き、試行的にテント型の携帯トイレブースを設置しました。この場所は登山道沿いに裸地が広がっていました。雨が降ると水の溜まるのが難でしたので、端材を担ぎ上げてすのこを製作しました。

携帯トイレブーステント
カムイサンケナイ川の携帯トイレブーステント
サンカヨウ
周辺に咲くサンカヨウ
携帯トイレブースを設置するのは、登山者が安心して身を隠す場所を提供し、植生に踏み込むことを防ぐのが目的です。
ガイドロープなども同じ目的を含めています。
踏みつけられた植物は、枝葉を失い、樹皮を剥ぎ取られ、根がちぎれて、やがて死んでしまいます。植物を踏まないでください。植物の根を踏まないでください。植物の根が張る土を踏まないでください。植物がなく根も伸びていないであろう岩の上を歩いてください。トムラウシ山には大岩を伝い歩くところがいくらもあります。誰もがそこを通り抜けてきたはずです。岩と土があるところは岩を歩きましょう。岩と植物の根があるところは岩を歩きましょう。岩と植物があるところは岩を歩きましょう。年間3,000人ほどが利用するこの登山道では、一歩一歩の積み重ねが大きな損傷につながります。次の写真もトムラウシ山登山道の南沼野営指定地に近い場所ですが、昨年までは岩の右側をウラシマツツジなどの緑が覆っていました。僅かな月日で枝葉は失われ根が露出し始めています。全ての登山者が植生を踏まず岩の上を歩くことを望みます。
植生を踏みつけないで

南沼野営指定地ではトイレ痕調査やテントの数で利用数を調査するための自動カメラ設置などを行いました。

トイレ痕調査は、昨年の回収数が4個であったことから、調査のためとはいえ無駄に野営地外へ踏み込まないようドローンによる探索を試みました。風が弱いことには恵まれました。この手法は有効で残された白い紙は容易に発見できることが確かめられました。今後は探索範囲をくまなく飛行させるため操縦技量を上げる必要があります。残念ながら昨年と同数の4個が見つかりました。
今回は、ややガスが立ち込め高度を上げることはかないませんでしたが、南沼野営指定地周辺のトイレ道がどう復元してゆくのか、全景をも記録してゆきたいところです。

ところで、残されたし尿に数々の個人情報が含まれていることはご存知でしょうか?食生活、肉食あるいは菜食、酒やコーヒーなどの嗜好、栄養状態の偏り、服薬、便秘あるいは下痢、腸内環境、大腸がんそのほかのリスク、血液型、そしてもちろんDNAも。

南沼を彩るチングルマ

2日目には、ヒサゴ沼野営指定地でテントの数で利用数を調査するための自動カメラ設置。雨の止み間を縫って取り付け、点検と調整の繰り返し。ヒサゴ沼野営指定地は雨が降るとプールのように水の溜まることが分かってきましたが、周囲から流れ込んでくる水はそれほどでもなく、まあまあの大雨であるとき一面に水が張るのだということが分かりました。雨の日に滞在することも貴重な現地確認になりました。

排水路を施すべきなのか石やヤシネットを敷くべきなのか、あるいは何もしないべきなのか、検討の資料となれば嬉しいです。

ヒサゴ沼は三方を尾根に囲まれて風が穏やかな野営指定地ですが、東西の風は強く吹き抜けることがあります。このときも沼の水面に白い波が立つほどでした。

3日目、雨風がやや弱まる中、下山を始めました。稜線に上がれば風は強まります。未明の風がそのまま続いていたなら押し倒されていたかもしれません。南沼まで差し掛かると突然雲が切れ夏の陽を浴びる下界が目に入ってきました。ひとり下山中の登山者がもう一度登頂したいと引き返してくるほどの急展開でした。

ニペソツへ続く道