アクティブ・レンジャー北海道地区

タンチョウと100年

2024年02月27日
アクティブ・レンジャー北海道地区 石下亜衣紗
例年に比べると少ない感じがしますが、釧路湿原にも雪が積もり、冬ならではの景色やアクティビティを楽しめるようになりました。
そして前回ご紹介した、釧路湿原国立公園定点撮影調査の冬の部を絶賛撮影中です。
先日、撮影ポイントの1つであるキラコタン岬まで出かけてきました。
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雪があるのでスノーシューを履いていきます。
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冬のキラコタン岬に到着!
お天気の良い日であったこともあり、素晴らしい景色を見る事ができました。
この日は季節外れの暖かな日でしたが、冷え込んだときは-20℃にもなる
凍てつく季節。しかし、岬の足下からはこんこんと水が湧き、凍ることのない水辺を作り出していました。
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丘陵地から流れ出る湧き水


江戸時代や明治時代中期ごろまでは、タンチョウは北海道全土にすみ、
冬は本州にも渡っていた事が知られています。
しかし、その後の乱獲と開拓により、その数は激減。ついには絶滅したと考えられていました。
 
ところが!大正13年(1924年)、釧路湿原の奥深くのこの流域で、数十羽のタンチョウが生き残っているのが発見されました!冬でも凍らない水辺、不毛の地と呼ばれ、開拓されずに残っていた
釧路湿原が最後のタンチョウ達を守ってくれていたのです。
それから100年、2024年となった今、タンチョウは1,800羽を越える数が確認されています。
地元の人々たちの保護活動から始まり、北海道や国の保護・調査によって見事に数が回復し、
今ではタンチョウがいるのが当たり前な日々です。
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100年前には夢のような光景でした!
しかし数が増えてきたことで新たな問題も発生してきています。
 
毎年、怪我をしたタンチョウが保護されていますが、その怪我の原因は何なのか?
昨年おこなわれた第29回日本野生動物医学大会で発表・最優秀ポスター賞を受賞した
「北海道に生息するタンチョウの保護収容理由の変化」を見てみましょう。
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ただいま最優秀ポスター賞、優秀ポスター賞が釧路湿原野生生物保護センターに掲示されています。
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赤色の怪我の原因の割合が増えてきているのが分かります。
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赤色の原因が示すのは交通事故。
特に、ここ3年間ではケガの原因の4割を占めてきている事が分かります。
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昨年のアクティブレンジャー日記でも書きましたが、道路を横断する光景を本当に多く目にします。
また、2022年にはタンチョウでも高病原性の鳥インフルエンザの感染が確認され、密度の高い給餌場での集団感染とそれに伴う大量死も心配されています。
 
タンチョウ再発見から100年。
これから先の100年はまた新しい関係を作っていかなければなりません。
 
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タンチョウと共に生きる100年になりますように。